すぽんさーどりんく

すぽんさーどりんく

スパイナルドレナージ挿入中の患者の標準看護計画

スパイナルドレナージ挿入中の患者の標準看護計画

スパイナルドレナージ挿入の目的と対象

 1.頭蓋内圧亢進患者の髄液を体外に排出することで頭蓋内圧を下げるため
・腫瘍、血腫による占拠性病変の術前患者
・水頭症患者
・クモ膜下出血で外ドレが入らない患者

 2.術後の髄液漏の治療
・下垂体腫瘍、頭部外傷等の術後に髄液漏のある患者

 3.皮下に髄液が貯留している場合、硬膜と皮下の癒合をよくするため
・皮下に髄液が貯留している患者


看護計画

Ⅰ.アセスメントの視点
 ドレナージ施行中は安静を要するためADLの援助をおこなう。さらに感染や脳圧の管理が重要となり、観察を十分に行っていかなければならない。

Ⅱ.問題リスト
#1.頭蓋内圧のアンバランス
   [要因]・意識障害(失見当識等)
       ・ドレーンの閉塞
       ・不適切な圧設定
       ・安静の不保持
       ・静脈還流を阻害する体位(前屈位)

#2.ドレーン抜去の危険性
   [要因]   ・意識障害、病識の欠如
       ・ドレーンの挿入
       ・床上生活
       ・注意力の低下

#3.感染の危険性
   [要因]・ドレーン挿入
       ・接触、移動時の処置
       ・意識障害、病識の欠如

#4.セルフケアの不足
   [要因]・ドレーン留置や安静による行動制限
       ・意識障害、病識の欠如
       ・体動による症状悪化への不安

Ⅲ.看護目標
1.制限された入院生活をできるだけ安全、安楽に過ごす
2.感染症を起こさない




Ⅳ.看護問題
#1.頭蓋内圧のアンバランス
   [要因]・意識障害(失見当識等)
       ・ドレーンの閉塞
       ・不適切な圧設定
       ・安静の不保持
       ・静脈還流を阻害する体位(前屈位)

  &脳圧が正常に保たれ、苦痛がない
  $ドレーン抜去まで

O-1.バイタルサイン
  2.意識レベル
  3.瞳孔異常の有無
  4.頭痛、嘔吐の有無
  5.髄液の性状、流出の有無、拍動の有無
  6.ドレーンの圧設定の確認
  7.ドレーンの屈曲の有無

T-1.指示されたドレナージの圧が保たれているかチェックする
  2.髄液の流出が悪い場合は、適宜ミルキングを行う
  3.流出量が目標量よりも多いあるいは少ない時は、医師に報告する
  4.体動の激しい場合は正しい体位になるよう抑制帯を使用する
  5.便通のコントロールを図る
  6.異常のある場合は、すみやかに医師に報告する

E-1.本人に、安静の必要性を説明する
  2.家族にも安静の必要性を説明し、協力を得る
  3.怒責を行わないように指導する

#2.ドレーン抜去の危険性
   [要因]・意識障害、病識の欠如
       ・ドレーンの挿入
       ・床上生活
       ・注意力の低下

  &ドレーンが確実に留置され、治療を受けられる
  $ドレーン抜去まで

O-1.ドレーン留置の状態
  2.髄液の性状、流出量、拍動の有無
  3.意識障害の程度
T-1.不穏状態を伴う場合は、抑制帯を使用する
  2.ドレーンが引っ張られないように、体位変換などを行う
  3.ドレーンの長さに余裕があるように環境整備を行う
  4.ナースコールは手の届く範囲に設置する

E-1.本人に、安静の必要性を説明する
  2.家族にも説明し、協力を得る

#3.感染の危険性
   [要因]・ドレーン挿入
       ・接触、移動時の処置
       ・意識障害、病識の欠如

  &異常徴候が早期に発見され、早期に対処される
  $ドレーン抜去まで

O-1.髄膜刺激症状(頭痛、悪心、嘔吐、項部硬直、痙攣等)の有無
  2.バイタルサイン(熱型)
  3.意識状態の変化
  4.髄液の流出状態、量、性状
  5.ドレーン挿入部のガーゼ汚染の有無
  6.ドレーン挿入部の皮膚の状態
  7.血液データ(WBC、CRP)

T-1.無菌操作によるドレーン操作を行う
  2.ドレーンは屈曲、閉塞、抜去のないように固定する
  3.検査など移動時は排液された髄液が逆流しないようにチューブを二カ所クランプする。帰室後、医師に圧の設定をしてもらい、クランプを解除する
  4.外部からの病原菌の侵入を防ぐためにできれば個室にする
  5.ドレーン周囲の環境整備を行う
  6.指示された抗生物質を投与する
  7.異常のあるときは、すみやかに医師に報告し対処する

E-1.感染予防や安静の必要性について説明する
  2.ドレーン抜去までの見通しについて説明する
  3.ドレーンを引っ張ったり、ガーゼを取ったりしないように指導する

#4.セルフケアの不足
   [要因]・ドレーン留置や安静による行動制限
       ・意識障害、病識の欠如
       ・体動による症状悪化への不安

  &許可された範囲内でのセルフケアが行え、徐々に拡大していける
   セルフケアの不足部分を言葉で表現できる
  $ドレーン抜去まで

O-1.全身状態
  2.行動制限による影響
  3.症状、治療についての理解度
  4.意欲、性格
  5.不安の有無と程度、不安の内容

T-1.治療上の行動制限範囲内で、身体状況に合わせた援助を行う
  2.患者の自立度に応じた援助を行うとともに、セルフケア能力を高めるための動機づけを行う
  3.ドレーンは動作の妨げにならないように安全な位置に置き、固定をしっかり行う
  4.ベッドサイドを整理し、手の届く範囲に患者の必要物品を置く
  5.活動範囲の拡大に向けて患者に目標を持たせ、家族の協力を得て援助する

E-1.活動可能な範囲を説明し、できるだけ自分で行うよう指導する
  2.無理な行動(いきんだり、頭部を持ち上げなければならないこと)はせず、看護婦に知らせるように説明する

クローン病患者の標準看護計画

クローン病患者の標準看護計画

クローン病とは

 原因は不明であるが、自己免疫異常、細菌、ウィルス感染、遺伝的素因など考えられているが詳細は不明である。主として若年成人に好発し、消化管壁(特に腸管壁)の全層性の炎症で、潰瘍や繊維化およびリンパ球、形質細胞を主体とする細胞潤滑を伴う慢性の原因不明の非特異性肉芽腫性炎症である。好発部位は消化管のあらゆる部位だが、ほとんど回腸末端部を侵し、一様でない進行パターンを示す。完治することは困難で、長期にわたる治療が必要だが医学の進歩とともに予後も良くなってきている。

アセスメントの視点

 若年成人に好発する難治性炎症性疾患であり、社会的問題も多く精神的に不安定な時期でもある。苦痛があり、長期にわたる絶食が必要であることなどの苦しみを看護者は十分理解し接する一方、その治療の必要性を繰り返し説明し理解させる必要がある。
 また、栄養療法(腸管栄養と病状に応じて低残渣食を加え調節するもの)、薬物療法により寛解するが、しばしば、再燃を繰り返すため、年余にわたり患者はこの疾患とつき合っていかねばならない。患者教育し、便性状、症状など自己観察する習慣を育成することが望ましい。

症状

 徐々に発症し、発熱、腹痛、慢性下痢が中心で体重減少時に下血を認めることがある。
 潰瘍性大腸炎と同様の腸管外症状を呈するものがあり鑑別を要する。

 自覚症状
下痢、腹痛、回盲部腫瘤触知、微熱、体重減少、肛門病変、直腸病変、痔瘻、稀に下血、アフタ性口内炎、等

 他覚症状
赤沈亢進、CRP陽性等の炎症所見、栄養、吸収障害を反映する鉄、葉酸欠乏性貧血、低アルブミン血症、低コレステロール血症、肝機能障害、非乾酪性肉芽腫、縦走潰瘍、敷石像、破隙、細胞性免疫能の低下(ツ反陰性、リンパ球幼弱化率低下、等)

検査

・注腸×線検査(注腸造影、注腸二重造影)
・内視鏡検査(小腸造影)
・超音波検査
・組織検査(組織生検)
・CTスキャン
・生化学検査及び血液一般検査、等

治療

 クローン病の治療法は、急性期の治療と寛解期(自覚症状がなく、血液検査での再燃がみられない状態)の維持療法に分けられる。
 急性期では副腎皮質ホルモンを代表する薬物療法、高カロリー輸液などの栄養療法を用い、寛解期導入をはかる。寛解期の維持療法は薬物療法と栄養療法を併用する。

 1.安静、栄養療法
経口摂取不足、異化亢進、消化吸収障害、腸管へのタンパク漏出により低栄養状態になることが多い。
このような場合は経口摂取を禁止し以下の療法を施行し腸管の安静をはかる。
完全静脈栄養(TPN)、成分栄養(ED)、IVH、低残渣食、等
治療により寛解期に導入できた症例には食事が開始される。

 2.薬物療法
副腎皮質ホルモン(急性期炎症や重症に速効性)、メトロニダゾール、サラゾスルファピリジン(大腸型に有効、軽症,中等症では第一選択)、免疫抑制剤、等
長期にわたる内服が必要であり、副作用出現(特に副腎皮質ホルモン)に注意し管理しなければならない。症状がなくなったからといって自己判断で治療を中断するこなく、慢性疾患のため長期間飲み続ける必要があることを受容させることが大切である。

 3.外科的療法
狭窄、瘻孔等が、内科的療法に反応しない場合、大量出血、穿孔をきたした場合に適応となる。

分類

・病変の広がり(直腸炎→左側大腸炎→全大腸炎へ移行)、重症度、病期(活動期、寛解期)臨床経過による病型により分類される。
・臨床経過による、病型分類には再燃寛解型、慢性持続型、急性電撃型、初回発作型があり、ほどんどが再燃寛解型である。急性電撃型は合併症を伴い予後が不良である。

管理

 1.精神的サポート
 若年成人に好発するため、長期にわたる絶食が必要なことや、社会的に様々な悩みも多く、精神的に不安定になることが少なくない。患者の訴えに傾聴し、不満や不安、病気について感じることを素直に表現できる機会を与え、治療の効果に期待をもつことができる機会を提供している必要がある。また患者同士の情報交換できる場をもうけ病気の理解、受容できる環境をととのえていく必要がある。

 2.疼痛の管理
 活動期では頻回な下痢に伴い、腹痛、直腸肛門部痛がおこったり、口内炎など粘膜損傷がおこり、苦痛が大きい。患者に我慢させず、すみやかに疼痛緩和をはかるべきである。
 軽症、中等症ではサラゾスルファピリジン、重症では副腎皮質ホルモンの使用で症状は軽快寛解へとはこべるが副腎皮質ホルモン投与により成長障害、腸管外合併症等の出現もあり、注意しながら投与されることが望まれる。

 3.水・電解質の管理
 頻回な下痢や嘔吐(時として)に伴う水・電解質の過度の喪失、小腸炎症、潰瘍に伴う水・電解質の吸収障害、ビタミンD、脂肪の吸収低下に伴うCa、Mgの吸収障害など起こり、水・電解質バランスは常に変調しやすい状態にある。バランスの異常はさらに病気を再燃させるため、異常を予防し、バランスを維持できるようコントロールしなければならない。

 4.栄養管理
 経口摂取不足、異化亢進、消化吸収障害、腸管へのタンパク漏出などにより低栄養状態になることが多い。すみやかに経口摂取禁止(絶食)とし、IVH、TPN、EDなど施行し腸管の安静を図る必要がある。治療により寛解期に導入できれば経口摂取を少しずつ開始し、また指示された食事制限内で水・電解質を補給できるよう、患者自身寛解期を継続していける食事内容を理解し、選択摂取できるようにすすめていく必要がある。

 5.経腸栄養法(ED、TPN)の管理
 栄養、体液バランスを保持するため薬物療法とともに導入される。低栄養状態や副腎皮質ホルモンの長期使用によりEDチューブ挿入部位の粘膜損傷やビラン発赤を出現させたり、TPNカテ刺入部の発赤、腫張、疼痛が生じやすいので、清潔操作による消毒が必要である。また経腸栄養により嘔気、嘔吐、腹部膨満感、下痢、腹痛など消化器症状を観察し、栄養剤の濃度、注入速度に注意をはかる必要がある。



看護計画

Ⅰ.アセスメントの視点(活動期)

 多くは食後の不快感から軽微な腹痛を示し、時には激しい腹痛、下痢をもたらす。腹痛により食欲低下し急激に体重減少することも多い。
 活動期には安静にし、すみやかに絶食、栄養療法することが望ましい。潰瘍や裂孔より出血し貧血や低栄養状態、下痢に伴い脱水、電解質異常をきたすようになる。
 患者の素直な表現に留意し、自覚、他覚症状を把握することが大切である。

Ⅱ.問題リスト(活動期)

#1.下痢、腹痛など疾患による苦痛
   〔要因〕・頻回な頑固な下痢に伴う腹痛
       ・直腸肛門の裂傷に伴う炎症
       ・口腔内病変および口内炎
       ・皮膚病変

#2.疾患・病状に対する不安
   〔要因〕・疾患そのものへの恐れ
       ・疾患の情報不足
       ・診断、検査、治療に対する理解不足
       ・はっきりしない予後
       ・不快感がなくならない
       ・入院生活において慣れない環境

#3.消化吸収障害などによる栄養状態の悪化
   〔要因〕・炎症や潰瘍による下痢
       ・腸の吸収機能障害に伴う栄養吸収の減少
       ・嘔吐に伴う栄養分の喪失

#4.水・電解質バランスの崩れ
   〔要因〕・小腸炎症、潰瘍に伴う吸収障害
       ・下痢、嘔吐

#5.体力低下に伴い活動力の衰弱
   〔要因〕・不十分な栄養状態
       ・不快感、下痢、腹痛、恐怖、不安に伴い休息、睡眠がとれない
       ・貧血

#6.長期間にわたる絶食のためのストレス増強
   〔要因〕・食べられないこと
       ・周囲の人々、同室者の食事
       ・活動の制限

#7.薬物療法に対する不安
   〔要因〕・副腎皮質のホルモンの大量投与
       ・副作用の出現(肝障害、腎障害、易感染、皮膚症状、等)
       ・長期間の内服薬物療法

#8.身体症状に伴う苦痛・治療に伴う制約等によるストレスや不安
   〔要因〕・疾患がうけとめられない
       ・副腎皮質ホルモン使用に伴う容貌の変化
       ・疾患、その治療により強いられるライフスタイルの変化

Ⅲ.看護目標(活動期)

1. 疾患に対する不安が軽減され、受け止められる
2. 苦痛が緩和、栄養状態改善され、体力消耗が最小限になる
3. 薬物療法による副作用に早期対処し、精神的身体的苦痛の軽減ができる
4. セルフケアが実施できる

Ⅳ.看護問題(活動期)


#1.下痢、腹痛など疾患による苦痛
   〔要因〕・頻回な頑固な下痢に伴う腹痛
       ・直腸肛門の裂傷に伴う炎症
       ・口腔内病変および口内炎
       ・皮膚病変

  &身体的苦痛が緩和される。
  $身体症状消失時まで

O-1.バイタルサイン
  2.痛みの部位、程度、腸蠕動状態
  3.排便状況(回数、間隔)、性状、量、出血の有無(血便の色調)、殿部皮膚状態
  4.随伴症状の有無(悪化、嘔吐、肛門痛、発熱、全身倦怠感、体重変化等)
  5.検査データ

T-1.腹痛の緩和(冷庵法、等)
  2.全身(特に殿部)の皮膚保護、保清に努め爽快感をもち、合併症を予防する
  3.病識、現状の患者のとらえ方を把握する
  4.適切な輪液の管理、in・outのバランスを保たせる

E-1.活動期では腸の安静を図るため、絶食が必要の旨を指導する
  2.患者の訴えをよく聞けるよう環境を整える
  3.医師との話し合いをもち信頼関係が築けるようセッティングする

#2.疾病・症状に対する不安
   〔要因〕・疾患そのものへの恐れ
       ・疾患の情報不足
       ・診断、検査、治療に対する理解不足
       ・はっきりしない予後
       ・不快感がなくならない
       ・入院生活において慣れない環境

  &病識が持て、不安が解消される。
  $退院まで

O-1.患者のサポートシステム(キーパーソン、等)
  2.家族の病識の程度
  3.不安内容、要因は何か

T-1.患者、家族へ疾病理解に向け学習をすすめる
  2.疾病理解度チェックを行う
  3.不安、不満、疾病について感じることを話してもらい、傾聴する

E-1.同じ疾患を持つ患者同士の情報交換の場をセッティングする
  2.正しい病識が持てるよう医師より十分説明してもらう
  3.いつでも看護婦は患者の力になれることを話し、相談するよう話す

#3.消化吸収不良等による栄養状態の悪化
   〔要因〕・炎症や潰瘍による下痢
       ・腸の吸収機能障害に伴う栄養吸収の減少
       ・嘔吐に伴う栄養分の喪失

  &栄養状態が改善される。
   $寛解導入まで

O-1.VSの安定、脈緊張状態
  2.衰弱感、倦怠感の状態
  3.嘔吐の有無、吐物の性状
  4.便状況の把握、腸蠕動状況
  5.皮膚状態(ツヤ、張り)、爪の状態、眼瞼結膜の色、粘膜の状態(出血、びらん、口内炎の有無)
  6.検査データ

T-1.環境を整える
  2.in・outチェックし、バランス不良時は医師に報告し指示を依頼する
  3.全身保清(皮膚、口腔ケア)、口内炎の早期処置
  4.腸蠕動亢進を緩和するケアをすすめる(安静にし、刺激物をさける)

E-1.腸蠕動を亢進させる乳製品、腸粘膜の刺激となる香辛料、コーヒー、冷たい飲み物、たばこを避けることを指導する

#4.水・電解質バランスの崩れ
   〔要因〕・小腸炎症、潰瘍に伴う吸収障害
       ・下痢、嘔吐

  &口腔粘膜の湿潤が得られ、皮膚に正常なツヤ、張りが戻る。
   倦怠感、衰弱感、口渇等が軽減したことを表現できる。
  $寛解導入まで

O-1.in・outのバランス
  2.VS
  3.体重の変化
  4.口腔粘膜、皮膚乾燥の程度、状態
  5.感覚、運動機能状況(めまい、錯乱、イライラ感、無気力、頭痛、口渇、イレウス、不整脈、等)
  6.低Na血症、低K血症、低Ca血症、低Cl血症、低Mg血症等に伴う症状の有無

T-1.適切な輸液管理(必要量の検討、滴下速度)
  2.下痢、嘔吐、口渇、皮膚異常、等の緩和ケア(対症看護)

E-1.口渇、皮膚乾燥、尿量低下などの発生機序を説明し、治療により改善することを話し、不安軽減を図る
  2.水・電解質バランスが保たれている状態を説明し、理解を促し、維持できるよう指導する。また異常が早期に自覚できるよう指導する。

#5.体力低下に伴い活動力の衰弱
   〔要因〕・不十分な栄養状態
       ・不快感、下痢、腹痛、恐怖、不安に伴い休息、睡眠がとれない
       ・貧血

  &栄養状況など改善され活動が増す
   身体可動性が維持される。
  $寛解導入まで

O-1.栄養状態
  2.休息、睡眠状態
  3.排便リズム(回数、性状、苦痛を伴うか)
  4.検査、血液データ

T-1.#1、#2、#3、にそっての状態緩和ケア
  2.環境を整備し、すごしやすい場を提供する

E-1.恐怖や不安をいつでも素直に表現してもよいことを話す
  2.キーパーソン等、周囲の人々にかかわり方を指導する

#6.長期間にわたる絶食のためのストレス増強
   〔要因〕・食べられないこと
       ・周囲の人々、同室者の食事
       ・活動の制限

  &絶食の必要性が理解でき、絶食が耐えられる
  $退院まで

O-1.患者の病識の程度、忍耐力の程度
  2.行動、言動に注意し、間食をチェック、把握する
  3.家族や親しい友人などの病識の程度、環境

T-1.隠れ食いを見つけても患者の行動を非難するような言動は慎み、まず絶食のつらさを受容した上で、今後の方向性を患者とともに考える
  2.気分転換の方法を考える
  3.病室で食事する患者との同室をさける

E-1.絶食の必要性を説明する(家族などにも)
  2.疾患と絶食との関係を医師からも話してもらえるようセッティングする

#7.薬物療法に対する不安
   〔要因〕・副作用の出現(肝障害、腎障害、易感染、皮膚症状、等)
       ・長期間の内服薬物療法

  &薬物療法の必要性と副作用について理解できる
  $大量の薬物療法終了時まで

O-1.VS
  2.患者の薬物療法に対する知識
  3.一般形態の観察、内服状況の把握
  4.検査データ
  5.薬物療法による副作用の観察
   ・サラゾスルファピリジン:消化器症状、頭痛、眩暈、発疹、溶血性貧血、肝機能障害     
   ・副腎皮質ホルモン-易感染、消化器潰瘍、高血糖、精神障害、体重増加、骨粗鬆症

T-1.十分な観察を行い異常の早期発見に努める
  2.内服確認
  3.感染予防のため皮膚の保清に努める
  4.副作用出現時はすみやかに医師に報告し、指示を待って早期対処する
  5.医師より薬物療法の目的、必要性、副作用について十分説明してもらう

E-1.自己管理できるように服薬時間や服薬量等を説明する
  2.薬物療法の副作用について説明する
  3.副作用、異常出現時は医師、看護婦に報告するよう指導する
  4.家族にも薬物療法の説明を行う

#8.身体症状に伴う苦痛・治療に伴う制約等によるストレスや不安
   〔要因〕・疾患がうけとめられない
       ・副腎皮質ホルモン使用に伴う容貌の変化
       ・疾患、その治療により強いられるライフスタイルの変化

  &ストレスや不安を最小限にとどめられる
   身体的精神的に安定した状態で治療を受けることができる
  $退院まで

O-1.ストレス、不安の有無,程度やその原因
  2.精神状態(行動、言動)
  3.サポートシステム、環境の把握

T-1.コミュニケーションを多く持ち、患者と看護婦の信頼関係を築く
  2.患者の言動に注意し、快適に過ごせるよう援助する
  3.ストレス、不安の原因が分かれば軽減できるよう援助する
  4.家族とのコミュニケーションが十分とれるよう配慮する

E-1.規則正しく生活し、休息、睡眠を十分とるよう指導する
  2.不安や不満、悩みがあれば、相談するよう指導する
  3.慢性経過をとり長期療養となることを医師から十分に説明してもらい、気長に療養してもらう
  4.気分転換を行えるよう指導する

看護計画(寛解期)

Ⅰ.アセスメントの視点(寛解期)

 病変に高度な狭窄や瘻孔がなければ、食事療法,薬物療法の併用によりほとんどの例が寛解期導入することができる。しかし寛解期を維持することが難しく、治療を中断し、通常の食事、生活に戻ると大多数が再燃してしまうため治療を継続する必要がある。患者にとって制限が大きければストレスも生じやすい。そのため患者自身が、疾患を理解し受容できること、ストレスを軽減できること、治療法が理解でき治療効果を妨げないような行動(セルフケア)をとることが重要である。

Ⅱ.問題リスト(寛解期)

#1.治療の自己中断
   〔要因〕・自覚症状の消失
       ・精神的ストレス
       ・病識の不足
       ・患者を取り巻く環境
       ・家族、キーパーソンの協力(サポート)の欠如

#2.予後に対する不安
   〔要因〕・再燃と寛解を繰り返す疾病
       ・再燃への不安
       ・社会復帰への意欲の欠如
       ・精神状態

#3.食事療法中断の恐れ
   〔要因〕・食事療法によるストレス
       ・患者をとりまく環境
       ・病識の不足

#4.長期薬物療法による副作用出現の恐れ
   〔要因〕・内服が長期にわたる

#5.IVH、ED、ケアが粗雑になる恐れ
   〔要因〕・生活リズムの変化、慣れ
       ・管理、ケアの知識不足

Ⅲ.看護目標(寛解期)

 1.療養に必要な知識をもち行動ができる
 2.疾病に対する不安を表出できストレスが軽減できる

Ⅳ.看護問題(寛解期)

#1.治療の自己中断
   〔要因〕・自覚症状の消失
       ・精神的ストレス
       ・病識の不足
       ・患者を取り巻く環境
       ・家族、キーパーソンの協力(サポート)の欠如

  &病識が持て、療養に必要な行動がとれ寛解期が維持できる
   日常生活の留意点が言える
  $退院まで

O-1.患者の生活背景を知る
  2.自覚症状の把握
  3.患者の病識
  4.セルフケアの意欲、受容、自立性
  5.患者の行動、言動、ストレス状態
  6.患者の情報源と情報の内容
  7.キーパーソン等のサポートシステム状況
  8.患者、家族の健康に対する価値観、信念
  9.検査データ

T-1.患者とよくコミュニケーションをとり、疑問、悩みをともに考える
  2.病状悪化につながる生活行動を分析する
  3.疾患に対する正しい知識を提供する
  4.患者、家族及びキーパーソンに生活指導を行い、協力を得る

E-1.患者、家族及びキーパーソンに治療目的と治療を生涯継続することの重要性を説明する
  2.治療中断がもたらす影響について十分説明する
  3.日常生活管理と食事管理と関連づけて指導する
  4.症状がなく採血データがよくとも、内視鏡検査で潰瘍が多く見られることもあり、そのことを十分に説明し医師の治療計画を守るようまた定期検診するよう指導する
  5.困ったこと、不安なことがあれば看護婦に相談するよう指導する
  6.周囲のサポートの重要性と具体的サポート方法について、家族及びキーパーソンに説明する

#2.予後に対する不安
   〔要因〕・再燃と寛解を繰り返す疾病
       ・再燃への不安
       ・社会復帰への意欲の欠如
       ・精神状態

  &不安が最小限となり、精神的に安定した状態で日常生活が行える
  $退院まで

O-1.不安内容、要因
  2.患者、家族の健康に対する価値観、信念
  3.退院に際する患者、家族の受容度のチェック
  4.患者の言動、表情、精神状態
  5.睡眠状況

T-1.悩み、不安を表出しやすいよう受容的態度で接する
  2.患者の不安な気持ちを受け止め、軽減出来るよう配慮する
  3.社会復帰への問題点や不安な事項について解決策を受け持ち看護婦とともに考える
  4.患者の再燃時の徴候症状を把握しておく
  5.家族及びキーパーソンの悩み、不安が軽減出来るよう配慮する
  6.患者、家族への病識を確認し、必要時補足する

E-1.規則正しい生活の指導
  2.定期的外来受診の必要性を指導する
  3.再燃の特徴と症状及び、合併症の特徴と症状について説明する
  4.異常が見られたら自己判断で行動することなく、まず医師に報告するよう指導する
  5.妊娠出産により再燃することが多く、薬物の副作用が影響することがあるため医師と相談する必要性について指導する

#3.食事療法中断の恐れ
   〔要因〕・食事療法によるストレス
       ・患者をとりまく環境
       ・病識の不足

  &食事療法が守られる
  $退院まで

O-1.食生活状況の把握
  2.腹痛、下痢、発熱などの症状の有無
  3.食事内容及び、食事時間の把握
  4.体重の増減
  5.検査血液データ

T-1.食事療法の目的、制限食への理解、食事摂取の方法を患者とその家族に確認し必要時補足する
  2.主として家庭で食事を作る人を交えて栄養指導し、理解度をチェック、補足する
  3.食事療法をする患者のストレスや不安を傾聴し、軽減出来るよう配慮する
  4.患者の嗜好を出来るだけ取り入れた献立を考える(栄養士に依頼する)

E-1.食事療法継続の必要性について説明する
  2.食事療法中断がもたらす影響について説明する
  3.症状出現時には、速やかに食事摂取を中止し、受診することを指導する

#4.長期薬物療法による副作用出現の恐れ
   〔要因〕・内服が長期にわたる

  &薬物療法継続の必要性と副作用について理解できる
   副作用が出現したときはすぐに報告できる
  $退院まで

O-1.薬物療法継続の必要性に対する知識
  2.現在の内服状況の把握
  3.副作用症状
    ・サラゾスルファピリジン-消化器症状、頭痛、眩暈、発疹、溶血性貧血、顆粒球減少、膵炎、肝機能障害
    ・副腎皮質ホルモン-感染症の誘発、消化器潰瘍、高血糖、骨粗鬆症、精神障害(不眠、イライラ)、体重増加

T-1.薬物療法継続の必要性について医師から説明してもらう
  2.薬剤師に服薬指導を依頼する
  3.十分な観察を行い、異常の早期発見に努める
  4.内服の確認

E-1.自己管理が実践出来るように服薬時間、服薬量等説明する
  2.副作用の説明をし、異常時には看護婦に報告するよう指導する
  3.退院後には定期的に受診することと、症状の悪化時には来院するように指導する

#5.IVH、ED、ケアが粗雑になる恐れ
   〔要因〕・生活リズムの変化、慣れ
       ・管理、ケアの知識不足

  &清潔に留意し管理できる
  $退院まで

O-1.清潔に対する患者の概念
  2.ED療法に対する知識(濃度、速度、温度、カロリー、等)
  3.IVH:カテーテル刺入部状態の把握(発赤、腫脹、びらん、出血等の有無)
    ED:鼻腔、咽頭部症状の把握(疼痛、びらん、発赤、出血等の有無)、嘔吐、嘔気、腹部症状の有無

T-1.IVH刺入部は定期的に消毒し、清潔を保つ
  2.ED栄養チューブは粘膜を傷つけないようゆっくり挿入する。(左右の鼻腔を交互に挿入)
  3.経腸栄養ボトル等は丁寧に洗浄し、乾燥させておく

E-1.IVH、EDチューブの挿入、留置の自己管理ができるように、目的、方法、期間について
    説明し、正しい挿入、固定方法を指導する
  2.清潔操作について説明し、実践できるよう指導する
  3.トラブル出現時には、来院するよう指導する

クモ膜下出血患者の標準看護計画(脳動脈瘤)

クモ膜下出血患者の標準看護計画(脳動脈瘤)



クモ膜下出血とは
 クモ膜下出血は働き盛りの40~50歳代に多発し、しかも死亡率が高く、また救命したとしても重篤な後遺症を残すことの多い疾患である。クモ膜下出血の原因の約80%は脳動脈瘤の破裂で、次いで脳動静脈奇形によるものがある。クモ膜下出血の経過中には、再出血・血管攣縮・水頭症などの重篤な病態がある。

アセスメントの視点
 急激に発症し、しかも死亡率の高い疾患である。発症からの時期によってさまざまに変化する病態を有する疾患であり、再出血・血管攣縮・水頭症の三つに関して注意する。突然に発症することから、家族の動揺も激しいため家族への援助も重要となる。

症状
 突発性の激しい頭痛(殴られたような、割れるような)で発症し、しばしば嘔吐を伴い、半数以上に意識消失を認める。痙攣発作を伴うことも少なくない。またクモ膜下出血の重症度や脳動脈瘤の部位によって症状が異なる。
 
1.クモ膜下出血の重症度
Grade0-非破裂例
Grade1-意識清明で神経症状のないもの、またはあってもごく軽度の頭痛・強直のあるもの
Grade1a-意識清明で急性期症状がなく、神経症状の固定したもの
Grade2-意識清明で中等度の強い頭痛・項部強直はあるが、神経症状(脳神経麻痺以外の)を欠くもの
Grade3-意識障害は傾眠、錯乱である。軽度の局所神経障害をもつこともある
Grade4-意識障害は昏迷、中等度から強度の片麻痺、ときに除脳硬直、自律神経障害の初期症状を示すもの
Grade5-昏睡、除脳硬直、瀕死の状態のもの
2.脳動脈瘤好発部位の主な神経症状
脳動脈瘤は内頚・後交通動脈分岐部が最も多く、次いで前交通動脈、中大脳動脈とウィリス動脈輪の前半部に多い。
 1)内頚動脈(IC)、内頚・後交通動脈(IC-PC)分岐部
動眼・三叉・滑車神経の障害の症状、片麻痺、精神症状、痙攣など
 2)前大脳動脈、前交通動脈(A-COM)
意識障害、一過性片麻痺、精神症状、視力障害など
 3)中大脳動脈
片麻痺、失語症、精神症状、痙攣など
 4)椎骨・脳底動脈
意識障害、小脳症状、眼振、一過性の呼吸停止、心停止など

検査
CTスキャン
腰椎穿刺
脳血管撮影(脳動脈瘤の検索)

治療
 病態の変化に伴い、再出血・血管攣縮・水頭症の治療が中心となる。
1.再出血に対する治療
脳動脈瘤クリッピング術
手術の時期は神経学的所見および全身状態によって決定される。また出血量が多い場合には、脳槽・脳室ドレナ-ジや脳内血腫除去などが追加される。
2.血管攣縮に対する治療
手術による血腫の洗浄、脳槽・脳室ドレナ-ジ
Hyperdynamic療法
輸液、血漿製剤、昇圧剤により、積極的に人為的な血漿増量、高心拍出量の状態を維持して、攣縮血管に少しでも多くの血液を送り込む方法である。厳密な循環系の評価も必要とする。
血管拡張(カルシウム拮抗剤、亜硝酸剤投与)
経皮的血管形成術
3.水頭症に対する治療
脳室ドレナ-ジ
シャント術-脳室腹腔吻合術(V-Pシャント)、脳室心耳吻合術(V-Aシャント)

経過と管理
1.精神的サポ-ト
 術前では、急激に発症し、緊急入院・手術となる場合が多いので患者および家族の動揺・不安は大きい。患者に対しては医療者・家族を含め、周囲の者が一貫して「クモ膜下出血」「手術」など不安となるような言葉は使わず、外からの刺激は極力与えないようにする。そのため家族が状況を理解し、協力が得られるような援助も重要である。
 術後では、特に術前に意識障害のあった場合や手術の説明を受けなかった患者ではすぐには自分の状態を理解し容認するのは困難である。このような患者の気持ちをくみ取り、援助していくことが大切である。
2.再出血予防の管理
 一度破裂した脳動脈瘤の多くは、放置すれば二度三度と再出血を繰り返す。再出血は初回出血日に最も起こりやすく、日が経つにつれてその危険性は減少する傾向にある。再出血は突然起こり、急激な意識消失、バイタルサイン・神経症状の変化や嘔吐を認め、状態が急激に悪化するため、再出血予防は最も重要である。外からの刺激を極力避けるために、部屋を暗くし、絶対安静を保つ。また、意識が清明な場合や不穏状態の場合は鎮静剤を投与する。また血圧のコントロ-ルは大切であり、平常血圧以下に血圧を維持するように努める。頭痛時は鎮痛剤を与え、あまり我慢させないようにする。
3.脳血管攣縮の管理
 クモ膜下出血発症後4~14日くらいの時期に起こるが、攣縮の程度が強い場合には広範囲の梗塞を生じ、重篤な症状を後遺する。脳血管攣縮の徴候を認めた場合には、速やかにHyperdynamic療法によって血圧の上昇を図るなどの治療を開始しなければならないので、患者の意識レベルや麻痺のごくわずかの変化、食欲の低下、表情の変化など、脳血管攣縮初期症状を見逃さないことが重要である。また、脳血管攣縮の時期にたとえ短時間でも血圧を低下させることは、症状を悪化させる決定的な誘因となることがあるので特に注意が必要である。
4.水頭症の管理
 急性水頭症と慢性期の正常圧水頭症がある。
 急性水頭症-術前にクモ膜下腔の出血による脳脊髄液の循環・吸収障害により頭痛、嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状や意識障害をおこす。CTで確認後、脳室ドレナ-ジが行なわれる。
 正常圧水頭症-術後に脳室の拡大が著名であるにもかかわらず、頭蓋内圧が高くないものをいう。失見当識などの意識障害、小股歩行などの歩行障害、尿失禁などの水頭症の症状の発現に注意しなければならない。脳室ドレナ-ジやシャント術を施行した場合はドレナ-ジからの排液量や閉塞、チュ-ブの抜去、そして感染に注意が必要である。
5.神経脱落症状の管理
 支配領域の脳・神経細胞の障害によって正常な機能を失って現われる症状で、運動・言語・嚥下・排泄などの障害である。急性期は慢性期のリハビリテ-ションを円滑に行なうために良肢位の保持や関節可動域の確保に注意する。バイタルサインが安定すれば早期より訓練を開始していく。

術後合併症
1.術後出血
 術後数時間~24時間以内に血圧の上昇によりおこりやすい。術後は1~2時間毎に観察する。
2.脳浮腫
 術後出血より発現時間は遅く、術後24~48時間以後に発現することが多い。意識レベルの低下、神経症状の悪化などの頭蓋内圧亢進症状で発症してくる。
3.水頭症
 脳室ドレナ-ジやシャントシステムに閉塞が生じたり、流量が不十分な場合には水頭症が再発し頭蓋内圧亢進症状をきたす。
4.感染
 術後感染で最も問題となるのは髄膜炎である。手術創やシャントシステムの感染により発熱、項部強直、手術創の発赤などを認める。髄膜炎併発により、水頭症、けいれんなどの後遺症が起きる割合も高くなるため注意が必要である。また肺炎、尿路感染などの二次的合併症の出現にも注意が必要である。
5.消化管出血
 ステロイド剤の多量な投与、精神的ストレスなどによりおこしやすい。



看護計画(急性期)

Ⅰ.アセスメントの視点(急性期
 一度破裂した動脈瘤は再破裂しやすく、再出血の予防に努めなければならない。また経時的な観察を行い、異常の早期発見に努める。そして動脈瘤の破裂による合併症、安静による合併症を起こすことなく、意識障害状況下で充足されないADLの援助を行うことが大切である。突然に発症し、またさまざまに変化する病態があり、家族の動揺が激しいため、家族への援助も重要である。

Ⅱ.問題リスト(急性期)
#1.再出血
   [要因]・クモ膜下出血後1~2週間までが最も再出血の危険性が高い
       ・内的刺激(安静のストレス、頭痛、排便時の怒責など)による血圧変動
       ・外的刺激(音、光、振動など)による血圧変動

#2.頭蓋内圧亢進
   [要因]・動脈瘤の再破裂
       ・急性水頭症(髄液腔への出血による髄液の循環障害、吸収障害)
       ・脳浮腫

#3.脳血管攣縮
   [要因]・クモ膜下腔に残っている凝固した血液の作用

#4.肺炎の合併の危険性
   [要因]・長期臥床による沈下性肺炎
       ・咳嗽反射の消失による唾液、吐物の誤嚥性肺炎

#5.疼痛
   [要因]・髄膜刺激症状(頭痛,悪心・嘔吐,項部硬直,痙攣)
      ・手術による皮膚の損傷
      ・チューブ類の挿入による苦痛と体動の制限
      ・長時間の同一体位による血行障害
      ・頻繁な状態観察と処置によるストレス

#6.褥創
   [要因]・同一体位の長期臥床での持続的な圧迫、循環障害

#7.電解質のアンバランス
   [要因]・脱水または水分過剰

#8.セルフケアの不足
   [要因]・絶対安静による行動の制限
       ・意識障害
       ・運動障害
       ・頭痛,悪心,嘔吐
       ・体動による症状悪化への不安

#9.外傷の危険
   [要因]・意識障害(不穏,失見当識,思考能力低下等)
       ・ドレーン挿入
       ・各種医療器具装着による体動の制限
       ・痙攣発作
       ・運動障害
       ・知識不足
       ・視野障害

#10.疾患や手術に対する不安
   [要因]・突然の発症
       ・緊急入院
       ・緊急手術の適応
       ・疾患や治療,予後に対する理解不足
       ・社会的役割の変化(仕事の中断、休職)
       ・経済的不安

Ⅲ.看護目標(急性期)
1.再出血を起こすことなく、手術まで心身ともに安定した状態を維持できる
2.制限された入院生活の中で安全・安楽に過ごす
3.脳血管攣縮による症状の悪化や安静による合併症を起こさない
4.疾患や手術に対する不安が軽減される

Ⅳ.看護問題(急性期)
#1.再出血
   [要因]・クモ膜下出血後1~2週間が最も再出血の危険性が高い
       ・内的刺激(安静のストレス、頭痛、排便時の怒積など)による血圧変動
       ・外的刺激(音、光、振動など)による血圧変動

  &再出血することなく手術を迎えることができる
   異常が早期に発見され、早期に対処される
  $発症~手術直前


O-1.頭痛の有無と程度
  2.悪心、嘔吐の有無
  3.意識レベルの変化
  4.呼吸状態
  5.運動麻痺の悪化
  6.瞳孔散大、対光反射の消失
  7.急激な血圧の変動
  8.不穏な体動


T-1.自動血圧計・モニター装着により、1~2時間毎に観察する
    1)麻痺の程度の判定には、痛み刺激を与えずに観察する
    2)意識レベル、瞳孔の観察は刺激を少なくするため頻回に行なわない
  2.異常が見られたら、すぐに医師に報告する
  3.救急カートの準備
  4.酸素マスク、吸引の準備呼吸状態が悪い場合は人工呼吸器の準備
  5.点滴の管理
  6.不穏時、医師に指示にて鎮静剤の与薬
  7.安静度は、医師の指示による;原則として絶対安静
    1)精神安定を図るため、個室に収容する。ブラインドを引き、部屋を暗く、静かな環境を整える。面会制限(家族のみ可)を行い、テレビ・ラジオなどの音の刺激を避ける
    2)精神の動揺を避けるため、刺激を与えるような質問や説明を避け、不安の除去に役立つように話を進める。家族や職場の問題を持ち込まない
    3)ベッドはセミファーラー位または水平とする。ADLは全面介助する
    4)ナースコールの使用は患者からのコールのみとし、ナースからの送話はしない
    5)吸引の必要な患者には、できるだけマイルドに行なう
  8.排便時の怒責を避けるため、医師の指示により緩下剤を与薬し、排便を確認する浣腸は行わない
  9.尿失禁のある患者は、状態の改善が見られるまで留置カテーテルを留置する意識清明な場合は、床上排泄とする
  10.処置時には、十分な説明を行い、了解を得る

E-1.患者,家族に必要以上の話はしないように説明する
  2.暗室、安静の必要性を説明する。家族にもその重要性を説明し、協力を得る

#2.頭蓋内圧亢進
   [要因]・動脈瘤の再破裂
       ・急性水頭症(髄液腔への出血による髄液の循環障害、吸収障害)
       ・脳浮腫

  &頭蓋内圧亢進による初期徴候が発見され、初期に対処される
  $発症後~2週間目

O-1.意識障害の有無、程度、出現パターン
  2.呼吸状態(回数、深さ、パターン、チアノーゼの有無)、SpO2値
  3.バイタルサイン(血圧と脈圧,脈拍数と性状,体温の変動)
  4.頭痛、悪心・嘔吐の有無
  5.瞳孔の大きさ、形、左右差、対光反射の状態
  6.運動麻痺の有無、麻痺の部位と程度
  7.痙攣の有無と状態
  8.出血の部位と範囲を示す検査データー(CT、アンギオの結果)
  9.脳室ドレーンからの排液量,性状,ドレーンの高さ

T-1.頭蓋内圧亢進を予防するため、以下の方法を実施する
    1)指示された輸液や薬物(高浸透圧利尿剤、ステロイド剤、抗痙攣剤)を投与する
    2)指示どおりの酸素吸入を行う
    3)脳室ドレーンは指示された高さに保つ
    4)快適な室温を維持し、体温上昇時は腋窩・背部や鼠径部のクーリングや指示された解熱剤を投与する
    5)騒音を避け、室内は薄暗くする
    6)ベットの頭部を15゚~30゚挙上し、枕は使用しない
    7)膀胱留置カテーテルを挿入する
    8)浣腸は行わない
  2.吐物による誤飲を予防するため、手術前日まで経口摂取は禁止とし、頭部は横に向ける
  3.頭蓋内圧亢進症状の徴候を認めた場合はただちに報告し対処する

E-1.頭蓋内圧亢進予防のための上記の(T.1)実施事項について必要性を説明する

#3.脳血管攣縮
   [要因]・クモ膜下腔に残っている凝固した血液の作用

  &初期徴候が発見され、初期に治療をうける
  $発症後3・4日目~2週間目


O-1.意識障害の出現の有無と程度
  2.運動麻痺の出現の有無と程度
  3.瞳孔の大きさ、形、左右差、対光反射の有無
  4.瞳孔の動き、複視の出現の有無
  5.バイタルサイン(血圧低下、徐脈、呼吸抑制)
  6.頭痛,悪心,嘔吐の有無
  7.水分in・outのバランス
  8.会話内容の混乱の有無
  9.昼夜逆転の有無
  10.表情の変化の有無


T-1.8時間ごとに水分in・outのバランスをとり、常に体内をプラス傾向に保てるように、必要時補液などを追加する
  2.血圧が目標内にコントロールされるように、指示された輸液や薬物を使用する
  3.異常を認めた場合は早期に報告し対処する

E-1.多少の飲水や食事の許可が出ている患者の家族には水分出納表の記載について説明する
  2.頭痛、悪心・嘔吐、その他異常出現時は、直ちに報告するよう説明する

#4.肺炎の合併の危険性
   [要因]・長期臥床による沈下性肺炎
       ・咳嗽反射の消失による唾液、吐物の誤嚥性肺炎

  &肺で適切な換気が行われる
  $入院当日~離床

O-1.意識障害の程度
  2.呼吸状態(数、リズム、深さ、胸郭の運動、SpO2値)
  3.肺雑音の有無
  4.喀痰喀出状況と性状、量
  5.バイタルサイン(熱発の有無)
  6.口腔内の乾燥の有無、舌苔の有無
  7.胸部X-P、血液ガス値、血液データー(WBC、CRPなど)

T-1.指示された酸素吸入の実施
  2.体位交換
  3.タッピング、吸痰(必要時吸入施行 3~4回/日)
  4.適宜口腔ケア施行(舌のブラッシング、サリペートの散霧)

E-1.深呼吸、喀痰の指導
  2.O2吸入、吸痰の必要性を説明する

#5.疼痛
   [要因]・髄膜刺激症状(頭痛,悪心・嘔吐,項部硬直,痙攣)
       ・手術による皮膚の損傷
       ・チューブ類の挿入による苦痛と体動の制限
       ・長時間の同一体位による血行障害
       ・頻繁な状態観察と処置によるストレス

  &頭痛や創痛が緩和したことを言葉に出して表現する
   くつろいだ表情となり、くつろいだ体位をとる
  $ドレーン抜去まで

O-1.髄膜刺激症状(頭痛,悪心・嘔吐,項部硬直,痙攣)の有無と程度
  2.創痛の有無と程度
  3.チューブ類の挿入状況とそれによる苦痛の有無と程度
  4.体動の制限や抑制,頻繁な観察や処置による苦痛の有無と疼痛の訴えとの関係
  5.休息,睡眠の状態
  6.精神状態,表情
  7.バイタルサイン

T-1.頭蓋内圧亢進を予防する
  2.照明の調節や面会人の制限,騒音の防止により周囲からの刺激を最小限にする
  3.安静度内での安楽な体位を保持し、面会,会話などで気分転換を図る
  4.チューブ類は体動の妨げにならないように工夫して固定する
  5.指示されている鎮痛剤を効果的に使用する

E-1.安静やその他の医療行為の必要性,今後の見通しについて説明する

#6.褥創
   [要因]・同一体位の長期臥床での持続的な圧迫、循環障害

  &褥創を起こさない
  $入院当日~離床

O-1.皮膚の状態
  2.腸骨、仙骨部など骨突起部の発赤、皮むけ、ただれの有無
  3.オムツかぶれの有無

T-1.体動の少ない患者にはエアマットを挿入し、2~3時間ごとの体位交換を介助する
  2.1~2日ごとに全身清拭を行い、皮膚の状態を観察する
  3.オムツ汚染時は直ちに皮膚を洗浄し、清潔を保つようにする
  4.皮むけ、ただれは早期からクリームや軟膏で対処し、ガーゼ保護を行う
  5.必要時、眠前にもケアを行う

E-1.ルートに注意して患者の活動可能な部分を説明し、体動を促す

#7.電解質のアンバランスの危険性
   [要因]・脱水または水分過剰

  &経口と補液により、必要な栄養、電解質が満たされる
  $入院当日~退院前日


O-1.意識レベルの変化
  2.顔色、表情、皮膚の状態
  3.倦怠感、悪心・嘔吐等の自覚症状の有無
  4.血液データーチェック
  5.バイタルサイン
  6.尿量、尿の性状チェック


T-1.指示された輸液は確実に投与する
  2.異常を認めた場合は早期に報告し対処する

E-1.体に異常を感じたときは我慢せずに直ちに報告するよう説明する

#8.セルフケアの不足
[要因]
・絶対安静の制限
・意識障害
・運動障害
・頭痛,悪心,嘔吐
・体動による症状悪化への不安



  &介助により安全、安楽な生活が送れる
  $入院当日~離床


O-1.意識,意欲状態
  2.運動状態(麻痺,筋力,ROM)
  3.視野
  4.身体的苦痛の有無
  5.治療上の制限範囲内でのADL状況


T-1.治療上の制限や身体状況に合わせたADLの介助

E-1.コミュニケーションをとり、不満や訴えに対処する
  2.状態がよければ、可能な範囲でできるかぎり自力で行うように促す

#9.外傷の危険

[要因]・意識障害(不穏,失見当識,思考能力低下等)
    ・ドレーン挿入
    ・各種医療器具装着による体動の制限

    ・痙攣発作
    ・運動障害
       ・知識不足
       ・視野障害


  &危険なく安全に過ごすことができる
  $退院当日

O-1.意識障害の有無と状態(不穏,失見当識等)
  2.症状や治療,医療器具装着の必要性に対する理解度
  3.痙攣の有無と理解度
  4.運動麻痺の有無と程度
  5.視野障害
  6.ベッド上とその周囲の環境
  7.ドレーンや医療器具の装着状態
  8.抗痙攣剤の効果

T-1.ベッド柵を常にしておく
  2.必要に応じて、四肢、肩、体幹を抑制する
  3.指示された抗痙攣剤を確実に投与する
  4.環境整備を行いドレーンやその他のチューブ類は患者の手に届かない所に固定する
  5.ナースコールは手に届く所におく
  6.不穏時医師に報告し指示を受ける

E-1.治療、安静、医療器具装着の必要性を繰り返し説明する
  2.家族への説明
     1)安静の必要性を説明し協力を依頼する
     2)ベッドサイドを離れるときは看護婦に声をかけるよう説明する

#10.疾患や手術に対する不安
   [要因]・突然の発症
       ・緊急入院
       ・緊急手術の適応
       ・疾患や治療,予後に対する理解不足
       ・社会的役割の変化(仕事の中断、休職)
       ・経済的不安

  &不安の内容を表出できる
  緊急の処置、検査、手術の必要性を理解し、術前・術後の経過と状態がイメージでき表現できる
   表情が和らぎ、安定した気持ちを維持でき、睡眠・休息が十分に取れる
   家族の不安が軽減し、手術の準備ができる
  $退院当日

O-1.表情、言語、態度の表出状況と不安の程度との関係
  2.睡眠、休息状態
  3.疾患、処置、手術、予後についての医師からの説明とそれに対する反応
  4.術前処置に対する反応
  5.性格傾向
  6.対処方法と対処能力
  7.サポートシステムの状況
  8.突然の発症と入院によって生じた問題の有無とそれに対する考え
  9.家族の状況判断能力

T-1.不安を表出しやすい環境、人間関係づくりに努める
    1)患者や家族の訴えをよく聞き、受容的態度で接する
    2)疾患に対する不安は、医師から十分に説明が受けられるようにする
  2.患者と不安について話し合い、原因がはっきりしている不安に対しては、解決できるように努める
  3.サポートシステムを活用する

E-1.入院生活に早く適応できるように、入院時に病棟の日課等について、床上で簡単なオリエンテーションを行う
  2.検査・処置の内容と必要性を説明し、患者が納得して検査や治療を受けられるようにする
  3.医師の説明内容と患者の精神状態や理解度に合わせた手術前オリエンテーションを行い、手術後の状態が具体的にイメージできるようにする


看護計画(慢性期)

Ⅰ.アセスメントの視点(慢性期)
 脳血管攣縮も含めて、患者の状態が安定した時期である。徐々に安静度が拡大され、それに伴いADLの拡大にむけ、援助していかねばならない。

Ⅱ.問題リスト(慢性期)
#1.水頭症の危険性
   [要因]・血球の破壊産物による髄液の通過、吸収障害

#2.外傷の危険性
   [要因]・意識障害、病識の欠如
       ・長期の床上生活による筋力低下
       ・片麻痺、四肢の拘縮
       ・不慣れな環境
       ・視野、視力障害

#3.セルフケアの不足
   [要因]・意識障害、病識の欠如
       ・長期の床上生活による筋力低下
       ・片麻痺、四肢の拘縮
       ・視野、視力障害
       ・転倒の不安
       ・自発性の低下

#4.睡眠パタ-ンの障害
   [要因]・意識障害
       ・長期の床上生活
       ・身体的苦痛
       ・日中の活動不足
       ・睡眠時の環境

#5.コミュニケ-ションの障害
   [要因]・構音障害
       ・失語症(運動性失語、感覚性失語、全失語)

#6.不安
   [要因]・脱落症状の残存
       ・退院後のライフスタイルの変化
       ・役割の変化
       ・サポ-トシステムに対する不安

Ⅲ.看護目標(慢性期)
1.ADLが拡大し、退院後の身体的、精神的準備ができる
2.危険を伴うことなく、安全に入院生活を送ることができる

Ⅳ.看護問題(慢性期)
#1.水頭症の危険性
   [要因]・血球の破壊産物による髄液の通過、吸収障害

  &異常が早期に発見され、対処される
  $発症2、3週間後~退院日

O-1.意識レベルの低下、痴呆
  2.歩行状態
  3.尿失禁の有無
  4.CTにて脳室拡大の有無
  5.水頭症の悪化による頭蓋内圧亢進症状の出現

T-1.指示された薬物の確実な投与
  2.水頭症の徴候が認められた場合は、医師に報告する

E-1.患者、家族に、水頭症の病状を説明し、退院後も観察できるように指導する

#2.外傷の危険性  
[要因]・意識障害、病識の欠如
    ・長期の床上生活による筋力低下
    ・片麻痺、四肢の拘縮
    ・不慣れな環境
    ・視野、視力障害
  &転倒による外傷を起こさない
  $離床時~退院日


O-1.意識レベルの程度
  2.病状の認識
  3.ベッド周囲、病棟内の環境
  4.ADLの状況
  5.筋力低下と歩行の状況
  6.視野、視力障害の有無
  7.退院後の生活環境


T-1.ベッド上での生活の環境整備
    1)必要時低床ベッドを使用し、ベッド柵を固定する
    2)必要物品やナ-スコ-ルは、手の届く範囲内に設置する
    3)必要時、抑制帯を使用する
  2.歩行状況にあわせ、歩行器や杖を使用する
  3.患者の所在を常に確認する
    1)必要時、氏名、病棟名を印した名札を病衣に付ける
  4.生活パタ-ンを知り、患者の行動を予測し、早めに促す
  5.ポスタ-を提示する

E-1.障害の存在と危険性を繰り返し説明し、注意を促す
  2.正しい移動動作の方法を患者に指導する
  3.必要時は援助を求めるように指導する
  4.退院後の生活環境について、患者、家族と相談する
    1)必要時はリハビリテ-ション医に相談する
  5.退院後の生活指導(運動、仕事、車の運転など)に関しては医師と確認し説明する

#3.セルフケアの不足  
[要因]・意識障害、病識の欠如
    ・長期の床上生活による筋力低下
    ・片麻痺、四肢の拘縮
・視野、視力障害
・転倒の不安
・自発性の低下


  &能力を最大限に生かしたセルフケアを行ない、徐々にADLの拡大ができる
  $離床時~退院日

O-1.意識、意欲
  2.四肢の運動状態(麻痺や拘縮の有無、筋力)
  3.ROM
  4.視野の状態(視野欠損、複視の有無)
  5.現在のADLの状況の把握
  6.リハビリテ-ションの状況
  7.体力、疲労感
T-1.十分な時間を与え、焦らせない
  2.ADL評価表を参照し、セルフケア能力に応じた援助を行なう

E-1.障害の能力に応じた効果的なセルフケアの方法を指導する
  2.積極的にセルフケア能力を拡大することの意義を患者、家族に指導する

#4.睡眠パタ-ンの障害 
[要因]・意識障害
    ・長期の床上生活
    ・身体的苦痛
・日中の活動不足
・睡眠時の環境


  &夜間睡眠をとり、日中の生活リズムが整う
  $退院日まで

O-1.睡眠、覚醒パタ-ンの状況(パンフレットの使用)
  2.熟睡感の有無
  3.疼痛や掻痒感の有無
  4.患者の不眠の訴え
  5.日中の活動内容、活動量
  6.ベッド周囲、病室内の環境
  7.照明、騒音、屋内気候の状況
  8.夜間の尿回数の頻度
  9.緊張、恐れ、怒り、悲しみ、不安の感情の有無
  10.集中力、注意力の低下
  11.作業能率の低下
  12.感覚機能の衰え
  13.睡眠剤服用の有無

T-1.身体的苦痛の緩和
    1)頭痛、創痛がある場合、温・冷罨法やマッサ-ジ、鎮痛剤の使用により就寝前に疼痛の
コントロールを図る
    2)掻痒感がある場合、患部を冷却したり、外用剤を塗布したりする
    3)清拭や洗髪、許可があれば入浴による清潔の保持を行なう
    4)就寝前に排泄を行なう
    5)空腹感がある場合は、胃に負担のかからないものを摂取する
  2.環境の調整
    1)夜間の見回りは、静かに行なう
    2)布団や枕が合わない場合は、家族に相談し自宅から持ってきてもらう
    3)換気や湯たんぽ、布団により、温度の調整を行なう
    4)プライバシ-の確保
  3.睡眠サイクルの認識のため、一日の生活行動をポスタ-に提示する
  4.日中はなるべく離床を促し、適度な運動を行なう
  5.就寝の時間を教え、入眠を促す
  6.イブニングケアの習慣をつける
  7.必要時医師と相談し、睡眠剤や精神安定剤を考慮する

#5.コミュニケ-ションの障害
   [要因]・構音障害
       ・失語症(運動性失語、感覚性失語、全失語)
       ・意識障害

  &患者の二-ズを充足し、ストレスがたまらない
   言語、非言語を用いてコミュニケ-ションがとれる
  $退院日まで

O-1.発音の状態
  2.舌、咽頭の動き
  3.発語の内容
  4.言語的指示、非言語的指示(命令)に対する反応
  5.会話における言語的及び非言語的反応
  6.非言語的表現(表情、動作)

T-1.STの協力を得て効果的な訓練を病棟でも行なう
  2.会話の機会を多くもち、患者の発語を促すような問いかけを意図的に行なう
  3.患者が好んで参加できそうな会話内容を選択する
  4.ゆっくりと短い文章で話しかけ、必要に応じて繰り返す
  5.問いかけがどの程度理解できたかを確認する
  6.忍耐強く患者の言葉を理解しようとする態度で臨む
  7.あきらめずに繰り返し表現するよう励ます
  8.患者が理解できるコミュニケ-ション手段を探す(書字、文字盤の使用、日常の二-ズのコ-ド化、ジェスチャ-など)

E-1.焦らずゆっくりと繰り返し発語するように指導する
  2.患者、家族に会話の必要性について説明する

#6.不安  
[要因]・脱落症状の残存
    ・退院後のライフスタイルの変化
・役割の変化
・サポ-トシステムに対する不安


  &適切な対処行動により、不安が軽減される
   障害に適応し、状態に応じた社会復帰ができる
  $退院日まで

O-1.脱落症状と残存機能の状態
  2.表情、態度、言語による表現
  3.患者、家族の理解度
  4.患者、家族の不安や問題に対する克服能力
  5.性格傾向
  6.患者、家族の関係
  7.介護の協力状況とケア能力
  8.退院後の生活様式
  9.社会的サポ-トシステムの有無と内容
  10.家庭、社会における役割の内容
  11.精神状態、意欲の状態

T-1.今後についての話し合いの場を、患者、家族と共に作る
  2.現実的で達成可能な目標を患者自信が設定できるように援助する
  3.患者のコ-ピング反応を認めたり、それ以外の有効なコ-ピング手段を見つけられるように援助する
  4.家族の協力を依頼する

E-1.退院後の生活がイメ-ジできるように、退院後の日常生活について知識を与える

イレウス保存的療法の標準看護計画

イレウス保存的療法の標準看護計画



#1 疾患に対する不安

  患者目標  
  1、検査処置の必要性、方法が十分理解でき不安なく受けることが出来る。
  2、疾患について理解でき、現状を受け入れられる。

  O-P)
  1. 腹部症状(腹痛、嘔吐、腹部膨満など)による苦痛の程度
    腹部X-P、腸管ガス像の有無、排便、排ガスの有無
  2. 入院生活への適応状況
  3. 疾患、に関する患者の情報量と理解度
  4. イレウス管挿入に対する理解度、受け入れ状況
  5. 表情、言語、態度の表出状況と不安の程度の関係
  6. 睡眠状況
  7. サポートシステムの状況
  8. 家族からの情報、家族の受け入れ状況
  9. 患者の性格、対処行動と対処能力

  T-P)
  1. 医師の指示により鎮けい剤、蠕動更新剤の投与
  2. 腹部症状に対して温罨法や体位の工夫
  3. 入院生活上可能な範囲で環境調整する
  4. 医師から十分説明が受けられるように配慮する
  5. 疾患に対して、患者が必要とする情報を提供する
  6. 家族の援助が得られるように必要時参加を求める
  7. 患者や家族の訴えを傾聴し、受容的態度で接する
  8. 静かに休息の取れる環境を作る

  E-P)
  1. 医師の説明で理解不足の内容があれば追加説明し、納得を得る
  2. 検査、処置の必要性を解りやすく説明し協力を得る


#2 栄養状態や、体液、電解質の変調
  
患者目標   
  1、十分な補液が行われ、安定した循環動態が維持できる
  2、身体機能の維持に必要な栄養状態を保つことができる

  O-P)
  1. バイタルサイン(BP低下、頻脈,呼吸促迫)
  2. 尿量減少
  3. 吐物の量、イレウス管からの排液の量
  4. IN,OUTのバランス
  5. 低栄養状態のコントロール,貧血脱水状態のコントロール

  T-P)
  1. 異常時、医師に報告する
  2. 高カロリー輸液または、輸液の管理を行う
  3. 保温、室温の調整
  4. 倦怠感が強い時は、日常生活で危険がない様に、また必要時ADLの介助を行う
  5. 緊張や恐怖心を持たせないよう落ち着いた態度で接する

  E-P)
  1. 輸液の必要性や、施行時の注意事項を説明する
  2. 現在の状況を理解できるように説明する


#3 チューブ類の拘束によるストレスや睡眠障害
  
  患者目標 
  1、夜間安眠が得られ、穏やかに過ごせる

  O-P)
  1. 不快の程度
  2. 睡眠障害の有無
  3. 睡眠不足に随伴する症状の有無(頭痛、倦怠感、無気力感、思考力の低下)

  T-P)
  1. 昼夜逆転しないように日中はできるだけ起こしておく
  2. 睡眠がとれるよう環境を整える(室温、照明、騒音)
  3. ストレスがある場合はその要因を把握する
  4. 安静度の範囲内で日常生活範囲を拡大し、気分転換を図る
  5. 体動、離床の際、チューブ類が十分な長さあるか確認する

#4 退院後の日常生活の不安
   
  患者目標 
  1、身体的、精神的に自立し退院にむけ準備ができる

  O-P)
  1. 食事摂取内容
  2. 食事摂取量と回数
  3. 食事摂取の速度
  4. 排便状況(下痢、便秘の有無)
  5. セルフケアの自立度
  6. 言動、表情、行動
  7. 睡眠状況
  8. 疾患に対する患者の認識
  9. 家族の協力体制(キーパーソン)

  T-P)
  1. 患者が質問したり、気持ちを表出しやすい雰囲気をつくる
  2. 家族の協力を依頼する
  3. 退院後の日常生活に関して、説明していく

  E-P)
  1. 栄養のバランスのとれた、消化のよいものを選ぶ
  2. 退院後の患者の環境や生活背景を考慮し、食事指導を患者と家族に行う
  3. 規則正しい生活を送り、適度な運動をとり入れ十分な睡眠をとるようこころがける
  4. 暴飲暴食をさける
  5. 排便コントロールを整える
  6. 定期検診、服薬指導を行う

イレウス患者の標準看護計画

イレウス患者の標準看護計画


イレウスとは

 胃腸管内容の移動がなんらかの病的変化によってさまたげられた状態で機械的閉鎖が原因である場合は機械的イレウス、腸管の機能異常に基づく場合は機能的イレウスという。
 なかでも最も頻度の高いのが癒着による機械的イレウスで、開腹手術後に多い合併症である。

アセスメントの視点

 イレウスは腹痛・嘔吐・腹部膨満などの身体的苦痛の他に、絶飲食による精神的苦痛が加わり、さらに保存療法にて症状が改善されない場合や、絞扼性イレウスと診断された場合は手術適応となるので、手術に対する不安も生じてくると思われる。



症状

1.腹痛
腸間膜の絞扼による絞扼痛、閉塞上部腸管が過伸展して起こる伸展痛、腸管壊死に起因する腹膜炎のための炎症性疼痛などがある。
2.嘔吐
初期には吐物に胃液、食物残渣、胆汁などが混じるが、だんだん糞臭をおびるようになる。
3.腹部膨満
腹部は時間の経過とともにしだいに膨満し、腸蠕動不安が著明となる。腹部膨満により横隔膜が挙上されることにより呼吸困難を訴えてくる場合もある。
4.排ガス,排便の停止
診断上重要なものであるが、閉塞下部にあったガスや便が排出されることがあるので注意する。

検査

・腹部単純X線写真
・連続腸透視
・生化学検査及び血液一般検査

治療

1.保存的療法
イレウス管・胃管の挿入により腸管の減圧をはかり、また栄養輸液によって電質異常の補正もおこなっていく。
2.手術療法
腸管内外の原因の除去、腸切除がおこなわれる。

分類

1.機能的イレウス
 1)麻痺性イレウス
 2)痙攣性イレウス

2.機械的イレウス
 1)単純性イレウス
  ・癒着性イレウス
  ・腫瘍によるイレウス
  ・炎症性疾患によるイレウス
  ・先天性イレウス
  ・異物性イレウス
 2)複雑性イレウス
  ・絞扼性イレウス
  ・腸重積症
  ・軸転不通症
  ・腸嵌頓症
  ・腸結節形成症


看護計画(術前)

Ⅰ.アセスメントの視点

 イレウスによる合併症として、腹痛・嘔吐などの腹部症状、体液・電解質の喪失による循環不全、敗血症に注意する。イレウス患者に対しては、まず保存療法として、輸液や抗生物質の投与、イレウス管・胃管の挿入が行われる。保存療法にてイレウス症状が改善されない場合や、絞扼性イレウスと診断された場合は手術適応であり、緊急手術となることが多い。
 そのため患者の不安はより強くなり、栄養状態の確保や、家族のサポ-ト体制を整えるための十分な時間が得られにくい。短い期間でできるだけ身体的・心理的・社会的にも最良の条件を整えられるような援助が必要となる。

Ⅱ.問題リスト(術前)

#1.疾患や手術に対する不安
   [要因]・腸管内容の通過障害による腹部症状(腹部膨満、嘔吐、腹痛)の出現
       ・保存療法では改善できなかったことへの不安
       ・緊急手術、入院という予期しなかったことへの遭遇
       ・保存療法や手術についての知識不足
       ・社会的役割の変化
       ・手術後の疼痛や苦痛
       ・手術後の変化の程度と範囲

#2.栄養状態や、体液・電解質の変調
   [要因]・腸管内容の通過障害による食事摂取不足
       ・イレウスと診断後は絶飲食
       ・腸管内圧が高まり、水分が腸管内に大量に漏出する
       ・既往歴
       ・手術歴(術後の癒着によるイレウスの場合が多い)
       ・高齢
       ・活動の不足(腹部症状による苦痛のため)

#3.術後感染の危険性
   [要因]・腸内細菌の増殖
       ・腸管拡張により透過性が高まり、細菌が血行に流入する
        (敗血症、エンドトキシンなど)
       ・低栄養

#4.家族の不安
   [要因]・家族内の役割の変化(サポ-トシステムの不足)
       ・緊急入院、手術
       ・経済面への不安
       ・患者と家族間の人間関係

Ⅲ.看護目標(術前)

1.術前検査の測定値が改善する
2.処置・手術の必要性が理解でき、現状を受け入れられる
3.患者が合併症予防のための行動をとれるようになる
4.家族の不安が軽減し、患者をサポ-トする立場に立てる

Ⅳ.看護問題(術前)

#1.疾患や手術に対する不安
 &検査、処置の必要性、方法が十分理解でき不安なく受ける事ができる
  環境の変化に適応できる
  疾患についての理解ができ、現状を受け入れられる
  手術の必要性が理解でき、安心して手術を受けることができる
  患者の思い(不安や恐れ)を言葉で表現できる
  術前・術後の自分の状態がイメ-ジでき、対処方法を言葉で表現できる
 $手術前日

O-1.腹部症状(腹痛、嘔吐、腹部膨満感など)による苦痛の程度
     腹部X-P、腸管内ガス像の有無
     排便・排ガスの有無
  2.入院生活への適応状況
  3.疾患、術前検査、手術に関する患者の情報量と理解度
  4.イレウス管挿入に対する理解度、受け入れ状況
  5.表情、言語、態度の表出状況と不安の程度の関係
  6.睡眠状況
  7.サポ-トシステムの状況
  8.家族からの情報、家族の受け入れ状況
  9.患者の性格、対処行動と対処能力

T-1.医師の指示により、鎮けい剤・蠕動亢進剤の投与
  2.腹部症状に対して温罨法や体位の工夫
  3.入院生活上可能な範囲で環境調整する
  4.医師から十分説明を受けることができるように配慮する
  5.疾患、術前検査、手術に関して、患者が必要とする情報を提供する
  6.家族の援助が得られるよう必要時参加を求める
  7.患者や家族の訴えを傾聴し、受容的態度で接する
  8.静かに休息のとれる環境を作る

E-1.術前オリエンテ-ションを行う
  2.医師の説明で理解不足の内容があれば追加説明し、納得を得る
  3.検査、処置の必要性をわかりやすく説明して協力を得る

#2.栄養状態や、体液・電解質の変調
 &十分な補液が行われ、安定した循環動態が維持できる
  身体機能の維持に必要な栄養状態を保つことができる
 $手術前日

O-1.バイタルサイン(血圧低下、頻脈、呼吸促迫)
  2.尿量減少
  3.吐物の量、イレウス管からの排液の量
  4.intake-outputのバランス
  5.血液検査デ-タ
    ・低栄養状態のコントロール:TP≧6.0mg/dl,Alb≧3.0mg/dl
    ・貧血・脱水状態のコントロール:Hb≧10mg/dl,Ht≧30%,RBC≧350万/mm3、Na≧142mEq/L、K3.6~5.0mEq/L以内

T-1.異常時医師に報告する
 2.高カロリ-輸液または輸液の管理を行なう
 3.保温、室温の調整
 4.倦怠感が強いときは日常生活で危険がないように、また必要時ADLの介助を行なう
 5.緊張感や恐怖心を持たせないよう、落ち着いた態度で接する。

E-1.輸液の必要性や、施行時の注意事項を説明する
  2.現在の状況を理解できるように説明する

#3.術後感染の危険性
 &術前に感染症状を起こさない
  皮膚の毛根に潜む常在菌をなくし、分泌する汗、脂質、たんぱく質を除去する
  栄養状態が改善される(#2に準ずる)
 $手術前日

O-1.バイタルサイン(悪寒戦慄を伴う高熱、頻脈)
  2.血液検査デ-タ(WBC,CRP増加、Hb低下)
  3.確実に抗生物質が投与されているか
  4.スキンチェック、傷などないか
  5.抗生物質投与、皮膚の清浄の必要性に対する理解度を把握する

T-1.医師の指示により、抗生物質を確実に投与する
  2.剃毛、臍処置を行なう
  3.全身清拭、洗髪、手浴、足浴、爪切りを行なう

E-1.抗生物質の投与、皮膚の清浄化の良否が、感染にかかわる事を説明する

#4.家族の不安
 &家族ケア、家族サポートをとおして患者が支えられる
 $手術前日

O-1.家族の表情、言語による表現、態度
  2.家族と患者のコミュニケーション
  3.家族、患者間の疾病の理解、認識の差
  4.家族間のサポートシステム
  5.家族の状況判断能力
  6.家族がとらえている患者の性格傾向、コーピング
  7.経済的問題の存在
  8.疾患、検査、治療に対する理解度

T-1.家族とコミュニケーションをとり、不安や心配事を表出しやすいように受容的態度でかかわる
  2.家族の考えと医療者の考えの間に違いはないか、また患者の考えを尊重してかかわる方法について相談し検討する
  3.家族内で起きている問題の対処ができているか、解決困難なときは相談に乗る
  4.疾患、検査、治療に対する理解度

E-1.家族が患者の今後についてイメージできるように、術後の状況、入院期間、社会復帰の時期などについての知識を与える
  2.家族に患者のサポートの必要性を説明する


看護計画(術後)

Ⅰ.アセスメントの視点(術後)

 イレウスに対する手術は閉塞部位の解除が目的であるが、閉塞部位が解除されたからといってそれまで腸内に貯留していた内容物が排除されたわけではない。麻酔による意識レベルの低下、胃管留置による気道刺激、不快感、胃からの逆流や嘔吐、腹部膨満による呼吸抑制がもたらす肺合併症などをおこしやすい状況が術前よりもさらに多くなる。バイタルサインのチェックのほかに、特に胃管からの排液量、尿量、排便、排ガスの有無などに注意する必要がある。

Ⅱ.問題リスト(術後)

#1.術後出血
   [要因]・手術操作による消化管出血
       ・手術操作による腹腔内出血

#2.肺合併症
   [要因]・麻酔剤による分泌物の増加や貯留
       ・疼痛や腹部膨満による呼吸抑制
       ・イレウス管または胃管留置による口内の不潔
       ・不十分な咳嗽力による分泌物の貯留

#3.縫合不全

   [要因]・吻合部の血行障害
       ・腸穿孔や腸壊死による腹腔内感染
       ・腸管内圧の上昇
       ・術前の低栄養

#4.多量の排液、嘔吐などによる水分・電解質異常がもたらす循環不全(脱水、ショック)


#5.腸蠕動の低下・麻痺性イレウス
   [要因]・全身麻酔による腸管麻痺
       ・手術操作による腸管刺激
       ・腹腔内感染
       ・鎮痛剤の使用
       ・疼痛やドレ-ン留置による体動制限や離床の遅れ

#6.疼痛、チュ-ブ類の拘束によるストレスや睡眠障害

#7.セルフケア不足
   [要因]・疼痛、不快感の存在
       ・体力及び持久力の低下
       ・身体運動性の障害(疼痛、体動制限)

#8.経口摂取開始による排便コントロ-ル不良

#9.腸切後の腸管の機能低下による消化吸収不良症候群

#10.退院後の日常生活の不安
   [要因]・食生活パタ-ンの変化
       ・排便コントロ-ル


Ⅲ.看護目標(術後)

1.症状の観察や異常の早期発見に努め、術後合併症をおこさない
2.苦痛や不安の軽減に努める
3.食事や排便コントロ-ルを中心に生活指導を行い、退院に向けて準備できる

Ⅳ.看護問題(術後)

#1.術後出血
   [要因]・手術操作による消化管出血
       ・手術操作による腹腔内出血

  &創部、イレウス管または胃管、ドレ-ンからの出血の早期発見ができる
  $術後~48時間

O-1.バイタルサインチェック
  2.ガ-ゼ汚染の有無、症状
  3.イレウス管または胃管からの出血の有無、性状
  4.腹腔ドレ-ンからの出血の有無、性状
  5.腹部膨満、下血、吐血
  6.ショック症状の有無(血圧低下、頻脈、脈お緊張の低下、呼吸速拍、尿量の減少、チアノ-ゼ、四肢冷感、意識レベルの低下、低体温)
  7.悪心、嘔吐
  8.腹痛(部位、程度)
  9.血液デ-タ(Hb,Ht、血小板、プロトロンビン時間)

T-1.医師に報告する
  2.安静度を確認し、体位交換はゆっくり行う
  3.出血している場合は、患者に不安を与えないよう落ち着いた態度で手早く対応する
  4.一旦止血した後に再出血することがあるため、引き続き観察を十分に行う

E-1.出血時には患者、家族に不安を与えないように言動に気をつけ、医師より状況を説明してもらう
  2.処置時は声かけをし、その都度必要性を理解できるように説明する
  3.安静制限のある際は必要性を説明し、体を動かしたい時は看護婦に声をかけるよう
言う

#2.肺合併症
   [要因]・麻酔剤による分泌物の増加や貯留
       ・疼痛や腹部膨満による呼吸抑制
       ・イレウス管または胃管による口内の不潔

  &口内を清潔に保ち、喀痰喀出が自力ででき、呼吸状態が正常となる
  $術後1日~7日まで

O-1.麻酔の覚醒状態
  2.呼吸状態(呼吸数、リズム、深さ、胸郭の運動、呼吸困難)
  3.肺雑音の有無
  4.喀痰喀出状況と性状、量
  5.バイタルサイン
  6.創痛の程度、鎮痛剤の効果
  7.口内乾燥または汚染の有無
  8.intake-outputのバランス
  9.胸部X-P、血液ガス値、WBC等の検査デ-タ

T-1.酸素吸入の実施
  2.体位変換
  3.吸入 3~4回/日
  4.咳嗽を促し、喀出時は腹部を両手で固定し援助する
  5.必要時タッピング、バイブレ-ション、吸痰を行う
  6.効果的な鎮痛剤の使用
  7.深呼吸を促す
  8.含嗽を行い口内を清潔に保つ

E-1.深呼吸、咳嗽の指導をする
  2.喀痰喀出の必要性を説明する

#3.縫合不全
   [要因]・吻合部の血行障害
       ・腸穿孔または腸壊死による腹腔内感染
       ・消化管内圧の上昇
       ・術前の低栄養

  &ドレ-ン、創部からの異常な排液や、創部の発赤、異常な発熱がない
  $術後3~10日

O-1.腹腔ドレ-ンからの排液量、性状、臭気
  2.イレウス管または胃管からの排液量、性状
  3.発熱、頻脈
  4.創部の観察
  5.腹膜炎症状の徴候の有無と程度(腹痛、腸蠕動、腹部膨満、採血デ-タ)
  6.腹部X-P、術後透視の結果
  7.食事開始後の発熱やドレ-ンからの異常排液の有無

T-1.腹腔ドレ-ンの誘導、イレウス管または胃管の吸引を定期的に行い、排液があるかどうか確認する
  2.ドレ-ンの逆行性感染予防のため、ドレ-ン挿入部より低い位置に排液容器を設置し逆流させない
  3.縫合不全発症時は医師の指示により、経口摂取を中止し輸液の管理を行う
  4.異常排液のドレナ-ジと必要時皮膚の保護をする(スキントラブルがある場合ハイドロコロイドドレッシング等で保護)

E-1.経口摂取中止の必要性と急激な体動を避けるように指導する

#4.多量の排液、嘔吐などによる水分・電解質異常がもたらす循環不全(脱水、ショック)
  &循環動態や電解質バランスが安定した状態で維持することができる
  $術後~48時間

O-1.バイタルサイン(血圧低下、頻脈、脈圧の低下、呼吸速拍)
  2.ショックの徴候(尿量の減少、チアノ-ゼ、四肢冷感、意識レベル)
  3.採血デ-タのチェック
  4.intake-outputのバランス
  5.ECGモニタ-の観察
  6.腹腔ドレ-ン、イレウス管または胃管からの排液の量、性状、創部のガ-ゼ汚染の観察
  7.口渇の有無
  8.心理面(不安、緊張)

T-1.医師に報告する
  2.輸液の管理
  3.緊張感や不安を持たせないよう落ち着いた態度で接する

E-1.患者の不安を軽減させるために状況を理解できるように説明する

#5.腸蠕動の低下・麻痺性イレウス
   [要因]・全身麻酔による腸管麻痺
       ・手術操作による腸管刺激
       ・腹腔内感染
       ・鎮痛剤の使用
       ・疼痛やドドレ-ン留置による体動制限や離床の遅れ

  &排ガス、排便があり腹部膨満感が消失する
  $術後2~7日まで

O-1.嘔気、嘔吐、腹痛、腹部膨満感、吃逆の有無と程度
  2.排ガス、排便、腸グル音の有無
  3.イレウス管または胃管の排液量、性状
  4.腹部X-P
  5.体動の状況

T-1.安静度の範囲内で体位変換、早期離床が必要であることを説明する

E-1.術後の腸蠕動促進のために、体位変換、早期離床が必要であることを説明する

#6.疼痛、チュ-ブ類の拘束によるストレスや睡眠障害
  &効果的に鎮痛が図られ、夜間安眠が得られ、穏やかに過ごせる
  $術後~7日まで

O-1.疼痛の部位や程度、鎮痛剤の効果
  2.睡眠障害の有無、睡眠薬の効果
  3.睡眠不足に随伴する症状の有無(頭痛、倦怠感、無気力感、思考力の低下)
  4.ICUシンドロ-ムの症状の有無(幻覚、幻聴、不穏行動)

T-1.鎮痛剤または睡眠薬の使用と効果の確認
  2.昼夜逆転しないように日中はできるだけ起こしておく
  3.睡眠がとれるように環境を整える(室温、照明、騒音)
  4.ストレスがある場合はその要因を把握する
  5.安静度の範囲内で日常生活行動を拡大し、気分転換を図る
  6.体動、離床の際、チュ-ブ類が十分な長さがあるか確認する

E-1.コミュニケ-ションをとり、不眠、ストレスの原因は何か、どうしたいか話し合う

#7.セルフケア不足
   [要因]・疼痛・不快感の存在
       ・体力及び持久力の低下
       ・身体運動性の障害(疼痛、体動制限)

  &許可された範囲内で状態にあったセルフケアができるようになる
  $術後3~7日

O-1.清潔行動、移動行動、排泄行為等の行動能力の程度
  2.身体、口内の汚染状況
  3.術後の一般状態と経過
  4.疼痛、倦怠感の程度と鎮痛剤の効果
  5.褥創の好発部位の皮膚の状態

T-1.毎日の全身清拭
  2.含嗽、口内清拭、または歯磨介助
  3.ベッド周囲の環境整備
  4.ベッド上で四肢の自動運動を促す
  5.医師の許可のもと離床を図る
  6.一般状態や離床状況に応じてバルンカテ-テルを抜去し排泄介助を行う
  7.効果的な鎮痛剤の使用

E-1.離床計画とその必要性について患者に伝え、術後の状態により活動可能な範囲を教え、できる限り自力で行えるよう指導する

#8.経口摂取開始による排便コントロ-ル不良
  &下痢や便秘をおこすことなく規則正しい排便がある
  $経口摂取開始後~退院まで

O-1.排便状況(回数、量、性状)
  2.腹痛、腹部膨満感
  3.下痢または便秘を引き起こす要因(食事の内容や摂取方、精神的なもの)
  4.下痢時、脱水症状の有無(尿量、尿比重、口渇、電解質、頻脈)
  5.下痢時、肛門部のスキントラブルの有無

T-1.下痢または便秘の程度を把握し、必要時は医師の指示により止痢剤または下剤を投与し、その効果を確認する
  2.腹痛や腹部膨満感に対して、腹部の温罨法、メンタ湿布、マッサ-ジを行う
  3.脱水症状の程度に応じて、飲水摂取を促したり、医師の指示で輸液をする
  4.下痢時、肛門周囲の皮膚の清潔とトラブルの予防(ウォシュレット使用など)

E-1.術後の経過に伴い徐々に回復することを説明し安心させる
  2.毎日決めた時間にトイレに行き、排便を習慣づけるよう指導する
  3.食事はゆっくりよく噛んで食べるよう指導する
  4.冷たい物、刺激物、生物、消化の悪い物の摂取を避けるよう指導する

#9.栄養状態の変調
   [要因]・腸蠕動の低下
       ・貯留機能低下による消化吸収障害
       ・吻合部浮腫や瘢痕性収縮による運動障害
       ・経口摂取開始による腸蠕動の亢進による下痢

  &十分な栄養が摂取できる
  $経口摂取開始から退院まで

O-1.食事摂取量、摂取内容、飲水量の把握
  2.腹部状況(嘔気、腹痛、腹部膨満感)の有無、程度、出現の時期の把握
  3.排便回数、性状
  4.採血デ-タ(TP、Alb)
  5.体重の増減
  6.食事摂取に対する不安の有無、精神面の把握
  7.離床状況

T-1.腹部症状に見合った食事内容の提供
  2.適度な運動をすすめ、ベッド上で過ごす時間を少なくする
  3.指示にて消化剤、整腸剤、緩下剤などを投与する
  4.消化吸収のよい食品を選択する
  5.体重測定

E-1.時期がたてば食べられるようになるから焦らなくてもよいことを伝える
  2.胃腸の動きをよくするため適度の運動を行うよう指導する

#10.退院後の日常生活の不安
   [要因]・食生活パタ-ンの変化
       ・排便コントロ-ル

  &身体的、精神的に自立し退院に向けて準備ができる
  $退院まで

O-1.食事摂取内容
  2.食事摂取量と回数
  3.食事摂取の速度
  4.排便状況(下痢、便秘の有無)
  5.セルフケアの自立度
  6.患者の言葉、表情、行動
  7.睡眠状況
  8.疾病に対する患者の認識
  9.家族の協力体制(キ-パ-ソン)

T-1.患者が質問したり、気持ちを表出したりしやすい雰囲気をつくる
  2.家族の協力を依頼する
  3.退院後の日常生活に関して、受け持ち看護婦が中心に説明していく

E-1.栄養のバランスのとれた、消化の良い食品を選ぶ
  2.退院後の患者の環境や家族背景を考慮し、食事指導を患者と家族に行う
  3.規則正しい生活を送り、適度な運動を取り入れ十分な睡眠をとるよう心掛ける
  4.暴飲暴食を避ける
  5.排便コントロ-ルを整える
  6.定期受診、服薬指導を行う

アルコール依存症患者の標準看護計画

アルコール依存症患者の標準看護計画




アルコール離脱症状に伴う振戦・せん妄・幻覚症状がみられ、患者の安全が保ちにくい
♯アルコール離脱症状が早期発見され、安全が保たれる
O-1.発汗・発熱の有無
2.振戦の有無と程度
3.せん妄の有無
4.失見当識・意識混濁の有無と程度
5.運動失調状態の有無と程度
6.異常行動の有無
7.散瞳の有無と程度
8.悪心・嘔吐の有無
9.頻脈の有無
10.腱反射亢進の有無
11.頭痛の有無
12.幻覚の有無と程度
13.てんかん発作の有無
14.VS
T-1.危険物の除去等環境を整える
2.不穏行動や振戦が強くなければ抑制を行う
3.食事摂取量に注意し、又自分で摂取できなければ介助する
4.危険物の除去につとめ、自傷行為の防止に努める
5.清潔が保てるように援助する
6.発汗が多いため更衣を頻回に行う
7.排泄の回数に注意し排泄を促す
8.医師の指示により薬物の投与を正確に行う
9.患者への説明を充分に行い処置を行う
10.患者の訴えを受け入れる
11.散歩・レクリェ-ション等に参加し気分転換をはかる


アルコール多飲による身体疾患を合併している可能性がある

♯身体疾患が早期に発見される
O-1.VS
2.血液データ
3.胸部X-P・CT等諸検査の結果
4.心悸亢進・動悸の有無
5.胃部不快・胃痛の有無と食事との関係
6.手指振戦の有無
7.顔色・皮膚(クモ状血管腫等)の状態
T-1.患者からの身体症状についての訴えを充分聞く
2.検査が確実にうけられるようオリエンテーション・介助を行なう
3.医師の指示により与薬を行い、確実に服薬できるよう援助する


飲酒の問題について自己洞察できないため再発の可能性が高く、社会復帰が
困難である


♯多飲の原因についての洞察ができ、なお飲酒の弊害についての理解ができる
O-1.飲酒の引き金の有無
a.仕事;失業・仕事でのトラブル
b.家庭;離婚・家庭不和
c.他;借金・子供のトラブルなど
2.家族や友人との面会状況
3.看護者・医師との対応の仕方
4.心理テスト
T-1.多種の不安を表出できるようコミュニケーションをはかる
2.医師・家族から患者に対する情報を得る
3.外出・外泊前後の患者の言動・行動観察を充分に行い、荷物チェックを行う
4.医師の指示により抗酒剤の服用を確実にさせる
5.必ず回復するが、再発の危険性も高いことを充分患者に理解してもらう
E-1.アルコール多飲による身体的な障害について患者に説明する
2.入院中、規則正しい生活を送るよう指導する
3.外出・外泊に対し家族と同席でオリエンテーションを行う
4.退院後の生活と保健所・福祉事務所・断酒会・家族会について医師より説明するその場に看護婦も立ち会い、説明内容を把握しておく


IABPの挿入患者の標準看護計画

IABPの挿入患者の標準看護計画

IABP(Intra-aortic Balloon Pumping, 大動脈内バル-ンパンピング)とは
 大腿動脈ないし外腸骨動脈から胸部大動脈内にバル-ンカテ-テルを挿入して行なう補助循環方法である。バル-ンをしぼませて大動脈の収縮期血圧を低下させ、心臓の後負荷を軽減して心拍出量を増加させる効果と、バル-ンを膨らませて大動脈の拡張期血圧を上昇させ、冠状動脈の血流量を増加させる効果がある。急性心筋梗塞や心臓手術に引き続いて起こる急性の心不全、心原性ショックおよび低心拍出量症候群などの病態において、この二つの効果により、IABPが心臓機能を回復させる機械的補助手段となる。

アセスメントの視点
 心筋梗塞後の心原性ショックや開心術後のショック、低心拍出量症候群は、薬物による内科的な療法では予後が極めて不良である。IABPはこのような病態に対し、まず最初に最もよく使用される機械的補助循環法である。


IABPの適応
1.急性心筋梗塞
心原性ショック,僧帽弁閉鎖不全,心室中隔穿孔,難治性虚血性不整脈
2.待期的心臓手術
術前からの予防的使用:左冠状動脈主幹部狭窄,不安定狭心症,左心機能低下(左室駆出率40%以下)
手術中の人工心肺離脱困難,手術後の低心拍出量症候群(LOS)
3.重篤な心臓疾患を合併した一般外科手術
4.ハイリスクのCAGやPTCAにおける予防的使用

IABPの適応とならない病態
1..高度の大動脈弁閉鎖不全(Sellers分類Ⅱ度以上)
2.慢性心不全
3.高度の大動脈病変(解離性大動脈瘤,腹部大動脈瘤,動脈硬化性変化による動脈の狭窄や閉塞)
4.心原性以外のショック
5.不整脈による心不全
6.アシド-シスや低酸素血症


IABPの挿入方法
1.バル-ンカテ-テル挿入法としては、
1)経皮的挿入法(Seldinger法): (1)シ-スを使用する (2)シ-スを使用しない
2)外科的に血管を露出し挿入する方法:(1)人工血管を使用する(2)人工血管使用しない
2.準備するもの(経皮的挿入法について)
大動脈バル-ンカテ-テルセット、IABP装置、滅菌手袋・術衣、帽子、マスク、滅菌デッキ、消毒薬(イソジン、ハイポアルコ-ル)、滅菌生理食塩水、ヘパリン、金属シャ-レ、局所麻酔薬、縫合セット、固定用糸針(ブレ-ドシルク1-0、角針5~7号)
3.手順と介助
1)意識のある患者には、IABPの挿入手順を簡潔に説明し協力を得る。
2)必要に応じて、抑制や鎮静剤の準備をする。
3)患者の準備
 (1)患者を仰臥位にし、両鼠径部を剃毛清拭し、下肢を軽く外転させた状態で固定する。
 (2)挿入前に足背動脈が触知できることを確認の上、マ-キングを行い、ドップラー血流計を装着する。
4)駆動源の電源部、ボンベのヘリウムガスの有無、心電計に接続して駆動状態をあらかじめ点検しておく。
5)ワゴンの上に滅菌デッキを広げ、必要物品を出す。術者は、帽子、マスク、滅菌術衣、手袋をつける。
6)イソジンで挿入部位を広範囲に消毒し、滅菌デッキをかける。
7)バル-ンのAir抜きをする。バル-ンカテ-テルの先端が第2肋骨のところにくるように体外で長さを測定する。
 カテ-テルの内腔はヘパリン加生理食塩水でフラッシュし、長いガイドワイヤ-を通しておく。
8)局所麻酔を行なう。
9)穿剌針で大腿動脈を穿剌し、短いJガイドワイヤ-を挿入して穿剌針を抜き、ダイレ-タ-で穿剌口を拡張した後、シ-ス挿入しJガイドワイヤ-を抜去する。
10)バル-ンカテ-テルのマ-クをつけたところまでゆっくり挿入したら、中のガイドワイヤ-を抜去し、耐圧チュ-ブをとりつけ、圧測定システムに接続し、正しい動脈波形がでることを確認する。
11)胸部X線で位置確認後、カテ-テルとシ-スを皮膚に固定する。
12)バル-ンをIABP器械に接続して駆動を開始する。

IABP挿入後の管理
1.精神的サポ-ト
IABP挿入中の患者は器械に対する恐怖感、操作音や体動制限によるストレスや不眠が生ずることが多い。
2.IABP挿入位置の確認
胸部X線撮影を毎日行い、IABPの先端部が、大動脈弓部直下にあり移動していないことを確認する。
3.挿入バル-ンおよび血管に起因する合併症の予防および早期発見
血栓形成による閉塞や、バル-ン自体での閉塞、血管周囲の血腫による圧迫などにより下肢虚血となる。その為、下肢の温度の左右差、チアノ-ゼの有無、足背動脈の触知の有無をチェクする。又、下肢虚血の進行は、下腿筋の腫脹によるコンバ-トメント症候群を引き起こし、神経圧迫による下腿疼痛、知覚運動麻痺へと進展するので、下肢に関する訴えを聞くことも大切である。
4.挿入部局所の管理
バル-ンを挿入していることにより、血小板の破壊が起こりやすく、抗凝固剤を使用するため、出血傾向に陥り易い。股関節の屈曲を避け、ベッド挙上は20度以内とし、挿入部の安静を保ち、出血、ガ-ゼ汚染に注意する。又、発熱の原因となりやすいので、挿入部は清潔に保ち、感染兆候がないかを確認する。
5.血液デ-タ
血栓症予防のため、ACT値は150~180秒前後を目安として抗凝固療法を行なう(術後のIABP挿入においては行なわない)。バル-ン挿入による血小板減少、出血傾向、溶血、貧血などが問題となってくるため、血液検査の結果に注意する。
6.IABP装置の管理
1)充分な容量を有するコンセントへ電源プラグを接続し、外れないよう固定する。
2)IABPが効果的に行なわれているかどうか、動脈圧波形およびバイタルサインの変化に注意する。
3)ECGモニタ-のR波でトリガ-している場合は、ECGを除去すると、IABPが停止する。
 清拭や体位変換などで外れないよう、電極板の接着状態に注意する。
4)不整脈出現時は、IABPが有効に作動しにくくなるので注意し、できるだけ不整脈を抑制する。
5)ヘリウムガスの残量をチェックする。
7.IABPの離脱
血行動態の安定改善が得られたら、心拍に対するIABPの補助回数を1:1から2:1次いで、4:1、8:1と減少させ、最後に補助を停止する。

IABP抜去の手順
1.抜去部の消毒を行なう。
2.術者は滅菌手袋をつけ、穴あきデッキをかける。
3.固定の糸を切り、陰圧をかけてバル-ン内ガスを抜いた後、バル-ンがシ-スの手前までくる程度にカテ-テルを引抜き、次いで、カテ-テルとシ-スを同時に抜去する。
4.止血するまで十分に用手圧迫をする。
5.用手圧迫による止血確認後、弾性テ-プで圧迫固定し、抑制帯を巻く。最低24時間は局所の安静を保つ。


IABP挿入による合併症
1.下肢虚血
 バル-ン挿入側の下肢の虚血は、原疾患による末梢循環不全が素因としてあると共に、多くの例に合併する閉塞性動脈硬化症による挿入側腸骨動脈、大腿動脈の狭窄が基礎にあることが多い。そのため、カテ-テルによる血流障害、二次的な血栓形成、動脈損傷による内膜剥離等が原因である。可能な例では挿入前に血管造影にて、挿入側を可及的に硬化狭窄のない大腿動脈にて行なうことが肝要である。そして、注意深い下肢の観察が大切である
2.動脈損傷
挿入時の合併症である。損傷内容としては、動脈解離と穿孔がある。出血が確認されれば、緊急手術が原則である
3.血栓・塞栓症、アテロ-ム塞栓症
1)挿入時の局所のアテロ-ムプラ-ク遊離による下肢塞栓症や、挿入側動脈の狭窄・うっ滞に伴う二次的血栓形成およびそれに伴う塞栓症は、同様に下肢虚血による症状、所見を呈する。
2)IABPバル-ンに付着した血栓遊離や、バル-ンが接触する下行大脈壁のアテロ-ム、血栓の遊離による塞栓症は、下肢動脈のみならず、腹腔動脈、腸間膜動脈、腎動脈等のび慢性塞栓症による血行障害をきたす。
4.IABPバル-ン破裂
 挿入時のバル-ンの粗雑な扱い、シ-スでのバル-ン損傷とともに、バル-ン留置部位の下行大動脈内面の石灰化部位でのバル-ン慢性損傷・過膨張等が誘因となる。破裂の徴候としては、駆動装置ガスリ-クアラ-ムが頻回に作動するようになったり、バル-ン駆動内圧低下、およびそれにともなう拡長期圧低下を認めたり、カテ-テル内に血液を認める場合等である。多くはピンホ-ルからのバル-ン内血液流入を起こすものである。
5.挿入部局所の出血・仮性動脈瘤
挿入部局所の出血は、開心術後症例や、動脈硬化の強い大腿動脈を挿入部として用いた例、凝固系の異常を認める例等にみられ、局所圧迫止血、あるいは局所皮膚の縫合止血では不十分なことが多い。その場合、局所を切開し、挿入部大腿動脈を露出しての止血が必要である。IABP抜去後の仮性動脈瘤は、局所の圧痛を伴う拍動性腫瘤がある場合に疑う。局所の超音波ドプラ-検査にて、血管外に血流の腔を認めることで診断する。

看護計画

Ⅰ.アセスメントの視点
 IABP挿入患者は、心臓のポンプ機能が低下しているため、全身状態、特に循環動態の管理が必要である。IABP装置の管理と共に、カテ-テル挿入による合併症の予防と早期発見、早期対処が大切となる。又、体動制限による苦痛、器械に対する恐怖感、操作音による不眠など、身体的・精神的苦痛の緩和も重要である。

Ⅱ.問題リスト
♯1.心臓ポンプ機能の低下に関する低心拍出量症候群状態

♯2.IABP作動障害およびタイミングのずれに関連して、循環動態が悪化するおそれがある

♯3.IABPバル-ンカテ-テル留置による感染
   [要因]・挿入部位(ソ経部)が排泄物により汚染されやすい

♯4.褥創、肺合併症の併発
   [要因]・IABP挿入による体位の制限

♯5.精神的不安
   [要因]・器械に対する恐怖感
       ・死への恐怖感
       ・治療、処置に対する情報の不足
       ・予測できない治療の効果や結果

♯6.肉体的苦痛
   [要因]・体動制限による腰痛
       ・操作音による不眠

♯7.下肢血行障害
   [要因]・IABP挿入による血栓形成
       ・下肢虚血
       ・バル-ン損傷、破裂よるガス閉塞
       ・長期臥床による下肢血流のうっ滯

♯8.IABP挿入部位の出血、血腫形成
   [要因]・挿入手技による血腫形成
       ・抗凝固剤の使用

#9.IABP抜去に関連した挿入部からの出血、血腫形成や局所での血栓形成にもとずく下肢の血行障害

Ⅲ.看護目標
1.異常の早期発見、早期対処
2.精神的、肉体的苦痛の緩和

Ⅳ.看護問題
  &IABP療法により低心拍出量症候群状態が改善する
  $IABPが抜去されるまで

♯1.心臓ポンプ機能の低下に関する低心拍出量症候群状態
O-1.バイタルサイン,不整脈,ECG
  2.血行動態:心拍出量,心係数,肺動脈楔入圧,1回拍出量
  3.自覚症状:胸部症状,呼吸困難
  4.血液ガス値
  5.in-outのバランス
  6.末梢循環状態:末梢動脈の拍動の有無,強さ,色調,温度
  7.意識レベル
  8.顔色の変化
  9.精神状態,不穏状態の有無

T-1.IABP挿入の準備,挿入中の介助
    1)経皮的動脈穿刺法
    2)血管を露出し人工血管を介しての挿入法
  2.心筋を保護する
    1)指示された酸素療法の管理を行なう
    2)身体の保温をはかる
    3)カテコ-ルアミン,昇圧剤など確実な薬物管理
    4)確実な補液管理
  3.身体の安静と安楽を図る
    1)安楽な体位,姿勢の工夫
    2)疼痛を緩和するためリラクゼ-ション法や医師の指示により鎮痛剤の投与を行なう
  4.精神的援助
    1)十分に訴えを聞き、不安や恐怖を緩和する。必要時、医師の指示により鎮静剤の投与を行なう
    2)現在の状況を医師と共に、分かりやすく説明する

E-1.患者、家族に対して処置前に十分な説明をする

♯2.IABP作動障害およびタイミングのずれに関連した、循環動態の悪化
  &IABPを効果的に作動させ循環動態が安定し、IABPからの離脱がスム-ズに行なえる
  $IABPが抜去されるまで

O-1.血行動態、末梢循環:BP、PR、不整脈、心拍出量、心係数、肺動脈楔入圧、胸部症状、末梢循環状態、冷感、下肢の血行状態、
    足背動脈触知の有無、刺入部位からの出血の有無
  2.IABPの作動状態
    1)X-P上のバル-ンの位置
    2)動脈圧波形
    3)IABPが至適タイミングで作動しているかどうか
    4)トリガ-の状態
      ・圧トリガ-の場合はBP低下に注意
      ・収縮期血圧50㎜Hg以下、脈圧30㎜Hg以下の場合は作動ストップの原因となる
      ・ECGトリガ-の場合は不整脈、ハム波、電極のはがれに注意
    5)バル-ンのエア漏れの状態
    6)へリウムガスの残量
  3.安静、下肢伸展の保持
  4.患者の精神状態

T-1.IABP作動の停止及びタイミングのズレが起こった場合は原因の追求と医師への報告
  2.ガスの補充とバル-ン内圧の保持
  3.バル-ンが破裂すれば、アラ-ムが鳴りパンピングが停止するが、駆動停止による血栓形成を避けるため直ちに抜去する
  4.指示による抗凝固剤の投与および出血時の対応
  5.トリガ-設定
    1)ECGトリガ-
      ・不整脈に対しての治療
      ・ECG上ハム波防止のため、ベット・MEのア-ス確認
    2)圧トリガ-の場合
      ・BPの維持
  6.下肢伸展の保持(必要時患肢の抑制)
  7.循環動態が安定すればIABPを2:1→4:1と離脱するが、その際心不全症状に注意

E-1.IABP挿入部の安静の必要性を説明する

♯3.IABPバル-ン留置による感染の可能性がある
  &感染が起こらない
  $IABPが抜去されるまで

O-1.バイタルサイン(発熱、BPの低下、脈拍の増加に注意)、熱型、悪寒
  2.WBC、CRP、血液培養
  3.末梢循環
  4.挿入部位の腫脹、発赤、疼痛の有無

T-1.IABPバル-ンカテ-テル挿入、抜去時の清潔操作
  2.挿入中の清潔保持、消毒
  3.指示による抗生物質の投与

E-1.安静、清潔保持の必要性を説明する

♯4.IABP挿入による体位の制限により、褥創、肺合併症を併発する可能性がある
  &褥創の発生や、肺合併症を起こさない
  $IABPが抜去されるまで

O-1.皮膚の状態(発赤、水疱、び爛の変化)
  2.褥創の物理的誘発因子の有無(圧迫、摩擦、湿潤や不潔)
  3.知覚の異常、疼痛の有無
  4.体動制限の範囲
  5.栄養状態
  6.循環機能
  7.施行したケアの有効性
  8.呼吸状態、X-P所見、血液ガス分値

T-1.許可される範囲内での体位変換(下肢の屈曲に注意)
  2.殿部など圧迫部のマッサ-ジ
  3.円座、エアマットなどの使用
  4.栄養管理
  5.身体の清潔保持
  6.ネブライザ-吸入、タッピングの施行

E-1.褥創の危険性と予防方法について説明

#5.精神的不安
  &精神的不安が軽減できる
  $IABPが抜去されるまで

O-1.性格傾向、過去の問題解決行動や耐性、コ-ピング行動、社会的役割行動
  2.治療、予期される結果についての受け止め方
  3.病者役割行動(治療への参加態度)
  4.不安、恐怖の言語的表現の有無
  5.不安、恐怖の徴候や症状
    1)生理学的変化(血圧、脈拍数、呼吸数)
    2)情動の変化(落ち着きがない、拒否的になる、注意力が増すなど)
    3)睡眠状況
    4)身体、筋肉の緊張度(身震い、手の震え等)
  6.家族や重要他者のサポ-トシステム
  7.施行したケアの有効性

T-1.スタッフメンバ-は、常に傍らにいることを保証する
  2.共感や無条件な関心を寄せ、受容的な一貫した態度で接する
  3.説明は患者の分かりやすい言葉で行なう
  4.不安や恐怖の言語的表現を促し、フィ-ドバックして調整する
  5.患者のニ-ド、理解レベルに応じた情報の提供に心がける
  6.頻回に言葉かけやスキンシップを行い、勇気づけの励ましを送る
  7.静かで十分休息のとれる環境を調整する
  8.可能ならば、家族や重要他者との面会の時間を多くもたせる
  9.不安、恐怖がつよく、治療や病態に影響を及ぼすようであれば、医師と相談し適切な鎮痛鎮静剤を用い、その効果をモニタ-する

E-1.治療の目的、効果、現在の病態、今後の進展などを患者の状況に応じ適宜説明する
  2.心身の安定を図ることが、治療の効果を増し、早期回復のつながることを説明し、緊張を緩和する方法を指導する
  3.家族、重要他者にサポ-トの継続が重要であることを説明し、勇気づける

#6.肉体的苦痛
  &肉体的苦痛を緩和する
  $IABPが抜去されるまで

O-1.苦痛に対する患者の訴えの有無
  2.睡眠状況

T-1.十分なコミュニケ-ションを図る
  2.許可される範囲内での体位変換、円座の使用
  3.気分転換、面会
  4.必要時鎮静剤の投与
  5.眠れる環境をつくる

E-1.現在の病状、今後の治療方針、器械について分かりやすく説明する
  2.苦痛などを我慢しないように説明する

#7.下肢血行障害
  &下肢の血行障害を起こさない
  $IABPが抜去されるまで

O-1.足背動脈拍動の有無
  2.下肢皮膚の色調、温感と左右差
  3.血行障害を示す患者の訴え(冷感、疼痛、しびれ感)
  4.血行動態(血圧、心係数、心拍出量)
  5.施行したケアの必要性

T-1.下肢の皮膚の色調、体温、脈拍を確認する
  2.バル-ン挿入肢の屈曲を避けるため、抑制を行なう
  3.指示された抗凝固療法を施行し、その効果をモニタ-する
  4.抗凝固療法の管理のためACT値を監視する(コントロ-ル目標180前後)
  5.下肢の保温を図る
  6.下肢動脈の拍動の減弱、消失時は、ドプラ-での聴診を試みる
  7.血行障害を示す徴候、症状が出現した場合は速やかに医師に報告し、上記の診察・ケアを厳重に継続する
  8.皮膚損傷時は、適切な処置を施行し、感染を予防する

E-1.下肢血行障害の症状について説明し、自覚症状のある時は看護婦に話すようにつたえる

#8.IABP挿入部位の出血、血腫形成
  &挿入部からの出血、血栓形成が起こらず下肢の循環が良好に保てる
  $IABPが抜去されるまで

O-1.出血:挿入部からの出血の有無、ガ-ゼ汚染、全血凝固時間
  2.末梢循環、下肢の血行障害:膝下、後脛骨、足背動脈触知の有無(不明瞭時ドップラ-)、麻痺、知覚障害、しびれ感、疼痛の有無

T-1.挿入部からの出血持続時は縫合
  2.末梢循環を良好に保つ
  3.砂のう、圧迫帯による止血
  4.下肢の伸展

E-1.下肢の安静について指導する

#9.IABP抜去に関連した挿入部からの出血、血腫形成や局所での血栓形成にもとずく下肢の血行障害
  &創部からの出血、血栓形成が起こらず下肢の循環が良好に保てる
  $IABP抜去当日

O-1.出血:穿入部からの出血の有無、ガ-ゼ汚染、全血凝固時間
  2.末梢循環、下肢の血行障害:膝下、後脛骨、足背動脈触知の有無(不明瞭時:ドップラ-)、麻痺、知覚障害、しびれ感、疼痛の有無

T-1.穿入部からの出血持続時は縫合
  2.末梢循環を良好に保つ
  3.砂のう、圧迫帯による止血
  4.下肢の伸展

E-1.下肢の安静について指導する

CABGバイパス術の標準看護計画

CABGバイパス術の標準看護計画


CABGバイパス術とは
 CABGバイパス術=CABG(coronary artery bypass graft)
 冠動脈の狭窄部より末梢と大動脈をバイパスでつなぎ、末梢の血液を確保するための手術である。
 CABGバイパス術に用いられる血管は、内胸動脈(IMA)、大伏在静脈(SVG)、胃大網動脈(GEA)がある。
 
適応
1.左冠動脈主幹部病変が50%以上の狭窄例
2.高度な三枝病変の長さが1cm以上など、PTCA施行困難例
3.冠動脈末梢枝が狭窄、不整がないこと
4.左心機能として駆出率(EF)20%以上、左室拡張末梢圧(LVEDP)20mmHg以下であるもの
5.PTCAあるいはPTCRが試みられた後に、緊急手術が必要な事もある
 
手術治療目的
1.狭心痛、心不全の改善
2.生活の質の向上
3.寿命の延長
 これらの目的を達成するためには、症状、冠動脈造影所見(冠動脈病変)、左室機能、弁機能等から総合的に検討し、手術選択の決定を行う。

アセスメントの視点
  CABGバイパス術は虚血性心疾患の代表的な治療の一つである。しかし近年、内科的にPTCAやカテーテルによるステント留置が行われるようになってきている。そのためCABGバイパス術症例は、内科的治療困難症例(多枝病変、重症度の高い症例)が適応とされるようになってきている。また、人工心肺を使用できない高齢者に対しては、心拍動下CABGバイパス術や、小切開胸CABGバイパス術が行われるようになってきている。

検査
 胸部X線撮影、安静時心電図、血液凝固検査、生化学検査及び血液一般検査、負荷心電図(Mastar=階段テスト、Treadmill テスト)、心エコ-図、心筋シンチグラフィ-、カテ-テル検査(心拍出量、心内圧)、冠動脈造影、左室造影、心機能の評価を目的とした特殊検査(既に内科医によって検査がすんでいる事が多い)及び麻酔科、手術のためのル-チン検査を並行して施行する。

手術直前の管理
1.患者と家族への手術についての説明
冠動脈病変の程度、狭心症の重症度、予後及びCABGバイパス術の方法、人工心肺手術の危険度、術後経過及び合併症の発現等についての主治医の説明を把握する。
2.術後管理についての説明
術後に患者の協力を得るため、また不安を軽減するためにも、術前パンフレットを用いて強化治療室の収容について人工呼吸器の役割、各種モニタ-の重要性、多くの点滴ラインが挿入される理由を説明する。

術後の経過と管理
  手術を終えた患者は、未覚醒の状態で強化治療室に収容される。強化治療室へ入室直後複数の看護婦で、ライン類の接続および観察を、素早く行うことが要求される。
 以下の処置を行う。
1.人工呼吸器の装着(設定条件の確認)
2.心電図モニタ-電極装着。動脈圧ライン,スワンガンツカテーテルの肺動脈圧(PAP),中心静脈圧(CVP)ラインとモニターの接続。心拍数,血圧,肺動脈圧がモニタリングされ観察する。
3.スワンガンツカテーテルと末梢輸液ラインへ、指示された薬剤・量の注入開始
4.心嚢、前縦隔、胸腔などのドレ-ンを低圧持続吸引器に接続

精神的サポート
 患者の多くは、外科病棟に入院する直前、多かれ少なかれ循環器専門医の精査、濃厚な内科治療が行われ、既に外科的適応が十分検討されている。患者は外科的治療に対して納得し、一大決心のもとに入院してくるが、やはり手術に対する患者の不安、緊張感は計り知れない。

1.循環動態の管理
1)血圧(Aライン上からデジタル表示される)
状態が安定するまで15分ごと、その後30分~1時間ごとに観察。Aラインモニタ-用カテ-テルよりモニタ-に波形と数値が表示される。波形がゆるやかな場合は、ラインの閉塞か、血圧下降が考えられるので輸液量と尿量のバランス、出血量、中心静脈圧など、その他の状態と合わせて、数値の意味を判断し医師に報告する。
2)心拍数
状態が安定するまで15分ごと、その後30分~1時間ごとに観察する。不整脈出現時は種類と頻度を観察する。特に心室期外収縮(PVC)の頻発や心室性頻脈は、心室細動に移行する危険性があるので医師に報告する。
心拍出量の増加や、心室期外収縮の頻発の抑制などの目的で術中に心房や心室に一時的ペ-シングワイヤ-が縫着される。使用中は、ペ-スメ-カ-設定条件や効果などを観察する。
3)肺動脈圧(PA圧)
正常値は、15~35/8~13mmHg(平均20~25mmHg)
左右短絡疾患により、肺動脈血流量が増加した場合や左心不全のときに上昇する。
4)中心静脈圧(CVP)
連続的にモニタ-され、バイタルサインチェック毎に観察する。スワンガンツカテ-テルで測定するCVP圧は、循環血液量と心機能、右心不全の程度の指標となる。
正常値は5~10の範囲で、5以下では循環血液量の不足、15以上では心不全を疑う。
5)心嚢・縦隔・胸腔ドレ-ン
出血量・性状の経時的変化に注意し観察する。ドレ-ンが凝血により閉塞すると、心嚢・胸腔内に血液や浸出液が貯留し心タンポナ-デや、呼吸不全の原因となるため必要時ミルキングを行う。出血が多く続き、頻脈・血圧下降・Hb・Htの減少等の症状が続くときは、再開胸止血術が行われる。
6)尿
バルーンカテーテルが留置される。1時間ごとに尿量・比重・性状を観察する。尿は心拍出量・循環血液量・腎機能などに影響されるので、多くの情報が得られる。尿量減少は、心機能の低下による心拍出量の減少、循環血液量の低下、腎機能の低下などが考えられる。尿量増加は、輸液の過剰投与なども考えられる。
7)輸液
術後、種々の薬剤投与や輸血が行われるので、3~5本の輸液ラインが確保されるそれぞれの輸液が、どのラインから注入されているかを確認し、滴下速度を調節する特に強心昇圧剤・抗不整脈剤・血管拡張剤は、自動輸液ポンプで確実に滴下し、他の薬剤の注入は同ラインからは行わない。また、電解質液であるK製剤は、倍量あるいはそれ以上に希釈して投与する。

2.呼吸の管理
 心機能の低下や低酸素血症などの予防のため、人工呼吸を行う。人工呼吸器装着中は、呼吸方法・回数・酸素濃度・一回換気量などの設定条件、気管内チューブの位置やカフ圧などを確認する。呼吸機能は、胸部X線、動脈血ガス分析などにより評価される。1時間ごとに呼吸数を測定し、呼吸音や分泌物の有無・性状などの観察をする肺雑音聴取時や気道内圧上昇時は、肺合併症の原因である分泌物の貯留が考えられ、吸痰が必要となる。心拍数・血圧に注意し定期的に短時間で吸引する。人工呼吸器の離脱(ウイニング)は、重症患者以外は通常術後第1病日までに行われ、気管内チューブが抜去される。

3.手術後の苦痛の管理
1)気管内チュ-ブ挿入中は、苦痛や欲求などの訴えを会話で表現できないため、簡単な問い掛けで答えやすいように話す。また、文字盤、筆談などでコミュニケ-ションを図る。
2)長時間、床上安静を強いられるので、背部痛や腰痛を強く訴えることが多い。体交や湿布を考慮する
3)強化治療室に長期間滞在した場合、患者によっては、異常な言動、情緒不安定などが見られる場合がある(ICU症候群)。原因として、ICUの環境に慣れないこと、モニタ-音や処置の物音などに耐えられず、自分自身の症状にも不安が募ってくること等がある。経過が順調な場合、病室に戻り数日で回復する場合が多い。

術後合併症
1.呼吸器合併症
術後無気肺、肺炎、低換気、気道閉塞などがある。原因として、気道内分泌物の貯留が最も多い。気管内チュ-ブ挿入中は、吸痰を頻回に行う。抜去後は、呼吸訓練を実施し、容易に喀痰させる。また、吸入やトリフロ-などの肺理学療法を積極的に行う。
2.循環器合併症
出血、心タンポナ-デ、低心拍出量症候群、不整脈、術後ショック、心停止等がある。バイタルサインの測定やモニタ-の監視、排液ドレ-ンからの出血量や尿量などその他の一般状態の観察により、異常の早期発見に努める。合併症に応じて、輸血や強心昇圧剤、抗不整脈剤などの投与が行われ、状態によっては、緊急蘇生が必要となる場合もある。
3.泌尿器合併症
急性腎不全が最も重要である。原因としては、低心拍出量による腎血流量の減少、循環血液量の減少などがある。電解質や尿素窒素、クレアチニンなどの検査結果、尿量・比重測定、特に血圧下降に注意する。
4.中枢神経合併症
術後の麻酔は、通常正常な時間内に切れ、覚醒する。しかし、長時間覚醒が認められない場合は、中枢神経系障害が考えられる。症状として、意識障害、痙攣発作、対光反射の消失、瞳孔の左右差などがある。
5.発熱と感染
体外循環後、数日間発熱をみることが多いため、予防的に抗生剤が投与される。スワンガンツカテ-テル、排液ドレ-ン、バル-ンカテ-テルなどが感染の経路となりやすいため、清潔操作での取り扱いが、必要である。抜去時には、挿入されたカテ-テル類やドレ-ンなどの先端を培養し、感染の有無を検査する。その他、発熱の原因には、手術創の感染、気管内分泌物貯留による肺炎などが考えられる。


看護計画(術前)

Ⅰ.アセスメントの視点(術前)
 CABGバイパス術の適応疾患には、狭心症と心筋梗塞がある。心臓疾患は、生命維持に直結する臓器であり、その手術をすることは、大きな不安を抱く。又、手術を控え、抗凝固剤や、強心剤の内服を中止することで、発作を起こす危険性があるため、心身共に安定した状態を保つことができ、手術に望むことが重要になってくる。

Ⅱ.問題リスト(術前)
♯1.疾患や手術に対する不安
   [要因]・疾患そのものへの恐れ
       ・病気の兆候(胸部こうやく感、動悸、胸痛等)
       ・手術そのものへの不安
       ・検査や治療に対する情報不足
       ・入院という慣れない環境
       ・社会的役割が果たせない
       ・手術後(疼痛、合併症等)や退院後(社会復帰、ライフスタイル等)の予期的不安
       ・手術にともなう自尊心の喪失

#2.疾患による苦痛
   [要因]・胸痛などの胸部症状
       ・症状からくる精神的苦痛

♯3.冠状動脈の虚血により心筋梗塞に移行する危険性
   [要因]・不安、ストレス
       ・情報や知識不足による不適切な健康管理
       ・労作による心筋酸素需要の増大
       ・血圧の上昇
       ・冠状動脈の攣縮

♯4.手術後の肺合併症
   [要因]・麻酔薬により気道や肺胞が乾燥することによる絨毛運動の低下
       ・麻酔薬や鎮痛剤による胸筋、骨格の運動低下
       ・創痛による咳嗽や呼吸運動の抑制
       ・高齢、肥満、喫煙歴、呼吸器疾患、神経疾患の合併
       ・術前、発作予防のため十分呼吸訓練が行なえない

♯5.抗凝固療法による副作用
   [要因]・出血時間の延長

♯6.家族の不安
   [要因]・疾患そのものへの恐れ
       ・患者の予後や経済面への不安
       ・家庭内の役割の変化(サポートシステムの不足)
       ・患者と家族間の人間関係(コミュニケーション)

Ⅲ.看護目標(術前)
1.術前の病状悪化防止を図るとともに手術に向けての体力増進に努める
2.コミュニケーションを十分に取り、精神的苦痛を緩和し、精神的に安定した状態で手術が受けられるよう援助する
3.患者の身体的、精神的苦痛の軽減

1)心不全の強い患者に対しては強心剤、利尿剤を確実に内服させ病状の悪化の防止に努める
2)心筋梗塞急性期は、冠拡張剤投与により血圧コントロールに努め、安静を守り再発作防止に努める
3)手術に対する不安、恐怖心等をできる限り軽減するため、患者の訴えを傾聴し術後経過が順調にいくよう人間関係を作る
4)上気道感染予防と食事摂取量観察

Ⅳ.看護問題(術前)
♯1.疾患や手術に対する不安
  &不安や恐怖が軽減されたことを表現する
   入院にともなう規則、疾患、診断のための検査、治療、手術方法、術後の状態について理解していることを言葉で表す
   術前準備のための処置や練習に参加する
   ありのままの自己の感情・意思を表現できる
   不安を認識し、洞察力を深め、適応のための対処行動が取れる
  $手術当日まで

-1.以下のことを観察しアセスメントする
     1)性格傾向、健康観、社会的役割行動、過去の問題解決行動、過去の生活習慣、人生観、ボディイメージ
     2)入院および手術経験
     3)入院による役割変化
     4)病者役割行動
     5)疾患、治療、予期された手術結果に対する受けとめ方
     6)ストレス、コーピング行動 
     7)家族のサポートシステム 
     8)不安の徴候
     9)施行したケアの有効性

-1.以下の方法で患者との間に建設的な人間関係を作る
     1)共感的態度、受容的態度で接する
     2)説明は、患者の理解できるわかりやすい言葉で行なう
  2.看護記録、カーデックスを参考に不安、恐怖を明確にする
  3.適切な時期、場面をみて、不安、恐怖を言葉で表すよう励ます
  4.術前の検査、治療計画について説明する
  5.医師の説明に対する理解の程度を確認し、理解の不十分な部分は補ったり、再度医師の説明を依頼する
  6.必要時、手術体験者の話しが聞けるよう環境を整える
  7.積極的な質問を勧め、提供した情報を明確にしたり、補ったりする
  8.気分転換を促す
  9.混乱しているときは、心理的対応をするための時間を与える
  10.不眠が続いているときは、医師と相談し、睡眠剤の投与を行なう
  11.強度の不安、恐怖を示す場合は、医師と相談し、薬剤投与や精神科医のコンサルトを行なう
  12.必要に応じ、重要他者、家族のサポートを仰ぐ

-1.入院環境、病院の規則を十分説明する
  2.ニード、理解レベルに応じ、以下のような情報の提供、説明を行なう
     1)入院から退院までの経過
     2)利用できる社会資源の紹介
     3)手術目的と予測される手術結果
  3.指示された手術の治療計画に基づき、以下のような術前オリエンテーションを実施する
     1)手術日程、時間、所要時間
     2)手術方法と体外循環
     3)全身麻酔と術前麻酔医訪問
     4)必要物品
     5)術前の処置(剃毛、禁食、薬剤の内服など)
     6)術後の状態と回復、離床の経過
     ・人工呼吸器、各種圧ラインモニター、点滴、ドレーン、創処置、抑制などについて
     ・活動、食事、排泄、清潔ケア等について
♯2.疾患による苦痛
 &発作回数が減少することにより心身ともに落ち着いた状態で手術に望める
 $手術当日

-1.患者の知識、理解度

-1.医師の説明内容を確認し、必要により追加説明を行なう

-1.安静度の説明
  2.指示の食事療法を守る
  3.薬剤の量、時間を間違えないよう説明
  4.発作時の連絡、安静方法
  5.ニトログリセリンの舌下方法

♯3.冠動脈の虚血により心筋梗塞に移行する危険性
  &心筋への酸素の需要が減少しない
  $手術当日

-1.以下のことを観察し、アセスメントする
     1)心筋酸素供給の減少を示す徴候症状(胸部の圧迫感、こうやく感、重圧感、肩・上腕への放散痛、呼吸困難、冷汗、めまい等)
     2)心臓カテーテル等の所見と心機能
     3)活動負荷に対する耐性レベル
     4)胸痛発作時は部位・程度・性質・持続時間・誘発因子など
     5)胸痛発作の軽減因子と薬物投与の効果
     6)胸痛発作の予防対策、治療計画に対する理解度とコンプライアンス
     7)施行されたケアの有効性

-1.指示されたCa拮抗剤、血管拡張剤、降圧剤などを確実に投与し、その効果をモニターする
  2.心筋の酸素需要を減少させ、心筋の保護を図る
     1)血圧チェックを定期的に行ない、血圧のコントロールを図る
     2)指示された活動制限と安静を推奨する
     3)胸痛発作を引き起こす活動を中止する
     4)便通を調整し排便時の努責を回避する
     5)塩分制限(7g/日)の食事指導を行なう
     6)十分な睡眠と休息を促す
     7)不安、ストレスを緩和し精神的安定を図る
  3.ニトロール錠の作用、副作用、使用方法を指導し、常時携帯させる
  4.胸痛発作時は速やかに医師に報告し適切な処置を施行する
     1)バイタルサインのチェックを行なう
     2)胸痛の部位・程度・性質・持続時間などを観察する
     3)12誘導のECGをチェックし、モニターする
     4)ニトロール錠を舌下させ、その効果をモニターする
     5)胸痛発作後鎮静後に再度心電図にてST等の波形をチェックする
     6)心筋梗塞との鑑別をアセスメントする
  5.症状の改善がみられないときは、さらに以下の処置を施行する
     1)心筋の酸素需要を減少させるため厳重なベッド上安静を維持させ、禁食とする
     2)鎮痛剤、鎮静剤により胸痛の除去を図る
     3)指示された酸素療法を効果的に行なう
     4)各種の輸液ライン、圧ラインの確保とECGモニターを装着する
     5)バイタルサイン、ECGモニター、血行動態を厳重に監視し、異常時速やかに医師に報告する
     6)指示された輸液、カテコールアミン、血管拡張剤を確実に用い、その効果をモニターする
     7)指示により、IABP、体外式ペースメーカー挿入の準備を行なう
     8)不安や恐怖を軽減し、精神的安定を図る
     9)急変時に備え救急カート、除細動の準備を整える

-1.胸痛発作の誘発因子と予防対策について説明する
  2.適切な日常生活の管理方法を具体的に指導する
  3.胸痛発作時の対処方法について指導する
  4.手術前は心筋の保護のため、なるべく安静を保持するよう説明する
  5.胸部症状出現時は安静にし、速やかにコールするよう指導する

♯4.手術後の肺合併症
  &手術後に肺合併症の起こる危険性の高いことが理解できたと表現する
   肺合併症の予防の必要性がわかったと表現する
  $手術当日まで

-1.呼吸状態
  2.咳嗽、喀痰の有無と程度
  3.リスクファクター(高齢、喫煙歴、喫煙量、閉塞性肺疾患の有無と程度)
  4.胸部X-Pの結果、胸郭変形の程度
  5.動脈血ガス分析の結果
  6.手術の受けとめ方

-1.パンフレットを用い、深呼吸、咳嗽、喀痰の仕方等、合併症予防の説明を行なう。なお、発作を誘発する危険性があるため積極的には行なわない

-1.術後訓練の良否が、経過を左右することを説明し、理解を促す
  2.禁煙の必要性を説明し、理解を促す

♯5.抗凝固療法による副作用
  &効果的な抗凝固療法が行なわれる
  $手術当日まで

-1.皮下出血、消化管出血等
  2.検査データ、止血機能
  3.胸部症状

-1.正確な薬剤内服の確認
  2.採血後の止血の確認

-1.薬剤の必要性
  2.安全の説明、外傷を避けること
  3.出血、塞栓症状のあった場合はすぐ看護婦の報告

♯6.家族の不安
  &家族のケア、家族サポートを通して患者が支えられる
  $手術当日まで

-1.家族の表情、言語による表現、態度
  2.家族と患者の人間関係
  3.家族、患者間の疾病の理解、認識の差
  4.家族間のサポートシステム
  5.家族の状況判断能力
  6.家族がとらえている患者の性格傾向、コーピング
  7.経済的問題の存在

-1.家族とコミュニケーションを取り、不安や心配事を表出しやすいように受容的態度でかかわる
  2.家族の考えと医療者の考えの違いがないか、また、患者の考えを尊重してかかわる方法について相談し検討する
  3.家庭内で起きている問題の対処ができているか、解決困難なときは相談にのる

-1.家族が患者の今後についてイメージできるように、術後の状況、入院期間、社会復帰の時期などについての知識を与える
  2.家族に患者のサポートの必要性を説明する
  3.社会資源の活用(更生医療、身体障害者第1級〈心筋梗塞〉、3級〈狭心症〉の取得)