すぽんさーどりんく

すぽんさーどりんく

劇症肝炎患者の標準看護計画-037

 劇症肝炎患者の標準看護計画-037

劇症肝炎とは

 劇症肝炎は、元々肝疾患を有しない人に急激な肝障害が生じ肝臓の広範壊死に基づいて発症より8週間以内に急速な肝不全症状が現れる肝炎で、肝萎縮、進行性の黄疸、精神症状を伴い短期間のうちに死亡する予後の極めて不良な症候群である。なかでも肝性昏睡は疾患の重症度を知るうえで有力で発症前に健康であった症例では特に重要視されるべき症状である。急性ウイルス肝炎から劇症肝炎になる率は0.1%と言われている。性別差は見られず発生年齢は全年齢層に及ぶが、特に20~50歳代に多い。我が国における劇症肝炎の成因としては、ウイルス性と薬剤性の二つを含んでいる。90%以上がウイルス性劇症肝炎でありいずれの肝炎ウイルスによっても劇症化が起こり得る。予後は強力な治療にもかかわらず生存率は20%以下であり、発生後1~3週間以内に死亡する例が多い。特に高齢者では数%しか救えない。 

症状

 自覚症状 

全身倦怠感、発熱、黄疸、悪心、食欲不振、腹痛があるが特に肝性昏睡に伴う意識障害は必発の症状である。 

肝性昏睡度の分類

1.前昏睡期

前駆期 睡眠・覚醒リズムの逆転、多幸気分、抑うつ状態になるが日常接していないと異常と気づかないこともある

2.昏迷期

切迫昏睡 指南力(時、場所)障害、物を取り違える、異常行動(お金をまく、化粧品をゴミ箱に捨てる)、傾眠状態(普通の呼びかけで開眼し会話ができる)、記名力の低下

 ・興奮状態がない

 ・尿、便失禁がない

 ・羽ばたき振戦がある

昏迷 しばしば興奮状態またはせん妄状態を伴い、反抗的態度をみせる(ほとんど眠っている)

 ・羽ばたき振戦がある

 ・指南力が高度に障害される

3.昏睡期 昏睡 完全な意識の消失、痛み刺激には反応する

 ・刺激に対して払いのける動作をしたり、顔をしかめたりする

痛み刺激にも全く反応しない

 他覚症状 

肝性口臭、羽ばたき振戦、半数例で発熱がないのに頻脈(100/分以上)がみられる

 合併症 

脳浮腫、感染症、腎不全、出血 

検査

EEG 

USG 

CT 

血液検査:トランスアミナーゼ(GOT,GPT)、T-Bil、血清アルブミン、コレステロール、コリンエステラーゼ、プロトロンビン時間、ヘパプラスチン、アンモニア 

治療

1.全身管理、合併症対策

 1)肝不全のため、体内に蓄積した毒物の排除と不足物質の補給を行う 

・高アンモニア血症と腸管由来の有害物質抑制のために蛋白制限、ラクツロ-ス内服、特殊アミノ酸製剤(アミノレバン)の点滴、腸管細菌の殺菌薬(カナマイシン)の投与を行う 

・電解質異常、低血糖の予防のためブドウ糖を主体とした補液、ビタミン、ミネラルの補給を行う。 

 2)肝細胞壊死の阻止、肝再生の促進のためグルカゴン-インスリン療法を行う 

 3)出血傾向改善のために新鮮凍結血漿、ビタミンK投与を行う 

 4)合併症予防

・脳浮腫対策のため副腎皮質ホルモン剤投与、マンニト-ル、グリセオ-ルの点滴を行う 

・DICの予防のためにヘパリン、およびFOYの投与を行う。 

・消化管出血の予防のために制酸薬、H2受容体拮抗薬、粘膜保護剤の投与を行う 

・腎不全の予防のために低蛋白血症、循環不全に注意する。(血液透析をすることもある) 

・感染症予防のために抗生物質の投与を行う 

 5)呼吸管理のために低O2状態、呼吸性アルカロ-シスの改善(O2吸入、O2テント、気管切開、気管内挿管)を行う 

 6)水・電解質の管理のために水・電解質の平衡を厳重にチェックする 


看護計画

Ⅰ.アセスメントの視点

 急速に肝不全が進行することにより悪心、嘔吐、倦怠感、発熱、黄疸といった苦痛・不快を伴うことが多く、重篤な合併症が突然出現し更に急速に進行する。したがって早期に異常を発見し対処することが重要である。

 肝性脳症のため意識障害が出現するとベットからの転落、必要な治療に暴れて抵抗する、治療上必要なチュ-ブを抜去する、食事を誤嚥するなど安全を確保できない状態となる。そのため常に昏睡度、精神神経徴候を把握するとともに急激な変化に対応するための全身状態を観察することが大切である。また、患者の急激な変化による患者・家族の不安や戸惑いが大きく精神的サポ-トが必要となる。 

Ⅱ.問題リスト

♯1.意識レベル低下による危険行動の可能性


   〔要因〕・高アンモニア血漿

       ・アミノ酸代謝異常


♯2.病状の急激な進行による患者・家族の不安



♯3.DICの合併や凝固能の低下による出血傾向



♯4.低蛋白血症や循環不全による腎不全



♯5.脳浮腫、末梢循環障害、肺浮腫などによる呼吸障害



♯6.免疫能低下、浮腫ライン類の留置による感染



♯7.血液汚染物の誤った取り扱いによる他者への感染

Ⅲ.看護目標

1. 意識レベル低下による危険が防止され安全に過ごすことができる 

2. 必要以上に不安を抱かず治療がうけられる 

3. 種々の合併症が予測でき、異常を早期に発見することでいち早く対処がうけられる 

4. 患者・家族が肝炎ウイルスに対し正しい理解ができ他への感染を防止できる 

Ⅳ.看護問題

♯1.意識レベル低下による危険行動の可能性

   〔要因〕・高アンモニア血漿

       ・アミノ酸代謝異常


  &意識レベル低下による危険防止が図られ、適切な治療が受けられる

  $発症から3週間


O-1.昏睡のレベル

  2.性格、行動パターン

  3.検査データ(NH3、Hpt、Che、凝固能データ)

  4.呼吸状態

  5.排便状況(回数、性状、量)

  6.出血の有無


T-1.排便コントロール(ラクツロ-ス、坐薬、GEなどにより1回/day以上のコントロールをはかる)

  2.不穏・興奮の強い場合は、安全のため抑制を考慮し危険防止を図る(抑制の際には各勤務毎に皮膚の状態を観察する)

  3.意識レベル低下により経口摂取困難を判断した場合は経口摂取を中止する


E-1.家族に抑制の際、必要性を十分に説明する

♯2.病状の急激な進行による患者・家族の不安

  &医師、看護婦より適切な説明を受けることで、必要以上に不安を抱かず治療が受けられる

  $発症から3週間


O-1.患者、家族の言動、表情、反応

  2.疾患に関する理解の程度と受け入れ具合

  3.不安の内容


T-1.訴えには十分耳を傾け、不安が表出しやすい雰囲気づくりに努める

  2.患者、家族へのムンテラ内容の把握と統一

  3.意識レベルに関わらず処置の前には必ず声かけをする

  4.家族に対し医師より病状の説明をし、家族の理解度を看護婦は把握する


-1.意識レベルによって、患者に対し病状や処置の説明を行い協力を得る

  2.不安なことは、何でも質問するように説明する

♯3.DICの合併や凝固能の低下による出血傾向

  &出血が最小限にとどまり肝障害が進行しない

  $発症から3週間


O-1.血液デ-タ;Hb、Ht、RBC、血小板、ヘパプラスチン、ATⅢ、FDP、プロトロンビン時間

  2.口腔粘膜などからの出血の有無

  3.胃チュ-ブからの排液の性状

  4.便の性状、潜血反応

  5.腹部症状、腹部膨満の有無

  6.尿量;出血性ショック時乏尿となる

  7.末梢循環の状態

  8.各種カテ-テル挿入部、注射後の止血状態


T-1.胃粘膜保護剤、止血剤などの確実な投与

  2.輸液・輸血の管理

  3.採血後は止血を十分にする

  4.意志の疎通を図り、不安などのストレスの除去に努める


E-1.歯ブラシは軟らかい毛のものを使用、爪を短く保つ、皮膚の掻痒感がある時もむやみにかかない、外傷に十分注意するように説明する

♯4.低蛋白血症や循環不全による腎不全

  &循環血液量が維持され腎障害を起こさない

  $発症から3週間


O-1.出血の有無

  2.in take-out putのバランス

  3.感染の徴候

  4.検査データ(Cr、BUN、K、Na、Cl、CRP、ESR…)

  5.体重の推移


T-1.脱水、感染、出血などによる異常を認めた場合直ちに医師に報告する

♯5.脳浮腫、末梢循環障害、肺浮腫などによる呼吸障害

  &呼吸状態が悪化しない

  $発症から3週間


O-1.呼吸状態(呼吸数、リズム、深さ、呼吸困難)

  2.肺雑音の有無、喀痰の性状、量

  3.in take-out putのバランス

  4.意識レベル、チアノ-ゼ、四肢冷感、瞳孔、けいれんの有無の観察

  5.胸部X-P


T-1.急変に備えて気管内挿管、吸引の準備を行う

  2.呼吸困難時は安楽な体位を保ち、意識レベルが低下した場合は気道を確保する

  3.酸素吸入を行う


♯6.免疫能低下、浮腫ライン類の留置による感染

  &感染の症状や徴候を示さない

  $発症から3週間


O-1.検査デ-タ;WBC、CRP、喀痰、血液、尿培養など

  2.発熱の有無

  3.胸部X-P

  4.各種ラインの挿入部の状態

  5.皮膚、粘膜などの状態


T-1.カテーテル挿入部の清潔保持

  2.処置時の清潔操作

  3.身体の清潔保持


E-1.各種ラインの挿入による感染の危険性を説明する

♯7.血液汚染物の誤った取り扱いによる他者への感染

  &医療従事者、家族が肝炎ウイルスに対し正しい理解ができ感染への予防行動をとることができる

  $退院まで


O-1.患者・家族の肝炎ウイルスに対する理解度、日常生活行動


T-1.血液、分泌物、排泄物を取り扱う際には手袋を使用し、他者に触れることのないよう処理する

  2.その他の患者に使用した物品の取り扱いは肝炎ウイルスの感染予防マニュアルに準ずる


E-1.患者・家族に肝炎ウイルスの感染の危険性と血液、分泌物、排泄物などの汚染物の処理方法を指導する


頚椎後縦靱帯骨化症患者の標準看護計画-036

 頚椎後縦靱帯骨化症患者の看護計画

頚椎後縦靱帯骨化症とは

 脊柱管の前壁、すなわち椎体椎間板の後面をおおっている頚椎後縦靱帯が、肥厚、骨化して、脊髄を圧迫する疾患であり、原因は明らかにされていない。圧迫・変形された脊髄は乏血性、静脈うっ滞を伴い、また頚椎運動という動的因子が、神経症状の発現に重要なかかわりあいをもつ。レントゲン写真上、骨化形態は分節型、連続型、混合型に分類される。頚椎側面像前後径に対する骨化の占拠率が40%を越えると、麻痺の発生をみることが多い。また本症は、脊髄圧迫症状の原因疾患として、我が国では厚生省の特定疾患となっている。なお、胸椎・腰椎部にもみられやすく、同時に黄色靱帯骨化を合併することもある。 

アセスメントの視点

 本症は、肩凝りなどの軽度な症状から、徐々に脊髄圧迫症状が進んでいくため、経過が長く、患者の苦痛も経過とともに強くなっていく。また、壮年期以降に発症する場合が多く、運動障害により、社会活動が障害されることの精神的な苦痛が大きいと考えられる。そのため、患者の症状に対する受け入れや、今後の社会活動への思いを知りながら、精神面の援助や生活面での介助を行って行くことが大切である。 

症状

 頚椎可動性の減少、頚部痛、肩凝り、上肢のしびれ、疼痛等で始まり、徐々にあるいは外傷で急に、脊髄症状(四肢の運動・知覚障害・腱反射の異常、病的反射、直腸・膀胱障害など)を呈するようになる。 

検査

 

側面断層撮影 

MRI 

ミエログラフィー 

CTスキャン 

筋電図 

SEP 

 

治療

 1.保存的治療 

頚椎カラーの使用、クラッチフィールド法による頭蓋直達牽引等による頚部の安静 

 2.手術療法 

脊髄の除圧を目的とし、除圧範囲が2~3椎間の場合は前方進入法恐れ以上の場合は後方進入法を行う。 

前方進入法 

 椎体亜全摘+骨化部遊離+骨移植術 

後方進入法 

 広範同時椎弓切除術、脊柱管拡大術 

術前後の経過と管理

1.手術前について 

 いくつかの検査が必須であるが、その多くは苦痛を伴い、安静の制限を必要とするものもあるため、検査前からの十分な説明が必要である。また、検査中の苦痛に対する精神的援助を行い、スムーズに検査が行えるよう配慮しなければならない。 

筋電図 

 検査室にて、検査部位の筋肉に針電極を刺し、筋肉の安静時および、随意運動時の活動電位の記録・観察を行い、神経・筋系の障害の種類や、回復の過程を知るために行う。 

 検査部位に毛があるときは、剃ることもある。電気刺激により、チクチクとした痛みを伴い、検査時間も30分以上かかる。検査前後に特別な処置や制限はないが、看護婦は検査に立ち会わないため、検査前にしっかり説明しておく必要がある。 

ミエログラフィー 

 レントゲン透視室にて、クモ膜下腔に造影剤(脳・脊髄用のもの)を注入し通過状態を確認することで、脊髄腔内外の病変の診断を行う検査である。造影剤を使用するため、検査前の食事は禁止となり、検査中は点滴を留置し、検査後は食事開始時間と安静に制限がある。腰部の場合は約4時間の摂食禁止と、上半身を約30゜挙上した状態での症状安静が必要である。頚部の場合は約4時間の摂食禁止と、約4時間の、上半身を約30゜挙上した状態での症状安静が必要であり、その間の排泄は床上で行うこととなる。 

 検査中は、声かけや状況の説明を行い、患者の不安の軽減に努め、スムーズに検査が済むように介助を行うことが必要である。また、検査前より、検査後の安静の必要性や、造影剤の副作用についてよく説明を行い、安静が守られるように援助を行っていく。検査後は、造影剤の副作用の発現の有無、検査前後での症状の変化の有無の観察を行う。 

SEP(脊髄活動電位) 

 硬膜外腔に電極を挿入し、脊髄を直接電気刺激して、その中枢側脊髄で発生した電位変化を記録分析する方法である。手術侵襲の程度を決めるモニタリングとして利用される。この検査は、硬膜外への針の刺入痛と電気刺激の苦痛に加え、デッキに覆われた状態で約1時間の腹臥位を強いられるため、精神的、身体的苦痛は大きい。そのため、術前から検査状況についての説明をしっかり行わなくてはならない。 

 検査前後の処置や、制限はないが、長時間の腹臥位保持が必要であり、検査前の食事は控えた方が良いとされている。 

2.手術後について 

 頚椎の手術は、術後の回復の程度が予見しにくく、手術に伴う危険もほかの疾患に比べて高い。また、術後は頚部の固定を厳重に行った同一体位を長くとるため、苦痛が強い。これらを理解して看護にあたることが大切である。また、固定や支持の目的で、装具を装着して生活するため、これらの扱い方にも注意が必要である。 

3.装具について 

 装具の種類には主にソフトカラー、フィラデルフィア装具、アドフィット装具がある。ソフトカラーは、プラスチックをウレタンのような素材で覆ったもので、頚部を1周するようになっている。フィラデルフィア装具は、ウレタンのような素材で前面、後面に分かれており、頚部のみでなく後頭部にまで及ぶ大きさである。アドフィット装具は、プラスチックのような素材で前面、後面に分かれており、後頭部、前胸部に及ぶ大きさである。ソフトカラーは、仰臥位のままで装着が可能である。他の2つは、砂嚢の高さを、患者が側臥位をとったときに、脊椎がまっすぐになるような高さに調整し、側臥位をとらせ、後面の装具をつけ、仰臥位に戻してから、前面の装具をつける。このとき、肌で感じる装具の異和感を軽減するためと、汗の吸収の目的でガーゼハンカチを挟む。 

看護計画(術前)

Ⅰ.アセスメントの視点(術前)

 全身麻酔で手術が行われるため、全身状態の評価が必要である。高齢者も多いので、既往症や機能の低下には十分注意する。

 術後は床上安静に加えて頚椎の安静保持が必要であり、咳嗽や呼吸運動が抑制されやすい。また、このような慣れない体位での生活状況がイメージできないことが多いので、これらに対する術前練習を行い、どのような苦痛があるのか、またその対処方法を患者と共に把握する必要がある。

 入院時より、四肢の運動障害や神経症状などによるADL不足がある事が多く、転倒などの危険性もあるのでADLの介助とともに危険の防止に努める。また、術後の症状の回復に不安をもっていることがあるので、精神面にも注意する。 

Ⅱ.問題リスト(術前)

#1.疾患や手術に対する不安

   [要因]・疾患そのものへの恐れ

       ・病気の兆候

        (四肢の運動・知覚障害、腱反射の異常、病的反射、膀胱・直腸障害)

       ・手術そのものへの恐れ

       ・検査や治療に対する情報不足

       ・入院という慣れない環境

       ・社会的役割が果たせない

       ・手術後や退院後予期的不安(症状が良くなるか、再発への不安)


#2.疾患による苦痛

   [要因]・頚部痛、上肢しびれ痛

       ・症状からくる精神的苦痛


#3.四肢の運動障害、神経症状の悪化、膀胱・直腸障害

   [要因]・脊髄圧迫


#4.セルフケアの不足

   [要因]・脊髄圧迫による四肢の運動、知覚障害(歩行障害、手指巧緻運動障害)

       ・筋力の低下


#5.手術後の肺合併症

   [要因]・麻酔薬により気道や肺胞が乾燥することによる絨毛運動の低下

       ・麻酔薬や鎮静剤による胸筋、骨格の運動抑制

       ・創痛、頚部安静保持による咳嗽や呼吸運動の抑制

       ・高齢、肥満、喫煙歴、心疾患、呼吸器疾患、神経疾患の合併


#6.家族の不安

   [要因]・疾患そのものへの恐れ

       ・患者の予後や経済面への不安

       ・家庭内の役割の変化(サポートシステムの不足)

       ・患者と家族間の人間関係(コミュニケーション)

Ⅲ.看護目標(術前)

1. 疾患、手術に対する不安が軽減され、手術にむけて精神的準備ができる 

2. 苦痛の軽減を図り、体力の消耗が最小限になる 

3. 全身状態の評価により術後肺合併症を予測し手術に対する身体的準備ができる 

4. 家族の精神的慰安に努める 

Ⅳ.看護問題(術前)

#1.疾患や手術に対する不安


   [要因]・疾患そのものへの恐れ

       ・病気の兆候

        (四肢の運動・知覚障害、腱反射の異常、病的反射、膀胱・直腸障害)

       ・手術そのものへの恐れ

       ・検査や治療に対する情報不足

       ・入院という慣れない環境

       ・社会的役割が果たせない

       ・手術後や退院後予期的不安(症状が良くなるか、再発への不安)


  &診断のための検査と手術の必要性がわかり、納得できたことを言葉で表現できる

   患者が思いや不安を言葉で表現できる

   術前・術後の自分の状態がイメージでき、対処方法を言葉で表現する

  $手術前日


O-1.入院への適応状況

  2.疾患、術前検査、手術に関する患者の情報量とその理解度

  3.表情、言語、態度の表出状況と不安の程度の関係

  4.食欲、食事摂取状況

  5.身体症状の有無と程度

  6.睡眠状況

  7.サポートシステムの状況

  8.性格

  9.対処行動と対処能力


T-1.検査の必要性、方法をわかりやすく説明して協力を得る

  2.検査の結果について、医師から十分説明を受けることができるように配慮する

  3.術前オリエンテーションを不安なく受けられるように援助する

    1)術後の頚部固定の必要性を説明し、砂嚢固定下で安静を保持しながら安眠が可能か実際に行ってみる

    2)パンフレットを用い、仰臥位(砂嚢固定下)での食事、排泄、含嗽、四肢の運動方法等を指導し、練習を行う

    3)医師から指示があれば、その必要性を説明し、手術前日に後頚部の剃毛を行う

  4.家族の支援が受けられるよう必要時参加を求める

  5.不安を表出できるようにするため以下のケアをする

    1)患者や家族の訴えをよく聴き、受容的態度で接する

    2)不安が表出できるよう患者や家族との信頼関係をつくる

    3)静かで休息のとれる環境をつくる


E-1.患者が術後の状態を具体的にイメージできるように説明する

  2.砂嚢固定下での床上生活にむけての術前トレーニングの必要性を説明し理解を促す

  3.医師の説明で理解不足の内容があれば追加説明し、納得して手術が受けられるようにする

  4.不安な状態を表出してもいいことを伝え、不明なところは質問できるよう促す

#2.疾患による苦痛

   [要因]・頚部痛、上肢しびれ痛

       ・症状からくる精神的苦痛


  &身体的・精神的苦痛を最小限にとどめられる

  $手術前日


O-1.痛み、しびれ痛の部位、性質、持続時間


T-1.安楽な体位を工夫する

  2.医師の指示により鎮痛薬の使用、マッサージ、温罨法・冷罨法の使用

  3.精神的苦痛もあるため、感情の動揺や緊張を避けるように援助する


E-1.痛みが自制不可の場合、医師、看護婦に報告する

#3.四肢の運動障害、神経症状等の悪化、膀胱・直腸障害

   [要因]・脊髄圧迫


  &異常の早期発見ができ、適切な処置を受けることができる

  $手術前日


O-1.運動状態、神経症状(しびれ、知覚の有無)の観察

    排泄状況の観察(頻尿、残尿、便秘)


T-1.急激な症状悪化の場合は医師に報告


E-1.症状の悪化している場合、医師、看護婦に報告するよう説明する

#4.セルフケアの不足

   [要因]・脊髄圧迫による四肢の運動、知覚障害(歩行障害、手指巧緻運動障害)

       ・筋力の低下


  &入院生活を安全・安楽にすごすことができる

  $手術前日


O-1.食事動作、清潔行動、移動動作、排泄行動等、行動能力の程度

  2.疼痛、神経症状の程度(及び鎮痛剤の効果)


T-1.不足ADLの介助

      例 食事:スプーン・フォークの使用、配湯・下膳介助

        保清:清拭、洗髪、入浴介助、歯磨き介助

        排泄:尿器やポータブルトイレの使用

        歩行器・車椅子の使用、他科受診時担送介助

        ベッド周囲の環境整備


E-1.危険防止の必要性について患者に伝え、危険のない範囲でADLが自立して行えるように指導する

#5.手術後の肺合併症

   [要因]・麻酔薬により気道や肺胞が乾燥することによる絨毛運動の低下

       ・麻酔薬や鎮静剤による胸筋、骨格の運動抑制

       ・創痛、頚部安静保持による咳嗽や呼吸運動の抑制

       ・高齢、肥満、喫煙歴、心疾患、呼吸器疾患、神経疾患の合併


  &手術後に肺合併症の起きる可能性の高いことが理解できたと表現する

   肺合併症予防のための術前練習の必要性がわかったと表現する

   肺合併症予防のための練習が実施できる

  $手術前日


O-1.呼吸状態

  2.咳嗽、喀痰の有無と程度

  3.呼吸機能検査の結果

  4.リスクファクター(高齢、肥満、喫煙歴、喫煙量、心・神経疾患、閉塞性肺疾患の有無と程度)

  5.胸部X-Pの結果、胸郭の変形の程度

  6.動脈血ガス分析の結果

  7.手術の受け止め方


T-1.パンフレットを用い、合併症予防の練習を行う(深呼吸、含嗽、喀痰方法等)


E-1.肺合併症のための術前トレーニングの必要性を説明し、理解を促す

  2.禁煙、体重の減量、術前トレーニングの必要性を説明し、理解を促す

#6.家族の不安

   [要因]・疾患そのものへの恐れ

       ・患者の予後や経済面への不安

       ・家庭内の役割の変化(サポートシステムの不足)

       ・患者と家族間の人間関係(コミュニケーション)


  &家族ケア、家族サポートをとおして患者が支えられる

  $手術前日


O-1.家族の表情、言語による表現、態度

  2.家族と患者との人間関係

  3.家族、患者間の疾病の理解、認識の差

  4.家族間のサポートシステム

  5.家族の状況判断能力

  6.家族がとらえている患者の性格傾向

  7.経済的問題の存在


T-1.家族とのコミュニケーションをとり、不安や心配事を表出しやすいように受容的態度でかかわる

  2.家族の考えと医療者の考えの違いがないか、また患者の考えを尊重してかかわる方法について相談し検討する

  3.家族内で起きている問題の対処ができているか、解決困難な時は相談にのる


E-1.家族が患者の今後についてイメージできるように、術後の状況、入院期間、社会復帰の時期等についての知識を与える

  2.家族に患者のサポートの必要性を説明する

看護計画(術後)

Ⅰ.アセスメントの視点(術後)

 頚椎の手術後は、頭頚部の固定により同一体位の保持が必要であり、一般の全身麻酔後の侵襲に加え、それに対する二次障害の予防と早期発見が必要である。

 また、リハビリテーション時期においても頚椎の固定を保持しながら離床、ADLの拡大に対する援助が必要である。 

Ⅱ.問題リスト(術後)

#1.肺合併症

   [要因]・気管内挿管や麻酔剤による分泌物の増加

       ・疼痛や不安による呼吸抑制

       ・頚椎の固定、咽頭の浮腫による分泌物の貯留


#2.腸蠕動の低下

   [要因]・全身麻酔による影響

       ・術中体位(腹臥位)

       ・仰臥位安静保持


#3.術後出血、リコールの流出


#4.創、採骨部の疼痛


#5.症状の悪化に伴う苦痛

   [要因]・一過性の神経症状の悪化

       ・膀胱直腸障害


#6.頭頚部の固定、同一体位による苦痛


#7.セルフケアの不足

   [要因]・疼痛

       ・頭頚部の固定

       ・四肢の運動知覚障害


#8.精神的活動の低下

   [要因]・同一体位の保持

       ・高齢者が多い


#9.床上安静による筋力の低下、関節の拘縮


#10.リハビリテーション期における危険


#11.退院時指導の必要性

Ⅲ.看護目標(術後)

1. 手術後の苦痛の緩和を図り、頚椎の安静保持ができる 

2. 術後の合併症を防止し、四肢の知覚・運動状態の変化に対応する 

3. 頚部の安静を保持しながらもADLが充足できる 

4. 安全にリハビリテーションがすすめられる 


経カテーテル肝動脈塞栓療法を受ける患者の標準看護計画-035

 経カテーテル肝動脈塞栓療法を受ける患者の標準看護計画(TAE)

肝動脈塞栓療法(TAE)とは

 肝臓は、肝動脈と門脈の2系統の流入血管をもち、両者から酸素や栄養の供給を受けている。しかし、肝癌は肝動脈のみから栄養を受け、門脈からは栄養を受けていない。TAEとは、この血流支配の特性を利用し、大腿動脈よりカテーテルを、通常の血管造影と同様に腹腔動脈を経て肝動脈に選択的に挿入し、そこから油性造影剤(リピオドール)と抗癌剤(エピアドリアマイシン等)と塞栓物質(ゼルフォーム)を混和したものを注入し、肝動脈を閉塞することにより、選択的に肝細胞癌を壊死に導く治療法であり約70%に効果を認めており、肝切除と並び肝細胞癌の双璧をなしている。 

適応

高度の肝障害のない例(チャイルド分類A・B) 

腎不全、心不全等全身の合併症が併存しない場合 

門脈内にまで腫瘍塞栓がみられない場合 

検査によるおもな合併症と症状

 1.動脈穿刺、動脈造影に伴う合併症 

 2.動脈を塞栓することによる副作用、合併症 

腹痛、発熱、悪心・嘔吐、呼吸困難 (肝動脈塞栓、肝癌壊死による) 

急性胆嚢炎、膵炎、胆嚢・脾・小腸梗塞、麻痺性イレウス、肝膿瘍、胃・十二指腸潰瘍による消化管出血等、肝不全、ショック 

 3.抗癌剤による副作用 

胃腸障害、腎障害、骨髄抑制による易感染性、体力の低下 

看護計画

Ⅰ.アセスメントの視点

 TAEそのものによる副作用、抗癌剤による副作用の出現を抑えることはできないが腫瘍の大きさ、肝予備能、治療の種類と程度を充分把握したうえで、どの程度の副作用が出現するかを予測して看護を行うことが重要である。

 肝臓癌はTAEで根治する症例は非常に少なく、再発率は極めて高く再治療する症例も多い。こういう点からも患者のQOLの向上を最優先とし、家族並びに社会背景を理解し、患者が最も不安な点や苦痛に感じる点を可能な限り解決できるように援助していくことが大切である。 

Ⅱ.問題リスト

#1.動脈穿刺、動脈造影検査に伴う合併症


#2.発熱

   [要因]・腫瘍の変性、壊死による生体の反応

       ・抗癌剤の骨髄機能抑制作用によりおこる感染


#3.疼痛(腹痛)

   [要因]・腫瘍壊死による心窩部痛、背部痛

       ・肝動脈以外の臓器の血管に塞栓物質が流入し、塞栓された場合

        (胆嚢炎、膵炎、麻痺性イレウス、肝膿瘍などがおこる)


#4.悪心・嘔吐

   [要因]・腫瘍壊死による

       ・抗癌剤の中枢神経への作用

       ・不安など心因性


#5.呼吸困難

   [要因]・抗癌剤(エピアドリアマシン)の繰り返し投与による心毒性

       ・リピオドールの関与したアレルギー機序による


#6.消化管出血

   [要因]・骨髄機能抑制(白血球、血小板減少)による出血

       ・塞栓物質が肝動脈以外の血管に流入した為


#7.肝機能障害、肝不全、腎不全

   [要因]・抗癌剤の量依存性の肝障害作用による肝機能低下、腎機能低下

Ⅲ.看護目標

1. 検査、治療の目的・方法・副作用等について理解され、精神的に安定した状態で検査治療を受けることができる 

2. 全身状態の評価から治療後の合併症を予測し、治療に対する身体的準備ができる 

3. 治療による副作用に早く対処し精神的、身体的苦痛の軽減ができる 

Ⅳ.看護問題

#1.動脈穿刺、動脈造影検査に伴う合併症

#2.発熱

   [要因]・腫瘍の変性、壊死による生体の反応

       ・抗癌剤の骨髄機能抑制作用によりおこる感染


  &体温が37℃前後に解熱、回復してきたことを自覚できる

   穏やかなくつろいだ表情と態度を示す

  $治療後1~7日前後まで


O-1.バイタルサイン、熱型

  2.血液検査データ(WBC、CRP)

  3.随伴症状(悪寒、戦慄、頻脈、発汗、体熱感、疼痛、尿量減少)の把握

  4.治療内容の程度と行われている処置(解熱剤、抗生物質、鎮痛剤等)の効果


T-1.発熱に伴う悪寒の軽減(保温の為の湯タンポ、毛布の用意)

  2.安静を維持し、体熱感時冷罨法

  3.皮膚の清潔保持、寝衣やリネン交換

  4.指示された薬(解熱剤、抗生物質、鎮痛剤、輸液等)の投与


E-1.治療後、患者に治療により発熱が起こることを説明し励ます

  2.安静の必要性を説明し、処置により状態の改善がみられることを説明する

  3.急激な発熱や悪寒時は、医師または看護婦に知らせるように指導する

  4.白血球減少時は、含嗽、マスクの着用を指導

  5.必要に応じて面会人の制限をする

#3.疼痛(腹痛)

   [要因]・腫瘍壊死による心窩部痛、背部痛

       ・肝動脈以外の臓器の血管に塞栓物質が流入し、塞栓された場合

        (胆嚢炎、膵炎、麻痺性イレウス、肝膿瘍などがおこる)


  &疼痛が緩和したことを言葉で表す

   穏やかな表情、リラックスした体位になる

   活動範囲が広がる

  $治療中~治療後1~2日まで


O-1.疼痛に対する患者の訴えや表情、動作、バイタルサインチェック

  2.疼痛の性質、部位、程度、持続時間

  3.塞栓部位、使用した抗癌剤、塞栓物の量の把握

  4.随伴症状(悪心・嘔吐)の有無と程度

  5.鎮痛剤が使用されている時はその効果


T-1.医師より指示されている鎮痛剤を効果的に使用する

  2.安静を維持し、可能な範囲で安楽な体位を工夫する

  3.痛みが自制不可の場合は、医師に報告し、鎮痛薬の指示を受ける

  4.合併症の早期発見につとめ、異常時は速やかに医師に報告し、指示に従う

  5.指示により絶飲食とする

  6.精神的安定への援助

    1)痛み、不安等の感情の表出を促す

    2)痛みに対する理解を示し、支持・激励的態度で接する


E-1.治療による痛みであることを説明し、痛みが増強する場合は医師または看護婦にすぐ知らせるように指導する

  2.安楽な体位のとり方について指導する

#4.悪心・嘔吐

   [要因]・腫瘍壊死による

       ・抗癌剤による胃腸障害

       ・不安など心因性


  &悪心、嘔吐が軽減し、経口摂取ができる

   穏やかなくつろいだ表情と態度をしめす

  $治療中~治療後1~3日まで


O-1.患者の訴えや表情、動作、バイタルサインチェック

  2.嘔吐がある場合は吐物の量・性状・回数等と1日水分摂取量、尿量チェック

  3.随伴症状(疼痛、腹部膨満感、気分不快)の有無と程度

  4.制吐剤が使用されている場合はその効果

  5.使用した抗癌剤、塞栓物の量の把握


T-1.胃部に冷罨を試みる

  2.安静を維持し、可能な範囲で安楽な体位を工夫する

  3.悪心・嘔吐が続く場合は、医師に報告し点滴輸液や制吐剤の指示をうける

  4.氷水の含嗽などにより口腔内の清潔をはかる

  5.疼痛、悪心・嘔吐が発症した場合は、絶食にして経過観察をする

  6.精神的安定への援助

    1)悪心や嘔吐による不安や苦痛を表出できるような雰囲気をつくる

    2)悪心・嘔吐に対する理解を示し、支持・激励的態度で接する


E-1.悪心・嘔吐は治療により起こるが、軽減することを十分患者に説明する

  2.安楽な体位のとり方について指導する

  3.食事は量的にも負担が無く消化吸収のよいものを摂取するように指導する

  4.苦痛や不安があるときは我慢せずに医師や看護婦に知らせるように指導する

#5.呼吸困難

   [要因]・抗癌剤(エピアドリアマイシン)の繰り返し投与による心毒性

       ・リピオドールの関与したアレルギー機序による


  &異常の早期発見ができ、適切な処置を受けることができる

   肺炎、心不全などの合併症がおきない

  $治療中~治療後1~2日


O-1.患者の訴えや表情、動作、バイタルサインチェック

  2.随伴症状(発熱、咳嗽、動悸、浮腫、労作性呼吸困難)の有無と程度

  3.使用した抗癌剤、塞栓物の量の把握


T-1.安楽な体位を工夫し、呼吸困難の緩和をはかる

  2.指示された酸素投与が確実に実施できるように配慮する

  3.急性増悪に備え、挿管、気管内吸引、人工呼吸器等の緊急体制を整えておく


E-1.異常を感じたらすぐに医師や看護婦に知らせるように説明する

#6.消化管出血

   [要因]・骨髄機能抑制(白血球・血小板減少)による出血

       ・塞栓物質が肝動脈以外の血管に流入した為


  &消化管からの出血の異常の早期発見ができる

  $治療後~3週間


O-1.患者の訴えや動作、バイタルサインチェック(血圧低下、頻脈、呼吸促拍)

  2.吐血、下血、貧血症状の有無と程度

  3.血液データ(ヘモグロビン、ヘマトクリット、プロトロンビン時間、WBC、RBC、血小板、電解質、肝機能)と全身状態の観察


T-1.徴候や症状をアセスメントし、異常時は速やかに医師に報告する

  2.安静を保持する

  3.嘔吐後冷水で含嗽させ、嘔気を誘発させない

  4.出血部位により適切な処置を行う

  5.体位変換、便器介助時は腹圧をかけないようにおこなう

  6.輸液、輸血の管理

  7.清潔面への援助を行う

  8.緊張感や恐怖を持たせないように、落ち着いた態度で接する


E-1.安静の必要性を説明し、処置により症状の改善が見られることを説明する

  2.吐血、下血、その他異常時は、医師または看護婦に報告するように説明する

#7.肝機能障害、肝不全、腎不全

   [要因]・抗癌剤の量依存性の肝障害作用による肝機能低下、腎機能低下


  &全身状態の観察を適確に行い、早期に治療が開始できる

   十分な肝機能、腎機能を維持する

  $治療後~3週間


O-1.バイタルサインチェック

  2.食事摂取量、水分出納、尿量、比重、体重チェック

  3.自覚症状(食欲不振、全身倦怠感、腹部膨満、疼痛、発熱、悪心・嘔吐、尿量減少、呼吸困難、貧血など)の観察

  4.他覚症状(浮腫、出血傾向、黄疸、腹水、消化管出血、脱水、脂肪便、脳症など)

  5.血液データ(WBC、血小板、BUN、K、クレアチニン、ICG15分値、ビリルビン、GOT、GPT、AIP、PT、アルブミン、コレステロール)

  6.薬剤の種類・量・投与期間、年齢、肝硬変の重症度


T-1.徴候や症状を観察、アセスメントし、異常時は速やかに医師に報告する

  2.安静を維持し、安楽な体位をとらせる

  3.感染防止のための皮膚の清潔保持

  4.出血傾向に注意し、採血後、点滴後の止血を確認

  5.水分出納、電解質バランス、食事、注射・輸液療法の管理を行う

  6.処置時、検査時は医師からの説明内容の理解度を確認し、再度補足を行う

  7.家族を含めた精神面への援助を行う


E-1.患者の不安を軽減するために状況を理解できるように説明する

  2.治療計画の意義を理解させ、安静、保温、食事、薬物療法に関する具体的な指導を行う


胸部大動脈瘤患者の標準看護計画-034

胸部大動脈瘤患者の看護計画

胸部大動脈瘤とは

 大動脈瘤は大きく真性大動脈瘤と解離性大動脈瘤に分けられる。動脈瘤という場合には通常真性動脈瘤を指す。 

  

 ◆ 真性大動脈瘤 

 壁の脆弱化のため動脈が異常に伸展し、限局的に本来の太さより拡張した状態で、動脈壁の全層、特に中膜、外膜がそのままの状態で拡張する型のものである。 

 形態的には、紡錘状動脈瘤と嚢状動脈瘤とに分けられる。紡錘状動脈瘤は動脈壁の脆弱化がやや広い範囲にわたるために生ずるもので、動脈硬化や動脈炎などによるものが多い。これに対し嚢状動脈瘤は、中膜の傷害が限局している場合で、動脈硬化のほかに外傷によるものがこの型をとりやすい。形は球状、楕円状など様々で、本来の動脈に対してポケット様の外観を呈する。多くの場合内膜の損傷が強く、血栓や粥腫を伴っている。原因としては、かつては梅毒によるものが多かったが、現在では各種動脈炎や動脈硬化に基づくものが増加している。梅毒性のものは上行大動脈起始部から大動脈弓部にかけて好発する。動脈硬化性のものは大動脈弓部の比較的末梢の部分及び左鎖骨下動脈分岐部以下に始まることが多く横隔膜下に及ぶものもある。男子には女子の2~3倍多く、年齢的には50~70才に多い。 

 ◆ 解離性大動脈瘤 

 大動脈中膜の変性・嚢包中膜壊死のため、中膜が内外2層に解離し、その間(偽腔)に血腫を形成するものである。病因として、高血圧、動脈硬化、マルファン症候群、妊娠、外傷、梅毒などがある。好発部位は、上行大動脈弁上部及び左鎖骨下動脈起始部末梢の下行大動脈に多い。男子には女子の2~3倍多く、年齢的には60~70才に多い。 

De Bakeyの分類(亀裂の位置と解離の範囲で分類)

Ⅰ型 上行大動脈より始まり、弓部、下行大動脈、さらに腹部大動脈へと広い範囲にわたって解離を起こすもの

Ⅱ型 解離部位が上行大動脈または弓部にとどまっているもの

Ⅲa型 解離部位が下行大動脈以下で、左鎖骨下動脈分岐部直下より発生し、胸部大動脈にとどまっているもの

Ⅲb型 解離部位が下行大動脈以下で、左鎖骨下動脈分岐部直下より発生し、腹部大動脈へと広い範囲にわたって解離を起こすもの

 全体ではⅠ型が多く、マルファン症候群ではⅡ型、高齢者ではⅢ型が多い。 

 解離性大動脈瘤の進展した末梢の内膜にさらに亀裂が生じて大動脈本来の内腔と交通ができると二連銃型を呈し解離の進行は停止する。 

 ※仮性動脈瘤 

 動脈壁が破れて血管外に血液が流出し、血管周囲に血腫を形成したもので、瘤の壁は本来の動脈壁ではなく、凝血と周囲に増生、癒着した結合組織とで構成されている。 

アセスメントの視点

 胸部大動脈瘤は、いったん発症すれば入院、手術といった経過を余儀なくされる。特に解離性大動脈瘤においては突然に発症する重篤な疾患であり、患者の不安、恐怖は避けられず疼痛とともに病態の悪化を招くこともある。循環動態の維持や安静の保持、疼痛のコントロ-ルばかりでなく、効果的な精神的援助による不安、恐怖の除去も重要である。 

症状

 胸部大動脈瘤:はじめは無症状のことが多い

1.圧迫症状 胸痛・背部痛、呼吸困難・喘鳴・咳、嚥下傷害、頸動脈怒張、嗄声、

Horner症候群、上大静脈症候群、前胸部拍動性腫瘤

2.癒着症状 Oliver-Cardarelli症候群

→大動脈瘤の気管(支)への癒着によって、心拍動に一致して喉頭が上下する

 解離性大動脈瘤:大動脈分岐動脈の閉塞(圧迫)症状と破裂症状などが重なり、多彩な症状を呈する

1.解離による症状 突発する胸部・背部の激痛(発症時が最強)

進行に伴って頸部、頭部、腹部、腰部、下肢へと移動する

2.閉塞症状 頸動脈圧迫‥‥‥頭痛、めまい、失神(意識障害)、痙攣

鎖骨下動脈圧迫‥血圧の左右差、脈拍減弱、上肢麻痺

冠動脈閉塞‥‥‥心筋梗塞(冠動脈入口部の閉塞による)

腎動脈圧迫‥‥‥急性腎不全、腎血管性高血圧

肋間動脈閉塞‥‥対麻痺

腹腔動脈閉塞‥‥腸麻痺、肝不全


 ※慢性型では末梢側で再交通をみることがあり、治癒と思われる状態になる

3.破裂症状 心タンポナ-デ(心膜腔内出血)

大動脈弁閉鎖不全(AR)(解離が大動脈弁に達する)→左心不全

呼吸困難、血痰


※心タンポナ-デ、AR、AMI は、DeBakeyⅠ・Ⅱ型でみられやすい

検査

 

X線写真 

超音波検査、カラ-ドプラ- 

CT 

MRI 

大動脈造影 

DSA 

血液一般検査 

治療

 胸部大動脈瘤:手術が原則であり、薬物療法は補助的な役目を果たす 

 1.手術療法 

瘤の発生した部位により術式は異なり、また、各部位に対応した人工心肺などによる補助手段が必要である 

人工血管置換術、パッチ縫合術など 

 2.降圧薬療法 

 解離性大動脈瘤:まず、疼痛の除去と収縮期血圧を100~120mmHgまで下降させる 

 1.鎮痛 

モルフィンなどの鎮痛剤投与 

 2.降圧薬療法 

 3.手術療法 

De BakeyⅠ・Ⅱ型は、早期死亡率が高く手術を考え、Ⅲ型は破裂していなければ降圧療法を行い、慢性期に外科治療を考慮する 

瘤の発生した部位により術式は異なり、また、各部位に対応した人工心肺などによる補助手段が必要である 

病変部を切除術+解離腔を含め拡大した大動脈の人工血管置換術 

心嚢ドレナ-ジ 

解離腔末梢と大動脈内腔を交通させ、減圧する 

術後の経過と管理

 1.血行動態の管理 

 1)血圧 

適正血圧を維持し、グラフトの血流を良好に保つ必要がある。高血圧は人工血管吻合部からの出血、低血圧は人工血管内血栓形成の恐れがある。術後は一般に末梢血管は収縮しているので、保温を行い、末梢血管の拡張につとめる。 

 2)不整脈 

手術後は、手術中の心筋損傷、体外循環後の電解質異常、代謝性アシド-シスなどの影響で不整脈が発生しやすい。術後は心電図モニタ-の監視により不整脈を見逃さず、除細動器、抗不整脈剤など必要な準備を怠らないようにする。 

 3)循環血液量 

CVPは5~10㎝H2Oが正常値であり、これより低いと循環血液量不足により血圧が下降し末梢血管の収縮をきたす。また高いと、心不全をきたす。よって循環動態のモニタリングが必要である。 

 4)脳血流障害 

総頚動脈の遮断時間が長引いた時、血栓形成によって脳への酸素供給不足や脳塞栓の偶発がおこる場合がある。術後意識レベル、神経学的異常がないか観察が必要である。 

 5)末梢循環障害 

大動脈瘤壁内にみられる粥状硬化斑または血栓の細片が、手術操作により末梢動脈に流出し、遮断解除とともに末梢動脈塞栓症をきたすことがあるので、動脈の触知、チアノ-ゼ、温感、知覚の有無の観察を行い、たんなる末梢循環不全か塞栓かを区別する。 

 6)腎血流障害 

大動脈瘤手術後は、とくに急性腎不全がおこりやすい。その原因としては、術中の出血性ショック、体外循環あるいは一時的バイパスの不備、大動脈遮断の影響、全身麻酔剤の影響などがあげられる。したがって、術中・術後をとおして、腎血行動態の安定を維持していく必要がある。水分出納の管理、血清カリウム・BUN・Cr値、全身の浮腫の有無を把握しておく。 

 2.後出血とドレ-ンの管理 

 後出血により、全身虚血をきたすためドレ-ン出血量、性状、貧血(Hb、RBC、Plt)の観察を行なう。またドレ-ン内に凝血による閉塞が疑われる場合にはミルキングをおこなう。 

 3.呼吸の管理 

 適正換気を維持し、低酸素を予防するため、胸部大動脈瘤の場合は、術後しばらくの間レスピレ-タ-による呼吸管理を行なう。手術直後は麻酔剤の影響、体外循環、創痛などにより、換気障害が発生しやすい。年齢・喫煙歴等考慮し、術前から排痰・深呼吸などの呼吸訓練をおこなう。 

 4.疼痛の緩和 

 胸部大動脈瘤の術式で胸骨正中切開+左前側方回開胸を行なうため手術浸襲が非常におおきい。そのため創痛による苦痛がつよく、不安、不眠をきたす。また肺拡張が得られにくく、肺合併症をおこしやすいため疼痛コントロ-ルが必要である。 

 5.感染の予防 

 手術浸襲により術後は感染しやすい状態となる。しかも人工血管への感染は致命的となるため創部・全身のドレ-ン類の管理、熱型、血液デ-タの把握を怠らないようにする。 

 6.精神的サポ-ト 

 胸部大動脈瘤の患者の不安は安静臥床を強いられることの不安、手術そのものへの不安、手術後や退院後の予期的不安がある。不安の内容や程度表出の仕方など個人によって異なるが、精神的・身体的・社会的側面から統合した情報で、患者各人の訴えを判断することが大切である。手術のみならず、手術後のセルフケアに対してしっかりとしたサポ-トシステムを作っておく必要がある。 

術後合併症

 1.術後出血 

人工心肺使用による血小板機能低下と凝固因子の破壊及び減少などにより出血しやすい状態である。通常、術後は胸腔内にドレ-ンが挿入されており、ドレ-ンからの出血量、排液の性状がインフォメ-ションとなる。 

 2.肺合併症 

人工心肺による体外循環法を行なう、術後24~48時間人工呼吸器による呼吸管理が行なわれるため絶対安静を強いられるなどの要因に加え、螺旋状皮膚切開に伴う創痛、ドレ-ン刺入部痛が強く、挿管チュ-ブ抜去後、痰の喀出が十分に行なわれず無気肺、肺炎、肺水腫などの肺合併症に陥りやすい。稀に、手術操作により反回神経麻痺となり、そのために、誤嚥性肺炎が生じる可能性がある。 

 3.不整脈 

心拍出量や循環血液量の減少に伴う心筋虚血、低酸素状態、電解質異常などにより種々の不整脈が発生しやすい。心電図モニタ-、12誘導での心電図によって不整脈の種類、その重症度が診断される。 

 4.急性腎不全 

人工心肺使用による腎尿細管内への溶血した赤血球の付着、循環血液量の減少、大動脈遮断による腎血流量の低下などの原因により生じる。尿量、採血デ-タ、尿生化などにより診断される。 

 5.感染 

長時間の体外循環による免疫機能の低下、手術侵襲により術後は何らかの感染をしやすい状態にある。感染源としては、血管留置カテ-テル、動脈圧ライン、各種ドレ-ン、尿道カテ-テル、切開創などがある。診断は熱型、採血デ-タ、各種培養結果、創の癒合状態などによってなされる。人工血管への感染は致命的である。 

 6.脊髄損傷 

手術操作に伴う肋間動脈、腰動脈の結紮や血栓、塞栓のため出現する危険がある。知覚異常、運動障害などにより気付かれる。 

 7.脳血管障害 

手術操作による大動脈瘤内血栓の脳動脈への流出及び低血圧による人工血管内血栓形成、体外循環中の空気の混入、脳血流の低下などが原因となる。麻酔からの覚醒遅延、異常反射、痙攣などで気付かれる。 

 8.末梢血管の血栓・塞栓 

手術操作による大動脈瘤内血栓の末梢動脈への流出及び低血圧による人工血管内血栓形成などが原因となる。末梢動脈の拍動異常、末梢皮膚色・皮膚温、知覚異常などで気付かれる。 

胸部大動脈瘤患者の標準看護計画(術前)

Ⅰ.アセスメントの視点

  看護基準に同じ 

Ⅱ.問題リスト(術前)

#1.疾患や手術に対する不安

   [要因]・疾患そのものへの不安

       ・病気の徴候(圧迫症状、閉塞症状、解離による激痛、破裂症状)

       ・手術そのものへの不安

       ・検査や治療に対する情報不足

       ・入院という慣れない環境

       ・社会的役割が果たせない

       ・手術後退院後予期的不安


#2.疾患に対する認知の欠如

   [要因]・無症状

       ・高齢


#3.疾患による苦痛

   [要因]・圧迫症状

       ・閉塞症状

       ・解離による激痛

       ・破裂症状


#4.動脈瘤破裂による生命の危険

   [要因]・動脈瘤の破裂による出血性ショック

       ・心タンポナ-デ


#5.安静保持によるストレス

   [要因]・同一体位の保持

       ・体動制限


#6.手術後の肺合併症

   [要因]・人工呼吸器による呼吸管理

       ・開胸による手術操作

       ・気管内挿管や麻酔剤による分泌物の増加

       ・創痛や不安による呼吸抑制

       ・不十分な咳嗽力による分泌物の貯留

       ・麻酔による呼吸中枢の抑制と筋弛緩剤による呼吸筋の弛緩

       ・高齢、肥満、喫煙歴、心疾患、呼吸器疾患、神経疾患の合併


#7.家族の不安

   [要因]・疾患そのものへのおそれ

       ・患者の予後や経済面への不安

       ・家庭内の役割の変化(サポ-トシステムの不足)

       ・患者と患者間の人間関係(コミュニケ-ション)

Ⅲ.看護目標(術前)

1. 疾患、手術に対する不安が軽減され手術に向けて精神的準備ができる 

2. 胸背部痛などの苦痛の軽減を計り、体力の消耗が最小限になる 

3. ストレスなく安静保持ができ動脈瘤破裂を防止できる 

4. 動脈瘤破裂助長因子である高血圧に対する血圧コントロ-ルが十分できる 

5. 全身状態の評価により術後合併症を予測し手術に対する身体的準備ができる 

6. 家族の精神的慰安に努める 

Ⅳ.看護問題(術前)

#1.疾患や手術に対する不安


  &診断のための検査と手術の必要性がわかり納得できたことを言葉で表現する

   患者の思いや不安を言葉で表現できる

   術前・術後の自分の状態がイメ-ジでき、対処方法を言葉で表現する

  $手術前日


O-1.入院への適応状況

  2.疾病、術前検査、手術に関する患者の情報量とその理解度

  3.表情、言語、態度の表出状況と不安の程度の関係

  4.食欲、食事摂取状況

  5.身体症状の有無と程度

  6.睡眠状況

  7.サポ-トシステムの状況

  8.性格

  9.対処行動と対処能力


T-1・検査の必要性、方法をわかりやすく説明して協力を得る

  2.検査の結果について、医師から十分説明を受けることができるように配慮する

  3.術前オリエンテ-ションを不安なく受けられるように援助する

  4.家族の支援が得られる様必要時参加を求める

  5.不安を表出できる様にするため以下のケアをする

    1)患者や家族の訴えをよく聴き、受容的態度で接する

    2)不安が表出できる様患者や家族との信頼関係をつくる

    3)疾患に対する不安は医師から十分説明が受けられるようにする

    4)静かで休息のとれる環境をつくる


E-1.患者が術後の状態を具体的にイメ-ジできるように説明する。特にドレ-ンやチュ-ブ類が挿入されるため、その重要性を認識できるように、働きかける

  2.医師の説明で理解不足の内容があれば追加説明し、納得して手術が受けられるようにする

  3.不安な状態を表出してもいいことを伝え、不明なところは質問できるよう促す

#2.疾患に対する認識の欠如

  &現状を維持し、動脈瘤が破裂することなく手術を受けられる

  $手術前日


T-1.動脈瘤の原因、状態により生活調整

  2.感情の激動を避ける

  3.運動の制限;安静

  4.環境の急激な温度差を避ける

  5.食事(塩分制限、エネルギ-の制限、動物性脂肪の制限)

  6.排便コントロ-ル(下剤服用、摘便、腹部温あん法、適度な水分摂取)

    浣腸は負荷となるため基本的に禁止

  7.高齢者に対しては安全面に留意


E-1.適切な健康管理の理解に向けて動脈瘤の基本的な情報を説明する

#3.疾患による苦痛

    &瘤による圧迫、閉塞症状や解離に伴う激痛が軽減し不安が消失する

    $手術前日


O-1.疼痛の部位、程度、持続時間の観察

    1)前胸部、胸骨下部の激痛

    2)背部痛

    3)背部に放散または腹部、下肢、頚部、頭部と広範囲に痛みの放散がないか

  2.バイタルサイン(特に血圧の変動に注意する)

  3.ECG(異常がないことが多い 心筋梗塞と区別)

  4.検査デ-タの把握(CPK、LDH、GOT、GPT、電解質、ESR)

  5.心エコ-、胸部X-P、胸部CT

  6.鎮痛剤使用時の効果と副作用の出現

  7.圧迫症状の観察(咳嗽、嚥下困難、嗄声、上大静脈症候群など)


T-1.激痛に対しては鎮痛剤を使用する

  2.衣類等圧迫の原因となっているものは除き安楽な体位の工夫を行なう

  3.声かけをしながら処置を行い不安を緩和する

  4.体動によるベットからの転落に注意する

  5.尖足予防、褥創予防のための体位変換

  6.救急蘇生セットの整備を行い緊急時に備える

  7.外科的治療を施行する場合は準備を迅速に行い移送する


E-1.疼痛の部位、程度の変化がある場合は伝えるように説明する

#4.動脈瘤破裂による生命の危険

  &破裂の徴候を知り異常時早期対応が行なえる

   破裂助長因子を除去、軽減する

  $手術前日


O-1.痛みの観察

    1)部位、時間、強さの程度

    2)背部への放散痛

  2.破裂時の症状を知り状態観察

    1)出血性ショック

    2)心嚢内出血によるタンポナ-デ(血圧低下、顔面蒼白、チアノ-ゼ、脈圧が弱い、呼吸困難、心音低下、不安感)

  3.血圧の変動観察

  4.降圧剤の確実な与薬(持続点滴ラインの管理、確実な内服)


T-1.強い痛みに関しては指示の鎮痛剤使用

  2.精神安定を図るため薬剤の与薬

#5.安静保持によるストレス

  &ストレスなく安静保持ができ動脈瘤破裂を防止できる

  $手術前日


T-1.面会の制限を行い、外界からの刺激を避ける

  2.安静保持によるストレスを表出できるよう訴えの傾聴をする

  3.腰背部痛予防として体位変換やエア-マットの使用を考慮する


E-1.安静の必要性を説明する

  2.適切な体位を説明し瘤への負荷を避ける

#6.手術後の肺合併症

  &手術後に肺合併症の起きる可能性の高いことが理解できたと表現する

   肺合併症予防のための術前練習の必要性がわかったと表現する

   肺合併症予防のための練習が実施できる

   術前トレ-ニングにより肺機能が改善する

  $手術前日


O-1.呼吸状態

  2.咳嗽、喀痰の有無と程度

  3.呼吸機能検査の結果

  4.リスクファクタ-(高齢、肥満、喫煙歴、心・神経疾患、閉塞性肺疾患の有無と程度)

  5.胸部X-Pの結果、胸郭の変形の程度

  6.動脈血ガス分析の結果

  7.手術の受けとめ方


T-1.パンフレットを用い合併症予防の練習を行なう(深呼吸、含嗽、痰の出し方等)

  2.トリフロ-による呼吸練習の紹介(瘤への負荷がかかる為実際には行なわない)


E-1.肺合併症のための術前練習の良否が術後の経過を左右することを説明し理解を促す

  2.禁煙、体重の減量、術前トレ-ニングの必要性を説明し、理解を促す

#7.家族の不安

  &家族ケア、家族サポ-トをとおして患者が支えられる

  $手術前日


O-1.家族の表情、言語による表現、態度

  2.家族と患者との人間関係

  3.家族、患者間の疾病の理解、認識の差

  4.家族間のサポ-トシステム

  5.家族の状況判断能力

  6.家族がとらえている患者の性格傾向、コ-ピング

  7.経済的問題の存在


T-1.家族とコミュニケ-ションをとり、不安や心配事を表出しやすいように受容的態度でかかわる

  2.家族の考えと医療者の考え違いがないか、また患者の考えを尊重してかかわる方法について相談し検討する

  3.家庭内で起きている問題の対処ができているか、解決困難なときは相談にのる


E-1.家族が患者の今後についてイメ-ジできるように、術後の状況、入院期間、社会復帰の時期等についての知識を与える

  2.家族に患者のサポ-トの必要性を説明する


狭心症患者の標準看護計画-033

 狭心症患者の標準看護計画

狭心症とは

 冠状動脈硬化を基礎に発症する病態で、心筋梗塞と共に虚血性心疾患に分類され、胸痛を主症状とする症候群である。冠状動脈硬化があると動脈の狭窄が起こり、労作時に高まった心筋の酸素消費をまかなうのに必要な酸素を含んだ動脈血が十分に流れない状態になる。その結果、心筋は虚血をきたし痛みが出現する。狭心症の発作は心筋虚血の持続時間が心筋壊死を生じない程度の長さであり、心筋梗塞とは異なり虚血の原因がなくなれば速やかに平常に回復する。 

アセスメントの視点

 狭心症は冠状動脈の硬化性狭窄や、一過性の攣縮によって一時的に血流が阻害され心筋の虚血状態をきたすが虚血の原因がなくなれば正常に戻るものである。しかし、この狭心発作を繰り返し起こしたり、症状が悪化すると心筋梗塞への移行も予測される。したがって緊急時の対処や予測される病態と状態の変化を常に念頭において観察する必要がある。

 厚生省「人口動態統計」によれば、心疾患は現在日本の死因の2位となったが今後罹患率は確実に増加することが予想される。その背景には食生活の変化と喫煙人口の増加が考えられる。また虚血性心疾患に罹患しやすいパーソナリティ特性として、タイプA型行動パターンがあげられている。タイプAとは、目的に向かって常に情熱的に自己を駆り立て、仕事や余暇においても常に先を争い時間に追われるタイプをさし、タイプAはタイプBに比べ、虚血性心疾患の発症は2倍以上との報告がある。つまり虚血性心疾患に罹患しないライフスタイルとは、タイプAの行動パターンを避ければよいことになる。またリスクファクター(肥満・高血圧・喫煙・高脂血症・糖尿病)を減らすことが、虚血性心疾患の発生予防の一つの方法と考えられ、発症後の生活指導のためにもこれらの因子を把握しておくことが重要である。患者は入院により日常生活を中断され胸痛や不安に悩まされ、安静を保つことの苦痛や、制限された将来の生活を考えたりして不安な生活にある。こうした状態は治療過程に影響を与えることが考えられるため、個々の状態の時期を確認しながら対応しなければならない。 

分類

1.誘因による分類


   労作性狭心症

     労作と関係して発作が起こる場合。

   安静時狭心症

     安静時や睡眠中に発作が起こる場合。

   労作兼安静狭心症(混合型)

     労作時および安静時のいずれも発作が起こる場合。


2.経過による分類


   安定狭心症

     症状および経過の比較的安定しているもの。

   不安定狭心症

     胸痛の頻度が増え、痛みの持続時間が長くなり程度が増悪していくもの。心筋梗塞に移行しやすい。


3.発生機序による分類


   器質性狭心症

     病理学的に冠状動脈に広範かつ高度な動脈硬化性の器質的狭窄があるもの。

   冠攣縮性狭心症

     冠状動脈の強い収縮によって起こるもの。

症状

 主な症状は胸痛であり、胸骨中央部に3分の1ぐらいのところに現れ、しめつけ感、重苦しさ、圧迫感、焼きつけられるような感じなどいろいろな表現で訴えられる。また左顎、左肩、胃部に放散することもあり、さらに顔面蒼白、冷汗、吐き気、息苦しさ、動悸、眩暈などが伴うこともある。痛みは1~3分までの短い発作を繰り返し、長くても15分以内である。ほとんどが労作時、興奮時、食後などに起こり、特に早朝から午前中の行動を起こし始める時に多い。 

検査

 

心電図検査 

胸部X線検査 

血液検査 

ホルターECG 

心エコー 

運動負荷試験 

心臓核医学検査 

冠動脈造影法 

CT 

MRI 

 

治療

 1.一般療法 

冠危険因子の是正 

 2.薬物療法 

硝酸薬、β遮断薬、Ca拮抗薬 

 3.経皮的冠状動脈形成術(PTCA) 

バルーンカテーテルにて狭窄部を開大させて狭窄を軽減させる。緊急バイバス術を必要とすることがあり、準備下に施行される。 

 4.冠動脈バイパス術 

冠状動脈に75%以上の狭窄、または完全閉塞を認め、かつPTCAが不可能の場合施行される。移植血管は内胸動脈、胃大網動脈、大伏在静脈などが用いられる。 

 5.大動脈バルーンポンプ法(IABP) 

不安定狭心症において発作が重積し、内科的治療無効の症例では緊急時の治療として適応される。 

合併症

不整脈(心室性期外収縮、心室頻拍、心室細動、心停止、房室ブロック) 

失神 

左心不全 

心原性ショック 

管理

 1.胸痛発作時のサポート 

 胸痛発作が起こったらまず第一に痛みを軽減する必要がある。しかし入院後の最初の発作に対しては、ECG変化の確認をとる目的ですぐには硝酸薬(ニトロール等)を使用せずにECGをとることがある。この点については、入院時に患者に十分説明して協力を得ておくことが大切である。一方、頻回に発作を繰り返すような場合は痛みとともに死の恐怖や不安感が伴う。このことから痛みを軽減するとともに、そばで励まし平静な態度で援助して安心感を与えるように努める。 

 2.安静に関わるサポート 

 安静は心臓の負担を軽くし、心筋の酸素消費量を軽減するという目的で重要なことであるが、患者にとっては苦痛となる。発作がないときに定められた安静を守るのは難しく、過度の行動をとってしまいがちで、そのために発作を誘発し心筋梗塞に移行してしまうこともある。安静の必要性について、患者にとって分かりやすい説明を行い、受容できるように働きかけるとともに、許される範囲内での動きを最大限に介助し拘束されたなかにあっても安楽に過ごせるよう援助が必要。 

 3.検査に関わるサポート 

 狭心症発作時にECGで虚血性のST変化を記録できれば確定診断を下すことできる。このためモニターやホルターECGが用いられるが、狭心症の自然発作を記録することはなかなか難しく、発作を人為的に誘発させる運動負荷試験が行われる。この場合、強い胸痛や不整脈出現に注意し、ニトロール等の指示薬をすぐ投与できるようにしておく必要がある。また、狭心症薬の内服を中止として検査にのぞむ場合もあるため検査前、中、後の一般状態に十分注意する必要がある。検査に対する不安を最小限とするため患者に対しては、検査目的、方法を十分に説明し、理解を得て行われることが重要である。 

 4.リハビリテーション時のサポート 

 発作がコントロールされた後は、運動負荷試験、トレッドミル検査等を行った上で運動許容量が決められる。その範囲内での運動を行うことは心負荷となる体重増加やストレスの予防ならびに解消をはかり、冠状動脈の側副血行路を促進するためにも必要であることを説明し、希望をもってリハビリテーションを進めることができるように指導する。 

看護計画

Ⅰ.アセスメントの視点

 個々の発作の誘因、起こり方とその背景にある患者の生活様式を把握する。さらに狭心症を増悪させるような疾患を合併している場合は、どのような治療がなされているのか、また、発病及び入院によって生じる社会的、家庭的役割の変化と患者の身体面・精神面へどのような影響を及ぼしているのかを知る必要がある。そして退院に向けて治療が進められる中で患者自身が病気を理解して、リスクファクターを認識し、再発作を起こさないようにするための自己管理の指導を行い、家族の協力も得られるように援助していかなければならない。 

Ⅱ.問題リスト

#1.疾患による苦痛

   〔要因〕・胸痛及び随半症状による身体的苦痛

       ・症状からくる精神的苦痛


#2.検査、治療、処置及びその結果に対する不安

   〔要因〕・情報不足


#3.心筋梗塞への移行の危険性

   〔要因〕・発作が頻発、長期持続する等の症状の悪化


#4,安静を守ることができず発作を誘発させる可能性

   〔要因〕・安静の必要性、日常生活行動おける制限の理解不足

      ・自覚症状がないために負荷をかけてしまう


#5.入院により社会的、家庭的な役割を果せないことによる精神的なストレス


#6.日常生活において適切な自己管理ができないことによる再発作の危険性

   〔要因〕・危険因子がある

       ・知識不足

       ・薬物管理ができない

       ・発作時に適切な対処ができない

       ・日常生活行動について自己判断できない


#7.退院後の日常生活においての不安

Ⅱ.看護目標

1. 胸痛発作をおこさず心身の苦痛が軽減できる 

2. 安静を保持することによる苦痛が軽減できる 

3. 再発作および合併症をおこさず症状の悪化をきたさない 

4. 疾患について理解するとともに受容できる 

5. 冠危険因子を認識し再発作予防のための自己管理ができる 

Ⅲ.看護問題

#1.疾患による苦痛

   〔要因〕・胸痛及び随半症状による身体的苦痛

       ・症状からくる精神的苦痛作時に速やかに対処できる


  &発作時に速やかに対処できる

   症状が速やかに消失する

   発作による不安感が軽減する

  $診断や治療方針が決定するまで


O-1.バイタルサイン(血圧変動、脈拍増加、リズム不整、脈拍欠損)

  2.モニター、ECG(ST低下・上昇の有無、発作のない時と比較、硝酸薬使用時の波形変化)

  3.自覚症状

    1)痛みの部位、程度

    2)痛みの種類(絞扼感、圧迫感、放散痛の有無)

    3)持続時間、動悸、呼吸困難、眩暈、嘔気等の有無

    4)硝酸薬与薬後の症状の消失時間、また血管拡張による頭痛、心悸亢進、血圧低下等の有無

  4.発作出現時の状況(誘因の有無-#6参照)


T-1.安静にして患者の安楽な体位にする

  2.発作出現時は医師の指示を施行

    1)ECG記録

    2)硝酸薬与薬

    3)硝酸薬与薬後、経時的にECG記録(ECG波形または症状改善する迄)をとり、胸痛の持続時間、改善時間、ニトロール等の舌下時間、バイタルサインを記録

    4)ECG記録と同時にドクターコールをする

    5)発作中は患者の側を離れないようにし、落ち着いた態度で接する


E-1.発作時はすぐにナースコールするように指導する

  2.硝酸薬は常に患者の手元に置きすぐに服用できるようにし、服用時には起立性低血圧に注意し、座って服用する習慣づけを指導する

#2.検査、治療、処置及びその結果に対する不安

   〔要因〕・情報不足


  &検査・治療の方法、目的が十分理解でき不安が軽減する

  $診断や治療方針が決定するまで


O-1.医師の治療方針、予定されている検査の把握

  2.検査結果の把握

  3.検査前後の症状の有無


T-1.検査の必要性・方法を分かりやすく患者に説明し、胸痛等があるときは診断・治療の過程でまもなく苦痛がとれることを伝え、精神的な不安を取り除く

  2.検査結果について医師から十分な説明が受けられるよう配慮する


E-1.検査の前日は激しい労作を避けるようにし、禁食等ある場合は守るよう指導

  2.検査に備えて薬物を中断している場合は発作出現に注意し無理な行動をとらず、ニトロール等を常に携帯するように指導

  3.負荷試験の場合はニトロール等を検査室に持参する

#3.心筋梗塞への移行の危険性

   〔要因〕・発作が頻発、長期持続する等の症状の悪化


  &症状が悪化することなく適確な治療を受け、心筋梗塞への移行を防止できる

  $診断や治療方針が決定するまで


O-1.モニター、ECG上STの上昇

  2.15分間以上持続する激しい胸痛発作

  3.硝酸薬を3錠使用しても症状の改善がない場合

  4.バイタルサイン

  5.心筋逸脱酵素(CPK、GOT、LDH等)の上昇


T-1.心筋梗塞が疑われる所見があればすぐに医師へ報告する

  2.速やかに適切な処置が行われるよう準備

    1)CCUへの搬入

    2)ルート確保、酸素吸入等の救急処置

    (以後心筋梗塞患者の看護を参照)

#4.安静を守ることができず、負荷をかけすぎて発作を誘発させる可能性

   〔要因〕・安静の必要性、日常生活行動おける制限の理解不足

       ・自覚症状がないために負荷をかけてしまう


  &安静の必要性を理解して決められた安静度を守り発作を起こさない

  $退院まで


O-1.行動状況

  2.医師からの説明内容の把握

  3.疾患に対する理解度の把握


T-1.行動制限のため不足するADL面の介助(保清、扶送など)

  2.安静度の範囲内で動ける工夫をし、精神的な苦痛をもたらせないような配慮をする


E-1.具体的な行動許容範囲について説明する

#5.入院により社会的、家庭的な役割を果せず精神的なストレスがある

  &安心して入院生活を送ることができ、ストレスの軽減が図れる

  $退院まで


O-1.入院によって生じる心配事、ストレスの有無

  2.患者の家庭や、社会的な立場の把握

  3.夜間の睡眠が十分得られているか


T-1.患者とのコミュニケーションを十分とり、入院に対する思いや訴えの傾聴

  2.家族のサポートが得られるよう家人へはたらきかける

  3.医師への情報提供


E-1.入院期間、予定されている検査内容等具体的に医師から説明してもらう

#6.日常生活において適切な自己管理ができず、再発作をおこす危険性がある

   〔要因〕・危険因子がある

       ・知識不足

       ・薬物管理ができない

       ・発作時に適切な対処ができない

       ・日常生活行動について自己判断できない


  &発作の誘因を認識し、再発作予防のための自己管理ができる

  $退院まで


O-1.冠危険因子の有無の把握

     

1)高血圧

    2)高脂血症

    3)肥満

    4)糖尿病

    5)喫煙

    6)ストレス・過労

    7)遺伝

 

  2.日常生活における心負荷因子、注意点についての理解度の把握

    1)排便コントロール

    2)精神状態(ストレス・イライラ感がないか,タイプA型行動)

    3)睡眠

    4)過食(暴飲・暴食していないか)

    5)喫煙の習慣

    6)体重増加、尿量減少、むくみや、血圧、脈拍の異常

    7)塩分、水分の取りすぎ

    8)適度な運動

    9)気温の変化、入浴時の注意

    10)内服薬の管理

    11)発作時の対処


T-1.不眠の原因を取り除き、必要時睡眠剤、安定剤の与薬について医師と相談する

  2.便通調節のため、必要時下剤の与薬について医師と相談する

  3.塩分制限や低コレステロール食などの食事療法について、必要時個人栄養指導の計画を医師と相談する


E-1.冠危険因子の除去

    1)高血圧の危険因子についてパンフレットを用い指導

      血圧のコントロール、測定の習慣づけ

    2)低コレステロール食について指導

    3)標準体重の維持

    4)血糖のコントロール

  2.日常生活における再発作予防の注意点について指導

    1)便秘予防の工夫を行い、怒責を避けるよう便通調節をする

    2)規則正しくゆとりある生活を心掛ける

      趣味、娯楽、適度な運動でストレス解消をはかる

    3)日中に適度な運動等を促す

    4)適量をゆっくり時間をかけて食事を取る

      カロリー制限を守り、アルコールの取りすぎに注意

    5)禁煙(喫煙の有害性と疾患との関係について説明)

    6)異常の早期発見ができるよう毎日自己チェックする

      自己検脈し、不整脈等あれば安静にすること

    7)減塩食の工夫について説明し、促す

    8)運動負荷の結果から医師と相談し、可能な運動の種類、量について説明

      運動の有効性について説明し、適切な運動を毎日続けられるよう指導する

    9)寒冷刺激を避ける

      入浴はぬるめの温度で長湯とならないようにする

    10)服薬は指示された通り正確に服用し、勝手に変更しないように指導する

      薬剤の効用、副作用について説明

      自己管理が難しい患者に対しては家族に指導する

      硝酸薬は常に携帯するように指導

    11)発作が起きたときは安静にしてニトロール等を舌下し、 3錠使用してもおさまらない場合はすぐ来院するよう患者本人、家族ともに指導する

#7.退院後の日常生活においての不安

  &日常生活における自己管理ができ、不安なく社会生活が送れる

  $退院まで


O-1.退院後の生活での不安な点について把握する

  2.家庭でのサポート体制

  3.食事療法の理解度

  4.薬物療法の理解度

  5.社会復帰後の仕事量、内容

E-1.試験外泊を促し、外泊時の生活状況、食事内容等について説明

  2.パンフレットを用い最終的な日常生活の指導


強迫神経症患者の標準看護計画-032

強迫神経症患者の標準看護計画

強迫意識・強迫感情により強迫観念がある

  ♯現実・自然をあるがままに悟ることができる

O-1.一日の過ごし方

    2.日常生活行動・言動

    3.家族的背景

    4.家族に対しての反応

    5.生育歴

    6.社会的背景

    7.性格

    8.恐怖症の有無

    9.強迫観念の有無

  10.強迫行為の有無

  11.強迫観念・行為に伴う身体症状の有無

  12.薬剤の副作用の有無

T-1.強迫観念を話題にしない

    2.強迫症状を患者の一部分として接する

    3.症状によっては他のことに興味をもたせ気分転換をはかる

    4.医師の治療方針に基づいて、行動療法・自律訓練を援助する

E-1.治療方針に基づいて行動療法・自律訓練を指導する


強迫観念による内面的葛藤の苦痛があり訴えることが少ない

  ♯スタッフに症状の苦痛を訴えることができる

O-1.恐怖症・強迫観念・強迫行為の状態

     a.対象

     b.程度

     c.身辺の状態

     d.言動・行動・表情・会話

     e.対人関係

     f.一日の過ごし方

     g.日常生活への影響

     h.強迫行為に伴う身体症状

T-1.患者の自発性を尊重し不必要な介入を避ける

    2.コミュニケーションの場をもち訴えやすい雰囲気をつくる

    3.異常行動に対して,安に否定・中止するような働きかけをしない

    4.患者が訴えてきたら、良く話を聞く

    5.自己表現しやすい雰囲気をつくる


対象のない不安により他者に理解されない苛立ちがある

  ♯スタッフに症状の苦痛を訴えることができる

O-1.恐怖症・強迫観念・強迫行為の状態

      a.対象

      b.程度

      c.身辺の状態

      d.言動・行動・表情・会話

      e.対人関係

      f.一日の過ごし方

      g.日常生活への影響

      h.強迫行為に伴う身体症状

T-1.支持的な看護を行う

      a.訴えを良く聞く

      b.元気づけは慎重にさりげなくする

      c.感情的になっている人には、受容的態度で接する

    2.感情の表現を助ける

      a.理解のある暖かい態度で聞く

      b.患者の言葉を繰り返す等して患者に話をすすめさせる

      c.自分で理解する方向に誘導する

    3.患者自身の洞察を導かせる

      a.性格的な自分の弱さを洞察させる

      b.スタッフが患者の感情にまきこまれない態度をとる

      c.積極的に話を聞く

    4.患者に訓練をさせる

      a.自分で自分のことを理解する方向に導く


人間関係が表面的・儀礼的なことより接近が難しい

  ♯人間関係を形成し周囲の人と協調した生活ができる

O-1.適度に距離をおいて観察する

      a.対人関係

      b.協調性

      c.他人の立場を理解できるか

      d.対象により異なった関係

      e.対象に対しての感情

     2.日常生活状態

       a.態度

       b.自発性

       c.持続性

T-1.状態に応じてレクリェーション参加を促し他患者と強調できるように働きかける


強迫観念にとらわれ身の回りのことができない

  ♯強迫観念がありながらも身の回りのことができる

O-1.身辺の状態

    2.身辺の整理・整頓

    3.強迫行為の回数・時間帯・所要時間

T-1.医師の治療方針に基づいて身の回りのことを患者と相談し行う決して無理強いはしない


重症強迫症では頑固な睡眠障害がある

  ♯充分な睡眠がとれる

O-1.日中の状態

    2.夜間の睡眠状態

      a.寝つき

      b.途中覚醒の有無

      c.睡眠時間

      d.覚醒状態

T-1.医師の治療方針に基づいて眠剤を使用する。昼夜逆転しないように日中覚醒を促す

E-1.消灯後は臥床を促し眠剤の効果で入眠できることを説明する