肝癌患者の標準看護計画
肝癌とは
肝癌は肝臓自体から発生した原発性肝癌と、他の臓器に発生し血管やリンパ管を通じて肝臓に転移した転移性肝癌に分類される。原発性肝癌のうちでは、肝臓の最も重要な働きをする肝細胞に由来する肝細胞癌が90%以上をしめる。そして、肝臓から分泌される胆汁を輸送する胆管の上皮細胞に由来する胆管細胞癌が数%みられる。小児の肝癌として胚芽腫がある。良性の腫瘍で最も多いのが肝血管腫である。肝細胞癌は肝炎ウイルスの感染が90%以上(B型肝炎ウイルス20%弱、C型肝炎ウイルス70%強)を占め、肝細胞癌発生に重要な役割を担っている。また、アルコ-ルや喫煙も癌発生に関与していると考えられる。肝細胞癌は多中心性発生することと血管侵襲により、肝内転移しやすく、再発率が極めて高く、多発例が多い。肝細胞癌の殆どは肝硬変や慢性肝炎を合併しており、肝硬変から高率に肝細胞癌が発生することが知られている。ウイルス性肝炎では、肝硬変への進展を阻止する事が重要である。
アセスメントの視点
肝癌患者の多くは、慢性の肝障害で長い療養生活を経て、肝硬変から肝癌の状態に移行する。その経過中に早期に肝癌が発見されることも多く、定期的な検査と治療が必要である。そのために入退院を繰り返さざるを得ず、その療養中に、生活活動範囲はしだいに制限され、仕事や病気自体にストレスを感じていることも考えられる。しかし、無症状であるがために、定期受診が疎かとなり、末期の肝癌の症状が出て、初めて分かる例もある。肝癌と診断されてからの経過が比較的長く、これまでの経過の流れから、血管腫と説明されることが多い。したがって、長期にわたる闘病生活を支援し、肝庇護を含めた生活が送れるよう援助しなければならない。
症状
慢性肝炎や肝硬変の経過中、早い時期に比較的小さな腫瘤として発見されることが多い。従って早期には肝硬変と変わりなく、特別な症状は見られないことが多い。しかし、末期では以下のような症状がみられる。
1.悪液質による食欲不振、体重減少、全身のだるさ
2.癌が大きくなることにより肝臓の腫れ、腹部膨満、腹痛、発熱、黄疸
3.癌が進行した場合、癌の破裂により激しい腹痛、急激な血性腹水貯留
4.食道静脈瘤の破裂による吐血、下血
5.肝不全の症状
検査
一般肝機能検査
腫瘍マ-カ-
腹部超音波検査
CTスキャン
MRI
血管造影
肝生検
治療
1.外科的治療
治療法の第一は根治の期待できる外科的治療といえる。特に早期の癌は切除できる例が増加している。多発性病変や肝硬変の進んでいる症例は手術療法は困難である。
2.内科的治療
肝予備能が低下している・多発病変がある等手術適応が無い場合、直径3cm以下の腫瘍、手術前の治療として内科的治療を行う。
・経皮的エタノ-ル注入療法(PEIT)
・経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)
・肝動脈塞栓術(TAE)
・化学療法
看護計画
Ⅰ.アセスメントの視点(診断確定までから治療までの時期)
肝癌の早期では無症状であり、殆どはエコ-、CTスキャンなど非侵襲的な検査で発見される。しかし、治療方法の選択にあたっては、血管造影、腫瘍生検などの侵襲の大きい検査が必要となる。そのため、検査の必要性を十分理解し、納得して検査が受けられるように配慮が必要であり、患者の安全、苦痛の緩和に努めなければならない。また、長期にわたる治療は、一定期間をおいて定期的に繰り返され、更に、長期にわたることが多い。そのため、身体的苦痛、精神的苦痛が大きい。治療に伴う合併症、副作用、身体機能の低下、肝機能の低下をまねく。治療の必要性を理解し、納得して治療が受けられるよう、十分な観察を行いながら、身体的苦痛を最小限にし、精神的サポ-トも行っていく必要がある。
Ⅱ.問題リスト(診断確定までから治療までの時期)
#1.検査や疾患についての不安
#2.検査の侵襲やその後の安静による身体的苦痛
#3.肝動脈塞栓術による、副作用
#4.肝内エタノ-ル注入療法またはマイクロ波凝固療法による副作用
#5.肝内に抗癌剤を注入することによる副作用
Ⅲ.看護目標(診断確定までから治療までの時期)
1. 検査、疾患に対する不安が軽減され、精神的に落ちついて検査が受けられる。
2. 検査に伴う身体的苦痛が軽減できる。
3. 正確な検査結果が得られるよう、患者の協力が得られる。
4. 疾患の治療内容について理解でき、治療が継続できる
5. 黄疸、腹水、肝性脳症、吐血、下血などの症状の発現時には、医師に報告し診察を受けることができる
6. 感染症および合併症についての的確な予防行動がとれる
Ⅳ.看護問題(診断確定までから治療までの時期)
#1.検査や疾患についての不安
&検査の必要性が分かり、納得して検査が受けられる
$検査直前まで
O-1.入院への適応状況
2.病状の受け止め、病識
3.性格
4.理解力
5.食欲、食事摂取状況
6.身体症状の有無、程度
7.睡眠状況
8.サポ-ト状況、家族背景
9.医療者との信頼関係
T-1.検査の必要性、方法を分かりやすく説明して協力を得る
2.検査の結果について、医師から十分説明が受けることができるよう配慮する
3.家族の支援が得られるよう、必要時参加を求める
4.不安が表出できるよう以下のケアをする
1).患者や家族の訴えをよく聴き、受容的態度で接する
2).不安が表出できるよう患者や家族の信頼関係をつくる
3).疾患に対する不安は、医師から十分説明が受けられるようにする
4).静かで休息の取れる環境をつくる
E-1.医師の説明で理解不足の内容があれば追加説明し、納得し検査が受けられるようにする
2.不安な状態を表出してもいいことを伝え、不明なところは質問できるよう促す
3.検査中であっても、苦痛あれば表出してもいいことを伝える
#2.検査の侵襲やその後の安静による身体的苦痛
&予測される苦痛が表現でき、予防的な対処方法が考えられる
苦痛出現時は医療者に報告できる
$検査終了まで
O-1.痛みの部位、性質
2.腰痛の有無、年齢、体型、既往疾患
3.バイタルサイン
T-1.予測される苦痛に対して、事前に予防対策を共に考える
腰痛に対しエア-マットの使用、消炎鎮痛剤の塗布、タオルなどの対策
2.腰痛出現時、腰部マッサ-ジ、医師指示による鎮痛剤与薬
3.可能な範囲内での安楽な体位を工夫する
4.言葉かけによりリラックスできるよう働きかける
5.床上排泄が困難な場合は導尿、又はバルンカテ-テル留置する
6.安静中に食べやすい食事形態にする
E-1.痛みや苦痛がある場合、医師、看護婦に報告する
#3.肝動脈内塞栓術による副作用
&自覚症状出現時には、医師または看護婦に報告でき、適切な処置が受けられる
$治療後1週間
O-1.治療後のバイタルサインのチェック、穿刺部の出血、痛み、下肢の循環(治療直後、2時間後、安静解除時、12時間後)38℃以上の発熱、繰り返す嘔吐、強い痛みがある場合は医師に報告し対処する
2.約1週間の熱型の観察
T-1.翌日ガ-ゼ交換し、創部の観察をする(出血の有無、穿刺部の観察、血腫の有無)3日後ガ-ゼ交換(出血、浸出液、炎症などがないか創部の回復状態をみる)
2.清潔:清拭3日目から異常がなければ入浴開始
3.翌日、放射線科の医師と共に、圧迫帯を除去する
E-1.医師より、TAEについて十分な説明をしてもらう
2.治療前の絶飲食、治療後の安静について説明をする
3.安静中の安楽な床上排泄について、本人と共に話し合う
#4.肝内エタノ-ル注入療法またはマイクロ波凝固療法による副作用
&自覚症状出現時には医師または看護婦に報告でき、適切な処置が受けられる
$治療後1週間
O-1.治療後のバイタルサインのチェック、穿刺部の出血、痛み、胃部症状の観察(治療直後、2時間後、6時間後、12時間後)38℃以上の発熱、繰り返す嘔吐、強い痛みがある場合は医師に報告し対処する
2.腹腔内出血、気胸の危険性も高い為、術中術後患者の訴えに注意し、頻回に観察を行う
3.約1週間の熱型観察
T-1.翌日ガ-ゼ交換し、創の観察をする
2.3日後ガ-ゼ交換し、異常がなければ、入浴開始
3.6時間後、2研医師の診察を受ける(PMCTは6時間後と翌朝)
E-1.医師よりPEIT(またはPMCT)について十分な説明をしてもらう
2.治療前の絶飲食、治療後の安静について説明をする
3.治療前に安静中の安楽な床上排泄について患者とともに話し合う
#5.肝内に抗癌剤を注入することによる副作用
&自覚症状出現時は、医師または看護婦に報告でき適切な処置が受けられる
$治療終了まで
O-1.バイタルサイン
2.in-outのチェック
3.嘔気、嘔吐の有無と程度
4.食摂取状況、体重の推移
5.検査データ(血液デ-タ一般、肝データ)
6.動注チューブ挿入部の皮膚の状況
T-1.熱発時、速やかに対処できるよう整えておく
2.注射、点滴の管理
3.患者の好む食事形態の工夫
4.易感染状態になったら準滅菌扱いとし、感染に留意する
5.体調に合わせて保清の援助を行う
6.動注チューブ挿入部のガ-ゼ交換(1週間に1回)、フラッシュ
E-1.治療にあたり、副作用の十分な説明を受けられるよう配慮
2.苦痛症状出現時は、医師または看護婦に報告できる
3.感染予防行動について説明する
1)人ごみを避ける
2)手洗い
3)含嗽
看護計画
Ⅰ.アセスメントの視点(タ-ミナル期)
肝癌患者の多くは長い療養を経て肝癌と診断され、繰り返し治療を行う過程で、徐々に癌の増大と背景肝の機能低下をきたし、肝不全状態に陥る。患者は病名を血管腫と説明されていることが多く、良くならない病状に不安と焦りの気持ちを抱きやすい。また、肝癌の増大による痛みや出血、腹水貯留、黄疸、肝性脳症などの苦痛を伴う状態で終末期を迎えなければならない。死を意識しながら苦痛を抱える患者と家族に対し、よりよい人間関係を築きながら、種々の苦痛症状のコントロ-ルに努め、出来る限り安楽な日々が送れるように働きかけなければならない。
Ⅱ.問題リスト(タ-ミナル期)
#1.食欲不振、腹満感、意識レベルの低下により栄養状態の低下
#2.肝機能低下による出血傾向、食道静脈瘤による消化管出血
#3.活動力の低下、腹水貯留による便秘
#4.病名、予後に対する不安
#5.黄疸に関連する掻痒感
#6.腹水貯留による呼吸困難、全身倦怠感、腹部膨満感、癌そのものによる痛み
#7.肝性昏睡に陥る可能性
Ⅲ.看護目標(タ-ミナル期)
1. 栄養状態が保たれる
2. 出血傾向を観察しつつ、異常時に報告できる。出血を予防する行動がとれる
3. 規則正しい便通がある
4. 不安を口に出して表現でき、精神的に安定した状態で闘病生活が送れる
5. 痒みが軽減し、安楽に過ごせる
6. 苦痛が緩和され、安楽に過ごせる
Ⅳ.看護問題(タ-ミナル期)
#1.食欲不振、腹満感、意識レベルの低下により栄養状態の低下
&栄養状態が保たれる
$退院まで
O-1.食欲、食摂取量の観察
2.体重の推移
3.嗜好物の内容、食事状況
4.検査デ-タ(T-P T-choなど)
T-1.食事の温度を適温にし、食べやすい工夫をする
2.食事の時間や回数を患者に合わせるよう考慮する
3.経口摂取不十分な場合、医師の指示のもと輸液を行う
4.制限内で、患者の嗜好に応じた食品が摂取できるよう考慮する
E-1.制限の必要性を説明し、家族とともに協力を得る
#2.肝機能低下による出血傾向、食道静脈瘤による消化管出血
O-1.胃部症状、嘔気等の観察
2.皮下出血、歯肉出血、鼻出血、貧血症状の観察
3.尿、便の性状、便潜血
4.内視鏡による食道静脈瘤の程度の観察
5.検査デ-タのチェック(Hb RBC HPt Pltなど)
T-1.採血、抜針後の止血を十分に行う
2.硬い食品、刺激性の強い食品は避ける
3.便通の調節に努める
4.緊急時に対応できる準備をしておく
5.食道静脈瘤破裂時は速やかに対処する
E-1.歯ブラシは柔らかいものを使用し、強く擦らないように指導する
2.鼻出血、歯肉出血、便の性状の変化や異常に気づいたら報告するよう説明する
#3.活動力の低下、腹水貯留による便秘
&規則正しい便通がある
$退院まで
O-1.便の性状(回数、色、硬さ)
2.腹部症状、痔の有無
T-1.患者の状態を考慮しながら、坐薬、浣腸、排気を行う
2.患者の状態に合わせてポ-タブルトイレ、便器、おむつの使用を考慮
E-1.便の性状、回数など、異常に気づいたら報告するよう説明
#4.病名、予後に対する不安
&不安を口に出して表現でき、精神的に安定した状態で闘病生活が送れる
$退院まで
O-1.患者の言動、表情
2.病名に対する理解度
3.精神状態
4.家族の精神状態、サポ-ト状況
T-1.医師と頻回にカンファレンスを持ち、一貫した態度で接する
2.患者、家族とコミュニケ-ションを多く持ち、どんな気持ちでいるか把握する
3.訪室を多くし信頼関係をつくる
4.患者、家族が自由に訴えられるよう雰囲気作り
E-1.医師より検査、治療の目的、必要性を十分説明してもらい協力を得る
2.心配なことは何でも話すよう説明
#5.黄疸に関連する掻痒感
&適切なケアを受けることによりかゆみが軽減する
$かゆみが消失するまで
O-1.皮膚の状態、眼球の黄染、かゆみの程度
2.尿の色調、白色便の有無
3.検査デ-タのチェック(ビリルビン値)
T-1.患者に合った保清(入浴、シャワ-浴、清拭)
2.発汗が多いときは乾布清拭を行う
3.掻痒感がある時はよもぎ清拭(水2リットルに対しよもぎ50グラムを20分間煮だす)をしたり、効果のないときは医師の指示に基づき、内服、注射、軟膏を使用
E-1.下着は肌を刺激しない綿を含むものを使用する
2.爪は短く切っておく
3.掻痒感増強時、および不眠時は報告するよう説明
#6.肝細胞癌そのものによる痛み、腹水貯留による呼吸困難、全身倦怠感、腹部膨満感などの苦痛
&苦痛が緩和され、安楽に過ごせる
$症状消失まで
O-1.倦怠感、腹部膨満感、腹痛の程度
2.in-outのチェック、浮腫の程度、利尿剤の効果
3.呼吸状態、腹部症状
4.腹囲、体重の推移
5.検査デ-タのチェック
T-1.安楽な体位を工夫し、適宜体位変換を行う(体交枕、安楽枕の使用、ギャッチアップ)
すぽんさーどりんく
すぽんさーどりんく
肝臓癌患者の標準看護計画
肝臓癌患者の標準看護計画
肝臓癌とは
原発性肝癌と転移性肝癌とに分類される。肝臓癌の95%が転移性肝癌である。
原発性肝癌とは、肝細胞より発生した癌腫を肝細胞癌(ヘパト-マ)、胆管細胞由来の癌腫を胆管上皮癌(コランジオ-ム)という。未分化の胎児性肝細胞に由来するものを肝芽細胞腫(ヘパブラスト-ム)といい、乳幼児に多い。このうち肝細胞癌が80~90%を占める。また肝細胞癌は肝硬変を合併する場合が多い。
肝細胞癌は肉眼的に塊状型、結節型、瀰漫型の3型に分けられるが、結節型が最も多い。組織学的にはエドモンソンの分類が用いられており、I、II型に比べ、III、IV型では細胞悪性度が高く、脈管内発育が著明で、高率に転移をきたす。肝癌の発育形式では肺や骨などに血行転移をきたしやすいが、門脈を経由しての肝内転移をみることが多く(娘転移)予後に重大な影響を与えている。
原因は、WHOのHBウイルス汚染地区と一致し、肝癌では抗原陽性率が高いことから、HBウイルスが肝癌発生になんらかの影響を及ぼしていると考えられている。また、わが国の肝硬変は肝炎後性の乙型肝硬変が多く、肝硬変患者の1/3に肝癌を併発するといわれ、肝癌患者の60~80%に肝硬変を合併している。
転移性肝癌とは、肝以外の臓器の悪性腫瘍が血行性(門脈、肝動脈)、リンパ行性、あるいは直接浸潤により肝に転移巣を生じたものをいう。
アセスメントの視点
肝癌は、自覚症状が少なく、肝腫瘍が大きくなってから気づく場合が多く、周囲臓器に及んでいることもあり、一般的に予後不良である。肝臓の機能の低下や肝炎や肝硬変、閉塞黄疸、糖尿病などを合併していることが多く、代謝異常による低栄養状態や電解質の平衡が保たれにくい。また解毒作用が低下しやすく、凝固因子の不足により出血しやすい。好発年齢が40~60歳代に多く、とくに50歳代に多発していることや男性が女性の3~4倍多く発生している。
症状
肝癌の症状は次の5つに分けられる
1.無症状型
肝腫大や超音波検査で発見され、自覚症状の明かでないもの
2.発熱型
38度以上の発熱をきたすもの
3.疼痛型
右季肋部痛や肩甲骨下痛などの認められるもの
4.急性腹症型
肝癌破裂によりショックや腹膜刺激症状を伴うもの
5.潜伏型
全身衰弱で偶然にあるいは剖検により発見されるもの
他覚的所見は肝硬変の合併が多いため、腹水、脾腫、腹壁静脈怒張などの肝硬変の症状を示すことが多い
検査
肝切除術の術前検査は、肝腫瘍などの範囲、位置、性状などの局在診断と肝予備能および全身状態のチェックに大別される
1.肝腫瘍などの診断法
超音波検査、X線CT、MRCT、血管造影、シンチグラム、ERCP、PTC、AFP・CEAなどの腫瘍マーカー
2.一般肝機能検査
トランスアミナーゼ、胆道系酵素、ビリルビン、血清蛋白、ChE、膠質反応、血清脂質、凝固線溶系
3.肝予備能検査
ICG試験、75gOGTT、ヘパプラスチンテスト
4.全身状態のチェック
術前一般検査
胸腹部X線撮影、心電図、肺機能検査、腎機能検査、一般血液検査、尿便検査
上部消化管検査
食道静脈瘤、胃十二指腸潰瘍の検索
治療
1.手術療法
肝臓の切除量としては、正常肝の場合で約75%の肝切除が可能である。しかし、本邦の原発性肝癌の大部分をしめる肝細胞癌症例の約90%は肝硬変や慢性肝炎などの慢性肝疾患を合併しており、このような場合では肝予備能が低下しているため肝臓切除量は制約されることになる。すなわち、肝切除術式の決定にさいしては、まず肝予備能を正確に評価し切除可能な肝容量を推測したうえで最も適当な肝切除術式が選択される。
2.肝動脈塞栓療法(TAE)
3.化学療法
術後の経過と管理
(注)1、3、6、7、9~11は「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」を参照
1.疼痛の管理
2.呼吸器系の管理
肝硬変併発例ではアルブミン合成能の低下により腹水貯留とグロブリン低値も伴い、感染に対する抵抗力が低下している。また、肝切除は開胸・上腹部開腹が大半であり、ドレ-ンの留置や創部痛のため呼吸運動が抑制され、肺換気量が減少し無気肺の原因となる。低酸素血症は肝不全の誘因となるため術後の呼吸管理は重要である。肝予備能の高度低下例や広範囲肝切除例では術後にレスピレーターを使用して呼吸管理を行ったほうが肝不全の予防に有効である。
3.循環器系の管理
4.輸液・輸血の管理
肝切除後の肝再生には、肝血流の維持、低酸素血症の防止、エネルギ-基質の供給が重要である。術後の輸液は糖質を混ぜた電解質輸液と分枝鎖アミノ酸高含有輸液を投与し、新鮮凍結血漿を投与する。新鮮凍結血漿や抗生物質の投与によってNa投与量が多くなるので、Na貯留傾向にある肝硬変併発例では、Naを含まない輸液製剤を用いる。低アルブミン血症に対してはアルブミン製剤を投与して膠質浸透圧を保ち、凝固因子などの補充を目的とした新鮮凍結血獎を投与する。輸液量は、軽度のdry sideに維持するように管理していく。
5.栄養管理
肝硬変併発例では、低栄養(低蛋白、低アルブミン血症)、糖代謝異常(耐糖能異常)、アミノ酸代謝異常(高アンモニア血症、肝性脳症)、血液凝固線溶系異常(出血傾向、DIC準備状態)、門脈圧亢進症(食道胃静脈瘤、脾機能亢進)、水・電解質異常(水・Na貯留、腹水)、免疫能低下を伴うことが多く、術前より異常を補正しておく必要がある。低栄養状態には、高カロリ-輸液、経腸(経口)栄養剤投与によって栄養補給を行うが、アミノ酸代謝異常を是正するために分枝鎖アミノ酸高含有のアミノ酸輸液製材や経腸栄養剤(アミノレバンEN、ヘパンEN、リ-バクト)の投与も行う。アルブミン製剤の投与によって低アルブミン血症の補正が必要なこともある。
6.ドレーンの処置
7.中心静脈栄養法(IVH)の管理
8.経口摂取の開始
胃管抜去後、腸蠕動が聴取され排ガスがあれば、まず水分から開始し4~5日で全粥とし、その後は高カロリーの肝庇護食を摂取させる。経口摂取開始による腸管の刺激や内服薬(ラクツロースなど)による下痢が起こる可能性もあるので観察を要する。
9.精神的サポート
10.清潔保持
11.早期離床
術後合併症
1.肺合併症
「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」を参照
2.感染
肝硬変併存例では免疫機能は低下しており、易感染性である。感染症は肝臓に負荷となり、エンドトキシン血症は肝障害を悪化させる。
3.術後出血
術後出血はほとんど48時間以内に起こる。肝切離断端などからの術後出血は、循環動態に異常をきたすような大量である場合には、再手術を考慮する。出血傾向のある肝硬変併存例ではドレ-ン挿入孔の腹壁からも出血をみることがあり、腹腔内出血との鑑別を要する。
4.消化管出血
肝切除により肝内門脈床が減少し、急性の門脈圧亢進状態とな消化管出血がおこりやすい。また、肝切除という大きな手術侵襲が加わり、疼痛、病状の不安、安静度からくる身体的苦痛、不眠などストレス性潰瘍がおこりやすい状況である。肝硬変併存の場合は、門脈圧亢進症や食道・胃静脈瘤が合併していることがあり、さらに高くなる。
5.肝不全
肝切除後は肝組織の挫滅により残存肝の肝機能低下をきたしやすい。過大な肝切除量や術中の出血、黄疸などにより肝不全を発症することがある。また、術後呼吸器合併症や上部消化管出血、感染などを契機に肝不全に陥ることもある。
6.腎不全
肝硬変併存例では、元々腎臓での水・Naの排泄障害が認められるが必ずしも循環血液量は多くなく、腹水を多量に認める例では容易に脱水から腎前性腎不全へと移行する。
7.DIC
肝硬変を併存することがDICの準備状態であると考えられ、肝切除という侵襲に何らかの術後合併症が加わると容易にDICへと進行する。
8.胆汁瘻
肝切離断端からの胆汁瘻は胆汁の流出障害がなければ数日で自然治癒するがドレナ-ジが十分に行われないと二次感染の危険性がある。
看護計画(術前)
Ⅰ.アセスメントの視点(術前)
全身麻酔で手術が行われるため、全身状態の評価が必要である。高齢者も多いので既往症や機能の低下には十分注意する。
肝臓癌は自覚症状の有無も経過も様々である。腹水や黄疸、消化管出血のある場合がある。経過も肝炎から肝硬変を経た場合もある。そのためこれまでの療養経過(生活態度)や自覚的苦痛の程度を知り、患者本人と家族を含めた看護が必要になる。
肝硬変併存例では低栄養、糖代謝異常、アミノ酸代謝異常、血液凝固線溶系異常、門脈圧亢進症、水・電解質異常、免疫能低下などを伴うことが多く、これらの異常を術前にできるかぎり補正し、術後の合併症を予防することが大切である。
<術前処置>
1.栄養状態の改善
低栄養状態の患者には高カロリ-輸液、経腸(経口)栄養剤投与によって栄養補給を行なうが、アミノ酸代謝異常を是正するために分枝鎖アミノ酸高含有のアミノ酸輸液製剤や経腸栄養剤の投与も行なう。アルブミン製剤の投与によって低アルブミン血症の補正が必要なこともある。
2.肝庇護
トランスアミナーゼの高値例では、安静や強力ミノファーゲンC、グルタチオン製剤投与などの肝庇護療法を行ない、低下を待って手術する。
3.糖代謝の是正
インスリン投与の必要例では、レギュラ-インスリンを投与し血糖をコントロ-ルしておく。
4.水・電解質異常の是正
腹水を有する例では、利尿剤投与、アルブミン製剤投与によって治療する。
5.腸管内清掃
腸管内細菌によるアンモニア、エンドトキシンの産生抑制のために、術前3日前よりポリミキシンBやカナマイシンなどの抗生物質、およびラクツロ-スの投与を行う。
6.禁煙
術後の低酸素血症は肝不全を招来する重大な因子となるため、術前の禁煙励行が必要となってくる
7.食道・胃静脈瘤、胃・十二指腸潰瘍の治療
術後の食道・胃静脈瘤破裂は致命的な合併症となりうるので、出血の危険性が大きい静脈瘤にたいしては、術前に硬化療法などで治療を行っておく。また、胃・十二指腸潰瘍もH2ブロッカ-などの投与で治療しておく。
Ⅱ.問題リスト(術前)
#1.疾患や手術に対する不安
#2.術後肺合併症の危険性
#3.家族の不安
(注)#1~3については「全身麻酔を受ける患者の標準看護計画」を参照
#4.消化管出血
[要因]・食道・胃静脈瘤の合併
・胃・十二指腸潰瘍の合併
#5.感染仲介の危険性
[要因]・HBV、HCV陽性
・肝硬変による食道静脈瘤破裂の誘発
Ⅲ.看護目標(術前)
1. 疾患、手術に対する不安が軽減され手術に向けて精神的準備ができる
2. 腹部症状などの苦痛の軽減をはかり栄養状態が改善され、体力の消耗が最小限になる
3. 全身状態の評価により術後合併症を予測し、手術に対する身体的準備ができる
4. 家族の精神的慰安に努める
Ⅳ.看護問題(術前)
#1.疾患や手術に対する不安
#2.術後肺合併症の危険性
#3.家族の不安
(注)#1~3については「全身麻酔を受ける患者の標準看護計画」を参照
#4.消化管出血による全身状態の悪化
〔要因〕・食道・胃静脈瘤の合併
・胃・十二指腸潰瘍の合併
&消化管出血をおこさないよう適切な処置をうけることができる
$手術前日まで
O-1.バイタルサインチェック
2.腹部症状観察
3.吐血、下血の有無
4.全身状態の観察
<吐血・下血時の場合>
T-1.安静の保持
2.嘔吐後冷水で含嗽させ、嘔気を誘発させない
3.出血部位により適切な処置を行う
4.体位変換、排泄介助時は腹圧をかけないように行う
5.輸液、輸血の管理
6.不潔になりやすいため、清潔を保ち不快感を与えない
7.下血時は臀部を蒸しタオルで清拭
E-1.安静の必要性を説明し、処置により状態の改善がみられることを説明する
2.吐血・下血その他異常時は、医師または看護婦に報告するよう説明する
#5.感染仲介の危険性
〔要因〕・HBV、HCV陽性
・肝硬変による食道静脈瘤破裂の誘発
&術前治療に参加できる
感染症を知り、他に感染させない
術前の治療により諸徴候が正常域に近づく
栄養状態が改善(高蛋白、高カロリ-、高炭水化物、ビタミン類の摂取)する
$手術2日前
O-1.各種機能検査の結果
2.合併症の有無、程度
3.合併症についての患者自身の理解内容と程度
T-1.術前治療の介助
E-1.感染症について指導し、他に感染させないようにする
2.合併症についての指導をする
3.術前検査、処置の必要性の説明をする
4.患者に合併症、感染症の徴候、症状について説明し、異常が生じた場合には、ただちに医師、看護婦に報告するように指導する
看護計画(術後)
Ⅰ.アセスメントの視点(術後)
肝硬変などを伴った肝切除術後は、肝不全や呼吸不全を中心とした多臓器不全に陥る危険度が高い。また、術直後の循環不全、低酸素血症、術後出血、消化管出血などから多臓器の合併症に発展することが多いため輸液管理を中心とした全身管理が重要となってくる。
Ⅱ.問題リスト(術後)
#1.肺合併症
[要因]
・疼痛
・不適切な体位
・麻酔薬、鎮痛剤使用による咳嗽力、喀出力の低下
・脱水、補助呼吸による気道分泌物の粘調度の増加
・チューブ類挿入の刺激、違和感、存在感
・横隔膜下の炎症の波及
・横隔膜のミクロの損傷
・低アルブミン
・DIC
・血管透過性の亢進
・喫煙歴
・胸腔又は腹腔内における体液や空気の貯留
#2.上行感染
〔要因〕
・術後の体力、抵抗力低下
・術後体液のアンバランス
・IVH、バルーンカテーテル他各種ドレーン挿入中(カテ-テル熱)
・胸水貯留
・腹水貯留
・胆汁瘻
・腫瘍
・免疫機能の低下
・長時間の手術(創の長時間開放)
#3.術後出血
〔要因〕・血液凝固能の亢進により小血栓が多発し、続発的に線溶現象が亢進する
・肝切除時の一時的血流遮断、大量出血
・ドレーン、チューブによる物理的刺激
#4.循環不全(ショック)
〔要因〕・多量の出血
・細胞外液の喪失
#5.肝不全
〔要因〕
・肝組織の挫滅
・過量な肝切除
・肝切離面からの出血
・静脈瘤破裂による消化管出血
・感染
・ショック(循環動態の不安定)
・低酸素血症
・糖の供給不足
・肝硬変の併存
#6.消化管出血
〔要因〕・肝内門脈床の減少によるうっ血
・食道・胃静脈瘤の合併
・胃・十二指腸潰瘍の合併
#7.腎不全
〔要因〕・腎臓でのNa・K排泄制限(肝硬変併存例)
・可逆的病変
・大量出血
・ショック
・敗血症
#8.DIC
〔要因〕・合併症の併発
・ショック
・肝硬変併存
#9.腹水の貯留
〔要因〕・循環障害
・肝門部または横隔膜周辺の拡張したリンパ管の損傷
・肝硬変の低蛋白による膠質浸透圧の低下
・術後肝不全
#10.胸水貯留
〔要因〕・腹水の胸腔への移行
・肝硬変の低蛋白による膠質浸透圧の低下
・胸膜の感染による毛細血管の透過性の亢進
・リンパの流れの障害
#11.胆汁瘻
[要因]・肝切離断端部の胆汁の流出障害
・ドレナ-ジ不良
・二次感染
#12.休息・睡眠の障害
#13.術後せん妄
#14.セルフケア不足
#15.家族の不安
(注)12~15は「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」を参照
#16.退院後の日常生活不安
〔要因〕・手術侵襲による体調の変化
・ライフスタイルの変化
・社会的役割の変化
・体力の減退
・活動力の減退
肝臓癌とは
原発性肝癌と転移性肝癌とに分類される。肝臓癌の95%が転移性肝癌である。
原発性肝癌とは、肝細胞より発生した癌腫を肝細胞癌(ヘパト-マ)、胆管細胞由来の癌腫を胆管上皮癌(コランジオ-ム)という。未分化の胎児性肝細胞に由来するものを肝芽細胞腫(ヘパブラスト-ム)といい、乳幼児に多い。このうち肝細胞癌が80~90%を占める。また肝細胞癌は肝硬変を合併する場合が多い。
肝細胞癌は肉眼的に塊状型、結節型、瀰漫型の3型に分けられるが、結節型が最も多い。組織学的にはエドモンソンの分類が用いられており、I、II型に比べ、III、IV型では細胞悪性度が高く、脈管内発育が著明で、高率に転移をきたす。肝癌の発育形式では肺や骨などに血行転移をきたしやすいが、門脈を経由しての肝内転移をみることが多く(娘転移)予後に重大な影響を与えている。
原因は、WHOのHBウイルス汚染地区と一致し、肝癌では抗原陽性率が高いことから、HBウイルスが肝癌発生になんらかの影響を及ぼしていると考えられている。また、わが国の肝硬変は肝炎後性の乙型肝硬変が多く、肝硬変患者の1/3に肝癌を併発するといわれ、肝癌患者の60~80%に肝硬変を合併している。
転移性肝癌とは、肝以外の臓器の悪性腫瘍が血行性(門脈、肝動脈)、リンパ行性、あるいは直接浸潤により肝に転移巣を生じたものをいう。
アセスメントの視点
肝癌は、自覚症状が少なく、肝腫瘍が大きくなってから気づく場合が多く、周囲臓器に及んでいることもあり、一般的に予後不良である。肝臓の機能の低下や肝炎や肝硬変、閉塞黄疸、糖尿病などを合併していることが多く、代謝異常による低栄養状態や電解質の平衡が保たれにくい。また解毒作用が低下しやすく、凝固因子の不足により出血しやすい。好発年齢が40~60歳代に多く、とくに50歳代に多発していることや男性が女性の3~4倍多く発生している。
症状
肝癌の症状は次の5つに分けられる
1.無症状型
肝腫大や超音波検査で発見され、自覚症状の明かでないもの
2.発熱型
38度以上の発熱をきたすもの
3.疼痛型
右季肋部痛や肩甲骨下痛などの認められるもの
4.急性腹症型
肝癌破裂によりショックや腹膜刺激症状を伴うもの
5.潜伏型
全身衰弱で偶然にあるいは剖検により発見されるもの
他覚的所見は肝硬変の合併が多いため、腹水、脾腫、腹壁静脈怒張などの肝硬変の症状を示すことが多い
検査
肝切除術の術前検査は、肝腫瘍などの範囲、位置、性状などの局在診断と肝予備能および全身状態のチェックに大別される
1.肝腫瘍などの診断法
超音波検査、X線CT、MRCT、血管造影、シンチグラム、ERCP、PTC、AFP・CEAなどの腫瘍マーカー
2.一般肝機能検査
トランスアミナーゼ、胆道系酵素、ビリルビン、血清蛋白、ChE、膠質反応、血清脂質、凝固線溶系
3.肝予備能検査
ICG試験、75gOGTT、ヘパプラスチンテスト
4.全身状態のチェック
術前一般検査
胸腹部X線撮影、心電図、肺機能検査、腎機能検査、一般血液検査、尿便検査
上部消化管検査
食道静脈瘤、胃十二指腸潰瘍の検索
治療
1.手術療法
肝臓の切除量としては、正常肝の場合で約75%の肝切除が可能である。しかし、本邦の原発性肝癌の大部分をしめる肝細胞癌症例の約90%は肝硬変や慢性肝炎などの慢性肝疾患を合併しており、このような場合では肝予備能が低下しているため肝臓切除量は制約されることになる。すなわち、肝切除術式の決定にさいしては、まず肝予備能を正確に評価し切除可能な肝容量を推測したうえで最も適当な肝切除術式が選択される。
2.肝動脈塞栓療法(TAE)
3.化学療法
術後の経過と管理
(注)1、3、6、7、9~11は「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」を参照
1.疼痛の管理
2.呼吸器系の管理
肝硬変併発例ではアルブミン合成能の低下により腹水貯留とグロブリン低値も伴い、感染に対する抵抗力が低下している。また、肝切除は開胸・上腹部開腹が大半であり、ドレ-ンの留置や創部痛のため呼吸運動が抑制され、肺換気量が減少し無気肺の原因となる。低酸素血症は肝不全の誘因となるため術後の呼吸管理は重要である。肝予備能の高度低下例や広範囲肝切除例では術後にレスピレーターを使用して呼吸管理を行ったほうが肝不全の予防に有効である。
3.循環器系の管理
4.輸液・輸血の管理
肝切除後の肝再生には、肝血流の維持、低酸素血症の防止、エネルギ-基質の供給が重要である。術後の輸液は糖質を混ぜた電解質輸液と分枝鎖アミノ酸高含有輸液を投与し、新鮮凍結血漿を投与する。新鮮凍結血漿や抗生物質の投与によってNa投与量が多くなるので、Na貯留傾向にある肝硬変併発例では、Naを含まない輸液製剤を用いる。低アルブミン血症に対してはアルブミン製剤を投与して膠質浸透圧を保ち、凝固因子などの補充を目的とした新鮮凍結血獎を投与する。輸液量は、軽度のdry sideに維持するように管理していく。
5.栄養管理
肝硬変併発例では、低栄養(低蛋白、低アルブミン血症)、糖代謝異常(耐糖能異常)、アミノ酸代謝異常(高アンモニア血症、肝性脳症)、血液凝固線溶系異常(出血傾向、DIC準備状態)、門脈圧亢進症(食道胃静脈瘤、脾機能亢進)、水・電解質異常(水・Na貯留、腹水)、免疫能低下を伴うことが多く、術前より異常を補正しておく必要がある。低栄養状態には、高カロリ-輸液、経腸(経口)栄養剤投与によって栄養補給を行うが、アミノ酸代謝異常を是正するために分枝鎖アミノ酸高含有のアミノ酸輸液製材や経腸栄養剤(アミノレバンEN、ヘパンEN、リ-バクト)の投与も行う。アルブミン製剤の投与によって低アルブミン血症の補正が必要なこともある。
6.ドレーンの処置
7.中心静脈栄養法(IVH)の管理
8.経口摂取の開始
胃管抜去後、腸蠕動が聴取され排ガスがあれば、まず水分から開始し4~5日で全粥とし、その後は高カロリーの肝庇護食を摂取させる。経口摂取開始による腸管の刺激や内服薬(ラクツロースなど)による下痢が起こる可能性もあるので観察を要する。
9.精神的サポート
10.清潔保持
11.早期離床
術後合併症
1.肺合併症
「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」を参照
2.感染
肝硬変併存例では免疫機能は低下しており、易感染性である。感染症は肝臓に負荷となり、エンドトキシン血症は肝障害を悪化させる。
3.術後出血
術後出血はほとんど48時間以内に起こる。肝切離断端などからの術後出血は、循環動態に異常をきたすような大量である場合には、再手術を考慮する。出血傾向のある肝硬変併存例ではドレ-ン挿入孔の腹壁からも出血をみることがあり、腹腔内出血との鑑別を要する。
4.消化管出血
肝切除により肝内門脈床が減少し、急性の門脈圧亢進状態とな消化管出血がおこりやすい。また、肝切除という大きな手術侵襲が加わり、疼痛、病状の不安、安静度からくる身体的苦痛、不眠などストレス性潰瘍がおこりやすい状況である。肝硬変併存の場合は、門脈圧亢進症や食道・胃静脈瘤が合併していることがあり、さらに高くなる。
5.肝不全
肝切除後は肝組織の挫滅により残存肝の肝機能低下をきたしやすい。過大な肝切除量や術中の出血、黄疸などにより肝不全を発症することがある。また、術後呼吸器合併症や上部消化管出血、感染などを契機に肝不全に陥ることもある。
6.腎不全
肝硬変併存例では、元々腎臓での水・Naの排泄障害が認められるが必ずしも循環血液量は多くなく、腹水を多量に認める例では容易に脱水から腎前性腎不全へと移行する。
7.DIC
肝硬変を併存することがDICの準備状態であると考えられ、肝切除という侵襲に何らかの術後合併症が加わると容易にDICへと進行する。
8.胆汁瘻
肝切離断端からの胆汁瘻は胆汁の流出障害がなければ数日で自然治癒するがドレナ-ジが十分に行われないと二次感染の危険性がある。
看護計画(術前)
Ⅰ.アセスメントの視点(術前)
全身麻酔で手術が行われるため、全身状態の評価が必要である。高齢者も多いので既往症や機能の低下には十分注意する。
肝臓癌は自覚症状の有無も経過も様々である。腹水や黄疸、消化管出血のある場合がある。経過も肝炎から肝硬変を経た場合もある。そのためこれまでの療養経過(生活態度)や自覚的苦痛の程度を知り、患者本人と家族を含めた看護が必要になる。
肝硬変併存例では低栄養、糖代謝異常、アミノ酸代謝異常、血液凝固線溶系異常、門脈圧亢進症、水・電解質異常、免疫能低下などを伴うことが多く、これらの異常を術前にできるかぎり補正し、術後の合併症を予防することが大切である。
<術前処置>
1.栄養状態の改善
低栄養状態の患者には高カロリ-輸液、経腸(経口)栄養剤投与によって栄養補給を行なうが、アミノ酸代謝異常を是正するために分枝鎖アミノ酸高含有のアミノ酸輸液製剤や経腸栄養剤の投与も行なう。アルブミン製剤の投与によって低アルブミン血症の補正が必要なこともある。
2.肝庇護
トランスアミナーゼの高値例では、安静や強力ミノファーゲンC、グルタチオン製剤投与などの肝庇護療法を行ない、低下を待って手術する。
3.糖代謝の是正
インスリン投与の必要例では、レギュラ-インスリンを投与し血糖をコントロ-ルしておく。
4.水・電解質異常の是正
腹水を有する例では、利尿剤投与、アルブミン製剤投与によって治療する。
5.腸管内清掃
腸管内細菌によるアンモニア、エンドトキシンの産生抑制のために、術前3日前よりポリミキシンBやカナマイシンなどの抗生物質、およびラクツロ-スの投与を行う。
6.禁煙
術後の低酸素血症は肝不全を招来する重大な因子となるため、術前の禁煙励行が必要となってくる
7.食道・胃静脈瘤、胃・十二指腸潰瘍の治療
術後の食道・胃静脈瘤破裂は致命的な合併症となりうるので、出血の危険性が大きい静脈瘤にたいしては、術前に硬化療法などで治療を行っておく。また、胃・十二指腸潰瘍もH2ブロッカ-などの投与で治療しておく。
Ⅱ.問題リスト(術前)
#1.疾患や手術に対する不安
#2.術後肺合併症の危険性
#3.家族の不安
(注)#1~3については「全身麻酔を受ける患者の標準看護計画」を参照
#4.消化管出血
[要因]・食道・胃静脈瘤の合併
・胃・十二指腸潰瘍の合併
#5.感染仲介の危険性
[要因]・HBV、HCV陽性
・肝硬変による食道静脈瘤破裂の誘発
Ⅲ.看護目標(術前)
1. 疾患、手術に対する不安が軽減され手術に向けて精神的準備ができる
2. 腹部症状などの苦痛の軽減をはかり栄養状態が改善され、体力の消耗が最小限になる
3. 全身状態の評価により術後合併症を予測し、手術に対する身体的準備ができる
4. 家族の精神的慰安に努める
Ⅳ.看護問題(術前)
#1.疾患や手術に対する不安
#2.術後肺合併症の危険性
#3.家族の不安
(注)#1~3については「全身麻酔を受ける患者の標準看護計画」を参照
#4.消化管出血による全身状態の悪化
〔要因〕・食道・胃静脈瘤の合併
・胃・十二指腸潰瘍の合併
&消化管出血をおこさないよう適切な処置をうけることができる
$手術前日まで
O-1.バイタルサインチェック
2.腹部症状観察
3.吐血、下血の有無
4.全身状態の観察
<吐血・下血時の場合>
T-1.安静の保持
2.嘔吐後冷水で含嗽させ、嘔気を誘発させない
3.出血部位により適切な処置を行う
4.体位変換、排泄介助時は腹圧をかけないように行う
5.輸液、輸血の管理
6.不潔になりやすいため、清潔を保ち不快感を与えない
7.下血時は臀部を蒸しタオルで清拭
E-1.安静の必要性を説明し、処置により状態の改善がみられることを説明する
2.吐血・下血その他異常時は、医師または看護婦に報告するよう説明する
#5.感染仲介の危険性
〔要因〕・HBV、HCV陽性
・肝硬変による食道静脈瘤破裂の誘発
&術前治療に参加できる
感染症を知り、他に感染させない
術前の治療により諸徴候が正常域に近づく
栄養状態が改善(高蛋白、高カロリ-、高炭水化物、ビタミン類の摂取)する
$手術2日前
O-1.各種機能検査の結果
2.合併症の有無、程度
3.合併症についての患者自身の理解内容と程度
T-1.術前治療の介助
E-1.感染症について指導し、他に感染させないようにする
2.合併症についての指導をする
3.術前検査、処置の必要性の説明をする
4.患者に合併症、感染症の徴候、症状について説明し、異常が生じた場合には、ただちに医師、看護婦に報告するように指導する
看護計画(術後)
Ⅰ.アセスメントの視点(術後)
肝硬変などを伴った肝切除術後は、肝不全や呼吸不全を中心とした多臓器不全に陥る危険度が高い。また、術直後の循環不全、低酸素血症、術後出血、消化管出血などから多臓器の合併症に発展することが多いため輸液管理を中心とした全身管理が重要となってくる。
Ⅱ.問題リスト(術後)
#1.肺合併症
[要因]
・疼痛
・不適切な体位
・麻酔薬、鎮痛剤使用による咳嗽力、喀出力の低下
・脱水、補助呼吸による気道分泌物の粘調度の増加
・チューブ類挿入の刺激、違和感、存在感
・横隔膜下の炎症の波及
・横隔膜のミクロの損傷
・低アルブミン
・DIC
・血管透過性の亢進
・喫煙歴
・胸腔又は腹腔内における体液や空気の貯留
#2.上行感染
〔要因〕
・術後の体力、抵抗力低下
・術後体液のアンバランス
・IVH、バルーンカテーテル他各種ドレーン挿入中(カテ-テル熱)
・胸水貯留
・腹水貯留
・胆汁瘻
・腫瘍
・免疫機能の低下
・長時間の手術(創の長時間開放)
#3.術後出血
〔要因〕・血液凝固能の亢進により小血栓が多発し、続発的に線溶現象が亢進する
・肝切除時の一時的血流遮断、大量出血
・ドレーン、チューブによる物理的刺激
#4.循環不全(ショック)
〔要因〕・多量の出血
・細胞外液の喪失
#5.肝不全
〔要因〕
・肝組織の挫滅
・過量な肝切除
・肝切離面からの出血
・静脈瘤破裂による消化管出血
・感染
・ショック(循環動態の不安定)
・低酸素血症
・糖の供給不足
・肝硬変の併存
#6.消化管出血
〔要因〕・肝内門脈床の減少によるうっ血
・食道・胃静脈瘤の合併
・胃・十二指腸潰瘍の合併
#7.腎不全
〔要因〕・腎臓でのNa・K排泄制限(肝硬変併存例)
・可逆的病変
・大量出血
・ショック
・敗血症
#8.DIC
〔要因〕・合併症の併発
・ショック
・肝硬変併存
#9.腹水の貯留
〔要因〕・循環障害
・肝門部または横隔膜周辺の拡張したリンパ管の損傷
・肝硬変の低蛋白による膠質浸透圧の低下
・術後肝不全
#10.胸水貯留
〔要因〕・腹水の胸腔への移行
・肝硬変の低蛋白による膠質浸透圧の低下
・胸膜の感染による毛細血管の透過性の亢進
・リンパの流れの障害
#11.胆汁瘻
[要因]・肝切離断端部の胆汁の流出障害
・ドレナ-ジ不良
・二次感染
#12.休息・睡眠の障害
#13.術後せん妄
#14.セルフケア不足
#15.家族の不安
(注)12~15は「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」を参照
#16.退院後の日常生活不安
〔要因〕・手術侵襲による体調の変化
・ライフスタイルの変化
・社会的役割の変化
・体力の減退
・活動力の減退
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