血液透析療法とは
体外循環により血液を浄化する治療法で慢性腎不全及び急性腎不全の尿毒症症状に適応される。この方法は血液を体外循環により導き出しダイアライザー(人工腎臓)に流入させ、①拡散、②浸透、③限外濾過の原理により血液を浄化させるものとなる。従って体外循環に必要となる、ダイアライザー、血液回路、抗凝固剤、人工腎臓装置、水処理装置、透析液、など大がかりな設備が必要となる。また血液を大量に取り出す為に内シャントというブラッドアクセスが必要となる。
アセスメントの視点
血液透析の適応としては、急性透析と慢性透析がある。
急性透析の適応基準
・尿素窒素値>80~100㎎/dl血清カリュウム濃度>6mEq/l高度のアシドーシス(HCO3<15mEq/l)乏尿が3日以上続き、利尿剤が反応しないとき。
・急性腎不全の診断がつき尿毒症症状、高K血症、アシドーシス、水分過剰の場合、早期に適応となる。
慢性透析の適応基準 (厚生省透析療法基準検討委員会の基準)
1)保存療法で尿毒症状の改善がみられず、日常作業が困難となったとき
2)次の①、②、③のうち二つ以上の条件があるとき
①臨床症状(a~fのうち3項目以上)
a.乏尿あるいは夜間多尿
b.不眠、頭痛
c.悪心、嘔吐
d.腎性貧血
e.高度の高血圧
f.体液貯留(浮腫、肺うっ血など)
②腎機能:Ccr.<10ml/minあるいはCr>8㎎/dl
③活動力:日常作業が困難
蛋白制限により尿素窒素値がまだ上昇していなくても厳しい食事制限を続けるより早期の維持透析の導入がすすめられている。
ブラッドアクセスを作る期間を考慮して、透析の必要性と患者教育を前もって予定しておく。
症状
尿毒症症状はCcrが0.10~0.15ml/分/㎏体重以下に低下すると生じる。血中に窒素や他の老廃物が蓄積した結果生じる。起床時に悪心及び嘔吐を認める。食欲が低下し、倦怠感、衰弱感、悪寒も感じる。精神状態も変わり、性格の変化ついには錯乱、昏睡にも至る。
尿毒症の身体所見としてウロクロ-ム色素の沈着による皮膚の変化、呼気のクレアチニン臭は症状が高度にならないとほとんどみられない。心摩擦音やタンポナーデがなくても心嚢液の貯留があることは尿毒症性心膜炎の存在を意味し、緊急透析を必要とする。下肢あるいは手首が下垂するときは尿毒性運動神経障害がある。出血時間も延長するが透析により正常化することが多い。
検査
• 胸部X線検査
• 心電図
• 血液生化学検査及び血液一般検査
• 超音波検査
CHFとは
心・腎機能に問題のある患者において一般的な血液透析では負荷が大きすぎる場合、持続的に少量の体液を除去し補充液の投与を行う。注入量と除去量のバランスにより体液の恒常性を保ち過剰な体液の除去を行う。
ECUMとは
体外循環おいて透析液を使用しないで、限外濾過により体液を除去する方法である。主として除水を目的とする方法で溶質除去効果はない。心不全の溢水や慢性透析患者で基準体重の達成が不十分な場合に試みる。通常の透析と組み合わせて施行する事もある。血液透析の除水に比べ血液の浸透圧に差がなく、実施時の血圧低下が少ないという特徴がある。
腹膜透析(CAPD)とは
腹膜透析は半透過性の膜である腹膜を利用し、拡散、浸透、浸透圧による限外濾過の原理により急性腎不全、慢性腎不全の尿毒症状に適応される。血液透析に比べると血液中の電解質の改善に約1/8の効果、除水には約1/4の効率しかない、しかし持続的に1日24時間行うので、血液透析の4時間~5時間の治療に比べると1日あたりの効果では両者の間に大きな差はない。装置も大がかりなものは必要としないが、急性用カテーテル、慢性用カテーテルのいずれかを外科医により手術室で外科的に腹腔に挿入しなければならない。
アセスメントの視点
腹膜透析は連続的に24時間行われるので血液中の溶質や体液量の変化が徐々に行われるため、血行状態の悪い患者に適している。また腹膜の機能が十分あり、患者の自己管理能力が有り家族の理解のもとに社会復帰を目指している人には積極的に導入されるべきである。
消極的導入としては、ブラッドアクセスに問題がある場合、体外循環の負荷に耐えられない場合。
不適応者として、人工肛門造設者、腹膜機能が不良、自己管理能力のきわめて不良者、以前に腹部の手術により癒着がある場合、最近腹部手術が行われ腸管吻合した場合やドレーンを入れている場合、腹部に人工血管がある場合も腹膜炎を発症した場合、人工血管の部分に及ぶので禁忌である。
腹膜透析特有の合併症があり、特に問題となるのが腹膜炎、カテーテルに関する問題、トンネル感染、高濃度ブドウ糖液による肥満、高脂血漿、胸水、腰部痛、低カリュウム血漿、カテーテル位置異常、陰嚢水腫、腹空内出血などがあげられる。長期腹膜透析患者では硬化性腹膜炎が大きな問題となり、原因として高濃度糖液など高浸透圧の影響が考えられる。
血漿浄化療法とは
血漿交換療法というのは血漿蛋白の異常あるいは大分子量物質が病因物質と考えられている疾患において、血液中から病因物質を除去する治療法である。
血漿交換には遠心分離法と膜分離法とがあり、膜分離法が主流になっている。膜分離法にも治療によりいろいろな方法がある。単純血漿交換、二重濾過血漿分離交換療法、冷却ゲル濾過法、免疫吸着法、塩析法等がある。
血漿交換療法の適応疾患。多発性骨髄腫、マクログロブリン血漿、劇症肝炎、重症筋無力症、悪性関節リウマチ、SLE、血小板減少性紫斑病、ギランバレー症候群、薬物中毒、重症血液型不適合妊娠、天疱瘡、類天疱瘡、巣状糸球体硬化症、家族性高コレステロール血症、閉塞性動脈硬化症、多臓器不全、等があげられる。