スパイナルドレナージ挿入中の患者の標準看護計画
スパイナルドレナージ挿入の目的と対象
1.頭蓋内圧亢進患者の髄液を体外に排出することで頭蓋内圧を下げるため
・腫瘍、血腫による占拠性病変の術前患者
・水頭症患者
・クモ膜下出血で外ドレが入らない患者
2.術後の髄液漏の治療
・下垂体腫瘍、頭部外傷等の術後に髄液漏のある患者
3.皮下に髄液が貯留している場合、硬膜と皮下の癒合をよくするため
・皮下に髄液が貯留している患者
看護計画
Ⅰ.アセスメントの視点
ドレナージ施行中は安静を要するためADLの援助をおこなう。さらに感染や脳圧の管理が重要となり、観察を十分に行っていかなければならない。
Ⅱ.問題リスト
#1.頭蓋内圧のアンバランス
[要因]・意識障害(失見当識等)
・ドレーンの閉塞
・不適切な圧設定
・安静の不保持
・静脈還流を阻害する体位(前屈位)
#2.ドレーン抜去の危険性
[要因] ・意識障害、病識の欠如
・ドレーンの挿入
・床上生活
・注意力の低下
#3.感染の危険性
[要因]・ドレーン挿入
・接触、移動時の処置
・意識障害、病識の欠如
#4.セルフケアの不足
[要因]・ドレーン留置や安静による行動制限
・意識障害、病識の欠如
・体動による症状悪化への不安
Ⅲ.看護目標
1.制限された入院生活をできるだけ安全、安楽に過ごす
2.感染症を起こさない
Ⅳ.看護問題
#1.頭蓋内圧のアンバランス
[要因]・意識障害(失見当識等)
・ドレーンの閉塞
・不適切な圧設定
・安静の不保持
・静脈還流を阻害する体位(前屈位)
&脳圧が正常に保たれ、苦痛がない
$ドレーン抜去まで
O-1.バイタルサイン
2.意識レベル
3.瞳孔異常の有無
4.頭痛、嘔吐の有無
5.髄液の性状、流出の有無、拍動の有無
6.ドレーンの圧設定の確認
7.ドレーンの屈曲の有無
T-1.指示されたドレナージの圧が保たれているかチェックする
2.髄液の流出が悪い場合は、適宜ミルキングを行う
3.流出量が目標量よりも多いあるいは少ない時は、医師に報告する
4.体動の激しい場合は正しい体位になるよう抑制帯を使用する
5.便通のコントロールを図る
6.異常のある場合は、すみやかに医師に報告する
E-1.本人に、安静の必要性を説明する
2.家族にも安静の必要性を説明し、協力を得る
3.怒責を行わないように指導する
#2.ドレーン抜去の危険性
[要因]・意識障害、病識の欠如
・ドレーンの挿入
・床上生活
・注意力の低下
&ドレーンが確実に留置され、治療を受けられる
$ドレーン抜去まで
O-1.ドレーン留置の状態
2.髄液の性状、流出量、拍動の有無
3.意識障害の程度
T-1.不穏状態を伴う場合は、抑制帯を使用する
2.ドレーンが引っ張られないように、体位変換などを行う
3.ドレーンの長さに余裕があるように環境整備を行う
4.ナースコールは手の届く範囲に設置する
E-1.本人に、安静の必要性を説明する
2.家族にも説明し、協力を得る
#3.感染の危険性
[要因]・ドレーン挿入
・接触、移動時の処置
・意識障害、病識の欠如
&異常徴候が早期に発見され、早期に対処される
$ドレーン抜去まで
O-1.髄膜刺激症状(頭痛、悪心、嘔吐、項部硬直、痙攣等)の有無
2.バイタルサイン(熱型)
3.意識状態の変化
4.髄液の流出状態、量、性状
5.ドレーン挿入部のガーゼ汚染の有無
6.ドレーン挿入部の皮膚の状態
7.血液データ(WBC、CRP)
T-1.無菌操作によるドレーン操作を行う
2.ドレーンは屈曲、閉塞、抜去のないように固定する
3.検査など移動時は排液された髄液が逆流しないようにチューブを二カ所クランプする。帰室後、医師に圧の設定をしてもらい、クランプを解除する
4.外部からの病原菌の侵入を防ぐためにできれば個室にする
5.ドレーン周囲の環境整備を行う
6.指示された抗生物質を投与する
7.異常のあるときは、すみやかに医師に報告し対処する
E-1.感染予防や安静の必要性について説明する
2.ドレーン抜去までの見通しについて説明する
3.ドレーンを引っ張ったり、ガーゼを取ったりしないように指導する
#4.セルフケアの不足
[要因]・ドレーン留置や安静による行動制限
・意識障害、病識の欠如
・体動による症状悪化への不安
&許可された範囲内でのセルフケアが行え、徐々に拡大していける
セルフケアの不足部分を言葉で表現できる
$ドレーン抜去まで
O-1.全身状態
2.行動制限による影響
3.症状、治療についての理解度
4.意欲、性格
5.不安の有無と程度、不安の内容
T-1.治療上の行動制限範囲内で、身体状況に合わせた援助を行う
2.患者の自立度に応じた援助を行うとともに、セルフケア能力を高めるための動機づけを行う
3.ドレーンは動作の妨げにならないように安全な位置に置き、固定をしっかり行う
4.ベッドサイドを整理し、手の届く範囲に患者の必要物品を置く
5.活動範囲の拡大に向けて患者に目標を持たせ、家族の協力を得て援助する
E-1.活動可能な範囲を説明し、できるだけ自分で行うよう指導する
2.無理な行動(いきんだり、頭部を持ち上げなければならないこと)はせず、看護婦に知らせるように説明する