看護計画
Ⅰ.アセスメントの視点
急性腎不全の多くは可逆牲であり、早期診断、早期治療が良好な予後をもたらす。急性腎不全の診断には下痢、嘔吐、尿閉などの現病歴、脈拍、血圧、脱水の有無などの身体状況の観察が非常に重要である。血液浄化法の進歩により急性腎不全の死亡率は減少しているが、一方において急性腎不全の多くがMOF(多臓器不全)の一分症としてのものであり、通常の血液透析治療には耐えられないような重症患者が増加しており、原因疾患によっては依然として死亡率が高い。MOFにおける急性腎不全の治療は単に腎臓の代行療法を行うだけでなく、不全に陥っているすべての臓器を補助するために各種の臓器サポート治療(人工臓器、血液浄化療法〉を駆使し、不全臓器の回復するのを待つ。透析治療が安全安楽に受けられるには患者、家族の協力が重要であり、おりにふれ患者、家族の疑問に応えていくことで理解が得られる。
Ⅱ.問題リスト
#1.ブラッドアクセスの確保と管理
〔要因〕・ダブルルーメンカテーテルの留置
#2.透析中の体外循環動態の管理
〔要因〕・循環血液量の減少
#3.透析治療中の身体的、精神的苦痛
〔要因〕・原疾患症状に腎不全症状が加わり、身体への負担が大きい
・透析機器の存在、体動制限などによる圧迫感、拘束感
#4.家族の不安
〔要因〕・原疾患の経過、予後
・透析治療の経過、予後
Ⅲ.看護目標
1. 急性腎不全状態が改善されるために、患者の協力が重要であり、患者が現在の状態を理解でき、透析治療を受ける
2. 患者が重症で意識がない場合は、家族が現在の病状を理解し透析治療を受け入れる
Ⅳ.看護問題
#1.ブラッドアクセスの確保と管理
&透析治療が十分に行われるために、ダブルルーメンカテーテルの脱落、出血、カテーテル内の凝固などの異常が早期発見、予防できる
$ダブルルーメンカテーテル留置期間中
O-1.ダブルルーメンカテーテル留置部の感染防止、清潔保持
2.毎日の生食フラッシュ時カテーテル内の凝血の有無、血液の逆流状態の観察
3.カテーテル固定状態の観察(ナート固定状態、体外突出部分の長さの変化)
4.患者にカテーテル留置部の屈曲、圧迫、抜去をしないよう説明する
T-1.異常があれば医師に報告する
2.カテーテルの入れ換えの準備、介助
E-1.医師の説明で理解不足の内容があれば追加説明し、納得して透析治療が受けられるようにする
#2.透析中の体外循環動態の管理
&バイタルサインが安定した状態で透析治療が受けられる
$透析治療終了まで
O-1.バイタルサイン(血圧低下、血圧上昇、頻脈、徐脈、体温)
2.脱血血液流量が十分とれているか碓認
3.血液回路内の凝血の有無、血液の色
4.警報モニター数値の変動
5.抗凝固剤注入状況
6.血液回路内への空気流入
T-1.意識のある患者の場合、透析中の(気分不快、吐気など)どんな変化でも早めに知らせることが、透析治療が円滑に行われるために必要であることを説明する
2.血圧モニター、心電図モニターにより、バイタルサインの変動をチェックする
3.血圧低下時は生食注入し、医師の指示を受ける。必要時ショック体位をとる
4.血液流量が十分とれていない場合
1)カテーテルの位置の確認、絆創膏固定の見直し、再固定
2)改善なければ医師に報告、生食フラッシュ
5.抗凝固剤注入量の確認、スイッチ入れ忘れがないかチェック
6.モニター数値が上昇、警報プザーが鳴る場合
1)生食注入し血液回路内の凝血の有無、程度をチェック
2)凝血している部位(血液回路、ダイアライザー〉の交換
7.クランプの止め忘れ、はずし忘れ箇所がないか点検
E-1.透析治療を安全に受けるためには異常の早期発見、早期処置が行われることが重要であることを説明する
#3.透析治療中の身体的、精神的苦痛
&体動制限ある中で(血液流量が十分とれる範囲内で〉安楽な体位が保持できる。透析治療の必要性が理解され受け入れられる
$透析治療中
O-1.言葉での苦痛の表現
2.体動の回数の多さ、大きさ
T-1.苦痛に思っていることを話してもらう
2.透析治療に差し支えない範囲で体位変換を行う
E-1.急性腎不全状態を離脱するためには、頻回な透析治療が必要であること(毎日おこなわれる場合がある)を説明する
#4.家族の不安
&患者の身体状態の変化を理解し、透析治療を受け入れる
$透析治療中から離脱するまで
O-1.家族の表情、言動、態度
2.家族、患者間の疾病の理解、認識の差
T-1.家族とコミュニケーションを取り、不安や心配事を表出しやすいように受容的態度でかかわる
E-1.家族に患者の今後についての知識をあたえる