すぽんさーどりんく

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血管造影検査を受ける患者の標準看護計画-039

血管造影検査を受ける患者の看護計画 

血管造影検査とは  

血管内に造影剤(水溶性ヨード剤)を注入し、造影することにより、目的とする臓器の血管系(動脈・静脈)の形態学的変化を知り、形態がどのようなものであるか(質的診断)またどのように進展しているかを知る為に行うものであり、血管内治療目的の為に行うことが多くなってきている。手技は、現在はほとんどがセルジンガー法で行われている。セルジンガー法とは、血管を二重針で穿刺後内針を抜去し外筒を血管内腔に留置した後これを通してガイドワイヤーを血管内に挿入し、これを軸としてカテーテルを血管内に挿入する方法であり、カテーテルを大動脈において造影するのを大動脈造影、大動脈の一次分枝に置いて造影するのを選択的造影、さらに末梢までカテーテルを進める方法を超選択的造影という。  
撮影法は、X線吸収値をデジタル化し造影剤注入前後でこれを引き算し、造影剤の分布をコンピュータで画像処理し表示するDSA法が主流となっている。また、最近は肝腫瘍の存在診断目的として、CTの特徴を動脈造影の撮像として利用したCTAP(経動脈性門脈造影下CT)やCTA(肝動脈CT)が行われることで、さらに高い質的診断ができるようになった。 



 適応  

1.診断 
 血管性病変 
 心血管先天性異常、動脈瘤、動脈閉塞と狭窄、静脈瘤、静脈血栓、静脈狭窄と閉塞 
 腫瘍の診断 
 質的診断 (肝細胞癌、腎癌、内分泌癌、膵・胃・大腸・肺癌) 
 進展度診断 (脳腫瘍、頭頸部癌、肺門部肺癌、肝・胆・腎癌) 
 動脈瘤 
出血の診断 
 癌、炎症、動脈瘤、動静脈奇形、外傷などによる動脈性の出血 
 機能診断 
 内分泌腫瘍の働きや部位診断の為の静脈血採血 (ホルモン解析)  
2.治療(IVR) 
血管拡張術(PTA) 
 腎血管性高血圧症、下肢動脈閉塞症 
血管塞栓術(TAE) 
 腫瘍の術前処置 (髄膜腫、動静脈奇形、血管腫) 
 腫瘍の治療 (肝細胞癌、腎癌、その他の腫瘍) 
出血の治療
消化管出血、喀血、動脈瘤破裂、腎・婦人科出血、外傷、鼻出血 
血栓溶解療法
下肢動脈血栓、脳梗塞 
抗癌剤動注療法 ワンショット動注、持続動注 (チュービング、インフューザポート) 
経頚静脈肝内門脈-静脈ステント短絡術(チップス) 

 検査によるおもな合併症と症状  

1.副交感神経反射 
 顔色不良、悪心・嘔吐、徐脈、発汗、不安状態、疼痛、血圧低下  
2.ヨード過敏症 
 悪心・嘔吐、尋痲疹、気管支痙攣、声門浮腫、血圧低下、心停止等のアナフィラキシーショック  
3.麻酔剤によるもの 
 局所麻酔剤によるショック  
4.血栓 
 穿刺側下肢の色調の変化、チアノーゼ、四肢冷感、足背動脈触知不可、疼痛、四肢マヒ、脳血栓時は失語症、視野狭窄、意識障害  
5.血管損傷 
突然の血圧下降、背部痛  
6.出血 
 穿刺部位の出血、皮下血腫形成  
7.感染 
 急激な発熱、悪寒  
8.乏尿、腎不全 
 尿量の減少、動悸、息切れ、呼吸困難、意識の低下、痙攣、血圧低下、徐脈、出血傾向 

 看護計画 

Ⅰ.アセスメントの視点  
検査を受ける患者は、病状に対する不安や、未知の事に対する恐怖などを持っている場合が多い為、検査前に不安や恐怖をできるだけ表出させ、解消しておくことが大切である。又、検査後も同一体位が強いられる為、腰痛などの苦痛を訴える場合が多い。この為可能な範囲での安楽な体位の工夫が必要である。さらに検査中には、カテーテル操作や造影剤使用による合併症を生ずる危険性がある為、緻密な観察と急変に対応できる準備が必要である。又、検査後は動脈穿刺部より出血したり血栓等の合併症が予測され、止血するまでは絶対安静となる。安静が解除されるまでは充分な観察と生活面、安楽面への援助が大切である。 

Ⅱ.問題リスト 

#1.疾患や検査に対する不安    
[要因]
・疾患や検査そのものへの不安        
・検査内容、検査目的、方法、結果についての情報の理解不足        
・未経験なこととの遭遇        
・慣れない環境        
・検査に伴う長い体動制限 

#2.検査における苦痛  
1)穿刺部痛    
[要因]
・局所麻酔及び穿刺による皮膚、組織の損傷と圧迫  
2)腰背部痛    
[要因]
・絶対安静による同一体位の保持  
3)排尿困難    
[要因]
・過度の緊張と羞恥心        
・創痛と体位制限による不十分な腹圧 
 
#3.カテーテル検査に伴う合併症  
1)副交感神経反射    
[要因]・疼痛        
・過度の緊張と不安        
・治療内容(TAEなど)による  
2)血栓    
[要因]
・血管穿刺により誘発、血管内膜剥離により形成されたもの  
3)血管内膜損傷    
[要因]
・血管壁にカテーテルがめりこんだ場合  
4)出血と皮下血腫    
[要因]
・動脈穿通        
・出血傾向        
・抗凝固剤使用        
・圧迫止血不良        
・圧迫帯の緩み  
5)感染    
[要因]
・免疫機能の低下        
・無菌操作の不徹底 
 
#4.造影剤によるヨード過敏症    
[要因]
・ヨード剤によるアレルギー反応        
・体調不良 
 
#5.乏尿、腎不全    
[要因]
・造影剤大量投与による循環血液量の減少        
・抗癌剤の副作用        
・高齢者、腎障害者、低アルブミン血症患者、糖尿病患者        
・抗生剤との相互作用 



Ⅲ.看護目標 

1. 疾患や検査に対する不安が軽減され、検査にむけての精神的準備ができる 
2. 局所麻酔や同一体位による苦痛の軽減をはかり、リラックスした状態で検査が受けられる 
3. 造影剤やカテーテル挿入による合併症を予測し、迅速に対処できる 
4. 検査後、安静に伴う苦痛に早く対処し精神的、身体的苦痛の軽減ができる 
5. 検査後、合併症が起きない

Ⅳ.看護問題 

#1.疾患や検査に対する不安    

[要因]
・疾患や検査そのものへの不安        
・検査内容、検査目的、方法、結果についての情報の理解不足        
・未経験なこととの遭遇        
・慣れない環境        
・検査に伴う長い体動制限   

&検査の必要性がわかり、納得出来たことを言葉で表現する    
穏やかなくつろいだ表情と態度を示す    
不安や恐怖感が軽減したことを言葉に出して表す    
バイタルサインが安定している    
ケア、処置、麻酔の施行に対して協力的態度、理解を示す   
$検査室入室時~退室時まで 

 O-1.入室時及び入室後の表情、言動   
2.前投薬、入室後のバイタルサインの変動   
3.顔色、口唇色、爪、四肢の色調   
4.四肢冷感の有無、程度   
5.尿意の有無、程度   
6.前投薬の効果の有無、程度 

 T-1.入室時、笑顔で挨拶し、担当看護婦であることを告げる   
2.処置を行う時は、その都度説明して行う   
3.なるべく患者のそばにいて声かけし、恐怖、不安の表出を図る   
4.不必要な身体の露出をさけるなど、プライバシー、自尊心への配慮を行う   
5.環境の整備      
1)検査室内の整理整頓      
2)検査室の温度を25℃前後に保つ      
3)検査台の保温、湯タンポの貼用      
4)静かな音楽を流し、不安の軽減や緊張緩和をはかる 

 E-1.ケアや処置施行時、以下の事を考慮して事前に説明する      
1)何をどのように行うのか      
2)時間はどの位かかるのか      
3)疼痛の有無と程度      
4)安静時間        
優しく、ゆっくり、簡潔明瞭、具体的に説明する。恐怖、不安を増強するような言葉、表現を用いない   
2.検査中、身体に異常を感じたり、身体的欲求、疼痛時などは我慢せず、すぐ知らせるよう説明する 

#2.検査における苦痛  
1)穿刺部痛    
[要因]・局所麻酔及び穿刺による皮膚、組織の損傷と圧迫   

&最小限の疼痛で検査が受けられ、二次的障害をおこさない   
$検査室入室時~退室時まで 

 O-1.疼痛に対する患者の訴えや表情、バイタルサイン   
2.疼痛の性質、部位、程度   
3.随伴症状の有無と程度 

 T-1.麻酔時、穿刺時は患者のそばに付き添い、訴えを聞き励ましたり、手を握ったりしてリラックスをはかる   
2.処置及び検査の進行状態について説明を行う   
3.痛みが自制不可の場合は、医師に報告し、麻酔薬の追加及び鎮痛薬の指示を受ける  
4.できる限り安楽な体位を工夫する   
5.精神的苦痛もあるため、感情の動揺や緊張を避けるように援助する 
E-1.痛みが自制不可の場合、医師または看護婦に知らせるように指導する  

2)腰背部痛    
[要因]・絶対安静による同一体位の保持   
&効果的に鎮痛が図られ、くつろいだ表情で体位がとれる    
叫んだり、うめいたりの言語的反応を示さない   
$検査室入室時~検査後の安静解除まで 

 O-1.腰痛に対する患者の訴えや表情   
2.痛みの性質、部位、程度   
3.呼吸状態(数、リズム、深さ、胸郭の動き)   
4.非言語的反応(眉をしかめる、拳を握り締める、動く事を渋る、激しく体動する、落ち着きがない、顔面蒼白、顔面紅潮、     
血圧変動、脈拍変動)   
5.言語的反応(叫ぶ、うめく、痛い) 

T-1.検査台の環境を整える(検査台にスポンジ、ウレタンマットを使用)   
2.可能な範囲で安楽な体位を工夫する   
3.検査に支障がなければ湿布などの使用を考慮する   
4.薄いタオルなどを挿入するか、マッサージを行い腰痛と随伴症状の軽減をはかる 
5.腰痛が自制不可の場合は医師に報告し、鎮痛剤の指示をうける   
6.精神的安定への援助     
1)検査の充分な説明(検査の進行状態を伝える)を行う     
2)腰痛の訴えに対する理解を示し、支持・激励的態度で接する     
3)ゆとりのある対応を心がける 

 E-1.痛みが自制不可の場合、医師または看護婦に知らせるように指導する  
3)排尿困難    
[要因]
・過度の緊張と羞恥心        
・創痛と体位制限による不十分な腹圧   
&安静が守られ、検査に支障なく床上排泄ができる    
穿刺部の汚染がない    
止血を阻害しない   
$検査室入室時~検査後の安静解除まで 

 O-1.普段の排尿パターンと現在の状況(回数、性状、量)   
2.検査前の床上排泄練習の有無と自尿の有無   
3.創痛の程度   
4.言葉による排尿に関する表現と非言語的反応(体動、顔面紅潮、眉をしかめる、血圧変動、脈拍変動)   
5.膀胱部の膨隆 
 T-1.普段の排尿パターンを基準に変調の程度をアセスメントする   
2.プライバシーの保護など排尿しやすい環境を整える   
3.水の音を聞かせる、膀胱部を圧迫するなど、排尿を促す為の方法を実施する   
4.膀胱部が膨隆し、自然排尿がみられない時は医師の指示のもとに導尿を行う 

 E-1.検査前のオリエンテーションで床上排泄の必要性を説明し、自然排尿ができるように指導し練習しておく   
2.尿意を感じたら我慢しないで、知らせるように指導する 

#3.カテーテル検査に伴う合併症  
1)副交感神経反射    
[要因]・疼痛        
・過度の緊張と不安        
・治療内容(TAEなど)による   
&精神的緊張が軽減され、迷走神経反射による症状の出現を最小限に止める   
異常にすぐ対処でき、早期に症状改善がはかられる   
$検査室入室時~退室時まで 

 O-1.顔色不良、発汗、悪心・嘔吐、疼痛、不安状態などの有無と程度   
2.バイタルサイン(徐脈、血圧低下)と意識状態 

 T-1.救急薬品の準備(副交感神経遮断剤の硫酸アトロピン、鎮痛剤など)   
2.救命処置の準備と介助(急速な輸液、酸素吸入、下肢の挙上など)   
3.可能な範囲での安楽な体位の工夫   
4.精神的安定への援助      
1)苦痛や不安を表出できるような雰囲気をつくる      
2)ゆとりのある対応を心がける      
3)検査の進行状況を伝えたり、支持・激励的態度で接する 

E-1.苦痛や不安があるときは我慢せずに医師や看護婦に知らせるように指導する   2.患者の不安を軽減させるために、状況を理解できるように説明する  

2)血栓    
[要因]
・血管穿刺により誘発、血管内膜剥離により形成されたもの   
&血栓を早期に発見し、治療ができる   
$検査開始~検査後2~3日 

 O-1.穿刺側下肢の疼痛と皮膚色の変化、末梢冷感の有無、四肢マヒ症状の程度   2.動脈触知の有無(足背動脈、橈骨動脈)左右差のチェック   
3.失語、視野狭窄、意識障害などの有無と程度(脳血栓時)   
4.バイタルサイン 

 T-1.救急薬品の準備(抗凝固剤ヘパリン、血栓溶解剤ウロキナーゼなど)   
2.急変時は医師の指示に従い、必要時応援を求める   
3.精神的安定への援助(副交感神経反射の1)2)3)に準ずる) 

E-1.自覚症状がある時は、我慢せずにすぐ知らせるように説明する  

3)血管内膜損傷    
[要因]
・血管壁にカテーテルがめりこんだ場合   
&血管内膜損傷による症状が出現しない    
 早期に発見し、治療ができる   
$検査開始~退室時まで 

 O-1.バイタルサイン(突然の血圧下降など)と意識状態   
2.背部痛の部位と程度・持続時間   
3.動脈触知、皮膚色、尿量など 

 T-1.救急薬品の準備   
2.急変時は医師の指示に従い、必要時応援を求める   
3.救急処置の準備、介助   
4.精神的安定への援助(副交感神経反射の1)2)3)に準ずる) 

 E-1.自覚症状がある時は、我慢せずにすぐ知らせるように説明する  

4)出血と皮下血腫    
[要因]
・動脈穿通        
・出血傾向        
・抗凝固剤使用        
・圧迫止血不良        
・圧迫帯の緩み   
&動脈穿通による出血及び穿刺部位からの再出血、皮下血腫などの症状がない    
早期に発見でき、確実に止血できる   
$検査開始~安静解除後の2~3時間後まで 

 O-1.バイタルサイン   
2.出血傾向の把握(血小板減少、抗凝固剤の内服有無など)   
3.止血状態、穿刺部痛の有無   
4.血腫、出血の有無とその程度(血腫による神経症状の有無)   
5.穿刺部、末梢側の動脈触知の状態(左右差、強弱)   
6.末梢冷感の有無、皮膚色の変化   
7.圧迫部位、圧迫帯の緩み 

 T-1.検査中、後の体動制限(検査後は6時間安静)を守らせる。   
2.異常時は速やかに医師に報告し、指示に従う   
3.医師より患者へ現状況の説明をしてもらう   
4.血腫を形成した場合はマーキングをし、病棟へ申し送る   
5.圧迫帯装着は確実に行い、圧迫帯の緩みがないか定期的に観察する   
6.排尿時、股関節の動きを最小限にする   
7.精神的安定への援助(副交感神経反射の1)2)3)に準ずる) 

 E-1.検査中、後の安静の大切さを説明し、検査後も安静解除がでるまで自分で体を動かさないようによく説明しておく   
2.穿刺部に出血感などの異常を感じたらすぐに知らせるように説明する   
3.尿を我慢しないように患者へ説明する  

5)感染    
[要因]
・免疫機能の低下        
・無菌操作の不徹底   
&感染による症状の出現がない   
$検査開始~検査後2~3日

 O-1.急激な発熱、悪寒、頭痛   
2.血液検査データ(WBC、CRP、血沈など)   
3.バイタルサイン、熱型 

 T-1.術野の消毒は確実に広範囲に行い、清潔保持に注意する   
2.血液等による感染防止のために検査前に感染症の有無を確認し、検査の調整を図る  
3.検査室内の清潔と環境整備に留意する   
4.検査後、抗生剤投与の確認と実施 

 E-1.異常時はすぐに医師や看護婦に知らせるように説明する 

#4.造影剤によるヨード過敏症
[要因]
・ヨード剤によるアレルギー反応        
・体調不良   
&ヨード過敏症による症状が出現しない    
 異常にすぐ対処出来、早期に症状の改善がはかられる   
$検査開始~検査後1~2日 

 O-1.ヨードアレルギーの有無と既往時の症状及びその程度、処置の確認   
2.自覚症状(悪心・嘔吐、発赤、発疹、掻痒感、咳嗽など)   
3.顔色、バイタルサイン(血圧低下)と意識状態(心停止等のアナフィラキシーショック)   
4.尿量(乏尿) 

 T-1.救急薬品(抗ヒスタミン剤、ステロイド剤等)及び救急蘇生装置の準備をしておく   
2.異常時は速やかに医師に報告し、指示に従う   
3.医師より患者へ現状況の説明をしてもらう   
4.精神的安定への援助を行う(副交感神経反射1)2)3)に準ずる) 

 E-1.症状が出現すればすぐ医師や看護婦に知らせるように説明する 

#5.乏尿、腎不全    
[要因]・造影剤大量投与による循環血液量の減少        
・抗癌剤の副作用        
・高齢者、腎障害者、低アルブミン血症患者、糖尿病患者        
・抗生剤との相互作用   

&循環動態の悪化がなく、検査が終了する    
異常にすぐ対処出来、早期に症状の改善がはかられる   
$検査開始~検査後1~2日 

 O-1.バイタルサイン(血圧低下、徐脈、尿量減少)   
2.患者の訴えや表情(全身倦怠感、動悸、息切れ、呼吸困難、意識低下、痙攣など)  
3.造影剤の濃度と使用量   
4.抗癌剤使用時は内容と量   
5.血液データの結果(カリウム、クレアチニン、BUNなど) 

 T-1.時間的に水分出納チェックを行い、必要時尿蛋白、尿潜血反応を測定する
2.異常時は速やかに医師に報告し、指示に従う   
3.利尿剤使用時はその副作用の観察を行う   
4.異常時に備えて救急処置がとれるように準備しておく(緊急透析の準備)   
5.医師より患者へ現状況の説明をしてもらう   
6.精神的安定への援助を行う(副交感神経反射1)2)3)に準ずる) 

 E-1.異常を感じたらすぐに医師や看護婦に知らせるように説明する

血液透析の標準看護計画-038

血液透析の標準看護計画 

血液透析療法とは  

体外循環により血液を浄化する治療法で慢性腎不全及び急性腎不全の尿毒症症状に適応される。この方法は血液を体外循環により導き出しダイアライザー(人工腎臓)に流入させ、①拡散、②浸透、③限外濾過の原理により血液を浄化させるものとなる。従って体外循環に必要となる、ダイアライザー、血液回路、抗凝固剤、人工腎臓装置、水処理装置、透析液、など大がかりな設備が必要となる。また血液を大量に取り出す為に内シャントというブラッドアクセスが必要となる。 



アセスメントの視点  

血液透析の適応としては、急性透析と慢性透析がある。  
急性透析の適応基準 
 ・尿素窒素値>80~100㎎/dl血清カリュウム濃度>6mEq/l高度のアシドーシス(HCO3<15mEq/l)乏尿が3日以上続き、利尿剤が反応しないとき。 
 ・急性腎不全の診断がつき尿毒症症状、高K血症、アシドーシス、水分過剰の場合、早期に適応となる。  
慢性透析の適応基準 (厚生省透析療法基準検討委員会の基準) 
 1)保存療法で尿毒症状の改善がみられず、日常作業が困難となったとき 
 2)次の①、②、③のうち二つ以上の条件があるとき 
 ①臨床症状(a~fのうち3項目以上) 
 a.乏尿あるいは夜間多尿 
 b.不眠、頭痛 
 c.悪心、嘔吐 
 d.腎性貧血 
 e.高度の高血圧 
 f.体液貯留(浮腫、肺うっ血など) 
 ②腎機能:Ccr.<10ml/minあるいはCr>8㎎/dl 
 ③活動力:日常作業が困難  
蛋白制限により尿素窒素値がまだ上昇していなくても厳しい食事制限を続けるより早期の維持透析の導入がすすめられている。  
ブラッドアクセスを作る期間を考慮して、透析の必要性と患者教育を前もって予定しておく。 

 症状  

尿毒症症状はCcrが0.10~0.15ml/分/㎏体重以下に低下すると生じる。血中に窒素や他の老廃物が蓄積した結果生じる。起床時に悪心及び嘔吐を認める。食欲が低下し、倦怠感、衰弱感、悪寒も感じる。精神状態も変わり、性格の変化ついには錯乱、昏睡にも至る。
尿毒症の身体所見としてウロクロ-ム色素の沈着による皮膚の変化、呼気のクレアチニン臭は症状が高度にならないとほとんどみられない。心摩擦音やタンポナーデがなくても心嚢液の貯留があることは尿毒症性心膜炎の存在を意味し、緊急透析を必要とする。下肢あるいは手首が下垂するときは尿毒性運動神経障害がある。出血時間も延長するが透析により正常化することが多い。 

検査 

 • 胸部X線検査 
 • 心電図 
 • 血液生化学検査及び血液一般検査 
 • 超音波検査 

CHFとは  

心・腎機能に問題のある患者において一般的な血液透析では負荷が大きすぎる場合、持続的に少量の体液を除去し補充液の投与を行う。注入量と除去量のバランスにより体液の恒常性を保ち過剰な体液の除去を行う。 

ECUMとは  

体外循環おいて透析液を使用しないで、限外濾過により体液を除去する方法である。主として除水を目的とする方法で溶質除去効果はない。心不全の溢水や慢性透析患者で基準体重の達成が不十分な場合に試みる。通常の透析と組み合わせて施行する事もある。血液透析の除水に比べ血液の浸透圧に差がなく、実施時の血圧低下が少ないという特徴がある。 

腹膜透析(CAPD)とは  

腹膜透析は半透過性の膜である腹膜を利用し、拡散、浸透、浸透圧による限外濾過の原理により急性腎不全、慢性腎不全の尿毒症状に適応される。血液透析に比べると血液中の電解質の改善に約1/8の効果、除水には約1/4の効率しかない、しかし持続的に1日24時間行うので、血液透析の4時間~5時間の治療に比べると1日あたりの効果では両者の間に大きな差はない。装置も大がかりなものは必要としないが、急性用カテーテル、慢性用カテーテルのいずれかを外科医により手術室で外科的に腹腔に挿入しなければならない。 


アセスメントの視点  

腹膜透析は連続的に24時間行われるので血液中の溶質や体液量の変化が徐々に行われるため、血行状態の悪い患者に適している。また腹膜の機能が十分あり、患者の自己管理能力が有り家族の理解のもとに社会復帰を目指している人には積極的に導入されるべきである。  
消極的導入としては、ブラッドアクセスに問題がある場合、体外循環の負荷に耐えられない場合。  不適応者として、人工肛門造設者、腹膜機能が不良、自己管理能力のきわめて不良者、以前に腹部の手術により癒着がある場合、最近腹部手術が行われ腸管吻合した場合やドレーンを入れている場合、腹部に人工血管がある場合も腹膜炎を発症した場合、人工血管の部分に及ぶので禁忌である。  
腹膜透析特有の合併症があり、特に問題となるのが腹膜炎、カテーテルに関する問題、トンネル感染、高濃度ブドウ糖液による肥満、高脂血漿、胸水、腰部痛、低カリュウム血漿、カテーテル位置異常、陰嚢水腫、腹空内出血などがあげられる。長期腹膜透析患者では硬化性腹膜炎が大きな問題となり、原因として高濃度糖液など高浸透圧の影響が考えられる。 

血漿浄化療法とは  

血漿交換療法というのは血漿蛋白の異常あるいは大分子量物質が病因物質と考えられている疾患において、血液中から病因物質を除去する治療法である。  血漿交換には遠心分離法と膜分離法とがあり、膜分離法が主流になっている。膜分離法にも治療によりいろいろな方法がある。単純血漿交換、二重濾過血漿分離交換療法、冷却ゲル濾過法、免疫吸着法、塩析法等がある。  
血漿交換療法の適応疾患。多発性骨髄腫、マクログロブリン血漿、劇症肝炎、重症筋無力症、悪性関節リウマチ、SLE、血小板減少性紫斑病、ギランバレー症候群、薬物中毒、重症血液型不適合妊娠、天疱瘡、類天疱瘡、巣状糸球体硬化症、家族性高コレステロール血症、閉塞性動脈硬化症、多臓器不全、等があげられる。