すぽんさーどりんく

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急性腎不全患者の標準看護計画

急性腎不全患者の標準看護計画


腎不全とは

 腎不全とは、高度の腎障害のために生体の内部環境の恒常性を維持できなくなった状態をいう。本症は、短期間で急激な腎機能の悪化をきたす急性腎不全と、慢性の腎疾患が徐々に進行して腎機能の悪化をきたす慢性腎不全とに分けられる。


急性腎不全とは

 急性腎不全とは、正常に機能していた腎臓が、なんらかの原因により急激に高度な機能障害をきたした状態をいい、多くは可逆性で、腎機能の回復が期待できる。


アセスメントの視点

 急性腎不全は、急速な尿毒症症状をまねき、死に至る危険性もあるが、慢性腎不全とは異なって可逆的な要素をもっており、速やかな対処がなされればその危険は防ぐことができる。高窒素血症や高カリウム血症などがある場合は、透析療法が行われる。患者は全身倦怠感などを訴え、またつぎつぎと行われる処置に対して不安を感じる。


原因

 腎前性・腎性・腎後性に分けられる。
 1.腎前性急性腎不全
腎臓そのものに大きな異常はなく、大量の出血、脱水などにより循環血液量が低下し、腎血液量が低下することにより、急速に腎機能低下を生ずる。
 2.腎性急性腎不全
狭義の急性腎不全をいう。
急速に進行する腎疾患(急性糸球体腎炎、溶血性尿毒症症候群、血栓性血小板減少性紫斑病など)によるもの、腎毒性物質(抗生物質、抗がん剤、造影剤、有機溶剤など)によるものなどがあり、急性糸球体壊死を生ずるものが多い。
 3.腎後性急性腎不全
結石、凝血、腫瘍、前立腺肥大などにより尿路が閉塞されることにより、糸球体濾過率が低下し、水腎症となる。


経過

 発症期・乏尿~無尿期・利尿期・回復期に分けられる。
 1.発症期
原因発生から乏尿が始まるまでの1~3日間。
 2.乏尿~無尿期
数日~3週間続くことが多いが、ときには数週間続くこともある。
腎機能の極端な低下により、水分や老廃物の排泄が不十分となり、これらが体内に貯留し、急激に体内環境を変えるために尿毒症症状が出現する。
 3.利尿期
症例によって幅があり、数日~数週間。
ネフロンの修復が始まり、尿が出始めるが、まだ腎臓の調節機能が不十分なために代償的に多尿になる。電解質異常、特に低ナトリウム血症、低カリウム血症に陥りやすい。
 4.回復期
尿細管機能の完全な回復には数カ月~1年かかる。
尿量が正常となり、BUNやクレアチニン、電解質も正常となる。


症状

 原因疾患による症状  尿毒症症状
・全身症状  全身倦怠感、易疲労感、浮腫、貧血、出血傾向
・循環器症状  心不全、高血圧、不整脈
・呼吸器症状  チアノーゼ、呼吸困難、過呼吸、肺炎
・消化器症状  食欲不振、嘔気、嘔吐、口渇、便秘、下痢、吃逆、消化管出血
・神経症状  羽ばたき振戦、頭痛、昏睡、意識障害、痙攣、不安、不眠、末梢神経障害
・その他  皮膚乾燥、掻痒感、発汗減少、骨折、無月経
・検査データ  クレアチニン上昇、BUN上昇、カリウム上昇、クレアチニンクリアランス低下、代謝性アシドーシス


検査

・ 血液検査
・ 血液ガス検査
・ 胸部X線写真
・ 心電図
・ エコー
・ CT
・ 腎スキャン・レノグラム


治療

 1.保存的治療
 原因疾患に対する治療、安静、補液、薬物療法(利尿剤など)、食事療法(高カロリー、低タンパク、塩分制限、カリウム制限)
 2.透析療法
 保存的治療を施行しても、利尿がみられず、高窒素血症や高カリウム血症、アシドーシスが改善されない場合、透析療法を導入する。早期から透析を行ったほうが生命予後が良いという報告が多い。透析は利尿期に入っても続けることもあるが、検査データの改善によって離脱できる。


看護計画

Ⅰ.アセスメントの視点

 急性腎不全の経過中の観察は、急速に進行する腎機能障害、尿毒症症状を早期に発見し、利尿期の変化に対応し、腎機能が回復していくのを見守ることである。また、急速な変化に対し患者が不安を抱いていることを理解して援助することが大切である。


Ⅱ.問題リスト

♯1.急激な腎機能低下、乏尿により心不全や意識障害、不整脈を起こし、死に至る危険性
   〔要因〕・急激に腎機能が低下する可能性がある

♯2.尿毒症症状による身体的苦痛
   〔要因〕・腎機能低下による尿毒症症状の出現

♯3.さまざまな治療(安静、薬物療法、食事療法、水分制限)に対する不安
   〔要因〕・治療により日常生活が制限される

♯4.透析療法に対する不安
   〔要因〕・透析に対するイメージ

♯5.生命予後に対する不安(患者・家族)
   〔要因〕・疾患そのものに対する恐れ
       ・経済的な不安
       ・家庭内の役割の変化


Ⅲ.看護目標

1. 異常の早期発見に努め、適切な治療により腎機能が回復する
2. 身体的苦痛が緩和できる
3. さまざまな治療を受け入れることができる
4. 精神的不安の軽減を図る


Ⅳ.看護問題

♯1.急激な腎機能低下、乏尿により心不全や意識障害、不整脈を起こし、死に至る危険性

   〔要因〕・急激に腎機能が低下する可能性がある

  &異常の早期発見ができる
   適切な治療により死を回避することができる
   $全身状態が安定するまで

O-1.バイタルサイン
  2.意識レベル
  3.呼吸音
  4.咳嗽、喘鳴、喀痰、呼吸困難の有無
  5.水分出納チェック(飲水量、補液量、尿量)
  6.体重測定
  7.浮腫の有無
  8.四肢の冷感、チアノーゼの有無
  9.ECGモニターのチェック
  10.検査データ:クレアチニン、BUN、カリウム、ナトリウム、総蛋白、アルブミン、血液ガス、貧血、出血傾向

T-1.輸液管理:ラインなど自己抜去しないように固定の工夫
  2.安楽な体位の工夫:ファーラー位、起坐位
  3.安静の保持:ADLの介助(食事、排泄、保清、移動)面会制限
  4.身体の保温に努める:温罨法の使用
  5.ベッド周囲の危険の防止を図り、転落や打撲を避ける
  6.緊急薬品、DCの準備
  7.感染の予防
  8.家族への援助

E-1.安静の必要性を説明する
  2.処置前に必ず説明し、協力が得られるようにする
  3.医師よりムンテラを行い、医療チームのムンテラ内容を統一する
    また、医師のムンテラ内容の理解度を把握し、不十分な点は補足する

♯2.尿毒症症状による身体的苦痛
  〔要因〕・腎機能低下による尿毒症症状の出現

  &身体的苦痛が緩和できる
  $身体的苦痛が消失するまで

O-1.尿毒症症状
    ・全身症状:全身倦怠感、易疲労感、浮腫、貧血、出血傾向
    ・循環器症状:心不全、高血圧、不整脈
    ・呼吸器症状:チアノーゼ、呼吸困難、過呼吸、肺炎
    ・消化器症状:食欲不振、嘔気、嘔吐、口渇、便秘、下痢、吃逆、消化管出血
    ・神経症状:羽ばたき振戦、頭痛、昏睡、意識障害、痙攣、不安、不眠、末梢神経障害
    ・その他:皮膚乾燥、掻痒感、発汗減少、骨折、無月経
    ・検査データ:クレアチニン、BUN、カリウム、クレアチニンクリアランス、代謝性アシドーシスの有無

T-1.安楽な体位の工夫
  2.安静の保持
  3.ガーグルベース、含嗽の準備
  4.医師の指示による適切な与薬
  5.不安の除去
          
♯3.さまざまな治療(安静、薬物療法、食事療法、水分制限)に対する不安

   〔要因〕・治療により日常生活が制限される

  &安静の必要性を理解し、自主的に安静に努められる
  $1~3日

O-1.決められた安静の保持ができているか
  2.安静時に患者は何をして過ごしているか

T-1.ADLの介助:食事、排泄、保清、移動
  2.ベッド周囲の環境の整備
  3.気分転換を図れるようにケアする(医師の許可を得て車椅子で散歩するなど)

E-1.安静の必要性を説明する

  &薬の効果や副作用を知り、適切に内服できる
  $1~3日

O-1.薬が適切に内服できているか
  2.薬の必要性を理解できているか

T-1.薬を適切に内服させる

E-1.薬の効果、副作用について説明する

  &食事療法の必要性を理解し、治療食を摂取できる
  $3~5日

O-1.食事摂取状況
  2.間食の有無
  3.患者の嗜好を知る
  4.食事療法の必要性を理解できているか

T-1.制限内で患者の嗜好を取り入れる

E-1.食事療法(高カロリー、低蛋白、塩分制限、カリウム制限)の必要性を説明する
  2.治療食以外の間食を禁止する(十分に摂取できている場合)

  &水分制限を守ることができる
  $1~3日

O-1.飲水量チェック
  2.口渇の有無
  3.水分制限の必要性を理解できているか

T-1.水分制限が守れない場合、口渇に対し、含嗽や氷片をふくむなどで対処する
  2.水分制限が守れない場合、決められた時刻に決められた量を飲むなど工夫をする
  3.制限内で患者の嗜好を取り入れる

E-1.水分制限の必要性を説明する

♯4.透析療法に対する不安
   〔要因〕・透析に対するイメージ

  &透析を受け入れることができる
  $透析開始するまで

O-1.透析に対して抱いている不安の状態
  2.透析の必要性を理解できているか
  3.除水量
  4.バイタルサイン
  5.不均衡症候群の出現の有無:頭痛、嘔気、嘔吐、痙攣、意識障害など
  6.検査データ:透析前後のクレアチニン、BUNなど

T-1.不安の傾聴
  2.不均衡症候群の出現時、医師に報告し指示を得て、対処する

E-1.透析の必要性を説明する(腎機能が回復すれば離脱できることも説明する)

♯5.生命予後に対する不安(患者・家族)
   〔要因〕・疾患そのものに対する恐れ
       ・経済的な不安
       ・家庭内の役割の変化

  &精神的不安が軽減できる
  $死を回避し、全身状態が安定するまで

O-1.患者・家族の言動
  2.疾病に対する認識
  3.医師からの説明の内容
  4.患者、家族間の疾病に対する理解、認識の差
  5.患者の夜間の睡眠状況

T-1.不安の傾聴
  2.必要に応じ、病態などについて医師から説明してもらう
  3.患者・家族の疑問点があれば、その都度対処する

E-1.家族に患者のサポートの必要性を説明する


急性腎不全患者の透析時の標準看護計画

急性腎不全患者の透析時の標準看護計画


看護計画

Ⅰ.アセスメントの視点
 急性腎不全の多くは可逆牲であり、早期診断、早期治療が良好な予後をもたらす。急性腎不全の診断には下痢、嘔吐、尿閉などの現病歴、脈拍、血圧、脱水の有無などの身体状況の観察が非常に重要である。血液浄化法の進歩により急性腎不全の死亡率は減少しているが、一方において急性腎不全の多くがMOF(多臓器不全)の一分症としてのものであり、通常の血液透析治療には耐えられないような重症患者が増加しており、原因疾患によっては依然として死亡率が高い。MOFにおける急性腎不全の治療は単に腎臓の代行療法を行うだけでなく、不全に陥っているすべての臓器を補助するために各種の臓器サポート治療(人工臓器、血液浄化療法〉を駆使し、不全臓器の回復するのを待つ。透析治療が安全安楽に受けられるには患者、家族の協力が重要であり、おりにふれ患者、家族の疑問に応えていくことで理解が得られる。


Ⅱ.問題リスト

#1.ブラッドアクセスの確保と管理
   〔要因〕・ダブルルーメンカテーテルの留置

#2.透析中の体外循環動態の管理
   〔要因〕・循環血液量の減少

#3.透析治療中の身体的、精神的苦痛
   〔要因〕・原疾患症状に腎不全症状が加わり、身体への負担が大きい
       ・透析機器の存在、体動制限などによる圧迫感、拘束感

#4.家族の不安
   〔要因〕・原疾患の経過、予後
       ・透析治療の経過、予後


Ⅲ.看護目標

1. 急性腎不全状態が改善されるために、患者の協力が重要であり、患者が現在の状態を理解でき、透析治療を受ける
2. 患者が重症で意識がない場合は、家族が現在の病状を理解し透析治療を受け入れる


Ⅳ.看護問題

#1.ブラッドアクセスの確保と管理

  &透析治療が十分に行われるために、ダブルルーメンカテーテルの脱落、出血、カテーテル内の凝固などの異常が早期発見、予防できる
  $ダブルルーメンカテーテル留置期間中

O-1.ダブルルーメンカテーテル留置部の感染防止、清潔保持
  2.毎日の生食フラッシュ時カテーテル内の凝血の有無、血液の逆流状態の観察
  3.カテーテル固定状態の観察(ナート固定状態、体外突出部分の長さの変化)
  4.患者にカテーテル留置部の屈曲、圧迫、抜去をしないよう説明する

T-1.異常があれば医師に報告する
  2.カテーテルの入れ換えの準備、介助

E-1.医師の説明で理解不足の内容があれば追加説明し、納得して透析治療が受けられるようにする

#2.透析中の体外循環動態の管理
  &バイタルサインが安定した状態で透析治療が受けられる
  $透析治療終了まで

O-1.バイタルサイン(血圧低下、血圧上昇、頻脈、徐脈、体温)
  2.脱血血液流量が十分とれているか碓認
  3.血液回路内の凝血の有無、血液の色
  4.警報モニター数値の変動
  5.抗凝固剤注入状況
  6.血液回路内への空気流入

T-1.意識のある患者の場合、透析中の(気分不快、吐気など)どんな変化でも早めに知らせることが、透析治療が円滑に行われるために必要であることを説明する
  2.血圧モニター、心電図モニターにより、バイタルサインの変動をチェックする
  3.血圧低下時は生食注入し、医師の指示を受ける。必要時ショック体位をとる
  4.血液流量が十分とれていない場合
     1)カテーテルの位置の確認、絆創膏固定の見直し、再固定
     2)改善なければ医師に報告、生食フラッシュ
  5.抗凝固剤注入量の確認、スイッチ入れ忘れがないかチェック
  6.モニター数値が上昇、警報プザーが鳴る場合
     1)生食注入し血液回路内の凝血の有無、程度をチェック
     2)凝血している部位(血液回路、ダイアライザー〉の交換
  7.クランプの止め忘れ、はずし忘れ箇所がないか点検

E-1.透析治療を安全に受けるためには異常の早期発見、早期処置が行われることが重要であることを説明する

#3.透析治療中の身体的、精神的苦痛
  &体動制限ある中で(血液流量が十分とれる範囲内で〉安楽な体位が保持できる。透析治療の必要性が理解され受け入れられる
  $透析治療中

O-1.言葉での苦痛の表現
  2.体動の回数の多さ、大きさ

T-1.苦痛に思っていることを話してもらう
  2.透析治療に差し支えない範囲で体位変換を行う

E-1.急性腎不全状態を離脱するためには、頻回な透析治療が必要であること(毎日おこなわれる場合がある)を説明する

#4.家族の不安
  &患者の身体状態の変化を理解し、透析治療を受け入れる
  $透析治療中から離脱するまで

O-1.家族の表情、言動、態度
  2.家族、患者間の疾病の理解、認識の差

T-1.家族とコミュニケーションを取り、不安や心配事を表出しやすいように受容的態度でかかわる

E-1.家族に患者の今後についての知識をあたえる


急性呼吸不全患者の標準看護計画

急性呼吸不全患者の標準看護計画


呼吸不全とは

 原因のいかんを問わず動脈血ガスが著しい異常値を示し、そのため生体が正常な機能を維持できなくなった状態と定義されている。呼吸は延髄にある呼吸中枢からの司令が脊髄、末梢神経、神経筋接合部をへて呼吸筋に伝えられ、胸郭が肺を動かすポンプ機能を発揮し、気道の通気性が保たれ、効果器である肺が機能してはじめて成立する。このシステムのどこかに破綻がおこりガス交換ができなくなるのが呼吸不全である。呼吸不全の診断基準は、厚生省特定疾患「呼吸不全」調査研究班によると、室内気吸入時PaO2が60mmHg以下である。PaCO2が45mmHgを越えないものを 型(低酸素血症型)、45mmHgを越えるものを 型(肺胞低換気型と混合型)と分類する。急性呼吸不全は何らかの原因によって呼吸器系の機能が急速に損傷を受け、生体が防御機構を立て直すいとまもなくエネルギー代謝の危機に陥る状態であり、生命の危機を伴う場合がある。

呼吸不全の原因疾患には以下のようなものがある。

 1.呼吸中枢の障害
脳血管障害、薬物中毒、代謝障害など

 2.脊髄、末梢神経、呼吸筋の障害
高位頸髄損傷、重症筋無力症など

 3.胸郭および胸膜の障害
肋骨外傷、気胸、血胸

 4.気道、肺の障害
上気道の炎症、浮腫、異物、腫瘍など肺炎、喘息、肺挫傷、肺水腫、ARDS

 5.肺血流障害
肺塞栓症など


アセスメントの視点

 呼吸は生命を維持するための基本的な生理機能であり、呼吸不全はこの機能が急速に低下し生命危機にさらされる状態を意味する。酸素化の障害が急性かつ進行性であること、また低酸素による他臓器への影響も大きいことから、迅速な呼吸状態の把握と対処が求められる。
 一方、患者にとっては呼吸困難として認識されるため、「息ができない。」という生命の危機的状況に陥り計りしれない死の恐怖、苦痛、不安を生じていることが予測される。医療的な処置と共に精神的なサポートが必要となってくる。 また呼吸不全の進行により意識障害が出現し、呼吸苦を自覚したり、自ら訴えることができないことも予測されるため意識レベルを含め全身状態の観察が必要である。


症状

 1.自覚症状
呼吸苦、息が吸えない、胸が苦しい、だるいなど表現もさまざま。呼吸苦を訴えられないほどの状況もありうる。

 2.全身状態
 1)呼吸
努力性呼吸、異常呼吸のことがある。
 2)意識
PaO2<40mmHgの急性低酸素血症のでは患者は興奮、失見当識を認め不穏となる。PaO2<20mmHgになると、昏睡となりショック、徐脈、チェーンストークス呼吸が出現する。一方高炭酸ガス血症では、PaCO2基礎値(35~45mmHg)に10~15mmHg蓄積すると傾眠傾向としてあらわれ同時に発汗、羽ばたき振戦、高血圧がみられる。30mmHg以上の蓄積で昏睡ときに乳頭浮腫が出現する。
 3)脈拍
急性低酸素血症と高炭酸ガス血症はカテコラミンを遊離し頻脈を誘発する。またPaO2<40mmHgでは不整脈が、PaO2<20mmHgでは徐脈が出現しやすい。
 4)血圧
乏尿を伴う血圧低下はショックを意味する。PaO2<20mmHgが原因のこともありチェーンストークス呼吸、徐脈を伴う。高炭酸ガス血症では脈圧増大を伴う高血圧がみられる。
 5)低酸素血症でチアノーゼ、CO2ナルコーシスで顔面紅潮
 6)悪心、嘔吐
 7)咳嗽
肺炎、心不全などでみられる


検査

X-P
血液ガス分析
血液一般検査
心電図
肺シンチ
喀痰培養検査


治療

 1.酸素療法
吸入ガスの酸素濃度を上げることで肺胞内の酸素分圧を上げる。ただし、高濃度の酸素は生体にとって有害であること、また酸素療法は対症療法であり根本的な治療ではないことを念頭におく。気道の確保の必要があれば肩枕、エアウエイ挿入、あるいは気管内挿管を行なう。

 2.機械的人工呼吸
換気の改善、酸素化効率の改善、呼吸仕事量の軽減の目的で行なわれる。気管内挿管が基本として行なわれる。

 3.膜型人工肺(ECLA)
膜型の人工肺で血液を直接酸素化するもの。副作用として抗凝固剤使用による出血傾向、体外循環による感染、空気塞栓、血栓症などがある。

 4.薬物療法
原因疾患や、病態によって選択される。吸入療法、気管支拡張剤、ステロイド、利尿剤、交感神経刺激剤、抗生物質など

 5.肺理学療法


経過と管理

1.呼吸管理
 1)酸素療法
 換気抑制がなければ酸素吸入の適応になり、換気抑制があれば人工呼吸器による酸素投与と換気補助が必要となる。症状あるいは検査データに応じて適切な酸素投与法を選択する。酸素療法の目標は臨床症状の改善とPaO2が80~100mmHg、SpO2 が95%以上とする。
 2)機械的人工呼吸管理
 酸素吸入下の自力呼吸でも血液ガスの維持ができない場合や病態の改善が期待できない場合は人工呼吸管理を行なう。気管内挿管が基本として行なわれる。気管内挿管方法は患者の状態や予測される挿管期間などを考慮して選択される。気管内挿管時は絨毛運動による気道内分泌物の運搬は不可能となることや、挿管チューブによって声門の閉鎖が妨げられ自力での効果的な喀痰の排泄が困難になることから喀痰の吸引が必要になる。喀痰の貯留は気道閉塞や無気肺から肺炎を合併するので1~2時間毎の吸引が望ましい。また人工呼吸器の設定は、患者の血液ガスデータや、自発呼吸の有無や強さに応じて決定される。人工呼吸中はファイティングがおこると換気不全となるため、筋弛緩薬や鎮静剤の投与で自発呼吸を抑えたり、または患者の自発呼吸の能力を観察し補助呼吸の設定などに変更していくことがある。

2.循環管理
 呼吸状態の急変により突然の頻拍や徐脈を呈することがある。不整脈がみられることも多い。呼吸状態とあわせて十分にモニターをチェックする必要がある。また急性呼吸不全に引き続いて循環不全を起こし、全身状態が悪化することも少なくない。逆に心不全などの循環系疾患でも呼吸不全を起こすことがあり、循環動態のチェックが必要である。このためスワンガンツカテーテルを留置し血行動態を把握したり、水分バランス、頚静脈の怒張や浮腫の有無などの全身状態の観察が必要となることがある。ドーパミンの持続点滴などを行なうこともある。

3.精神的サポート、苦痛の緩和
 「息ができない」という危機的状況に陥り、死の恐怖や不安、苦痛を生じている。不安によりさらに呼吸困難を増強させるため、心の安静が必要である。患者に状況をわかりやすく説明したり、処置やケア前に声かけを行なっていく。症状が強いときにはできるだけ傍につきそい患者に安心感を与えるようにしていくことが求められる。また気管内挿管中は声がでないため意志の疎通が十分にできないことや、挿管による苦痛などつよいストレスとなっていることが予測される。コミュニケーションの方法を工夫するなどのサポートが必要である。低酸素血症では不穏、興奮が出現するおそれがある。病態とあわせて評価し、状況に応じて薬物による鎮静が考慮される。呼吸苦がある時には安楽な体位をとるようにする。ファーラー位や半座位、起座位は横隔膜が下がり呼吸面積が広くなり換気量が増加して呼吸がしやすくなる。また肺鬱血がある場合は下半身からの静脈還流が減少し肺血流量、心拍出量が減少して呼吸が楽になる。

4.脳神経障害
 呼吸不全に伴う脳神経障害はCO2ナルコーシスによるものと低酸素血症によるものと にわけられる。原因を把握したうえで対処していく。症状がみられるのは状態が悪化していることをあらわすので、緊急性が高く迅速な対応が求められる。

5.輸液の管理
 PaO2<40mmHgやPaC02>65mmHgも乏尿の原因となりうる。腎機能にも影響がでることもあり、血圧や使用される抗生物質の影響にも注意しなければならない。また、心不全の悪化など循環動態にも影響を及ぼすため厳重な輸液管理、水分バランスのチェックが必要である。


合併症

 1.酸素の加湿・加温の問題
 加湿されていない酸素を吸入すると気道粘膜の乾燥を招く。6~8時間の乾燥ガス吸入でPaO2低下がみられる。低温ガスでも同じ障害をおこす。一方、過剰な加湿はチューブ 内の水の貯留や分泌物の過剰喀出を招く。また過剰な加温は体温の上昇や肺熱傷を合併する危険がある。

 2.酸素中毒
 高酸素分圧には生物毒性があり、長期投与すると絨毛の運動抑制や肺水腫、肺出血を引き起こす。

 3.感染
 加湿に用いる水も細菌繁殖の温床となりやすい。また、気管内挿管中は挿管チューブにより口・鼻腔や咽・喉頭に存在する感染防御機構をバイパスする結果、肺感染症の合併を招きやすくなる。特に制酸剤やH2ブロッカーの投与で胃内pHが4~6に上昇するとグラム陰性菌が胃内で増殖する上、経鼻胃管が胃内の細菌の上行感染を助長するので注意が必要である。

 4.CO2ナルコーシス
 不用意にO2を投与すると、低酸素による刺激がなくなりCO2蓄積による意識障害を引き起こす。

 5.不整脈
 呼吸不全が悪化し低酸素症が著しくなると心室頻拍や心室細動などの致死性不整脈の出現するおそれがある。

 6.人工呼吸器使用中の合併症
 気道内圧上昇により気胸を起こすと短時間のうちに緊張性気胸となりショックから心停止に至ることもある。




看護計画


Ⅱ.問題リスト

#1.ガス交換障害による低酸素血症、高炭酸血症
   [要因]・低酸素血症:
         1)肺胞酸素分圧の低下
          (1)酸素供給不足(肺胞換気低下、吸入酸素低下)
          (2)酸素消費量(高体温、過激な運動)
         2)血液への供給能力
          (1)拡散障害
          (2)換気血流比の増加
          (3)毛細管血流量の著減
         3)静脈血の混合
          (1)無気肺、換気血流比の著減(肺内シャント)
          (2)心大血管シャント、動静脈瘻(心内シャント)
       ・高炭酸ガス血症:
         1)肺胞換気の低下
          (1)呼吸運動低下
          (2)気道の広範囲な狭窄、閉塞
         2)肺血流の減少
          (1)高度な肺梗塞 
          (2)高度な間質障害

#2.呼吸不全に関連した循環障害
   [要因]・器質的変化及び低酸素性肺血管攣縮からくる肺血管抵抗による肺高血圧症
       ・肺高血圧症に伴う右室の肥大、拡張による肺性心
       ・低酸素血症による左心不全、ARDSや敗血症に伴う肺水腫
       ・低酸素血症、低カリウム血症、酸塩基障害による不整脈

#3.人工呼吸器使用中における合併症
   [要因]・分泌物貯留による気道閉塞、肺、気道感染
       ・気道確保に起因する気道の損傷、チューブトラブル
       ・人工呼吸器の管理面での問題
       ・気道内容圧に起因する肺損傷、循環抑制

#4.精神的不安
   [要因]・呼吸苦、死への恐怖
       ・状況を理解していないことによる知識不足
       ・言語的コミュニケーション障害
       ・治療的環境に関連した不安

#5.原因疾患の存在
   [要因]・呼吸中枢の障害
       ・脊髄末梢神経呼吸筋の障害
       ・胸郭及び胸膜の障害
       ・気道、肺の障害
       ・心、血管系の障害

#6.呼吸不全に関連した脳神経障害
   [要因]・炭酸ガスに由来するCO2ナルコーシスと低酸素血症による脳障害

#7.呼吸不全に関連した消化器系障害
   [要因]・低酸素血症、高炭酸ガス血症、アシドーシス、ストレス、栄養障害による胃潰瘍や上部消化管出血

#8.臥床安静による褥創発生
   [要因]・免疫能の低下
       ・低栄養
       ・鎮静剤使用による体動制限


Ⅲ.看護目標

1. 適切な治療処置により呼吸状態が安定する
2. 呼吸不全に関連した合併症の早期発見と予防に努める
3. 不安、苦痛が緩和され危機的状況から脱し精神的安静が保たれる


Ⅳ.看護問題

#1.ガス交換障害による低酸素血症、高炭酸ガス血症
   [要因]・低酸素血症:
         1)肺胞酸素分圧の低下
          (1)酸素供給不足(肺胞換気低下、吸入酸素低下)
          (2)酸素消費量(高体温、過激な運動)
         2)血液への供給能力
          (1)拡散障害
          (2)換気血流比の増加
          (3)毛細管血流量の著減
         3)静脈血の混合
          (1)無気肺、換気血流比の著減(肺内シャント)
          (2)心大血管シャント、動静脈瘻(心内シャント)
       ・高炭酸ガス血症:
         1)肺胞換気の低下
          (1)呼吸運動低下
          (2)気道の広範囲な狭窄、閉塞 
         2)肺血流の減少
          (1)高度な肺梗塞 
          (2)高度な間質障害

  &適切な治療処置により呼吸状態が安定する
  $早急

O-1.呼吸
     1)自発呼吸の有無、呼吸苦の程度、チアノーゼの有無、顔色
     2)呼吸数、深さ、型、呼吸音
     3)呼吸様式(努力呼吸、起坐呼吸、下顎呼吸、無呼吸発作、陥没呼吸の有無)
     4)胸郭の動き
     5)喀痰、気管内分泌物の量、性状
  2.意識状態及び神経症状
     1)意識レベル
     2)瞳孔径、対光反射
  3.随伴症状
     1)バイタル変化(血圧、脈拍、不整脈、発熱)
     2)頭痛
     3)眩暈
     4)錯乱
     5)発汗
  4.検査データ
     1)血液ガス
     2)SpO2モニター
     3)胸部X-P
     4)喀痰培養
     5)気管支ファイバー
     6)一般血液(Hb、Ht)

T-1.気道確保、肩枕の使用、必要時挿管の準備及び介助
  2.効果的な酸素吸入
     1)低濃度酸素投与(経鼻カニューラ、ベンチュリーマスク)
     2)高濃度酸素投与(リザーバー付き酸素マスク、テント)
     3)加圧による酸素投与(IPPB、ベンチレーター、アンビュー)
  3.安楽な体位を工夫する(呼吸仕事量軽減のためセミファーラー位にする)
  4.薬物療法の介助
     1)気管支拡張剤
     2)利尿剤
     3)抗生物質
     4)ステロイドホルモン剤
     5)酸塩基平衡の是正
     6)輸液
  5.対症療法の実施
     1)肺理学療法(体位排痰法、リラクセーション、胸郭可動域訓練、呼吸訓練)
     2)体位変換1~2時間ごと
     3)吸痰介助
     4)酸素消費を増加させることは避ける
  6.気管支ファイバーの介助

#2.呼吸不全に関連した循環障害
   [要因]・器質的変化及び低酸素性肺血管攣縮からくる肺血管抵抗による肺高血圧症

  &異常の早期発見と適切な治療により循環動態が安定する
  $早急

O-1.循環系
     1)血圧(初期時は上昇、進行期は低下)
     2)脈拍(初期時は増加、徐々に減少し徐脈)
     3)心電図(不整脈の有無)
     4)血行動態(肺動脈圧上昇、中心静脈圧、心拍出量、肺動脈楔入圧)
     5)時間尿量と水分バランス、比重、浸透圧
     6)体温
     7)皮膚温、皮膚色、冷汗
     8)自覚症状(動悸、眩暈、嘔気)
  2.全身状態(浮腫、静脈の怒張、肝腫大)
  3.検査データ(腎機能、電解質、胸部X-P)

T-1.医師の指示による確実な薬物投与
     1)強心剤
     2)抗不整脈剤
     3)肺動脈圧上昇に対して血管拡張療法
     4)利尿剤
     5)アルブミン製剤
     6)酸塩基平衡の是正
  2.末梢の保温

#3.人工呼吸器使用中における合併症
   [要因]・分泌物貯留による気道閉塞、肺、気道感染
       ・気道確保に起因する気道の損傷、チューブトラブル
       ・人工呼吸器の管理面での問題
       ・気道内容圧に起因する肺損傷、循環抑制

  &適切な人工呼吸療法が受けられ、合併症を起こすことなく呼吸状態が安定する
  $人工呼吸器離脱まで

O-1.呼吸状態
     1)呼吸様式、呼吸パターン、呼吸数
     2)呼吸音
     3)胸郭の動き(左右対称性、呼吸筋力低下の程度)
     4)ファイティング、バッキングの有無
     5)気管内分泌物の性状
  2.バイタルサイン
     1)血圧低下、心拍数増加
     2)発熱の有無
  3.血行動態(心拍出量の低下)
  4.時間尿量と水分バランス
  5.血液データ(WBC、CRPなど)
  6.人工呼吸器
     1)設定条件(モード、FiO2、呼吸数、分時換気量、I:E比)
     2)実測値(気道内圧、呼吸数、換気量)
     3)アラーム設定値
     4)チューブ、回路のリーク、閉塞
     5)加温、加湿

T-1.気道閉塞、肺、気道感染に対して
     1)気管内吸引
     2)吸引後はアンビューで加圧
     3)肺理学療法
     4)体位変換
     5)医師の指示による薬物療法(去痰剤、抗生物質)
     6)口腔、鼻腔内保清
  2.気道損傷、チューブトラブルに対して
     1)チューブの固定の工夫(ある程度の可動性をもたせる)
     2)気管内吸引
     3)2週間毎のチューブ交換
     4)加温、加湿
     5)カフ圧チェック
     6)患者の鎮静(医師の指示のもと鎮静剤投与)
  3.肺損傷、循環抑制に対して
     1)緊急的対症療法(胸腔ドレーン)の介助
     2)気道内圧を低下させる工夫(換気条件の変更、患者の鎮静)
     3)輸液による循環血液量の維持
     4)医師の指示による強心剤、昇圧剤の投与

#4.精神的不安
   [要因]・呼吸苦、死への恐怖
       ・状況を理解していないことによる知識不足
       ・言語的コミュニケーション障害
       ・治療的環境に関連した不安

  &不安・苦痛が緩和され危機的状況から脱し精神的安静が保たれる
  $できるだけ早急

O-1.患者の言動、行動、表情を注意深く観察
  2.睡眠状態

T-1.患者が訴えやすい環境を作る
     1)声かけを頻回に行なう
     2)訴えをよく聴く
  2.不用意な言動は慎む
  3.効果的なコミュニケーションを図る(50音字表、指文字、筆談)
  4.危機的段階に応じた援助
  5.気分転換を図る(ラジオ、音楽)
  6.夜間睡眠がとれるように配慮
  7.面会の配慮
  8.医師から十分に説明が受けられるように仲介
  9.医師の指示による鎮静剤の投与
  10.必要時抑制帯の使用

E-1.集中治療室に関する説明
  2.処置、検査、ケアに関する説明
  3.抜管すれば再び会話できることを説明

#5.原因疾患の存在
   [要因]・呼吸中枢の障害
       ・脊髄末梢神経呼吸筋の障害
       ・胸郭及び胸膜の障害
       ・気道、肺の障害
       ・心、血管系の障害

  &適切な治療処置により呼吸状態が安定する
  $早急

O-1.呼吸状態
  2.バイタルサイン
  3.意識レベル

T-1.原因疾患に対する治療処置の介助

#6.呼吸不全に関連した脳神経障害
   [要因]・炭酸ガスに由来するCO2ナルコーシスと低酸素血症による脳障害
  &異常の早期発見に努め、二次的合併症が起こらない
   呼吸状態が安定し意識状態が回復する
  $早急

O-1.意識レベルと症状チェック
     1)CO2ナルコーシス(頭痛、倦怠、傾眠、記銘力・思考力減退、昏迷、昏睡)
     2)低酸素血症(企図振戦、不随意運動、意識消失)
  2.血液ガスデータ

T-1.異常時は速やかに医師に連絡
  2.環境を整え、転落や自己抜管などの危険を防止
  3.不穏時は抑制帯の使用や医師の指示による鎮静剤の投与
  4.声かけし不安の除去

#7.呼吸不全に関連した消化器障害
   [要因]・低酸素血症、高炭酸ガス血症、アシドーシス、ストレス、栄養障害による胃潰瘍や上部消化管出血

  &異常の早期発見に努め、出血などの異常時は適切な処置が受けられる
   精神的安静が保たれる
  $早急

O-1.胃部・腹部症状(心窩部痛、嘔気、嘔吐、腹部膨満、吐血、下血の有無と性状)
  2.バイタルサイン
  3.血液データ
  4.栄養状態
  5.精神状態、ストレス状況

T-1.腹圧を高めることは避け、安楽な体位を工夫
  2.出血を起こした場合は速やかに医師に連絡し指示を仰ぐ
  3.環境の整備に努め、落ち着いた雰囲気をつくる
  4.薬物療法の介助

#8.臥床安静による褥創発生
   [要因]・免疫能の低下
       ・低栄養
       ・鎮静剤使用による体動制限

  &褥創が予防できる
  $離床できるまで

O-1.皮膚の状態(褥創好発部位の皮膚色、発赤の有無)
  2.循環障害の有無
  3.疼痛の有無
  4.一箇所に長時間の圧迫はないか

T-1.体位変換
  2.良肢位の保持
  3.エアマットの使用
  4.清拭
  5.シーツ、寝衣のしわをのばす
  6.SpO2センサーは2時間ごとに位置変換し圧迫壊死を避ける
  7.発赤時はデュオアクティブ貼用

気胸患者の標準看護計画

気胸患者の標準看護計画

気胸とは

 気胸とは肺と胸壁との間の胸膜腔に空気の存在する状態である。通常、気胸は胸膜下にできた肺嚢胞が破れて起こるが、喘息などの慢性胸部疾患患者が強い咳をしたときにも起こる。年齢的には気胸は若い人に起こる事が多い。また、傷が胸膜を突き破り、胸膜を穿孔した場合にも起こる。これらの原因により胸膜腔は大気圧となるので、患側の肺は虚脱し、痛みと呼吸困難を伴う。さらに、進行し胸膜腔が陽圧となり心臓と縦隔が健側の肺の方に移動するものを緊張性気胸という。


症状

1. 胸部の鋭い痛み
2. 呼吸困難
3. 不安感
4. 微弱な頻脈(緊張性気胸)
5. 血圧低下(緊張性気胸)
6. 患側の正常な胸部運動の停止


検査

胸部X-P: 虚脱した肺の程度、縦隔偏位の程度
血液ガス分析


治療

 1.保存的療法
安静
穿刺脱気
胸腔ドレナージ

 2.手術療法(外科的療法)
VATS(胸腔鏡下)
開胸術




看護計画(胸腔ドレナージ)


アセスメントの視点(胸腔ドレナージ)

 気胸は症状が軽妙な場合、空気は胸腔内から周囲の組織に次第に吸収されるので特別な治療を施さなくても肺は膨張する。しかし、肺虚脱の程度が著しく激しい痛み、呼吸困難が伴う場合は穿刺脱気、胸腔ドレナージを行う。患者はドレーンを挿入されることに対して不安を生じやすい。療法に関する正しい知識と理解をもてるよう患者に情報を与え、不安を軽減するように援助することが重要である。また、ドレーンパックの取り扱いについて十分な説明と指導が必要である。挿入中は、痛みが伴う、その痛みを最小限とし、生活しやすいように環境を整えていく必要がある。


問題リスト(胸腔ドレナージ)

#1.ドレーン挿入による疼痛
   〔要因〕・ドレーン挿入

#2.セルフケア不足
   〔要因〕・疼痛
       ・ドレーン挿入による拘束

#3.ドレーン挿入中の感染や閉塞
   〔要因〕・ドレーン挿入
       ・ドレーン挿入による体動制限
       ・ドレーンの長期挿入


看護目標(胸腔ドレナージ)

1. 十分な換気が維持でき肺拡張がなされる
2. 疼痛が緩和され、安楽な呼吸ができる


看護問題(胸腔ドレナージ)

#1.ドレーン挿入による疼痛
  &疼痛が緩和され深呼吸ができる
  $ドレーン抜管まで

0-1・疼痛の程度
  2・呼吸状態
  3・睡眠状態
  4・ドレーン状態チェック

T-1・医師の指示にて鎮痛剤の使用
  2・安楽な体位の工夫

E-1・痛み出現時、呼吸困難時は直ちに知らせるよう説明する

#2.セルフケアが不足
  &セルフケアの不足が補える
  $ドレーン抜管まで

0-1・セルフケア不足部分の確認

T-1・身体の保清、身のまわりの介助
  2・ドレーンの管理
  3・環境整備

E-1・歩行許可があれば胸腔ドレーンの取り扱い方を指導する

#3.ドレーン挿入中の感染や閉塞
  &発熱なくドレナージがスムーズにできる
  $ドレーン抜管まで

O-1・熱型
  2・呼吸状態
    a・呼吸音
    b・呼吸様式
    c・皮下気腫の程度
    d・疼痛の有無、程度
  3・ドレーン挿入部の皮膚の状態
  4・胸腔ドレーンの管理
    a・吸引圧の確認
  5・ドレーンや接続チューブの圧迫、屈曲の有無
  6・ドレーンの固定の状態
  7・エアリーク、呼吸性移動の有無
  8・排液の性状、量およびその変化

T-1・ドレーン挿入部のガーゼ交換:1回/日
  2・清拭時、ガーゼ交換時固定部位の確認
  3・ドレーン周囲の清潔を保つ
  4・体動時のドレーンの屈曲に注意する
  5・管のミルキングは一般に不必要であるが、ドレーンの排液が濃い、またはフィブリンが付着していて詰まる恐れのある場合は医師に確認のうえ施行する

E-1・体動後のドレーンの状態に気を配るよう指導する



看護計画(手術療法)


アセスメントの視点(手術療法)

 手術療法は、再発を繰り返す例や、保存療法で肺拡張が十分でないもの、ブレブ・ブラの存在により換気障害を起こしているもの、外傷により血気胸を起こしているものなどに施行される。胸腔を開く場合は胸腔内圧の変化と肺への直接的な手術侵襲により、術後は換気容積の減少を招きやすく無気肺、肺炎などの合併症を起こしやすい。肺合併症の徴候を早期に発見し対処する必要がある。


問題リスト(手術療法)

手術前

#1.肺の虚脱による呼吸困難
   〔要因〕・肺の虚脱による呼吸面積の低下

#2.手術に対する不安
   〔要因〕・疾患そのものへの恐れ
       ・手術そのものへの恐れ
       ・検査や治療に対する情報不足
       ・緊急入院による慣れない環境
       ・手術後や退院後の予期的不安


手術後

#1.痰の貯留による無気肺、肺炎の併発
   〔要因〕・手術操作による分泌物の増加
       ・麻酔、鎮痛剤による呼吸抑制
       ・咳嗽が無効で分泌物の喀出困難
       ・肺組織の切除に伴う肺胞表面の減少

#2.疼痛による呼吸困難
   〔要因〕・組織の外傷、肋間神経の刺激、術式(斜切開)による痛み
       ・ドレーンの挿入に伴う組織の刺激
       ・ドレーンが抜けるのではないかという不安から深呼吸へのためらい

#3.エアリークの長期持続
   〔要因〕・術後の治癒遅延


看護目標(手術療法)

1. 十分な肺拡張がなされる。
2. 術後合併症が防止される
3. 疼痛が緩和され深呼吸ができる


Ⅳ.看護問題(手術療法)

手術前

#1.肺の虚脱による呼吸困難

  &十分な換気が維持できる
  $入院時~手術まで

0-1.胸痛の程度
  2.呼吸状態
    a.呼吸困難
    b.呼吸音
    c.呼吸様式
    d.胸隔の動き
  3.検査所見
    a.胸部X-P
    b.血液ガス分析
  4.血圧、脈拍の変動

T-1.体位の工夫(ファーライ位、呼吸困難増強時は坐位)
  2.安静保持
  3.酸素吸入(医師の指示)

E-1.禁煙指導
  2.安静指導
  3.治療(脱気、胸腔ドレナージ)の必要性の説明

#2.手術に対する不安
  &手術の必要性を理解し不安なく手術を受けられる。
  $手術決定~手術まで

O-1.言動、表情
  2.理解度
  3.患者の精神状態の把握

T-1.患者の訴えを聞き、適切な対応をする
  2.患者の理解度に応じた手術の説明を行う
  3.手術前の呼吸訓練は行わない場合もあるので医師に確認しておく

E-1.不安を表出するよう話す


手術後

#1.痰の貯留による無気肺、肺炎の併発
  &去痰が十分され安楽な呼吸ができる
  $術後~7日

0-1.呼吸状態
    a・呼吸音、肺雑音の有無
    b・努力性呼吸、異常呼吸の有無
    c・呼吸パターン、胸隔の動き
  2.痰の状態:量、性状、色、粘稠度
  3.血液ガスデータ
  4.胸部X-P所見

T-1.去痰を図る
    a・創部圧迫による咳嗽
    b・吸入:3~6回/日
    c・タッピング、バイブレータの使用
    d・体位ドレナージ
    e・サクション
  2.口腔内ケア
    a・含嗽、歯磨き

E-1.創部を押さえて咳をし、痰を出すよう指導する
  2.深呼吸を十分行うように指導する

#2.疼痛による呼吸困難
  &疼痛が緩和され深呼吸ができる
  $術後~7日

O-1.疼痛部位の確認
  2.疼痛の程度
  3.呼吸状態

T-1.体位を工夫し安楽につとめる
  2.鎮痛剤の使用
    a使用後は呼吸抑制、血圧低下に注意する
  3.硬膜外チューブのラインの確認
  4.咳嗽時は創部に緊張がかからないようにする

E-1.咳嗽の方法を指導する

#3.エアリークの長期持続
  &エアリークが消失し肺の拡張がなされる
  $術後~7日
O-1.エアリークの程度
  2.胸部X-Pの状態
  3.ドレーンより薬剤を注入後は胸痛、発熱の観察
  4.ドレーンより薬剤を注入後は白血球値のチェック

T-1.発熱時はクーリング、解熱剤の使用
  2.疼痛時鎮痛剤の使用

E-1.薬液注入後の症状(痛み、発熱)について説明する

器質性精神障害患者の標準看護計画

器質性精神障害患者の標準看護計画


器質性精神障害とは

 器質性精神障害は従来、外因性精神障害と呼ばれるもので、脳の一次的な病変に基づく精神障害(脳器質性精神病)と脳以外の身体疾患に起因する精神障害(症状性精神病)がある。

 1.急性の脳器質性精神障害、症状性精神障害
 粗大な一次性の脳病変に伴って生じる精神障害で、病因として、1)中枢神経系の感染症、2)薬物・アルコールによる離脱症状、3)急性代謝障害、4)外傷・火傷、5)中枢神経障害、6)低酸素症、7)内分泌障害、8)急性血管障害、9)薬物・有機溶剤による中毒、10)重金属中毒、11)サイアミン・ビタミンB12欠乏等がある。

 2.慢性の脳器質性精神障害
 各種の身体疾患に伴って二次的に障害されて出現する精神障害で、病因として、1)神経変性疾患、2)脳腫瘍、3)外傷、4)進行麻痺、その他の脳炎、5)血管性認知症、多発性梗塞、6)代謝性疾患、7)内分泌疾患、8)中毒性疾患、9)低酸素状態、10)ビタミン欠乏や栄養障害等があげられる。


アセスメントの視点

 臨床症状を規定する要因として重要なものに、急性か、亜急性か、慢性か、ということがある。急性の脳器質性精神障害あるいは症状性精神障害では意識の障害が基礎にあり、特徴的な症状として傾眠、昏迷、昏睡といった意識水準の低下と、それに錯覚、幻覚、妄想等の精神現象が加わった状態である意識混濁があげられる。意識の混濁による精神症状はアメンチア、もうろう状態、譫妄等で可逆的で浮動性であるという特徴をもつ。また意識障害から回復する段階で一次的に感情、意欲の障害、不機嫌、健忘等の症状がみられることがあるが「通過症候群」と呼ばれるもので、意識障害はほとんど目立たず経過は可逆的である。慢性の脳器質性精神障害では軽度の時は不定愁訴を主とする神経衰弱様症状や人格変化等がみられるが、重度になると認知症が目立ってくる。一般的には持続性で多くは不可逆的である。しかし器質性精神障害には各疾患特有の神経身体症状があり、経過・治療・予後は多種多様となるため、それらも十分
理解しておく必要がある。


症状

 器質性精神障害には病因の異なる種々の疾患が含まれ、様々な精神症状が出現する可能性がある。しかし疾患の種類とは無関係にいくつかの点で共通する精神症状(ないしは精神病像)がみられることもあり、これらの主な症状を説明する。

 1.急性の脳器質性精神障害・症状性精神障害の特徴
1)意識混濁: 注意力の低下、思考の混乱、錯覚、幻視、昼夜逆転、活動性の亢進あるいは低下、見当識障害

 2.慢性の脳器質性精神障害
1)認知症
2)健忘症候群: 短期及び長期の記憶障害、失見当識、作話
3)器質性幻覚症: 意識混濁を伴わない幻覚
4)器質性感情症候群: 躁あるいはうつ状態
5)器質性不安症候群: 繰り返される不安、全般性の不安
6)器質性人格症候群: 不安な感情、明らかな攻撃、激怒反応、反社会的行為、性的逸脱、高度感情の低下、無気力、疑い深さ


検査

 臨床症状から想定される原因疾患を種々の検査を用いて検索する
 → (例) ピック病:CTスキャン、MRI、SPECT、EEG、心理検査(神経心理)


治療

 器質性精神障害では身体医学的検査が診断する上で不可欠であり、急性型では原因を究明しそれを治療することが何よりも優先される。慢性型の認知症状態においては認知症そのものを完全に回復させる治療法はなく、一次性脳萎縮による認知症は残存機能の保持及び合併症の予防が治療の中心となる。また抑うつ、不安、不眠等の周辺症状に対しては対症療法が必要な場合もある。
 → (例) 一酸化中毒:高圧酸素療法、対症療法として向精神薬を使用


経過と管理

 器質性精神障害は慢性・急性に分類される。急性の状態は脳の機能障害による症状の突然の発症で始まり、多くは譫妄を伴うことが多い。障害は時間の経過と治療によって回復するか、または原因によっては機能障害を残したり、または進行性で回復できずに認知症に至ることもある。慢性の状態としてはアルツハイマー病のように一般にやや潜行性に発症するものがあり、症状の進行は緩慢で不可逆性のものもあれば、急性から慢性に移行するものもある。




看護計画


Ⅰ.アセスメントの視点

 器質性精神障害を来す疾患は非常に多く、その看護を詳細に論じるのは困難であるが共通する点も多い。急性期においては原因疾患が治療・除去されることで患者は急速かつ劇的に回復することが多く、医師の適切な診断・指示に基づいた基礎疾患の身体的な症状への援助が必要である。また重要な症状として意識の混濁(臨床的には譫妄が多く、特に夜間に出現)があり、長期に及ぶと患者を疲弊させ、認知症を進行させることもある。原因疾患のチェック・治療を行うと同時に譫妄を増悪させている要因、すなわち環境の変化、夜間長期の拘束、終日変化のない病室、看護者の言動等についても注意し、できるだけ保護的に接していくことが大切である。慢性症状に対して、自傷・他害・器物破損等の危険がなく、妄想的な考えに囚われず生活できるよう援助していく必要がある。


Ⅱ.問題リスト

#1.夜間の異常行動による睡眠の障害
   [要因]・失見当識
       ・思考の混乱
       ・錯覚
       ・幻覚・妄想
       ・精神運動興奮
       ・拘束
       ・環境の変化
       ・原因疾患の悪化

#2.失見当識に基づく周囲への不適切な解釈
   [要因]・幻覚、妄想
       ・記憶障害
       ・感情の多様性
       ・環境の変化
       ・注意障害
       ・知的能力の低下(認知症)
       ・判断力の障害
       ・原因疾患の悪化・術後

#3.精神症状による自傷・他害・器物破損行為
   [要因]・幻覚、妄想
       ・錯覚
       ・衝動の抑制障害
       ・激怒反応
       ・精神運動興奮
       ・周囲への無関心
       ・絶望感
       ・判断力の障害
       ・知的能力の低下


Ⅲ.看護目標

1. 休息・睡眠・活動のバランスを維持または回復できる
2. 損傷の危険がなく他者や器物に危害を加えない
3. 心身両面から患者に刺激を与え、機能低下と認知症状態の進行をできる限り食い止め、情緒的な生活の安定と適応を図る


Ⅳ.看護問題

#1.夜間の異常行動による睡眠の障害
   [要因]・失見当識
       ・思考の混乱
       ・錯覚
       ・幻覚・妄想
       ・精神運動興奮
       ・拘束
       ・環境の変化

  &患者、他患者の安全が守られ、かつ安心して入眠することができる
  $退院まで

O-1.見当識:時、場所、自己の置かれている状況等
  2.幻覚、妄想状態
  3.昼間の睡眠・行動状況
  4.夜間の幻視、錯覚の内容と出現時間及び行動状況
  5.原因疾患の悪化の程度
  6.全身状態、VS
  7.意識状態の変化

T-1.患者の事故防止に努める
     1)危険物を周囲に置かない
     2)障害物を除去し動きやすい環境をつくる
     3)患者の持ち物の所在を把握しておく
     4)ベッド柵の使用や低床ベッドを利用する。またはマットレスを床上に降ろす
     5)夜間覚醒している場合は訪室を密にし、常に視野の中に入れる
     6)離院した場合は「緊急事故発生時の手順」に従う
  2.患者の睡眠を促す
     1)患者にとって譫妄体験は本物だということを念頭において不用意に否定しない
     2)深呼吸を促したり、背部マッサージ、湯たんぽ等身体的安眠を図る
     3)就眠時、患者の側で見守り手を握る等して入眠を促す
     4)就眠前にテレビ鑑賞や読書等の気の休まる習慣を持つよう促す
     5)夜間、暗い部屋が不安な場合は部屋の電気を明るくしておく
     6)どうしても入眠できない場合は医師の指示を受ける
  3.他患者の睡眠が確保できるよう配慮する
     1)部屋の考慮
  4.原因疾患の改善への援助
     1)譫妄の原因となる原因疾患の身体管理を行い、悪化防止に努める
     2)水分・栄養の補給を行い、合併症予防に努める
  5.失禁や放尿をすることがあるので、時間的に排尿誘導したりオムツを使用する
  6.幻視により不安・不穏が強い場合
     1)訴えをよく聴いて現実に有り得ないことを説明し保証する
     2)病院にいることを常に思い起こさせる
     3)医師や看護者に安全が保障されていることを確信させる
     4)精神症状が強い場合は医師の指示に基づき処置を行う
     5)喫煙時は観察下とする
  7.日中は昼夜逆転しないよう活動を促す
  8.不必要な夜間長期の拘束は避ける
  9.絶えず安心感が持てるよう援助する
     1)安心できる言葉掛けや手を握る等良い関係づくりに努める
     2)行動を急がすような声掛けはしない。一つ一つのことをゆっくり対応し納得で
      きるように関わっていく
     3)周囲の刺激に敏感になったり静けさが不安を助長することもあるので、環境の
      変化に注意する
  10.見当識をつけるための情報を提供し,治療を進めるに必要な処置について繰り返し
    説明する

#2.失見当識に基づいた周囲への不適切な解釈
   [要因]・幻覚・妄想
       ・記憶障害
       ・判断力の低下
       ・環境の変化
       ・注意障害
       ・不安、混乱の増大
       ・理解不足

  &周囲への適切な知覚を示すことができる
  $退院まで

O-1.意識障害の有無
  2.健忘の有無:作話
  3.妄想・幻覚の有無
  4.失認の有無:視覚・聴覚・身体・触覚

T-1.患者周囲の刺激を少なくする
  2.患者が恐れを抱いた時は安全について保証を示し患者を安心させる
  3.患者が懐疑的な考えを伝えてきたら理性を弁えた疑念を表出する。
    他人に対して執拗な疑いを持つことは患者へのマイナス影響を与えるということを説明する
  4.患者が不正確に知覚した発言がみられた時は否定し、実際に存在する状況を正しく話す
  5.患者の周囲に親しみのある物を置く(患者が元気な時から使用していた物等)
  6.時計、カレンダー、毎日のスケジュール等、現実の見当識を維持する物を側に置く
  7.患者と会話する時は面と向かい簡単な説明で関わる。耳元で話さない
  8.患者が間違った考えにふけらないようにする。この状況が始まった時は実際の人と現実の出来事について患者と話し
    現実感を与える
  9.暴力の意図が感じられる妄想の時は患者の言動を密に観察していく
  10.術後であればカテーテルやDIV等ドレーン類を抜去する場合があるので抑制帯等考慮する

E-1.患者のおかれた現実と周囲の事柄について正しい見当識が持てるように説明する
  2.家族や援助する人へ患者に時間・人・場所・環境等の見当識が持てるよう指導する
  3.思考と行動が適切である時、また患者が現実に基づいた考えを表現した時は肯定的な支持をしていく

#3.精神症状による自傷、他害、器物破損行為
   [要因]・衝動の抑制障害
       ・精神運動興奮
       ・判断力の障害
       ・知的能力の低下
       ・理解力の低下
       ・反社会的行為
       ・攻撃性
       ・不安
       ・セルフケア能力の低下

  &自己または他者を傷つけない
  $退院まで

O-1.日常生活行動
  2.他患者との接し方
  3.訴えの内容と行動
  4.興奮の原因を把握する
  5.外傷、身体的異常の有無

T-1.精神症状を観察し、失見当識・困惑の程度を把握する
  2.環境を整備し安全手段を講じる
     1)備品の配置に気を配り、危険物を周囲に置かない
     2)行動の観察を頻回にし、要時付き添う
     3)痙攣のある患者には特に安全面に配慮し、ベッド柵にクッションをつける等予防措置をとる
     4)極端な多動行動が見られる時は、患者の保護のため医師の指示で抑制と精神安定剤を使用し、心身ともに安定を図る
  3.患者を常時観察下におくか所在を把握する。夜間は訪室を密にし常に視野に入れる
  4.患者周囲の刺激(照度を落とした照明、単純な室内装飾、低い騒音、人のいない状態等)を最小限にする
  5.患者の側では静かな態度を示す。不必要に患者をびっくりさせるようなことは避け、絶えず安心感と指示を与えていく
  6.現実認知の誤りは割り切った態度で訂正する。患者の誤りを笑ったりせず、他患者がそれを冷やかしている時は注意し、
    患者を刺激しない
  7.不安の程度・増強を示す患者の行動を観察し評価する
  8.看護者は複数で対応する
  9.周囲及び患者自身に危険が及ばないように配慮する
  10.疲労が激しいので、状態に応じて水分と食物の摂取を促す

E-1.将来援助に当たる人に、
     1)患者の不安増強を示す行動、
     2)暴力を起こす前にうまく介入する方法を認識できるよう指導する

顔面神経麻痺のある患者の標準看護計画

顔面神経麻痺のある患者の標準看護計画

顔面神経麻痺とは

 顔面神経は顔面表情筋の運動と、舌の前3分の2の味覚、および涙腺や唾液線の一部を支配している。顔面神経麻痺は、顔面神経核よりも上位の障害(大脳、中脳)によって起こる中枢性顔面神経麻痺と、 顔面神経核より末梢の障害で起こる末梢性顔面神経麻痺とに大別される。表情筋のうち前額部の筋肉は大脳から両側性に支配されるため、中枢性顔面神経麻痺では顔面下半分は麻痺するが、額にしわをよせることができる。一方、末梢性顔面神経麻痺では額を含むすべての表情筋の運動が障害される。これにより、顔面神経麻痺の原因部位の識別が可能となる。


症状

 麻痺側顔面の筋力が低下し、閉眼時にも眼瞼が十分に閉じず眼球結膜が見える(兔眼)。また麻痺側の鼻唇溝が浅く、口角がたれるため唾液や食物がこぼれやすい。口唇を閉じる力も麻痺側では弱く、閉じた唇を指で押し広げることによって確かめられる。また、額にしわを寄せるようにしても、麻痺側半面にはしわができない。
 顔面の感覚は障害されないが、麻痺側の舌の前3分の2の味覚障害がおこることがあり、また聴覚異常をきたすことがある。


検査

 1.運動機能の検査
 患者に眉を上げるように命じ、額にしわがよるかどうかをみたり、目を強くつぶるように命じて眼輪筋の収縮をみたり、上下歯を噛み合わせておいて口を開き歯を出させ(イーッと言わせる)、口角の動きの左右差を調べる。麻痺側の口角の緊張が不十分で、鼻唇溝が明らかに浅くなる。
 2.味覚検査
 少量の砂糖、塩、クエン酸などを舌の3分の2に塗って、味覚を調べる。


治療

 初期には各種ビタミンやステロイド剤を用い、数日後からマッサージや電気治療などによってリハビリテーションを行う。




看護計画


Ⅰ.アセスメントの視点

 脳外科における顔面神経麻痺の原因として、小脳橋角部腫瘍、頭蓋底骨折、脳底動脈瘤、硬膜外血腫が上げられる。また、術操作により、あるいはやむなく顔面神経を切断、損傷した場合、術後浮腫などにより一過性に出現する場合もある。切断の場合は神経吻合術が行われるが、完全に回復するのは困難であり、顔面の形成術が必要となることもある。
 患者と話す時や、患者が笑った時に、口角など顔面筋の動きを注意深く観察することで、顔面神経麻痺に気づく。
 顔面神経麻痺のある患者では、眠っている時でも十分に閉眼していないことがあり、これによって角膜が障害を受けることがある。したがって、これらの患者に対しては眼軟膏やアイパッチなどで、角膜の保護に心がけることが重要である。食事に際しても麻痺側の口角から食物がこぼれることが多い。食事介助をするときにはこの点にも注意し、健側で咀嚼させるなどの配慮をすべきである。筋萎縮を予防する意味で早期に顔面マッサージを指導し、顔面神経麻痺を受け入れるよう援助していく。


Ⅱ.問題リスト

#1.角膜損傷、角膜潰瘍の危険性
   〔要因〕・兎眼

#2.ボディイメージの障害
   〔要因〕・頬筋萎縮による顔貌の変化

#3.口腔内汚染
   〔要因〕・咀嚼困難で麻痺側に食物がたまりやすい
       ・顔面、口腔内の知覚低下

#4.精神的不安定、動揺がある
   〔要因〕・ボディイメージの障害


Ⅲ.看護目標

1. 目の保護と角膜損傷の予防
2. 早期に顔面の運動、マッサージを行い、筋萎縮を予防する
3. 口腔内の保清に努める
4. ボディイメージの変化を受容でき、社会復帰にむけて自信がもてる


Ⅳ.看護問題(術前)

#1.角膜損傷、角膜潰瘍の危険性
   〔要因〕・兎眼
  &眼球結膜の充血が見られない
   角膜潰瘍が起こらない
O-1.しっかり閉眼してもらい閉眼の程度をみる
  2.眼痛、充血の有無
T-1.ケーパインの絆創膏固定にて保護する
  2.点眼を行う:4回/日
  3.睡眠時眼軟膏、点眼を行う
  4.睡眠時も閉眼困難であれば絆創膏で閉眼固定する
E-1.適宜、他動的に閉眼するように指導する

#2.ボディイメージの障害
   〔要因〕・頬筋萎縮による顔貌の変化
  &顔面神経麻痺を受け入れ積極的に生活する
O-1.麻痺の状態
T-1.マッサージ後、毎日の変化、訴えを聞き効果を知る
E-1.1日数回静かに上方に向けて顔面筋をマッサージするように指導する
  2.鏡を見ながら顔面筋の運動訓練を指導する
   
1)前頭部にしわをよせる
   2)目を閉じる
   3)口をすぼめる
   4)口を左右に動かす
   5)頬をふくらます
   6)口笛を吹く

  3.顔面を冷やさない
  4.大部分の患者は自然に改善することをよく説明し、励ます

#3.口腔内汚染
   〔要因〕・咀嚼困難で麻痺側に食物がたまりやすい
       ・顔面、口腔内の知覚低下
  &口内炎がなく口腔内がきれいである
O-1.食後、食物が残っていないか口腔内を見る
T-1.口腔ケア施行:毎食後
  2.流動食は麻痺口角側より流出してしまったり、むせたりしやすく摂取困難なため少量ずつ飲ませ、
    落ち着いてゆっくり摂取できる雰囲気を作る

#4.精神的不安定、動揺がある
   〔要因〕・ボディイメージの障害
 &精神的苦痛が緩和される
O-1.患者の訴え、態度に注意する
  2.症状の観察
T-1.疾病について医師のムンテラを聞き、看護婦での言動の統一を図る