悪性リンパ腫患者の標準看護計画
悪性リンパ腫とは
リンパ節ないしリンパ組織をもつ臓器に発生する非上皮性悪性腫瘍である。
生物学的特性からホジキン病(HD)と非ホジキンリンパ腫(NHL)に大別され、日本ではNHLが90%以上を占め予後も悪い。
HDは1つのリンパ節領域に始まり、リンパ節に沿って順序よく規則的に拡大する。
NHLは節外リンパ腫として発症するものが多く、消化管が後発部位であり、胃が最も多い。
NHL:病理所見
濾胞性リンパ腫 B細胞に由来し、予後は比較的良い
び慢性リンパ腫 T細胞に由来し、予後は悪い
病期はⅠ期からⅣ期に分類される
アセスメントの視点
我が国では、NHLがHDに比較して多く、全悪性リンパ腫症の死亡率は、人口10万人当たり1.2~2人で、造血臓器の悪性腫瘍による死亡率の約半数を占める。
各病期によって治療が選択される。頸部その他のリンパ節に弾性で硬く無痛性の腫大を認めたら悪性リンパ腫を疑う。リンパ節などの血液学的穿刺細胞診検査を至急行い、その結果によって病理組織学的検査で各種マーカーの検索を行う。
症状
リンパ節腫大
頸部、鼠径部、腋下部、扁偏桃腺などに初発症状が多い。
肝、脾腫
進行例でかなりの頻度で認められる。
消化器症状
初期に出現する場合は消化器原発悪性リンパ腫に多く、その中でも胃原発が最も多い。末期悪性リンパ腫では消化器症状はほぼ必発であり、腹部腫瘤(後腹膜リンパ節からの腫瘤や、肝、脾、腸間膜リンパ節腫大によるもの)による各種臓器への圧迫のため、食欲不振、悪心、嘔吐、イレウス様症状、黄疽(閉塞性または肝実質障害によるもの)、腹水などが認められる。
発熱
初発症状として発症し、悪性リンパ腫と診断される場合も少なからず存在し、逆に不明熱(FUO)の場合には、考慮に入れておかなければならない疾患のひとつである。末期悪性リンパ腫では、免疫不全状態および白血球減少などにより、易感染状態から感染症を合併し発熱をきたす。
検査
1. 血液検査: WBC、Hb、血小板値など
2. リンパ節検査: リンパ管造影、CTスキャン、リンパ節生検
3. 生化学的検査: LDH、γ-グロブリン、CRP
4. その他: 胸腹部単純X線撮影、心電図、骨髄穿刺
治療
放射線や化学療法に比較的感受性が高いため、これらの治療が中心に行われる。
1.放射線療法
初期ではきわめて効果的であり、これのみによる完治例もある。通常、当該部にリニアック4,000~5,000radを4~5週間に分割照射する。また末期においても局所に腫瘍が浸潤し、局所症状が強い場合には、対症療法的に局所照射する場合もある。
2.化学療法
悪性リンパ腫のほとんどの症例(95%)に施行される。放射線療法が対象となる初期例でも一般的には維持療法、強化療法として化学療法が施行され、悪性リンパ腫治療の主体をなす療法である。治療薬剤は、抗生物質系腫瘍剤およびステロイドホルモン剤などを単剤で使用するよりも、各種作用機序の抗腫瘍剤を併用した多剤併用療法が施行される。主な併用療法としては、COP(エンドキサン、オンコビン、プレドニゾロン)CHOP(エンドキサン、アドリアマイシン、オンコビン、プレドニゾロン)MACOP-B(メソトレキセート、アドリアマイシン、サイクロフォスファマイド、プレドニゾロン、ブレオマイシン)などがあり、高い寛解率と長期生存率が得られている。
3.手術療法
4.造血幹細胞移植術
化学療法で寛解が得られ、HLAの一致するドナーがいれば適応症例として考慮すべき治療法である。
看護計画
Ⅰ.アセスメントの視点
現在患者が抱えている健康問題を明らかにし、改善、解決するとともに、将来的に患者が健康問題の発生を回避できるように、包括的にとらえる。リンパ節腫大の程度を知り、それがもたらす臨床症状による患者の苦痛、治療に伴う日常生活の制限及び苦痛、発病や入院によって生じる社会生活の変化、悪化した場合の心理的影響を考え、患者、家族が病気とその治療をどううけとめているかを把握する。またこれまでの危機的状況での対処方法、サポートシステムの状況、患者の性格等の情報をもとに、生へ立ち向かう意欲や能力、それを支える側の能力をアセスメントする。
Ⅱ.問題リスト
♯1.不安(中等度~強度)
〔要因〕・慣れない環境
・自覚症状(リンパ節の触知、発熱)の出現
・疾病の悪性への疑い
・繰り返される検査、治療に対する知識不足
・家族からの分離(存在感の低下)
・社会的役割の変化(学業・仕事の中断、休職)
・家庭内での役割変化
・経済状態
♯2.家族の不安
〔要因〕・患者の病状、治療経過
・悪性の疾患であること(再発、死への恐れ)
・仕事、経済面
・疾患や検査、治療についての情報不足、あるいは誤った情報
・患者に真実を伝えられないことによる葛藤
♯3.合併症の危険性:感染
〔要因〕・化学療法による白血球の減少
・放射線療法による免疫能の低下
♯4.栄養状態の変調:摂取不十分
〔要因〕・化学療法、放射線療法による副作用
・不安、ストレスによる食欲不振
・腫瘍による食道、胃の圧迫
♯5.口腔粘膜の損傷
〔要因〕・化学療法による副作用
・放射線照射による潰瘍
・不適切な口腔衛生
・真菌感染
・粘膜出血
・栄養状態の変調
♯6.睡眠パタ-ンの障害
〔要因〕・慣れない環境
・濃厚な治療
・生活パタ-ンの変化
・身体活動の減少
・恐れと不安
・不快感
・治療による副作用
♯7.安楽の変調:悪心・嘔吐
〔要因〕・胃部刺激によって起こる反射
・不安感などの精神・神経的刺激
・化学療法、放射線療法による副作用
♯8.活動耐性の低下
〔要因〕・低栄養
・化学療法による全身衰弱
・長期臥床あるいは運動量の減少による筋力の低下
・貧血、低栄養による全身倦怠感
・貧血による組織への酸素供給量の減少
・発熱による倦怠感
#9.セルフケアの不足:食事行動、清潔行動、排泄行動、更衣・整容行動
〔要因〕・軽労作にも耐えられないほどの全身倦怠感
・体力および持久力の低下
・持続的な気分不快の存在
♯10.ボディイメ-ジの障害
〔要因〕・整髪のたびに抜ける多量の毛髪
・枕につく毛髪
・脱毛に伴う顔貌、容姿の変化
♯11.退院後の予期的悲嘆
〔要因〕・死への不安
・ライフスタイルの変化
・予後に対する不確かさ
・社会的役割の変化
・ボディ-イメ-ジの障害
・疾患に対する理解不足
・苦痛
・疾患に対する説明への不信感
Ⅲ.看護目標
1. 不安が軽減される
2. 家族の不安が軽減される
3. 栄養状態が改善される
4. 合併症、感染を起こさない
5. 十分な睡眠がとれる
6. 悪心、嘔吐が軽減され安楽に過ごせる
7. ボディイメージの変化を受け止めることができる
8. 疾病を理解し、闘病意欲をもち続ける
Ⅳ.看護問題
♯1.不安(中等度~強度)
〔要因〕・慣れない環境
・自覚症状(リンパ節の触知、発熱)の出現
・疾病の悪性への疑い
・繰り返される検査、治療に対する知識不足
・家族からの分離(存在感の低下)
・社会的役割の変化(学業・仕事の中断、休職)
・家庭内での役割変化
・経済状態
&表情が和らぎ、心配や不安がなくなったことが表現できる
$入院1週間
O-1.不安言動、不安行動の有無と程度
2.身体症状の有無と程度
3.睡眠状態
4.食欲、食事摂取量
5.病気、検査、治療についての理解度や受容の程度
6.性格傾向とこれまでに体験した危機的状態での対処方法
7.相談できる人の有無
8.入院することによって起きた問題の有無とそれに対する考え方
T-1.共感的態度、受容的態度で対応し、患者、家族と信頼関係を築く
2.医師からの病気や治療についての説明で納得できない部分を聞き、再度説明を依頼する
3.社会的役割の変化、経済的な問題等、理由がはっきりしている不安については、早い時期に解消できるように対応する
E-1.入院時病棟オリエンテーションにおいて、検査、治療の必要性を説明し、患者が納得して検査や治療が受けられるようにする
2.患者自身の感情や考えを自由に表現してよいことを伝える
♯2.家族の不安
〔要因〕・患者の病状、治療経過
・悪性の疾患であること(再発、死への恐れ)
・仕事、経済面
・疾患や検査、治療についての情報不足、あるいは誤った情報
・患者に真実を伝えられないことによる葛藤
&家族が不安な気持ちを表し、今後どうしていきたいか自分の考えを言うことができる
患者と一緒に病気と闘う姿勢をもち、落ち着いた態度で患者と今後について話し合うことができる
$寛解期に入るまで
O-1.家族の表情、言葉による表現、態度
2.家族と患者の人間関係
3.家族と患者間の病気に対する理解、認識の差
4.家族間のサポートシステム
5.家族の状況判断能力
6.家族がとらえている患者の性格傾向、コーピング
7.経済的問題の有無
T-1.家族とコミュニケーションをとり、不安や心配事を表出しやすいように受容的態度でかかわる
2.医師から患者に話されている病名について認識し、患者への対応について意思の統一を図る
3.家族の考えと医療者の考えに違いがないか、また、患者の考えを尊重してかかわる方法について相談し検討する
4.患者の入院により家庭内で起きている問題への対応ができているかを確認し、解決困難な時は相談にのる
E-1.家族が患者の今後の生活についてイメージできるように、治療によって起こると予測される問題、入院期間、社会復帰
についての情報を伝える
2.家族に患者のサポートの必要性と家族の負担の軽減のためのサポートを誰ができるか、してもらえるか相談し、検討することを勧める
♯3.合併症の危険性:感染
〔要因〕・化学療法による白血球の減少
・放射線療法による免疫能の低下
&上気道感染、皮膚の感染を起こさない
$退院1週間前
O-1.バイタルサインのチェック
2.白血球の値
3.熱型の観察
4.言葉による表現
5.表情、動作、行動
6.顔色、皮膚の状態
7.痔の有無
T-1.医療者はマスクを着用し、患者に処置を行なう前に必ず手洗いをする
2.入口のドアは閉め、頻回に出入りしないようにする
E-1.患者に感染しやすい状態であることを話し、予防の必要性について理解を促す
2.以下のような感染予防の方法について指導し、実行を促す
室外に出るときはマスクを着用する
部屋に戻ったら必ず手洗いと含嗽を促す
食事前の手洗いと食事後の歯磨き、含嗽を必ずする
排便の後は必ず肛門洗浄を行なう
1日1回は陰部洗浄を行なう
身体の清拭を行い、皮膚を清潔に保つ
爪を短く切り、皮膚を傷つけないようにする
加熱食とし、生物は摂取しない
家族以外の面会人は制限する
鉢植の花は持ちこまない
3.家族にも患者と同様の説明を行い、面会時は手洗いとマスク着用をしてもらう
♯4.栄養状態の変調:摂取不十分
〔要因〕・化学療法、放射線療法による副作用
・不安、ストレスによる食欲不振
・腫瘍による食道、胃の圧迫
&摂取可能な食物を選択して食べることができる
悪心、嘔吐等の消化器症状、口腔粘膜の疼痛、発熱による倦怠感が軽減したことを表現することができる
体重が維持できる
$治療後1週
O-1.毎日の水分摂取量、食事摂取量と内容
2.自覚症状
3.悪心、嘔吐の有無と、吐物の性状と量
4.脱水症状の有無(口渇、口唇・皮膚の乾燥、尿量の低下、倦怠感、発熱)と程度
5.intake、outputのバランス
6.体重の変化
7.皮膚・口腔粘膜の状態
8.食べられないことに対する焦り
9.食べられないことによるストレス
T-1.医師に相談し、食前に局所麻酔剤の含嗽を試みる
2.患者の嗜好を聞き、摂取可能な食べ物を探す
3.家族の協力を得て、患者の好みの物で、高カロリー、高蛋白、消化のよいものを差し入れてもらい摂取を勧める
4.盛り付けや温度の工夫をする
5.医師に相談し、食前に制止剤をを用いる
6.食べられるものを食べられる量だけ摂取できればよいことを伝えリラックスさせる
7.指示された輸液を投与する
8.intake、outputのバランスが不良の場合は医師に報告し指示を得る
E-1.口腔粘膜の損傷が起きている現象について説明する
2.消化器症状が起きている現象について説明する
3.脱水症状になる危険性を説明し、場合によっては必要水分量を輸液で補う必要性も理解できるように説明する
♯5.口腔粘膜の損傷
〔要因〕・化学療法による副作用
・放射線照射による潰瘍
・不適切な口腔衛生
・真菌感染
・粘膜出血
・栄養状態の変調
&食物摂取に伴う口腔内の疼痛、違和感、不快感がなくなり、食事が摂取できる
$1~2週間
O-1.患者の自覚症状
2.食事摂取量
3.口腔内潰瘍の有無、部位、程度
4.舌苔の有無、程度
5.粘膜や歯肉からの出血の有無
6.呼吸の方法
7.体温
T-1.予防として、治療の前日から治療後10日ごろまで、ザイロリック入りの含嗽を1日4回行う
2.食前に局所麻酔剤入り含嗽水(4%キシロカイン5ml+ハチアズレ2包+水400ml)で含嗽させ、食事を摂取しやすくする
3.味の濃い食物、熱いもの、冷たすぎるものは避け、適温、薄味にする
4.半固形食にし、粘膜を刺激しないものにする
5.食後すぐに口腔内を清潔にするよう勧める
6.鎮痛剤や睡眠剤は指示に基づいて正しく用いる
E-1.口腔内を清潔に保つことの重要性を説明し、疼痛があっても食後には必ず含嗽や口腔内清拭を行うことを話す
2.食事は無理せず食べられるものを食べられる量だけ摂取するよう説明する
3.口腔内は出血しやすくなっているので、柔らかいハブラシや綿棒を用いての清拭方法を指導する
4.抗真菌薬(ファンギゾンシロップ)を使用する場合、使用方法を指導する
♯6.睡眠パタ-ンの障害
〔要因〕・慣れない環境
・濃厚な治療
・生活パタ-ンの変化
・身体活動の減少
・恐れと不安
・不快感
・治療による副作用
&可能な限り睡眠習慣を維持でき、熟睡感が得られる
$症状出現後3~5日
O-1.現在の睡眠時間、熟睡感、睡眠の状況
2.環境への適応性
3.身体活動の状態
4.精神的ストレス
T-1.不快感の訴えがあばその原因に応じた方法を工夫することで不快感の軽減を図る
2.静かで落ち着いた状況を提供する
3.昼間は眠らないよう刺激を与えたり、気分転換を図る
4.許可があり活動耐性があれば活動を増す
5.ストレスの解消に努める
6.夕方以降、カフェインを多く含む飲み物をとることを避けるように働きかける
7.睡眠前にリラクセーション法(背部マッサージ、そばにいる、心地よい音楽、温かい飲み物を飲む等)を活用する
8.不眠が続くようであれば、医師と相談して安定剤や睡眠剤を使用する
9.不眠の原因となる気がかりのことがないか話合い除去する
10.病気に対する不安がないか、安心して話せる環境をつくり傾聴する
E-1.昼間は眠らないよう指導する
2.活動耐性があれば少しでも動くように指導する
♯7.安楽の変調:悪心・嘔吐
〔要因〕・胃部刺激によって起こる反射
・不安感などの精神・神経的刺激
・化学療法、放射線療法による副作用
&患者は悪心、嘔吐が軽減していることを以下によって示すことができる
・悪心が軽減していることを言葉で表現する
・嘔吐回数の減少
・穏やかな表情になる
・正常範囲内の呼吸数と脈拍数
・食欲の回復
悪心や嘔吐を回避するための方法を理解し実践できる
自分自身に対する肯定的な感情を言葉で表現できる
$4~5日以内
指導開始後1~2日
O-1.悪心の程度・発現時間・持続時間
2.悪心に関する患者の認識と表現の内容
3.悪心の誘発因子(食事、臭気、運動等)
4.悪心の関連因子(不安、腹水、薬剤の使用等)
5.嘔吐の性質、嘔吐の頻度、発現時間、持続時間、吐物の性状・量
6.嘔吐に関する患者の認識と表現の仕方
7.嘔吐の誘発因子
8.嘔吐の関連因子
9.バイタルサイン
10.顔色、表情
11.活動性、姿勢、体位
12.食欲、食事摂取量
13.唾液分泌の増加、冷汗の有無
14.疾患の進行状況(消化管への影響)
T-1.安全安楽な体位を工夫する。
・嘔吐のある場合は、誤嚥防止のため側臥位で顔を横に向ける
・あてものを用いて楽な体位を確保する
・膝関節を屈曲し腹部の緊張を和らげる
2.口腔内の清潔を図る
・枕元には常時清潔な膿盆を用意し、吐物の処理は速やかに行う
・嘔吐後は冷水で含嗽する
・悪心がある場合はゆっくり深呼吸をした後に含嗽する
3.医師の指示により制吐剤を投与する
4.身体的安静を促す
・必要に応じてADLの介助を行う
・病衣や寝具による腹部の圧迫を除く
・悪寒がなければ胃部の冷罨法を行う
5.医師の指示によって禁飲食とし、口渇に対しては含嗽で緩和を図る
6.心理的な安静が保てるようにする
・不安を表出しやすいよう受容的態度で接し、そばについて安心させる
・静かで落ち着いた環境を提供する
・可能であれば気分転換活動を奨励する
7.悪心や嘔吐によって日常生活活動が消極的にならないように患者を励ます
E-1.治療のための薬剤が悪心の原因であることを医師と共に説明する
2.悪心、嘔吐を誘発する因子とそれらを回避する方法について患者及び家族に説明し、日常生活に取り入れていることを確認する
3.効果的な制吐方法(制吐剤の使用方法、食事摂取の方法、深呼吸等)を指導する
♯8.活動耐性の低下
〔要因〕・低栄養
・化学療法による全身衰弱
・長期臥床あるいは運動量の減少による筋力の低下
・貧血、低栄養による全身倦怠感
・貧血による組織への酸素供給量の減少
・発熱による倦怠感
&日常生活活動の範囲で至適活動レベルを維持する
活動中や活動後に疲労感の訴えがない
酸素需要と供給のバランスがとれている
活動に対する肯定的な感情を言葉で表現する
$1週間以内
O-1.安静時と活動後のバイタルサインの変化
2.従来と現在の活動量、内容、所要時間
3.身体の可動性(運動機能)
4.上下肢の筋力
5.姿勢、動作
6.体重、標準体重
7.栄養状態(食事摂取量、血清総蛋白量、アルブミン量)
8.貧血状態(末梢血液データ、起立時の眩暈)
9.血液ガス分析値
10.活動に対する意欲、不安感
11.活動中、活動後の疲労感の有無
T-1.心身の状態から耐えられる範囲のセルフケア及び娯楽活動を患者と共に計画し、安全に実施する
2.活動と活動の間隔は十分にとり、休息の時間を設ける。
3.床上安静の患者に対しては、床上での自動他動運動を計画する。
4.患者の訴えをよく聞きながら、上記の活動をできるだけ自立して行うよう励ます
5.危険のないようそばに付き添い、必要に応じて援助し、移動はゆっくりと行う
6.活動中、活動後の患者の反応を観察し、活動量、内容の妥当性を評価する
7.一定の体力・栄養状態を維持できるよう食事摂取を促す
8.筋力の維持を図るため、床上あるいは室内において、1日1回は全関節・筋肉の屈伸を行う
E-1.活動耐性が低下していること、及びその要因について正しく認識できるように説明する
2.正しい状況認識により無理な活動が回避できるように指導する
3.要因の解消に向けて積極的な姿勢をもつことの重要性について説明し、励ます
4.現在の活動耐性を維持するために必要な以下の事項について正しく理解できるよう指導する
・食事摂取量の増加を図る
・十分な睡眠、休息をとる
・筋力増強運動の継続に努める
・酸素消費量の多い活動を避ける
・移動動作はゆっくりと時間をかけて行う
#9.セルフケアの不足:食事行動、清潔行動、排泄行動、更衣・整容行動
〔要因〕・軽労作にも耐えられないほどの全身倦怠感
・体力および持久力の低下
・持続的な気分不快の存在
&自己のセルフケア能力を正しく評価し、達成可能な目標を設定する
セルフケア能力のレベルに応じた方法で日常生活動作を実施する
自分自身に対する肯定的な感情を言葉で表現する
$1~2週間
O-1.日常生活動作
2.四肢の運動機能
3.認知・知覚機能
4.現在のセルフケア能力のレベルに対する認識の把握
5.体力、栄養状態
6.気分不快の有無
7.病状や予後に対する不安の有無
8.自己統制力
T-1.セルフケア能力のレベルに応じた日常生活動作の範囲を患者とともに検討する
2.体力、栄養状態からできるだけ消耗の少ないセルフケア可能な日常生活動作の範囲を検討する
3.患者の自尊心を傷つけない程度にセルフケアを援助する
4.不安な感情が表出しやすいように、常に聴く姿勢をもって接する
E-1.できない部分は他者に依存しながら心身の安静を維持していくことの重要性について患者と家族に説明する
♯10.ボディイメ-ジの障害
〔要因〕・整髪のたびに抜ける多量の毛髪
・枕につく毛髪
・脱毛に伴う顔貌、容姿の変化
&鏡を見て整髪することができる
整髪や洗髪に対する恐れ、拒否がない
髪がなくなることについて受けとめ、つらさ、悲しさ、みじめさ、戸惑いを言葉で表現できる
他者と面会ができ、自分の置かれている状況を説明できる
社会復帰後の生活について考えることができたと言葉で話せる
表情が明るくなる
$退院3日前
O-1.治療前後の患者自信の感じ方、考え方の変化
2.自身への関心の有無と程度
3.言葉によるボディイメ-ジの変化、自尊心の低下に対する表現
(戸惑い、劣等感、負い目、悲しみ、怒り、抑うつ、敗北感、自信喪失)
4.ボディイメ-ジの変化、自尊心の低下に対する非言語的表現
(表情、行動、頭部をみることへの拒否、コミュニケーションの拒否)
5.患者のこれまでの危機的状況での対処方法とサポ-ト出来る人の有無
T-1.患者とコミュニケ-ションをとり、素直な感情を話せるような環境をつくり、受容的態度でかかわる
2.情報よりどんな問題が起きているかを明らかにする
3.状況を受け入れるまでのプロセスを理解し、患者に共感しサポ-トする
4.個人のコ-ピングにあわせた援助をする
5.サポ-トシステムの活用を勧める
6.かつらの購入を勧める
E-1.脱毛を来している原因は、治療のための副作用であること、時間の経過とともに必ず新しい髪がはえてくることを説明する
2.看護婦は、いつでも訴えを聴く用意のあること、一緒に問題の解決方法を検討していく用意があることを説明し安心感を与える
♯11.退院後の予期的悲嘆
〔要因〕・死への不安
・ライフスタイルの変化
・予後に対する不確かさ
・社会的役割の変化
・ボディ-イメ-ジの障害
・疾患に対する理解不足
・苦痛
・疾患に対する説明への不信感
&悲嘆の感情表出ができ、セルフケア活動と治療活動に参加することができる
$4~6週
O-1.悲嘆のサイン(言葉による表現、表情、動作)
2.疾患についての理解度
3.日常生活への意欲
4.治療、検査に対する協力度
5.サポ-トシステム
6.社会的役割の変化
T-1.悲嘆を克服する過程に必要な時間を十分に持たせる
2.ベットサイドに坐り、患者とともにいる時間を多くもち、感情表出を促し受容する
3.信頼感を高めるために誠意を持って応対し、求められた情報を提供する
4.いつでも相談に乗る姿勢を示し励ますとともに家族、友人、カウンセリングのサ-ビス等、サポ-トシステムを確立する
5.悲嘆が長引き退行するようであれば、医師に相談したり、精神科医にカウンセリングを依頼する
6.残された日々が有意義に送れるように心身の苦痛を最小限にするとともに、家族、本人ともに悔いが残らないように許される限り希望にそった援助をする
E-1.感染予防のための日常生活の注意事項を守ることの必要性をどの程度理解しているか確認し、必要時指導する
2.悲嘆の克服過程について話合い、現実のあるいは直面しつつある事実と変化に対する望ましい対応のあり方についての理解を促すとともに、現実の自己のありようを受容できるように援助する
3.悲嘆プロセスの各段階について重要他者に説明し、重要他者の支援と理解を求める