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頚椎後縦靱帯骨化症患者の標準看護計画-036

 頚椎後縦靱帯骨化症患者の看護計画

頚椎後縦靱帯骨化症とは

 脊柱管の前壁、すなわち椎体椎間板の後面をおおっている頚椎後縦靱帯が、肥厚、骨化して、脊髄を圧迫する疾患であり、原因は明らかにされていない。圧迫・変形された脊髄は乏血性、静脈うっ滞を伴い、また頚椎運動という動的因子が、神経症状の発現に重要なかかわりあいをもつ。レントゲン写真上、骨化形態は分節型、連続型、混合型に分類される。頚椎側面像前後径に対する骨化の占拠率が40%を越えると、麻痺の発生をみることが多い。また本症は、脊髄圧迫症状の原因疾患として、我が国では厚生省の特定疾患となっている。なお、胸椎・腰椎部にもみられやすく、同時に黄色靱帯骨化を合併することもある。 

アセスメントの視点

 本症は、肩凝りなどの軽度な症状から、徐々に脊髄圧迫症状が進んでいくため、経過が長く、患者の苦痛も経過とともに強くなっていく。また、壮年期以降に発症する場合が多く、運動障害により、社会活動が障害されることの精神的な苦痛が大きいと考えられる。そのため、患者の症状に対する受け入れや、今後の社会活動への思いを知りながら、精神面の援助や生活面での介助を行って行くことが大切である。 

症状

 頚椎可動性の減少、頚部痛、肩凝り、上肢のしびれ、疼痛等で始まり、徐々にあるいは外傷で急に、脊髄症状(四肢の運動・知覚障害・腱反射の異常、病的反射、直腸・膀胱障害など)を呈するようになる。 

検査

 

側面断層撮影 

MRI 

ミエログラフィー 

CTスキャン 

筋電図 

SEP 

 

治療

 1.保存的治療 

頚椎カラーの使用、クラッチフィールド法による頭蓋直達牽引等による頚部の安静 

 2.手術療法 

脊髄の除圧を目的とし、除圧範囲が2~3椎間の場合は前方進入法恐れ以上の場合は後方進入法を行う。 

前方進入法 

 椎体亜全摘+骨化部遊離+骨移植術 

後方進入法 

 広範同時椎弓切除術、脊柱管拡大術 

術前後の経過と管理

1.手術前について 

 いくつかの検査が必須であるが、その多くは苦痛を伴い、安静の制限を必要とするものもあるため、検査前からの十分な説明が必要である。また、検査中の苦痛に対する精神的援助を行い、スムーズに検査が行えるよう配慮しなければならない。 

筋電図 

 検査室にて、検査部位の筋肉に針電極を刺し、筋肉の安静時および、随意運動時の活動電位の記録・観察を行い、神経・筋系の障害の種類や、回復の過程を知るために行う。 

 検査部位に毛があるときは、剃ることもある。電気刺激により、チクチクとした痛みを伴い、検査時間も30分以上かかる。検査前後に特別な処置や制限はないが、看護婦は検査に立ち会わないため、検査前にしっかり説明しておく必要がある。 

ミエログラフィー 

 レントゲン透視室にて、クモ膜下腔に造影剤(脳・脊髄用のもの)を注入し通過状態を確認することで、脊髄腔内外の病変の診断を行う検査である。造影剤を使用するため、検査前の食事は禁止となり、検査中は点滴を留置し、検査後は食事開始時間と安静に制限がある。腰部の場合は約4時間の摂食禁止と、上半身を約30゜挙上した状態での症状安静が必要である。頚部の場合は約4時間の摂食禁止と、約4時間の、上半身を約30゜挙上した状態での症状安静が必要であり、その間の排泄は床上で行うこととなる。 

 検査中は、声かけや状況の説明を行い、患者の不安の軽減に努め、スムーズに検査が済むように介助を行うことが必要である。また、検査前より、検査後の安静の必要性や、造影剤の副作用についてよく説明を行い、安静が守られるように援助を行っていく。検査後は、造影剤の副作用の発現の有無、検査前後での症状の変化の有無の観察を行う。 

SEP(脊髄活動電位) 

 硬膜外腔に電極を挿入し、脊髄を直接電気刺激して、その中枢側脊髄で発生した電位変化を記録分析する方法である。手術侵襲の程度を決めるモニタリングとして利用される。この検査は、硬膜外への針の刺入痛と電気刺激の苦痛に加え、デッキに覆われた状態で約1時間の腹臥位を強いられるため、精神的、身体的苦痛は大きい。そのため、術前から検査状況についての説明をしっかり行わなくてはならない。 

 検査前後の処置や、制限はないが、長時間の腹臥位保持が必要であり、検査前の食事は控えた方が良いとされている。 

2.手術後について 

 頚椎の手術は、術後の回復の程度が予見しにくく、手術に伴う危険もほかの疾患に比べて高い。また、術後は頚部の固定を厳重に行った同一体位を長くとるため、苦痛が強い。これらを理解して看護にあたることが大切である。また、固定や支持の目的で、装具を装着して生活するため、これらの扱い方にも注意が必要である。 

3.装具について 

 装具の種類には主にソフトカラー、フィラデルフィア装具、アドフィット装具がある。ソフトカラーは、プラスチックをウレタンのような素材で覆ったもので、頚部を1周するようになっている。フィラデルフィア装具は、ウレタンのような素材で前面、後面に分かれており、頚部のみでなく後頭部にまで及ぶ大きさである。アドフィット装具は、プラスチックのような素材で前面、後面に分かれており、後頭部、前胸部に及ぶ大きさである。ソフトカラーは、仰臥位のままで装着が可能である。他の2つは、砂嚢の高さを、患者が側臥位をとったときに、脊椎がまっすぐになるような高さに調整し、側臥位をとらせ、後面の装具をつけ、仰臥位に戻してから、前面の装具をつける。このとき、肌で感じる装具の異和感を軽減するためと、汗の吸収の目的でガーゼハンカチを挟む。 

看護計画(術前)

Ⅰ.アセスメントの視点(術前)

 全身麻酔で手術が行われるため、全身状態の評価が必要である。高齢者も多いので、既往症や機能の低下には十分注意する。

 術後は床上安静に加えて頚椎の安静保持が必要であり、咳嗽や呼吸運動が抑制されやすい。また、このような慣れない体位での生活状況がイメージできないことが多いので、これらに対する術前練習を行い、どのような苦痛があるのか、またその対処方法を患者と共に把握する必要がある。

 入院時より、四肢の運動障害や神経症状などによるADL不足がある事が多く、転倒などの危険性もあるのでADLの介助とともに危険の防止に努める。また、術後の症状の回復に不安をもっていることがあるので、精神面にも注意する。 

Ⅱ.問題リスト(術前)

#1.疾患や手術に対する不安

   [要因]・疾患そのものへの恐れ

       ・病気の兆候

        (四肢の運動・知覚障害、腱反射の異常、病的反射、膀胱・直腸障害)

       ・手術そのものへの恐れ

       ・検査や治療に対する情報不足

       ・入院という慣れない環境

       ・社会的役割が果たせない

       ・手術後や退院後予期的不安(症状が良くなるか、再発への不安)


#2.疾患による苦痛

   [要因]・頚部痛、上肢しびれ痛

       ・症状からくる精神的苦痛


#3.四肢の運動障害、神経症状の悪化、膀胱・直腸障害

   [要因]・脊髄圧迫


#4.セルフケアの不足

   [要因]・脊髄圧迫による四肢の運動、知覚障害(歩行障害、手指巧緻運動障害)

       ・筋力の低下


#5.手術後の肺合併症

   [要因]・麻酔薬により気道や肺胞が乾燥することによる絨毛運動の低下

       ・麻酔薬や鎮静剤による胸筋、骨格の運動抑制

       ・創痛、頚部安静保持による咳嗽や呼吸運動の抑制

       ・高齢、肥満、喫煙歴、心疾患、呼吸器疾患、神経疾患の合併


#6.家族の不安

   [要因]・疾患そのものへの恐れ

       ・患者の予後や経済面への不安

       ・家庭内の役割の変化(サポートシステムの不足)

       ・患者と家族間の人間関係(コミュニケーション)

Ⅲ.看護目標(術前)

1. 疾患、手術に対する不安が軽減され、手術にむけて精神的準備ができる 

2. 苦痛の軽減を図り、体力の消耗が最小限になる 

3. 全身状態の評価により術後肺合併症を予測し手術に対する身体的準備ができる 

4. 家族の精神的慰安に努める 

Ⅳ.看護問題(術前)

#1.疾患や手術に対する不安


   [要因]・疾患そのものへの恐れ

       ・病気の兆候

        (四肢の運動・知覚障害、腱反射の異常、病的反射、膀胱・直腸障害)

       ・手術そのものへの恐れ

       ・検査や治療に対する情報不足

       ・入院という慣れない環境

       ・社会的役割が果たせない

       ・手術後や退院後予期的不安(症状が良くなるか、再発への不安)


  &診断のための検査と手術の必要性がわかり、納得できたことを言葉で表現できる

   患者が思いや不安を言葉で表現できる

   術前・術後の自分の状態がイメージでき、対処方法を言葉で表現する

  $手術前日


O-1.入院への適応状況

  2.疾患、術前検査、手術に関する患者の情報量とその理解度

  3.表情、言語、態度の表出状況と不安の程度の関係

  4.食欲、食事摂取状況

  5.身体症状の有無と程度

  6.睡眠状況

  7.サポートシステムの状況

  8.性格

  9.対処行動と対処能力


T-1.検査の必要性、方法をわかりやすく説明して協力を得る

  2.検査の結果について、医師から十分説明を受けることができるように配慮する

  3.術前オリエンテーションを不安なく受けられるように援助する

    1)術後の頚部固定の必要性を説明し、砂嚢固定下で安静を保持しながら安眠が可能か実際に行ってみる

    2)パンフレットを用い、仰臥位(砂嚢固定下)での食事、排泄、含嗽、四肢の運動方法等を指導し、練習を行う

    3)医師から指示があれば、その必要性を説明し、手術前日に後頚部の剃毛を行う

  4.家族の支援が受けられるよう必要時参加を求める

  5.不安を表出できるようにするため以下のケアをする

    1)患者や家族の訴えをよく聴き、受容的態度で接する

    2)不安が表出できるよう患者や家族との信頼関係をつくる

    3)静かで休息のとれる環境をつくる


E-1.患者が術後の状態を具体的にイメージできるように説明する

  2.砂嚢固定下での床上生活にむけての術前トレーニングの必要性を説明し理解を促す

  3.医師の説明で理解不足の内容があれば追加説明し、納得して手術が受けられるようにする

  4.不安な状態を表出してもいいことを伝え、不明なところは質問できるよう促す

#2.疾患による苦痛

   [要因]・頚部痛、上肢しびれ痛

       ・症状からくる精神的苦痛


  &身体的・精神的苦痛を最小限にとどめられる

  $手術前日


O-1.痛み、しびれ痛の部位、性質、持続時間


T-1.安楽な体位を工夫する

  2.医師の指示により鎮痛薬の使用、マッサージ、温罨法・冷罨法の使用

  3.精神的苦痛もあるため、感情の動揺や緊張を避けるように援助する


E-1.痛みが自制不可の場合、医師、看護婦に報告する

#3.四肢の運動障害、神経症状等の悪化、膀胱・直腸障害

   [要因]・脊髄圧迫


  &異常の早期発見ができ、適切な処置を受けることができる

  $手術前日


O-1.運動状態、神経症状(しびれ、知覚の有無)の観察

    排泄状況の観察(頻尿、残尿、便秘)


T-1.急激な症状悪化の場合は医師に報告


E-1.症状の悪化している場合、医師、看護婦に報告するよう説明する

#4.セルフケアの不足

   [要因]・脊髄圧迫による四肢の運動、知覚障害(歩行障害、手指巧緻運動障害)

       ・筋力の低下


  &入院生活を安全・安楽にすごすことができる

  $手術前日


O-1.食事動作、清潔行動、移動動作、排泄行動等、行動能力の程度

  2.疼痛、神経症状の程度(及び鎮痛剤の効果)


T-1.不足ADLの介助

      例 食事:スプーン・フォークの使用、配湯・下膳介助

        保清:清拭、洗髪、入浴介助、歯磨き介助

        排泄:尿器やポータブルトイレの使用

        歩行器・車椅子の使用、他科受診時担送介助

        ベッド周囲の環境整備


E-1.危険防止の必要性について患者に伝え、危険のない範囲でADLが自立して行えるように指導する

#5.手術後の肺合併症

   [要因]・麻酔薬により気道や肺胞が乾燥することによる絨毛運動の低下

       ・麻酔薬や鎮静剤による胸筋、骨格の運動抑制

       ・創痛、頚部安静保持による咳嗽や呼吸運動の抑制

       ・高齢、肥満、喫煙歴、心疾患、呼吸器疾患、神経疾患の合併


  &手術後に肺合併症の起きる可能性の高いことが理解できたと表現する

   肺合併症予防のための術前練習の必要性がわかったと表現する

   肺合併症予防のための練習が実施できる

  $手術前日


O-1.呼吸状態

  2.咳嗽、喀痰の有無と程度

  3.呼吸機能検査の結果

  4.リスクファクター(高齢、肥満、喫煙歴、喫煙量、心・神経疾患、閉塞性肺疾患の有無と程度)

  5.胸部X-Pの結果、胸郭の変形の程度

  6.動脈血ガス分析の結果

  7.手術の受け止め方


T-1.パンフレットを用い、合併症予防の練習を行う(深呼吸、含嗽、喀痰方法等)


E-1.肺合併症のための術前トレーニングの必要性を説明し、理解を促す

  2.禁煙、体重の減量、術前トレーニングの必要性を説明し、理解を促す

#6.家族の不安

   [要因]・疾患そのものへの恐れ

       ・患者の予後や経済面への不安

       ・家庭内の役割の変化(サポートシステムの不足)

       ・患者と家族間の人間関係(コミュニケーション)


  &家族ケア、家族サポートをとおして患者が支えられる

  $手術前日


O-1.家族の表情、言語による表現、態度

  2.家族と患者との人間関係

  3.家族、患者間の疾病の理解、認識の差

  4.家族間のサポートシステム

  5.家族の状況判断能力

  6.家族がとらえている患者の性格傾向

  7.経済的問題の存在


T-1.家族とのコミュニケーションをとり、不安や心配事を表出しやすいように受容的態度でかかわる

  2.家族の考えと医療者の考えの違いがないか、また患者の考えを尊重してかかわる方法について相談し検討する

  3.家族内で起きている問題の対処ができているか、解決困難な時は相談にのる


E-1.家族が患者の今後についてイメージできるように、術後の状況、入院期間、社会復帰の時期等についての知識を与える

  2.家族に患者のサポートの必要性を説明する

看護計画(術後)

Ⅰ.アセスメントの視点(術後)

 頚椎の手術後は、頭頚部の固定により同一体位の保持が必要であり、一般の全身麻酔後の侵襲に加え、それに対する二次障害の予防と早期発見が必要である。

 また、リハビリテーション時期においても頚椎の固定を保持しながら離床、ADLの拡大に対する援助が必要である。 

Ⅱ.問題リスト(術後)

#1.肺合併症

   [要因]・気管内挿管や麻酔剤による分泌物の増加

       ・疼痛や不安による呼吸抑制

       ・頚椎の固定、咽頭の浮腫による分泌物の貯留


#2.腸蠕動の低下

   [要因]・全身麻酔による影響

       ・術中体位(腹臥位)

       ・仰臥位安静保持


#3.術後出血、リコールの流出


#4.創、採骨部の疼痛


#5.症状の悪化に伴う苦痛

   [要因]・一過性の神経症状の悪化

       ・膀胱直腸障害


#6.頭頚部の固定、同一体位による苦痛


#7.セルフケアの不足

   [要因]・疼痛

       ・頭頚部の固定

       ・四肢の運動知覚障害


#8.精神的活動の低下

   [要因]・同一体位の保持

       ・高齢者が多い


#9.床上安静による筋力の低下、関節の拘縮


#10.リハビリテーション期における危険


#11.退院時指導の必要性

Ⅲ.看護目標(術後)

1. 手術後の苦痛の緩和を図り、頚椎の安静保持ができる 

2. 術後の合併症を防止し、四肢の知覚・運動状態の変化に対応する 

3. 頚部の安静を保持しながらもADLが充足できる 

4. 安全にリハビリテーションがすすめられる 


経カテーテル肝動脈塞栓療法を受ける患者の標準看護計画-035

 経カテーテル肝動脈塞栓療法を受ける患者の標準看護計画(TAE)

肝動脈塞栓療法(TAE)とは

 肝臓は、肝動脈と門脈の2系統の流入血管をもち、両者から酸素や栄養の供給を受けている。しかし、肝癌は肝動脈のみから栄養を受け、門脈からは栄養を受けていない。TAEとは、この血流支配の特性を利用し、大腿動脈よりカテーテルを、通常の血管造影と同様に腹腔動脈を経て肝動脈に選択的に挿入し、そこから油性造影剤(リピオドール)と抗癌剤(エピアドリアマイシン等)と塞栓物質(ゼルフォーム)を混和したものを注入し、肝動脈を閉塞することにより、選択的に肝細胞癌を壊死に導く治療法であり約70%に効果を認めており、肝切除と並び肝細胞癌の双璧をなしている。 

適応

高度の肝障害のない例(チャイルド分類A・B) 

腎不全、心不全等全身の合併症が併存しない場合 

門脈内にまで腫瘍塞栓がみられない場合 

検査によるおもな合併症と症状

 1.動脈穿刺、動脈造影に伴う合併症 

 2.動脈を塞栓することによる副作用、合併症 

腹痛、発熱、悪心・嘔吐、呼吸困難 (肝動脈塞栓、肝癌壊死による) 

急性胆嚢炎、膵炎、胆嚢・脾・小腸梗塞、麻痺性イレウス、肝膿瘍、胃・十二指腸潰瘍による消化管出血等、肝不全、ショック 

 3.抗癌剤による副作用 

胃腸障害、腎障害、骨髄抑制による易感染性、体力の低下 

看護計画

Ⅰ.アセスメントの視点

 TAEそのものによる副作用、抗癌剤による副作用の出現を抑えることはできないが腫瘍の大きさ、肝予備能、治療の種類と程度を充分把握したうえで、どの程度の副作用が出現するかを予測して看護を行うことが重要である。

 肝臓癌はTAEで根治する症例は非常に少なく、再発率は極めて高く再治療する症例も多い。こういう点からも患者のQOLの向上を最優先とし、家族並びに社会背景を理解し、患者が最も不安な点や苦痛に感じる点を可能な限り解決できるように援助していくことが大切である。 

Ⅱ.問題リスト

#1.動脈穿刺、動脈造影検査に伴う合併症


#2.発熱

   [要因]・腫瘍の変性、壊死による生体の反応

       ・抗癌剤の骨髄機能抑制作用によりおこる感染


#3.疼痛(腹痛)

   [要因]・腫瘍壊死による心窩部痛、背部痛

       ・肝動脈以外の臓器の血管に塞栓物質が流入し、塞栓された場合

        (胆嚢炎、膵炎、麻痺性イレウス、肝膿瘍などがおこる)


#4.悪心・嘔吐

   [要因]・腫瘍壊死による

       ・抗癌剤の中枢神経への作用

       ・不安など心因性


#5.呼吸困難

   [要因]・抗癌剤(エピアドリアマシン)の繰り返し投与による心毒性

       ・リピオドールの関与したアレルギー機序による


#6.消化管出血

   [要因]・骨髄機能抑制(白血球、血小板減少)による出血

       ・塞栓物質が肝動脈以外の血管に流入した為


#7.肝機能障害、肝不全、腎不全

   [要因]・抗癌剤の量依存性の肝障害作用による肝機能低下、腎機能低下

Ⅲ.看護目標

1. 検査、治療の目的・方法・副作用等について理解され、精神的に安定した状態で検査治療を受けることができる 

2. 全身状態の評価から治療後の合併症を予測し、治療に対する身体的準備ができる 

3. 治療による副作用に早く対処し精神的、身体的苦痛の軽減ができる 

Ⅳ.看護問題

#1.動脈穿刺、動脈造影検査に伴う合併症

#2.発熱

   [要因]・腫瘍の変性、壊死による生体の反応

       ・抗癌剤の骨髄機能抑制作用によりおこる感染


  &体温が37℃前後に解熱、回復してきたことを自覚できる

   穏やかなくつろいだ表情と態度を示す

  $治療後1~7日前後まで


O-1.バイタルサイン、熱型

  2.血液検査データ(WBC、CRP)

  3.随伴症状(悪寒、戦慄、頻脈、発汗、体熱感、疼痛、尿量減少)の把握

  4.治療内容の程度と行われている処置(解熱剤、抗生物質、鎮痛剤等)の効果


T-1.発熱に伴う悪寒の軽減(保温の為の湯タンポ、毛布の用意)

  2.安静を維持し、体熱感時冷罨法

  3.皮膚の清潔保持、寝衣やリネン交換

  4.指示された薬(解熱剤、抗生物質、鎮痛剤、輸液等)の投与


E-1.治療後、患者に治療により発熱が起こることを説明し励ます

  2.安静の必要性を説明し、処置により状態の改善がみられることを説明する

  3.急激な発熱や悪寒時は、医師または看護婦に知らせるように指導する

  4.白血球減少時は、含嗽、マスクの着用を指導

  5.必要に応じて面会人の制限をする

#3.疼痛(腹痛)

   [要因]・腫瘍壊死による心窩部痛、背部痛

       ・肝動脈以外の臓器の血管に塞栓物質が流入し、塞栓された場合

        (胆嚢炎、膵炎、麻痺性イレウス、肝膿瘍などがおこる)


  &疼痛が緩和したことを言葉で表す

   穏やかな表情、リラックスした体位になる

   活動範囲が広がる

  $治療中~治療後1~2日まで


O-1.疼痛に対する患者の訴えや表情、動作、バイタルサインチェック

  2.疼痛の性質、部位、程度、持続時間

  3.塞栓部位、使用した抗癌剤、塞栓物の量の把握

  4.随伴症状(悪心・嘔吐)の有無と程度

  5.鎮痛剤が使用されている時はその効果


T-1.医師より指示されている鎮痛剤を効果的に使用する

  2.安静を維持し、可能な範囲で安楽な体位を工夫する

  3.痛みが自制不可の場合は、医師に報告し、鎮痛薬の指示を受ける

  4.合併症の早期発見につとめ、異常時は速やかに医師に報告し、指示に従う

  5.指示により絶飲食とする

  6.精神的安定への援助

    1)痛み、不安等の感情の表出を促す

    2)痛みに対する理解を示し、支持・激励的態度で接する


E-1.治療による痛みであることを説明し、痛みが増強する場合は医師または看護婦にすぐ知らせるように指導する

  2.安楽な体位のとり方について指導する

#4.悪心・嘔吐

   [要因]・腫瘍壊死による

       ・抗癌剤による胃腸障害

       ・不安など心因性


  &悪心、嘔吐が軽減し、経口摂取ができる

   穏やかなくつろいだ表情と態度をしめす

  $治療中~治療後1~3日まで


O-1.患者の訴えや表情、動作、バイタルサインチェック

  2.嘔吐がある場合は吐物の量・性状・回数等と1日水分摂取量、尿量チェック

  3.随伴症状(疼痛、腹部膨満感、気分不快)の有無と程度

  4.制吐剤が使用されている場合はその効果

  5.使用した抗癌剤、塞栓物の量の把握


T-1.胃部に冷罨を試みる

  2.安静を維持し、可能な範囲で安楽な体位を工夫する

  3.悪心・嘔吐が続く場合は、医師に報告し点滴輸液や制吐剤の指示をうける

  4.氷水の含嗽などにより口腔内の清潔をはかる

  5.疼痛、悪心・嘔吐が発症した場合は、絶食にして経過観察をする

  6.精神的安定への援助

    1)悪心や嘔吐による不安や苦痛を表出できるような雰囲気をつくる

    2)悪心・嘔吐に対する理解を示し、支持・激励的態度で接する


E-1.悪心・嘔吐は治療により起こるが、軽減することを十分患者に説明する

  2.安楽な体位のとり方について指導する

  3.食事は量的にも負担が無く消化吸収のよいものを摂取するように指導する

  4.苦痛や不安があるときは我慢せずに医師や看護婦に知らせるように指導する

#5.呼吸困難

   [要因]・抗癌剤(エピアドリアマイシン)の繰り返し投与による心毒性

       ・リピオドールの関与したアレルギー機序による


  &異常の早期発見ができ、適切な処置を受けることができる

   肺炎、心不全などの合併症がおきない

  $治療中~治療後1~2日


O-1.患者の訴えや表情、動作、バイタルサインチェック

  2.随伴症状(発熱、咳嗽、動悸、浮腫、労作性呼吸困難)の有無と程度

  3.使用した抗癌剤、塞栓物の量の把握


T-1.安楽な体位を工夫し、呼吸困難の緩和をはかる

  2.指示された酸素投与が確実に実施できるように配慮する

  3.急性増悪に備え、挿管、気管内吸引、人工呼吸器等の緊急体制を整えておく


E-1.異常を感じたらすぐに医師や看護婦に知らせるように説明する

#6.消化管出血

   [要因]・骨髄機能抑制(白血球・血小板減少)による出血

       ・塞栓物質が肝動脈以外の血管に流入した為


  &消化管からの出血の異常の早期発見ができる

  $治療後~3週間


O-1.患者の訴えや動作、バイタルサインチェック(血圧低下、頻脈、呼吸促拍)

  2.吐血、下血、貧血症状の有無と程度

  3.血液データ(ヘモグロビン、ヘマトクリット、プロトロンビン時間、WBC、RBC、血小板、電解質、肝機能)と全身状態の観察


T-1.徴候や症状をアセスメントし、異常時は速やかに医師に報告する

  2.安静を保持する

  3.嘔吐後冷水で含嗽させ、嘔気を誘発させない

  4.出血部位により適切な処置を行う

  5.体位変換、便器介助時は腹圧をかけないようにおこなう

  6.輸液、輸血の管理

  7.清潔面への援助を行う

  8.緊張感や恐怖を持たせないように、落ち着いた態度で接する


E-1.安静の必要性を説明し、処置により症状の改善が見られることを説明する

  2.吐血、下血、その他異常時は、医師または看護婦に報告するように説明する

#7.肝機能障害、肝不全、腎不全

   [要因]・抗癌剤の量依存性の肝障害作用による肝機能低下、腎機能低下


  &全身状態の観察を適確に行い、早期に治療が開始できる

   十分な肝機能、腎機能を維持する

  $治療後~3週間


O-1.バイタルサインチェック

  2.食事摂取量、水分出納、尿量、比重、体重チェック

  3.自覚症状(食欲不振、全身倦怠感、腹部膨満、疼痛、発熱、悪心・嘔吐、尿量減少、呼吸困難、貧血など)の観察

  4.他覚症状(浮腫、出血傾向、黄疸、腹水、消化管出血、脱水、脂肪便、脳症など)

  5.血液データ(WBC、血小板、BUN、K、クレアチニン、ICG15分値、ビリルビン、GOT、GPT、AIP、PT、アルブミン、コレステロール)

  6.薬剤の種類・量・投与期間、年齢、肝硬変の重症度


T-1.徴候や症状を観察、アセスメントし、異常時は速やかに医師に報告する

  2.安静を維持し、安楽な体位をとらせる

  3.感染防止のための皮膚の清潔保持

  4.出血傾向に注意し、採血後、点滴後の止血を確認

  5.水分出納、電解質バランス、食事、注射・輸液療法の管理を行う

  6.処置時、検査時は医師からの説明内容の理解度を確認し、再度補足を行う

  7.家族を含めた精神面への援助を行う


E-1.患者の不安を軽減するために状況を理解できるように説明する

  2.治療計画の意義を理解させ、安静、保温、食事、薬物療法に関する具体的な指導を行う


狭心症患者の標準看護計画-033

 狭心症患者の標準看護計画

狭心症とは

 冠状動脈硬化を基礎に発症する病態で、心筋梗塞と共に虚血性心疾患に分類され、胸痛を主症状とする症候群である。冠状動脈硬化があると動脈の狭窄が起こり、労作時に高まった心筋の酸素消費をまかなうのに必要な酸素を含んだ動脈血が十分に流れない状態になる。その結果、心筋は虚血をきたし痛みが出現する。狭心症の発作は心筋虚血の持続時間が心筋壊死を生じない程度の長さであり、心筋梗塞とは異なり虚血の原因がなくなれば速やかに平常に回復する。 

アセスメントの視点

 狭心症は冠状動脈の硬化性狭窄や、一過性の攣縮によって一時的に血流が阻害され心筋の虚血状態をきたすが虚血の原因がなくなれば正常に戻るものである。しかし、この狭心発作を繰り返し起こしたり、症状が悪化すると心筋梗塞への移行も予測される。したがって緊急時の対処や予測される病態と状態の変化を常に念頭において観察する必要がある。

 厚生省「人口動態統計」によれば、心疾患は現在日本の死因の2位となったが今後罹患率は確実に増加することが予想される。その背景には食生活の変化と喫煙人口の増加が考えられる。また虚血性心疾患に罹患しやすいパーソナリティ特性として、タイプA型行動パターンがあげられている。タイプAとは、目的に向かって常に情熱的に自己を駆り立て、仕事や余暇においても常に先を争い時間に追われるタイプをさし、タイプAはタイプBに比べ、虚血性心疾患の発症は2倍以上との報告がある。つまり虚血性心疾患に罹患しないライフスタイルとは、タイプAの行動パターンを避ければよいことになる。またリスクファクター(肥満・高血圧・喫煙・高脂血症・糖尿病)を減らすことが、虚血性心疾患の発生予防の一つの方法と考えられ、発症後の生活指導のためにもこれらの因子を把握しておくことが重要である。患者は入院により日常生活を中断され胸痛や不安に悩まされ、安静を保つことの苦痛や、制限された将来の生活を考えたりして不安な生活にある。こうした状態は治療過程に影響を与えることが考えられるため、個々の状態の時期を確認しながら対応しなければならない。 

分類

1.誘因による分類


   労作性狭心症

     労作と関係して発作が起こる場合。

   安静時狭心症

     安静時や睡眠中に発作が起こる場合。

   労作兼安静狭心症(混合型)

     労作時および安静時のいずれも発作が起こる場合。


2.経過による分類


   安定狭心症

     症状および経過の比較的安定しているもの。

   不安定狭心症

     胸痛の頻度が増え、痛みの持続時間が長くなり程度が増悪していくもの。心筋梗塞に移行しやすい。


3.発生機序による分類


   器質性狭心症

     病理学的に冠状動脈に広範かつ高度な動脈硬化性の器質的狭窄があるもの。

   冠攣縮性狭心症

     冠状動脈の強い収縮によって起こるもの。

症状

 主な症状は胸痛であり、胸骨中央部に3分の1ぐらいのところに現れ、しめつけ感、重苦しさ、圧迫感、焼きつけられるような感じなどいろいろな表現で訴えられる。また左顎、左肩、胃部に放散することもあり、さらに顔面蒼白、冷汗、吐き気、息苦しさ、動悸、眩暈などが伴うこともある。痛みは1~3分までの短い発作を繰り返し、長くても15分以内である。ほとんどが労作時、興奮時、食後などに起こり、特に早朝から午前中の行動を起こし始める時に多い。 

検査

 

心電図検査 

胸部X線検査 

血液検査 

ホルターECG 

心エコー 

運動負荷試験 

心臓核医学検査 

冠動脈造影法 

CT 

MRI 

 

治療

 1.一般療法 

冠危険因子の是正 

 2.薬物療法 

硝酸薬、β遮断薬、Ca拮抗薬 

 3.経皮的冠状動脈形成術(PTCA) 

バルーンカテーテルにて狭窄部を開大させて狭窄を軽減させる。緊急バイバス術を必要とすることがあり、準備下に施行される。 

 4.冠動脈バイパス術 

冠状動脈に75%以上の狭窄、または完全閉塞を認め、かつPTCAが不可能の場合施行される。移植血管は内胸動脈、胃大網動脈、大伏在静脈などが用いられる。 

 5.大動脈バルーンポンプ法(IABP) 

不安定狭心症において発作が重積し、内科的治療無効の症例では緊急時の治療として適応される。 

合併症

不整脈(心室性期外収縮、心室頻拍、心室細動、心停止、房室ブロック) 

失神 

左心不全 

心原性ショック 

管理

 1.胸痛発作時のサポート 

 胸痛発作が起こったらまず第一に痛みを軽減する必要がある。しかし入院後の最初の発作に対しては、ECG変化の確認をとる目的ですぐには硝酸薬(ニトロール等)を使用せずにECGをとることがある。この点については、入院時に患者に十分説明して協力を得ておくことが大切である。一方、頻回に発作を繰り返すような場合は痛みとともに死の恐怖や不安感が伴う。このことから痛みを軽減するとともに、そばで励まし平静な態度で援助して安心感を与えるように努める。 

 2.安静に関わるサポート 

 安静は心臓の負担を軽くし、心筋の酸素消費量を軽減するという目的で重要なことであるが、患者にとっては苦痛となる。発作がないときに定められた安静を守るのは難しく、過度の行動をとってしまいがちで、そのために発作を誘発し心筋梗塞に移行してしまうこともある。安静の必要性について、患者にとって分かりやすい説明を行い、受容できるように働きかけるとともに、許される範囲内での動きを最大限に介助し拘束されたなかにあっても安楽に過ごせるよう援助が必要。 

 3.検査に関わるサポート 

 狭心症発作時にECGで虚血性のST変化を記録できれば確定診断を下すことできる。このためモニターやホルターECGが用いられるが、狭心症の自然発作を記録することはなかなか難しく、発作を人為的に誘発させる運動負荷試験が行われる。この場合、強い胸痛や不整脈出現に注意し、ニトロール等の指示薬をすぐ投与できるようにしておく必要がある。また、狭心症薬の内服を中止として検査にのぞむ場合もあるため検査前、中、後の一般状態に十分注意する必要がある。検査に対する不安を最小限とするため患者に対しては、検査目的、方法を十分に説明し、理解を得て行われることが重要である。 

 4.リハビリテーション時のサポート 

 発作がコントロールされた後は、運動負荷試験、トレッドミル検査等を行った上で運動許容量が決められる。その範囲内での運動を行うことは心負荷となる体重増加やストレスの予防ならびに解消をはかり、冠状動脈の側副血行路を促進するためにも必要であることを説明し、希望をもってリハビリテーションを進めることができるように指導する。 

看護計画

Ⅰ.アセスメントの視点

 個々の発作の誘因、起こり方とその背景にある患者の生活様式を把握する。さらに狭心症を増悪させるような疾患を合併している場合は、どのような治療がなされているのか、また、発病及び入院によって生じる社会的、家庭的役割の変化と患者の身体面・精神面へどのような影響を及ぼしているのかを知る必要がある。そして退院に向けて治療が進められる中で患者自身が病気を理解して、リスクファクターを認識し、再発作を起こさないようにするための自己管理の指導を行い、家族の協力も得られるように援助していかなければならない。 

Ⅱ.問題リスト

#1.疾患による苦痛

   〔要因〕・胸痛及び随半症状による身体的苦痛

       ・症状からくる精神的苦痛


#2.検査、治療、処置及びその結果に対する不安

   〔要因〕・情報不足


#3.心筋梗塞への移行の危険性

   〔要因〕・発作が頻発、長期持続する等の症状の悪化


#4,安静を守ることができず発作を誘発させる可能性

   〔要因〕・安静の必要性、日常生活行動おける制限の理解不足

      ・自覚症状がないために負荷をかけてしまう


#5.入院により社会的、家庭的な役割を果せないことによる精神的なストレス


#6.日常生活において適切な自己管理ができないことによる再発作の危険性

   〔要因〕・危険因子がある

       ・知識不足

       ・薬物管理ができない

       ・発作時に適切な対処ができない

       ・日常生活行動について自己判断できない


#7.退院後の日常生活においての不安

Ⅱ.看護目標

1. 胸痛発作をおこさず心身の苦痛が軽減できる 

2. 安静を保持することによる苦痛が軽減できる 

3. 再発作および合併症をおこさず症状の悪化をきたさない 

4. 疾患について理解するとともに受容できる 

5. 冠危険因子を認識し再発作予防のための自己管理ができる 

Ⅲ.看護問題

#1.疾患による苦痛

   〔要因〕・胸痛及び随半症状による身体的苦痛

       ・症状からくる精神的苦痛作時に速やかに対処できる


  &発作時に速やかに対処できる

   症状が速やかに消失する

   発作による不安感が軽減する

  $診断や治療方針が決定するまで


O-1.バイタルサイン(血圧変動、脈拍増加、リズム不整、脈拍欠損)

  2.モニター、ECG(ST低下・上昇の有無、発作のない時と比較、硝酸薬使用時の波形変化)

  3.自覚症状

    1)痛みの部位、程度

    2)痛みの種類(絞扼感、圧迫感、放散痛の有無)

    3)持続時間、動悸、呼吸困難、眩暈、嘔気等の有無

    4)硝酸薬与薬後の症状の消失時間、また血管拡張による頭痛、心悸亢進、血圧低下等の有無

  4.発作出現時の状況(誘因の有無-#6参照)


T-1.安静にして患者の安楽な体位にする

  2.発作出現時は医師の指示を施行

    1)ECG記録

    2)硝酸薬与薬

    3)硝酸薬与薬後、経時的にECG記録(ECG波形または症状改善する迄)をとり、胸痛の持続時間、改善時間、ニトロール等の舌下時間、バイタルサインを記録

    4)ECG記録と同時にドクターコールをする

    5)発作中は患者の側を離れないようにし、落ち着いた態度で接する


E-1.発作時はすぐにナースコールするように指導する

  2.硝酸薬は常に患者の手元に置きすぐに服用できるようにし、服用時には起立性低血圧に注意し、座って服用する習慣づけを指導する

#2.検査、治療、処置及びその結果に対する不安

   〔要因〕・情報不足


  &検査・治療の方法、目的が十分理解でき不安が軽減する

  $診断や治療方針が決定するまで


O-1.医師の治療方針、予定されている検査の把握

  2.検査結果の把握

  3.検査前後の症状の有無


T-1.検査の必要性・方法を分かりやすく患者に説明し、胸痛等があるときは診断・治療の過程でまもなく苦痛がとれることを伝え、精神的な不安を取り除く

  2.検査結果について医師から十分な説明が受けられるよう配慮する


E-1.検査の前日は激しい労作を避けるようにし、禁食等ある場合は守るよう指導

  2.検査に備えて薬物を中断している場合は発作出現に注意し無理な行動をとらず、ニトロール等を常に携帯するように指導

  3.負荷試験の場合はニトロール等を検査室に持参する

#3.心筋梗塞への移行の危険性

   〔要因〕・発作が頻発、長期持続する等の症状の悪化


  &症状が悪化することなく適確な治療を受け、心筋梗塞への移行を防止できる

  $診断や治療方針が決定するまで


O-1.モニター、ECG上STの上昇

  2.15分間以上持続する激しい胸痛発作

  3.硝酸薬を3錠使用しても症状の改善がない場合

  4.バイタルサイン

  5.心筋逸脱酵素(CPK、GOT、LDH等)の上昇


T-1.心筋梗塞が疑われる所見があればすぐに医師へ報告する

  2.速やかに適切な処置が行われるよう準備

    1)CCUへの搬入

    2)ルート確保、酸素吸入等の救急処置

    (以後心筋梗塞患者の看護を参照)

#4.安静を守ることができず、負荷をかけすぎて発作を誘発させる可能性

   〔要因〕・安静の必要性、日常生活行動おける制限の理解不足

       ・自覚症状がないために負荷をかけてしまう


  &安静の必要性を理解して決められた安静度を守り発作を起こさない

  $退院まで


O-1.行動状況

  2.医師からの説明内容の把握

  3.疾患に対する理解度の把握


T-1.行動制限のため不足するADL面の介助(保清、扶送など)

  2.安静度の範囲内で動ける工夫をし、精神的な苦痛をもたらせないような配慮をする


E-1.具体的な行動許容範囲について説明する

#5.入院により社会的、家庭的な役割を果せず精神的なストレスがある

  &安心して入院生活を送ることができ、ストレスの軽減が図れる

  $退院まで


O-1.入院によって生じる心配事、ストレスの有無

  2.患者の家庭や、社会的な立場の把握

  3.夜間の睡眠が十分得られているか


T-1.患者とのコミュニケーションを十分とり、入院に対する思いや訴えの傾聴

  2.家族のサポートが得られるよう家人へはたらきかける

  3.医師への情報提供


E-1.入院期間、予定されている検査内容等具体的に医師から説明してもらう

#6.日常生活において適切な自己管理ができず、再発作をおこす危険性がある

   〔要因〕・危険因子がある

       ・知識不足

       ・薬物管理ができない

       ・発作時に適切な対処ができない

       ・日常生活行動について自己判断できない


  &発作の誘因を認識し、再発作予防のための自己管理ができる

  $退院まで


O-1.冠危険因子の有無の把握

     

1)高血圧

    2)高脂血症

    3)肥満

    4)糖尿病

    5)喫煙

    6)ストレス・過労

    7)遺伝

 

  2.日常生活における心負荷因子、注意点についての理解度の把握

    1)排便コントロール

    2)精神状態(ストレス・イライラ感がないか,タイプA型行動)

    3)睡眠

    4)過食(暴飲・暴食していないか)

    5)喫煙の習慣

    6)体重増加、尿量減少、むくみや、血圧、脈拍の異常

    7)塩分、水分の取りすぎ

    8)適度な運動

    9)気温の変化、入浴時の注意

    10)内服薬の管理

    11)発作時の対処


T-1.不眠の原因を取り除き、必要時睡眠剤、安定剤の与薬について医師と相談する

  2.便通調節のため、必要時下剤の与薬について医師と相談する

  3.塩分制限や低コレステロール食などの食事療法について、必要時個人栄養指導の計画を医師と相談する


E-1.冠危険因子の除去

    1)高血圧の危険因子についてパンフレットを用い指導

      血圧のコントロール、測定の習慣づけ

    2)低コレステロール食について指導

    3)標準体重の維持

    4)血糖のコントロール

  2.日常生活における再発作予防の注意点について指導

    1)便秘予防の工夫を行い、怒責を避けるよう便通調節をする

    2)規則正しくゆとりある生活を心掛ける

      趣味、娯楽、適度な運動でストレス解消をはかる

    3)日中に適度な運動等を促す

    4)適量をゆっくり時間をかけて食事を取る

      カロリー制限を守り、アルコールの取りすぎに注意

    5)禁煙(喫煙の有害性と疾患との関係について説明)

    6)異常の早期発見ができるよう毎日自己チェックする

      自己検脈し、不整脈等あれば安静にすること

    7)減塩食の工夫について説明し、促す

    8)運動負荷の結果から医師と相談し、可能な運動の種類、量について説明

      運動の有効性について説明し、適切な運動を毎日続けられるよう指導する

    9)寒冷刺激を避ける

      入浴はぬるめの温度で長湯とならないようにする

    10)服薬は指示された通り正確に服用し、勝手に変更しないように指導する

      薬剤の効用、副作用について説明

      自己管理が難しい患者に対しては家族に指導する

      硝酸薬は常に携帯するように指導

    11)発作が起きたときは安静にしてニトロール等を舌下し、 3錠使用してもおさまらない場合はすぐ来院するよう患者本人、家族ともに指導する

#7.退院後の日常生活においての不安

  &日常生活における自己管理ができ、不安なく社会生活が送れる

  $退院まで


O-1.退院後の生活での不安な点について把握する

  2.家庭でのサポート体制

  3.食事療法の理解度

  4.薬物療法の理解度

  5.社会復帰後の仕事量、内容

E-1.試験外泊を促し、外泊時の生活状況、食事内容等について説明

  2.パンフレットを用い最終的な日常生活の指導


強迫神経症患者の標準看護計画-032

強迫神経症患者の標準看護計画

強迫意識・強迫感情により強迫観念がある

  ♯現実・自然をあるがままに悟ることができる

O-1.一日の過ごし方

    2.日常生活行動・言動

    3.家族的背景

    4.家族に対しての反応

    5.生育歴

    6.社会的背景

    7.性格

    8.恐怖症の有無

    9.強迫観念の有無

  10.強迫行為の有無

  11.強迫観念・行為に伴う身体症状の有無

  12.薬剤の副作用の有無

T-1.強迫観念を話題にしない

    2.強迫症状を患者の一部分として接する

    3.症状によっては他のことに興味をもたせ気分転換をはかる

    4.医師の治療方針に基づいて、行動療法・自律訓練を援助する

E-1.治療方針に基づいて行動療法・自律訓練を指導する


強迫観念による内面的葛藤の苦痛があり訴えることが少ない

  ♯スタッフに症状の苦痛を訴えることができる

O-1.恐怖症・強迫観念・強迫行為の状態

     a.対象

     b.程度

     c.身辺の状態

     d.言動・行動・表情・会話

     e.対人関係

     f.一日の過ごし方

     g.日常生活への影響

     h.強迫行為に伴う身体症状

T-1.患者の自発性を尊重し不必要な介入を避ける

    2.コミュニケーションの場をもち訴えやすい雰囲気をつくる

    3.異常行動に対して,安に否定・中止するような働きかけをしない

    4.患者が訴えてきたら、良く話を聞く

    5.自己表現しやすい雰囲気をつくる


対象のない不安により他者に理解されない苛立ちがある

  ♯スタッフに症状の苦痛を訴えることができる

O-1.恐怖症・強迫観念・強迫行為の状態

      a.対象

      b.程度

      c.身辺の状態

      d.言動・行動・表情・会話

      e.対人関係

      f.一日の過ごし方

      g.日常生活への影響

      h.強迫行為に伴う身体症状

T-1.支持的な看護を行う

      a.訴えを良く聞く

      b.元気づけは慎重にさりげなくする

      c.感情的になっている人には、受容的態度で接する

    2.感情の表現を助ける

      a.理解のある暖かい態度で聞く

      b.患者の言葉を繰り返す等して患者に話をすすめさせる

      c.自分で理解する方向に誘導する

    3.患者自身の洞察を導かせる

      a.性格的な自分の弱さを洞察させる

      b.スタッフが患者の感情にまきこまれない態度をとる

      c.積極的に話を聞く

    4.患者に訓練をさせる

      a.自分で自分のことを理解する方向に導く


人間関係が表面的・儀礼的なことより接近が難しい

  ♯人間関係を形成し周囲の人と協調した生活ができる

O-1.適度に距離をおいて観察する

      a.対人関係

      b.協調性

      c.他人の立場を理解できるか

      d.対象により異なった関係

      e.対象に対しての感情

     2.日常生活状態

       a.態度

       b.自発性

       c.持続性

T-1.状態に応じてレクリェーション参加を促し他患者と強調できるように働きかける


強迫観念にとらわれ身の回りのことができない

  ♯強迫観念がありながらも身の回りのことができる

O-1.身辺の状態

    2.身辺の整理・整頓

    3.強迫行為の回数・時間帯・所要時間

T-1.医師の治療方針に基づいて身の回りのことを患者と相談し行う決して無理強いはしない


重症強迫症では頑固な睡眠障害がある

  ♯充分な睡眠がとれる

O-1.日中の状態

    2.夜間の睡眠状態

      a.寝つき

      b.途中覚醒の有無

      c.睡眠時間

      d.覚醒状態

T-1.医師の治療方針に基づいて眠剤を使用する。昼夜逆転しないように日中覚醒を促す

E-1.消灯後は臥床を促し眠剤の効果で入眠できることを説明する



顔面神経麻痺のある患者の標準看護計画

顔面神経麻痺のある患者の標準看護計画

顔面神経麻痺とは

 顔面神経は顔面表情筋の運動と、舌の前3分の2の味覚、および涙腺や唾液線の一部を支配している。顔面神経麻痺は、顔面神経核よりも上位の障害(大脳、中脳)によって起こる中枢性顔面神経麻痺と、 顔面神経核より末梢の障害で起こる末梢性顔面神経麻痺とに大別される。表情筋のうち前額部の筋肉は大脳から両側性に支配されるため、中枢性顔面神経麻痺では顔面下半分は麻痺するが、額にしわをよせることができる。一方、末梢性顔面神経麻痺では額を含むすべての表情筋の運動が障害される。これにより、顔面神経麻痺の原因部位の識別が可能となる。


症状

 麻痺側顔面の筋力が低下し、閉眼時にも眼瞼が十分に閉じず眼球結膜が見える(兔眼)。また麻痺側の鼻唇溝が浅く、口角がたれるため唾液や食物がこぼれやすい。口唇を閉じる力も麻痺側では弱く、閉じた唇を指で押し広げることによって確かめられる。また、額にしわを寄せるようにしても、麻痺側半面にはしわができない。
 顔面の感覚は障害されないが、麻痺側の舌の前3分の2の味覚障害がおこることがあり、また聴覚異常をきたすことがある。


検査

 1.運動機能の検査
 患者に眉を上げるように命じ、額にしわがよるかどうかをみたり、目を強くつぶるように命じて眼輪筋の収縮をみたり、上下歯を噛み合わせておいて口を開き歯を出させ(イーッと言わせる)、口角の動きの左右差を調べる。麻痺側の口角の緊張が不十分で、鼻唇溝が明らかに浅くなる。
 2.味覚検査
 少量の砂糖、塩、クエン酸などを舌の3分の2に塗って、味覚を調べる。


治療

 初期には各種ビタミンやステロイド剤を用い、数日後からマッサージや電気治療などによってリハビリテーションを行う。




看護計画


Ⅰ.アセスメントの視点

 脳外科における顔面神経麻痺の原因として、小脳橋角部腫瘍、頭蓋底骨折、脳底動脈瘤、硬膜外血腫が上げられる。また、術操作により、あるいはやむなく顔面神経を切断、損傷した場合、術後浮腫などにより一過性に出現する場合もある。切断の場合は神経吻合術が行われるが、完全に回復するのは困難であり、顔面の形成術が必要となることもある。
 患者と話す時や、患者が笑った時に、口角など顔面筋の動きを注意深く観察することで、顔面神経麻痺に気づく。
 顔面神経麻痺のある患者では、眠っている時でも十分に閉眼していないことがあり、これによって角膜が障害を受けることがある。したがって、これらの患者に対しては眼軟膏やアイパッチなどで、角膜の保護に心がけることが重要である。食事に際しても麻痺側の口角から食物がこぼれることが多い。食事介助をするときにはこの点にも注意し、健側で咀嚼させるなどの配慮をすべきである。筋萎縮を予防する意味で早期に顔面マッサージを指導し、顔面神経麻痺を受け入れるよう援助していく。


Ⅱ.問題リスト

#1.角膜損傷、角膜潰瘍の危険性
   〔要因〕・兎眼

#2.ボディイメージの障害
   〔要因〕・頬筋萎縮による顔貌の変化

#3.口腔内汚染
   〔要因〕・咀嚼困難で麻痺側に食物がたまりやすい
       ・顔面、口腔内の知覚低下

#4.精神的不安定、動揺がある
   〔要因〕・ボディイメージの障害


Ⅲ.看護目標

1. 目の保護と角膜損傷の予防
2. 早期に顔面の運動、マッサージを行い、筋萎縮を予防する
3. 口腔内の保清に努める
4. ボディイメージの変化を受容でき、社会復帰にむけて自信がもてる


Ⅳ.看護問題(術前)

#1.角膜損傷、角膜潰瘍の危険性
   〔要因〕・兎眼
  &眼球結膜の充血が見られない
   角膜潰瘍が起こらない
O-1.しっかり閉眼してもらい閉眼の程度をみる
  2.眼痛、充血の有無
T-1.ケーパインの絆創膏固定にて保護する
  2.点眼を行う:4回/日
  3.睡眠時眼軟膏、点眼を行う
  4.睡眠時も閉眼困難であれば絆創膏で閉眼固定する
E-1.適宜、他動的に閉眼するように指導する

#2.ボディイメージの障害
   〔要因〕・頬筋萎縮による顔貌の変化
  &顔面神経麻痺を受け入れ積極的に生活する
O-1.麻痺の状態
T-1.マッサージ後、毎日の変化、訴えを聞き効果を知る
E-1.1日数回静かに上方に向けて顔面筋をマッサージするように指導する
  2.鏡を見ながら顔面筋の運動訓練を指導する
   
1)前頭部にしわをよせる
   2)目を閉じる
   3)口をすぼめる
   4)口を左右に動かす
   5)頬をふくらます
   6)口笛を吹く

  3.顔面を冷やさない
  4.大部分の患者は自然に改善することをよく説明し、励ます

#3.口腔内汚染
   〔要因〕・咀嚼困難で麻痺側に食物がたまりやすい
       ・顔面、口腔内の知覚低下
  &口内炎がなく口腔内がきれいである
O-1.食後、食物が残っていないか口腔内を見る
T-1.口腔ケア施行:毎食後
  2.流動食は麻痺口角側より流出してしまったり、むせたりしやすく摂取困難なため少量ずつ飲ませ、
    落ち着いてゆっくり摂取できる雰囲気を作る

#4.精神的不安定、動揺がある
   〔要因〕・ボディイメージの障害
 &精神的苦痛が緩和される
O-1.患者の訴え、態度に注意する
  2.症状の観察
T-1.疾病について医師のムンテラを聞き、看護婦での言動の統一を図る

間質性肺疾患患者の標準看護計画

間質性肺疾患患者の標準看護計画



間質性肺疾患とは

肺の間質(肺胞壁、気管支周囲組織、血管周囲組織、肺胸膜下層、小葉間結合組織など)を病変の場とする肺疾患
間質性肺疾患の分類
感染症--- マイコプラズマ肺炎、粟粒結核、ニューモシスチスカリニ肺炎
免疫学的疾患--- 膠原病肺、過敏性肺臓炎、薬物誘発性肺炎、Goodpasture症候群
悪性腫瘍--- 癌性リンパ管症
化学物質、環境大気汚染--- 石綿肺、珪肺、パラコート中毒
放射線照射--- 放射線性肺炎
原因不明--- 特発性間質性肺炎、サルコイドージス、器質化肺炎を伴う閉塞性細気管支炎(BOOP)、好酸球性肺炎、肺好酸球性肉芽腫症、アレルギー性肉芽腫性血管炎、びまん性過誤腫性、肺脈管筋腫症


間質性肺炎(IP)とは

肺胞道あるいは肺胞のうという肺気道系の最終部分に炎症を起こしているものを肺炎という。肺胞のなかが炎症の場となる一般の肺炎(肺胞性肺炎)と異なり、肺胞上皮(肺胞内腔の表面)や肺胞間の隔壁に損傷があったり、肺胞がつぶれるものを間質性肺炎という。

特発性間質性肺炎(IIP)とは

間質性肺炎の多くは原因が不明で特発性間質性肺炎と呼ばれ、進行性に間質の線維化を来す。肺炎のつぶれが肺全体に及ぶものは急性間質性肺炎と呼ばれ危険である。肺胞は、その上皮から分泌されるサーファクタント(肺拡張因子)という表面活性物質によってふくらんだ状態を保っているが、間質性肺炎はサーファクタントが欠乏し、肺胞はつぶれてしまう。肺胞壁に取り付いた硝子膜は肺胞におけるガス交換を阻害し、肺胞の萎縮をもたらす。つぶれた肺胞が浸出物のなかに埋まったままでいるとしだいに肉芽組織にとってかわり(器質化)、しだいに線維化した組織となり、その結果もとの肺胞腔はつぶれてしまい、空気の通り道である気道だけが残ってガス交換ができなくなってしまう(肺線維症)。50%生存率は 4~6年の報告が多く、死因は原疾患によるものが大半で、それに肺癌の合併が目立つ。


分類

急性 Humman-Rich 症候群、急性間質性肺炎、病理学的にはびまん性肺胞障害(DAD)
慢性 蜂巣肺の存在、肺野の縮小
 定例型(A群) 蜂巣肺は存在するが、肺野の縮小は軽度
 非定例型(B群) 気腫化、のう胞のため肺野が拡大する例もある


症状

 息切れ、乾性咳嗽が特徴的で発熱などがみられる。
 病期がすすむと痰、ばち指、チアノーゼがみられるようになる。


原因

 粉塵吸入
 自己免疫機序


検査

血液検査--- 乳酸デヒドロナーゼ(LDH)上昇-活動性の指標になる赤血球沈降速度亢進、
C反応性蛋白(CRP)高値、抗核抗体、リウマチ因子陽性
胸部X線、CT--- 蜂巣肺、肺野縮小がみられる
呼吸機能検査--- 肺気量の減少、肺拡散能力の低下、低酸素血症
病理学的検査--- 経気管支肺生検(TBLB)、開胸肺生検
気管支肺胞洗浄(BAL)液--- 好中球、リンパ球の増加を認める例はあるが、特異的な所見はない
Gaシンチグラム--- 活動性の高い例でガリウムの集積を認める


治療

 副腎皮質ステロイドホルモン
慢性型の急性増悪例、急性型が適応
プレドニゾロン(PSL) で1mg/kgを経口4週間、2~4週で 5mgずつ減量
重症例ではパルス療法(メチルプレドニゾロン1g/日静注、3日間)
副作用
精神障害、消化性潰瘍、糖尿病、感染症の誘発、増悪、骨多孔症、筋力低下、浮腫、高血圧、ムーンフェイス、血栓性静脈炎
 免疫抑制剤
シクロホスファミド
アザチオプリン
合併症 肺癌、気胸、気道感染


間質性肺炎の看護


Ⅰ.アセスメントの視点

 呼吸器の疾患ではガス交換の障害が起こり、活動に耐える力が低下している。また、咳嗽、喀痰、胸痛、呼吸困難、発熱、意識障害など様々な症状を伴い、身体的苦痛、死の恐怖に直面するなどの精神的苦痛も大きく、援助が必要となる。


Ⅱ.問題リスト

#1.ガス交換の障害と活動耐性の低下
   [要因]
・無効な呼吸方法、気道浄化
・肺胞壁の破壊、線維化
・ガス交換の障害に伴う組織の低酸素
・呼吸困難
・多大な努力呼吸や咳嗽に伴うエネルギー消費の増大
・治療処置による安静と睡眠の障害

#2.気道クリアランスの不良
   [要因]
・過剰な気道内分泌物
・気道内分泌物の粘性の増加
・不十分な痰の喀出
・炎症
・胸痛による喀痰の障害

#3.精神的苦痛
   [要因]・咳嗽、喀血、胸痛など自覚症状の出現による死への恐怖、予後への不安・症状による精神的ストレス
       ・ボディイメージ、ライフスタイルの変化
       ・入院による環境の変化
#4.体液量、栄養状態の不十分
   [要因]・呼吸困難
       ・食欲不振
       ・水分摂取の不足
       ・努力呼吸、咳、発熱に伴うエネルギー消費、発汗の増大
       ・便秘
#5.便秘
   [要因]
・水分摂取量の不足
・食事および線維摂取不足
・運動の不足
・排便時の疼痛
・排便習慣の変化、プライバシーの欠如
・長期の低酸素状態による消化管の機能低下

#6.セルフケアの不足
   [要因]
・倦怠感、疲労感
・呼吸困難
・疼痛
・治療による活動制限や身体運動の制約
・長期の入院によるストレス

#7.睡眠の障害
   [要因]・咳や疼痛などの身体症状
       ・予後などに対する精神的苦痛
       ・入院に伴う環境の変化


Ⅲ.看護目標

1. 十分なガス交換が行われる。
2. 気道クリアランスが正常に保たれる。
3. 精神的苦痛が緩和される。
4. 体液量、栄養状態が十分に保たれる。
5. 排便がコントロールされる。
6. 日常生活行動が行われる。
7. 十分な睡眠が得られる。


Ⅳ.看護問題

#1.ガス交換の障害と活動耐性の低下
   [要因]・無効な呼吸方法、気道浄化
       ・肺胞壁の破壊、線維化
       ・ガス交換の障害に伴う組織の低酸素
       ・呼吸困難
       ・多大な努力呼吸や咳嗽に伴うエネルギー消費の増大
       ・治療処置による安静と睡眠の障害

  &呼吸機能が改善し、身体の限界、制限内の生活に適応できる
  $ 1~10日

O-1.呼吸状態(数、深さ、リズム)、呼吸音、胸郭の動き
  2.痰の性状、喀出状況
  3.血液ガスデータ
  4.口唇、皮膚の色、チアノーゼの有無
  5.労作の程度と労作時の呼吸の状態、脈拍数
  6.患者の活動量、咳嗽力
  7.血圧(活動に伴う拡張期血圧の上昇が見られる)
  8.睡眠状態
  9.倦怠感や衰弱感の有無
  10.食事摂取量

T-1.呼吸状態を改善するために、以下のことを実施する
     ・セミファーラー位をとること、または、オーバーテーブルに寄りかかるように促す
     (体位により肺活量の拡大に努める)
     ・医師の指示による薬物療法あるいは酸素療法を行う
  2.気道からの分泌物を除去するためのケアを実施する
  3.制限されている日常生活行動を患者に代わって実践することで基本的ニードを満たす
  4.医師の指示に従い、活動範囲を拡大するためにリハビリプログラムを実施する
  5.咳嗽をコントロールするためのケアを行う
  6.睡眠を促すためのケアを実施する
  7.栄養状態を改善するためのケアを実施する

E-1.患者に腹式呼吸法、口すぼめ呼吸法を指揮し、その実施を助ける
  2.活動する時は急な動作は避けてゆっくり動くようにし、また口すぼめ呼吸法を行うように指導する
  3.大量の食事や腸管内にガスを産出する食品を避けるように指揮する
  4.咳嗽の効果的な方法(咳嗽の方法、水分摂取の必要性)について指導する
  5.喫煙や花粉、埃などの刺激物質の吸入を避けることの意味とその方法について指導する
  6.医師の指示があれば活動制限を守るように指導する
  7.日常生活をする中で、酸素療法を必要とする場合、すぐに使用できるように、携帯酸素吸入セットを準備して持参するように指導する

#2.気道クリアランスの不良
   [要因]
・過剰な気道内分泌物
・気道内分泌物の粘性の増加
・不十分な痰の喀出
  ・炎症
  ・胸痛による喀痰の障害


  &気道クリアランスが改善される
  $ 1~ 2日

O-1.呼吸の状態(数、深さ、リズム)
  2.呼吸音
  3.酸素飽和度
  4.痰の性状、喀出状況
  5.呼吸困難の有無、患者の表情
  6.胸郭の動き

T-1.気道からの分泌物を除去するために以下のケアを実施する
   ・指示に従って、去痰薬の投与および患者の吸入器の加湿を実施する
   ・禁忌でなければ1日に 1500~2000mlの水分摂取を促す
  2.指示によるタッピング、バイブレーション、体位ドレナージを実施する

E-1.咳嗽の方法について指導する
  2.水分摂取が気道クリアランスの不良の軽減に効果のあることを説明する
  3.喫煙や花粉、埃などの刺激物質を避けるように指導する

#3.精神的苦痛
   [要因]・咳嗽、喀血、胸痛など自覚症状の出現による死への恐怖、予後への不安・症状による精神的ストレス
       ・ボディイメージ、ライフスタイルの変化
       ・入院による環境の変化

  &不安や気掛かりなどが解消あるいは軽減し精神的に安定する
  $ 2~ 4日

O-1.不安言動と不安行動の有無と程度
  2.身体症状の程度
  3.セルフケアの自立度
  4.睡眠状態
  5.食欲、食事摂取状況
  6.病態や検査、治療についての理解度や受容の程度、思い、期待
  7.性格傾向とこれまでに体験した危機状態での対処方法(コーピング)、相談できる人の有無(キーパーソン)、サポートシステム

T-1.呼吸困難を起こしている間のように不安の増強されるような時は、患者の要求にすぐに応えられるように、患者の側につき、患者を1人にしない
  2.呼吸困難、呼吸状態を改善するためのケアを実施する(#1、#2)
  3.患者の訴えによく耳を傾け、理解的、受容的態度で接し、また、そのように接していくことで、自信をもって対処すべき問題に取り組むことができるように援助する
  4.孤独感や不安を増大させていると判断される場合は、看護婦や家族が側に付き添って不安を和らげるように配慮する
  5.環境を整備し、病室内を落ち着いた雰囲気に整える
  6.必要に応じ、鎮痛、鎮静剤の指示を受け与薬し、その効果の判定を行う

E-1.医師の協力を得ながら必要な情報を患者に提供する
    2.リラクゼーションの仕方や気分転換の方法を指導する

#4.体液量、栄養状態の不十分
   [要因]・呼吸困難
       ・食欲不振
       ・水分摂取の不足
       ・努力呼吸、咳、発熱に伴うエネルギー消費、発汗の増大
       ・便秘

  &体液量の不足が改善し、必要量の食事を摂取し、栄養状態が適正に保たれる
  $ 5~14日

O-1.粘膜および皮膚の状態、口渇感
  2.脈拍、血圧
  3.ヘマトクリット値
  4.体重の変化
  5.intake,outputのバランス
  6.尿比重
  7.食欲、食事摂取量、内容
  8.栄養所要量
  9.排便状態
  10.衰弱感、倦怠感の有無
  11.口内炎の有無
  12.血清アルブミン値、血清蛋白質値、総コレステロール値、リンパ球値
  13.呼吸困難の有無
  14.早期腹満感の有無
  15.努力呼吸と咳に伴うエネルギー

T-1.禁忌でなければ、いつでも飲めるように水またはお茶を準備しておき、必要に応じて患者が飲むことを援助する
  2.食事摂取を促す援助を行う
     ・患者の好みに応じた食品、摂取方法を工夫する
     ・食事に十分な時間をかける
     ・必要なら、患者が食事をするときその場にいて援助する
  3.指示に従って経静脈輸液療法を実施する
  4.呼吸困難を改善するためのケアを実施する(#1、#2)
  5.便秘を予防する

E-1.禁忌でなければ、少なくても1日2500mlの水分を摂取するように指導する
  2.栄養状態の改善の必要性について説明する
  3.効率のよい食事摂取の仕方、食欲を回復する方法について指導する

#5.便秘
   [要因]
・水分摂取量の不足
・食事および線維摂取不足
・運動の不足
・排便時の疼痛
・排便習慣の変化、プライバシーの欠如
・長期の低酸素状態による消化管の機能低下


  &患者の通常の排便状態に戻る
  $ 1週間

O-1.排便回数、排便に要する時間、便の量、性状
  2.腹部症状(腹満感、残便感、腸雑音)
  3.食事、飲水の摂取量
  4.排便時の苦痛、残便感の有無
  5.腹痛、悪心の有無

T-1.排便する環境を整える
   1)患者の状態に応じた排便方法を工夫する
    可能な限りトイレに行けるようにする
    自分で行けない場合は、看護婦の介助で車椅子でトイレに行く
    ベッドサイドでポータブルトイレを利用する
    やむを得ない場合には、ベッド上での排泄をすすめるが、緊張感の緩和、羞恥心の対応など、特に精神面への援助に配慮する
    意識低下のある場合にはおむつを利用する
   2)排便習慣が守れるように患者と相談して日課を決める
   3)プライバシーが守れる環境をつくる
    スクリーン、カーテンを利用する
    防臭剤を活用する
    排便後は後始末をすばやく行う
  2.医師の指示により緩下剤、坐薬、軟化剤を用い、便を軟らかくして排便させる
  3.緩下剤などの服用で効果がない場合には、グリセリン浣腸を施行する
  4.下腹部のマッサージにより腸を刺激する

E-1.可能な範囲で、患者が下剤を自分の状況に合わせて調整できるように指導する

#6.セルフケアの不足
   [要因]・倦怠感、疲労感
       ・呼吸困難
       ・疼痛
       ・治療による活動制限や身体運動の制約
       ・長期の入院によるストレス

  &身体的な制限と指示された活動範囲で、日常生活に必要なセルフケアを実施する
  $10~14日

O-1.日常生活動作の自立度
  2.四肢の運動機能
  3.呼吸の状態
  4.現状に対する認識
  5.体力、栄養状態
  6.生活の目標(生きがい)
  7.サポートシステム

T-1.患者の生活背景を考慮して、日常の身体的なニーズに合った具体的な日常生活の仕方を患者とともに計画する
  2.体力を増強し、活動耐性を改善するためのケアを実施する
  3.患者が活動しやすいように生活環境を整える

E-1.呼吸困難、倦怠感、衰弱感による制限の範囲内で、できることを自分でやることの必要性を指導する
  2.生活に必要な物品は手の届きやすい所に置くように指導し、援助する
  3.患者や近親者に対して、患者が指示された活動制限や活動耐性の範囲内で自立することの必要性と、それをサポートする家族の役割について指導し、援助する
  4.患者が日常生活を意欲や生きがいをもって生活できるように趣味ややりがいにある課題をもてるように指導し、援助する

#7.睡眠の障害
   [要因]・咳や疼痛などの身体症状
       ・予後などに対する精神的苦痛
       ・入院に伴う環境の変化

  &患者に必要な睡眠が得られる
  $ 3~ 4日

O-1.睡眠パターンの障害の型
  2.睡眠パターンの障害の随伴症状
  3.睡眠を妨げる因子

T-1.安楽な睡眠姿勢がとれるように、セミファーラー位またはオーバーベッドテーブルに寄りかかれるようにする
  2.起坐呼吸を改善するために呼吸状態を改善する方法を実施する
    (腹式呼吸、口すぼめ呼吸、深呼吸、分泌物の除去、横隔膜の圧迫を避ける、喫煙、刺激物の除去など)
  3.必要時、睡眠中に酸素療法を実施する
  4.咳嗽をコントロールするためのケアを実施する
  5.室内の換気を行い、静かで落ち着いた雰囲気をつくる
  6.治療や処置により安静や睡眠が妨げられないように、治療や処置を可能な限りまとめて行えるように調整する
  7.睡眠時間が少ない場合にはその不足を補えるように、昼間でも眠っている時には起こさないようにして休ませる

E-1.鎮静薬、催眠薬などの薬物は医師の指示以外は避ける必要があることを指導する
  2.恐怖や不安を軽減できるように、患者の身に今起こっていることや今後の見通しについて説明するが、その場合は、希望がもてるようにしかも簡潔な指導に努める

肝臓癌患者の標準看護計画

肝臓癌患者の標準看護計画


肝臓癌とは

 原発性肝癌と転移性肝癌とに分類される。肝臓癌の95%が転移性肝癌である。
 原発性肝癌とは、肝細胞より発生した癌腫を肝細胞癌(ヘパト-マ)、胆管細胞由来の癌腫を胆管上皮癌(コランジオ-ム)という。未分化の胎児性肝細胞に由来するものを肝芽細胞腫(ヘパブラスト-ム)といい、乳幼児に多い。このうち肝細胞癌が80~90%を占める。また肝細胞癌は肝硬変を合併する場合が多い。
肝細胞癌は肉眼的に塊状型、結節型、瀰漫型の3型に分けられるが、結節型が最も多い。組織学的にはエドモンソンの分類が用いられており、I、II型に比べ、III、IV型では細胞悪性度が高く、脈管内発育が著明で、高率に転移をきたす。肝癌の発育形式では肺や骨などに血行転移をきたしやすいが、門脈を経由しての肝内転移をみることが多く(娘転移)予後に重大な影響を与えている。
原因は、WHOのHBウイルス汚染地区と一致し、肝癌では抗原陽性率が高いことから、HBウイルスが肝癌発生になんらかの影響を及ぼしていると考えられている。また、わが国の肝硬変は肝炎後性の乙型肝硬変が多く、肝硬変患者の1/3に肝癌を併発するといわれ、肝癌患者の60~80%に肝硬変を合併している。
 転移性肝癌とは、肝以外の臓器の悪性腫瘍が血行性(門脈、肝動脈)、リンパ行性、あるいは直接浸潤により肝に転移巣を生じたものをいう。


アセスメントの視点

 肝癌は、自覚症状が少なく、肝腫瘍が大きくなってから気づく場合が多く、周囲臓器に及んでいることもあり、一般的に予後不良である。肝臓の機能の低下や肝炎や肝硬変、閉塞黄疸、糖尿病などを合併していることが多く、代謝異常による低栄養状態や電解質の平衡が保たれにくい。また解毒作用が低下しやすく、凝固因子の不足により出血しやすい。好発年齢が40~60歳代に多く、とくに50歳代に多発していることや男性が女性の3~4倍多く発生している。


症状

 肝癌の症状は次の5つに分けられる
 1.無症状型
肝腫大や超音波検査で発見され、自覚症状の明かでないもの
 2.発熱型
38度以上の発熱をきたすもの
 3.疼痛型
右季肋部痛や肩甲骨下痛などの認められるもの
 4.急性腹症型
肝癌破裂によりショックや腹膜刺激症状を伴うもの
 5.潜伏型
全身衰弱で偶然にあるいは剖検により発見されるもの
 他覚的所見は肝硬変の合併が多いため、腹水、脾腫、腹壁静脈怒張などの肝硬変の症状を示すことが多い


検査

 肝切除術の術前検査は、肝腫瘍などの範囲、位置、性状などの局在診断と肝予備能および全身状態のチェックに大別される
 1.肝腫瘍などの診断法
超音波検査、X線CT、MRCT、血管造影、シンチグラム、ERCP、PTC、AFP・CEAなどの腫瘍マーカー
 2.一般肝機能検査
トランスアミナーゼ、胆道系酵素、ビリルビン、血清蛋白、ChE、膠質反応、血清脂質、凝固線溶系
 3.肝予備能検査
ICG試験、75gOGTT、ヘパプラスチンテスト
 4.全身状態のチェック


術前一般検査

 胸腹部X線撮影、心電図、肺機能検査、腎機能検査、一般血液検査、尿便検査
上部消化管検査
 食道静脈瘤、胃十二指腸潰瘍の検索


治療

 1.手術療法
 肝臓の切除量としては、正常肝の場合で約75%の肝切除が可能である。しかし、本邦の原発性肝癌の大部分をしめる肝細胞癌症例の約90%は肝硬変や慢性肝炎などの慢性肝疾患を合併しており、このような場合では肝予備能が低下しているため肝臓切除量は制約されることになる。すなわち、肝切除術式の決定にさいしては、まず肝予備能を正確に評価し切除可能な肝容量を推測したうえで最も適当な肝切除術式が選択される。
 2.肝動脈塞栓療法(TAE)
 3.化学療法


術後の経過と管理

 (注)1、3、6、7、9~11は「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」を参照

 1.疼痛の管理
 2.呼吸器系の管理
 肝硬変併発例ではアルブミン合成能の低下により腹水貯留とグロブリン低値も伴い、感染に対する抵抗力が低下している。また、肝切除は開胸・上腹部開腹が大半であり、ドレ-ンの留置や創部痛のため呼吸運動が抑制され、肺換気量が減少し無気肺の原因となる。低酸素血症は肝不全の誘因となるため術後の呼吸管理は重要である。肝予備能の高度低下例や広範囲肝切除例では術後にレスピレーターを使用して呼吸管理を行ったほうが肝不全の予防に有効である。
 3.循環器系の管理
 4.輸液・輸血の管理
 肝切除後の肝再生には、肝血流の維持、低酸素血症の防止、エネルギ-基質の供給が重要である。術後の輸液は糖質を混ぜた電解質輸液と分枝鎖アミノ酸高含有輸液を投与し、新鮮凍結血漿を投与する。新鮮凍結血漿や抗生物質の投与によってNa投与量が多くなるので、Na貯留傾向にある肝硬変併発例では、Naを含まない輸液製剤を用いる。低アルブミン血症に対してはアルブミン製剤を投与して膠質浸透圧を保ち、凝固因子などの補充を目的とした新鮮凍結血獎を投与する。輸液量は、軽度のdry sideに維持するように管理していく。
 5.栄養管理
 肝硬変併発例では、低栄養(低蛋白、低アルブミン血症)、糖代謝異常(耐糖能異常)、アミノ酸代謝異常(高アンモニア血症、肝性脳症)、血液凝固線溶系異常(出血傾向、DIC準備状態)、門脈圧亢進症(食道胃静脈瘤、脾機能亢進)、水・電解質異常(水・Na貯留、腹水)、免疫能低下を伴うことが多く、術前より異常を補正しておく必要がある。低栄養状態には、高カロリ-輸液、経腸(経口)栄養剤投与によって栄養補給を行うが、アミノ酸代謝異常を是正するために分枝鎖アミノ酸高含有のアミノ酸輸液製材や経腸栄養剤(アミノレバンEN、ヘパンEN、リ-バクト)の投与も行う。アルブミン製剤の投与によって低アルブミン血症の補正が必要なこともある。
 6.ドレーンの処置
 7.中心静脈栄養法(IVH)の管理
 8.経口摂取の開始
 胃管抜去後、腸蠕動が聴取され排ガスがあれば、まず水分から開始し4~5日で全粥とし、その後は高カロリーの肝庇護食を摂取させる。経口摂取開始による腸管の刺激や内服薬(ラクツロースなど)による下痢が起こる可能性もあるので観察を要する。
 9.精神的サポート
 10.清潔保持
 11.早期離床


術後合併症

 1.肺合併症
「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」を参照
 2.感染
 肝硬変併存例では免疫機能は低下しており、易感染性である。感染症は肝臓に負荷となり、エンドトキシン血症は肝障害を悪化させる。
 3.術後出血
 術後出血はほとんど48時間以内に起こる。肝切離断端などからの術後出血は、循環動態に異常をきたすような大量である場合には、再手術を考慮する。出血傾向のある肝硬変併存例ではドレ-ン挿入孔の腹壁からも出血をみることがあり、腹腔内出血との鑑別を要する。
 4.消化管出血
 肝切除により肝内門脈床が減少し、急性の門脈圧亢進状態とな消化管出血がおこりやすい。また、肝切除という大きな手術侵襲が加わり、疼痛、病状の不安、安静度からくる身体的苦痛、不眠などストレス性潰瘍がおこりやすい状況である。肝硬変併存の場合は、門脈圧亢進症や食道・胃静脈瘤が合併していることがあり、さらに高くなる。
 5.肝不全
 肝切除後は肝組織の挫滅により残存肝の肝機能低下をきたしやすい。過大な肝切除量や術中の出血、黄疸などにより肝不全を発症することがある。また、術後呼吸器合併症や上部消化管出血、感染などを契機に肝不全に陥ることもある。
 6.腎不全
 肝硬変併存例では、元々腎臓での水・Naの排泄障害が認められるが必ずしも循環血液量は多くなく、腹水を多量に認める例では容易に脱水から腎前性腎不全へと移行する。
 7.DIC
 肝硬変を併存することがDICの準備状態であると考えられ、肝切除という侵襲に何らかの術後合併症が加わると容易にDICへと進行する。
 8.胆汁瘻
 肝切離断端からの胆汁瘻は胆汁の流出障害がなければ数日で自然治癒するがドレナ-ジが十分に行われないと二次感染の危険性がある。




看護計画(術前)


Ⅰ.アセスメントの視点(術前)


 全身麻酔で手術が行われるため、全身状態の評価が必要である。高齢者も多いので既往症や機能の低下には十分注意する。
 肝臓癌は自覚症状の有無も経過も様々である。腹水や黄疸、消化管出血のある場合がある。経過も肝炎から肝硬変を経た場合もある。そのためこれまでの療養経過(生活態度)や自覚的苦痛の程度を知り、患者本人と家族を含めた看護が必要になる。
 肝硬変併存例では低栄養、糖代謝異常、アミノ酸代謝異常、血液凝固線溶系異常、門脈圧亢進症、水・電解質異常、免疫能低下などを伴うことが多く、これらの異常を術前にできるかぎり補正し、術後の合併症を予防することが大切である。
 <術前処置>
 1.栄養状態の改善
 低栄養状態の患者には高カロリ-輸液、経腸(経口)栄養剤投与によって栄養補給を行なうが、アミノ酸代謝異常を是正するために分枝鎖アミノ酸高含有のアミノ酸輸液製剤や経腸栄養剤の投与も行なう。アルブミン製剤の投与によって低アルブミン血症の補正が必要なこともある。
 2.肝庇護
 トランスアミナーゼの高値例では、安静や強力ミノファーゲンC、グルタチオン製剤投与などの肝庇護療法を行ない、低下を待って手術する。
 3.糖代謝の是正
 インスリン投与の必要例では、レギュラ-インスリンを投与し血糖をコントロ-ルしておく。
 4.水・電解質異常の是正
 腹水を有する例では、利尿剤投与、アルブミン製剤投与によって治療する。
 5.腸管内清掃
 腸管内細菌によるアンモニア、エンドトキシンの産生抑制のために、術前3日前よりポリミキシンBやカナマイシンなどの抗生物質、およびラクツロ-スの投与を行う。
 6.禁煙
 術後の低酸素血症は肝不全を招来する重大な因子となるため、術前の禁煙励行が必要となってくる
 7.食道・胃静脈瘤、胃・十二指腸潰瘍の治療
 術後の食道・胃静脈瘤破裂は致命的な合併症となりうるので、出血の危険性が大きい静脈瘤にたいしては、術前に硬化療法などで治療を行っておく。また、胃・十二指腸潰瘍もH2ブロッカ-などの投与で治療しておく。


Ⅱ.問題リスト(術前)

#1.疾患や手術に対する不安

#2.術後肺合併症の危険性

#3.家族の不安

 (注)#1~3については「全身麻酔を受ける患者の標準看護計画」を参照

#4.消化管出血
   [要因]・食道・胃静脈瘤の合併
       ・胃・十二指腸潰瘍の合併

#5.感染仲介の危険性
   [要因]・HBV、HCV陽性
       ・肝硬変による食道静脈瘤破裂の誘発


Ⅲ.看護目標(術前)

1. 疾患、手術に対する不安が軽減され手術に向けて精神的準備ができる
2. 腹部症状などの苦痛の軽減をはかり栄養状態が改善され、体力の消耗が最小限になる
3. 全身状態の評価により術後合併症を予測し、手術に対する身体的準備ができる
4. 家族の精神的慰安に努める


Ⅳ.看護問題(術前)

#1.疾患や手術に対する不安
#2.術後肺合併症の危険性
#3.家族の不安
 (注)#1~3については「全身麻酔を受ける患者の標準看護計画」を参照
#4.消化管出血による全身状態の悪化
   〔要因〕・食道・胃静脈瘤の合併
       ・胃・十二指腸潰瘍の合併

  &消化管出血をおこさないよう適切な処置をうけることができる
  $手術前日まで

O-1.バイタルサインチェック
  2.腹部症状観察
  3.吐血、下血の有無
  4.全身状態の観察

 <吐血・下血時の場合>

T-1.安静の保持
  2.嘔吐後冷水で含嗽させ、嘔気を誘発させない
  3.出血部位により適切な処置を行う
  4.体位変換、排泄介助時は腹圧をかけないように行う
  5.輸液、輸血の管理
  6.不潔になりやすいため、清潔を保ち不快感を与えない
  7.下血時は臀部を蒸しタオルで清拭

E-1.安静の必要性を説明し、処置により状態の改善がみられることを説明する
  2.吐血・下血その他異常時は、医師または看護婦に報告するよう説明する
#5.感染仲介の危険性
   〔要因〕・HBV、HCV陽性
       ・肝硬変による食道静脈瘤破裂の誘発

  &術前治療に参加できる
   感染症を知り、他に感染させない
   術前の治療により諸徴候が正常域に近づく
   栄養状態が改善(高蛋白、高カロリ-、高炭水化物、ビタミン類の摂取)する
  $手術2日前

O-1.各種機能検査の結果
  2.合併症の有無、程度
  3.合併症についての患者自身の理解内容と程度

T-1.術前治療の介助

E-1.感染症について指導し、他に感染させないようにする
  2.合併症についての指導をする
  3.術前検査、処置の必要性の説明をする
  4.患者に合併症、感染症の徴候、症状について説明し、異常が生じた場合には、ただちに医師、看護婦に報告するように指導する



看護計画(術後)


Ⅰ.アセスメントの視点(術後)


 肝硬変などを伴った肝切除術後は、肝不全や呼吸不全を中心とした多臓器不全に陥る危険度が高い。また、術直後の循環不全、低酸素血症、術後出血、消化管出血などから多臓器の合併症に発展することが多いため輸液管理を中心とした全身管理が重要となってくる。


Ⅱ.問題リスト(術後)

#1.肺合併症
   [要因]
・疼痛
・不適切な体位
・麻酔薬、鎮痛剤使用による咳嗽力、喀出力の低下
・脱水、補助呼吸による気道分泌物の粘調度の増加
・チューブ類挿入の刺激、違和感、存在感
・横隔膜下の炎症の波及
・横隔膜のミクロの損傷
・低アルブミン
・DIC
・血管透過性の亢進
・喫煙歴
・胸腔又は腹腔内における体液や空気の貯留


#2.上行感染
   〔要因〕
・術後の体力、抵抗力低下
・術後体液のアンバランス
・IVH、バルーンカテーテル他各種ドレーン挿入中(カテ-テル熱)
・胸水貯留
 ・腹水貯留
 ・胆汁瘻
 ・腫瘍
 ・免疫機能の低下
 ・長時間の手術(創の長時間開放)


#3.術後出血
   〔要因〕・血液凝固能の亢進により小血栓が多発し、続発的に線溶現象が亢進する
       ・肝切除時の一時的血流遮断、大量出血
       ・ドレーン、チューブによる物理的刺激

#4.循環不全(ショック)
   〔要因〕・多量の出血
       ・細胞外液の喪失

#5.肝不全
   〔要因〕
・肝組織の挫滅
・過量な肝切除
・肝切離面からの出血
・静脈瘤破裂による消化管出血   
・感染
・ショック(循環動態の不安定)
・低酸素血症
・糖の供給不足
・肝硬変の併存

#6.消化管出血
   〔要因〕・肝内門脈床の減少によるうっ血
       ・食道・胃静脈瘤の合併
       ・胃・十二指腸潰瘍の合併

#7.腎不全
   〔要因〕・腎臓でのNa・K排泄制限(肝硬変併存例)
       ・可逆的病変
       ・大量出血
       ・ショック
       ・敗血症

#8.DIC
   〔要因〕・合併症の併発
       ・ショック
       ・肝硬変併存

#9.腹水の貯留
   〔要因〕・循環障害
       ・肝門部または横隔膜周辺の拡張したリンパ管の損傷
       ・肝硬変の低蛋白による膠質浸透圧の低下
       ・術後肝不全

#10.胸水貯留
   〔要因〕・腹水の胸腔への移行
       ・肝硬変の低蛋白による膠質浸透圧の低下
       ・胸膜の感染による毛細血管の透過性の亢進
       ・リンパの流れの障害

#11.胆汁瘻
   [要因]・肝切離断端部の胆汁の流出障害
       ・ドレナ-ジ不良
       ・二次感染

#12.休息・睡眠の障害

#13.術後せん妄

#14.セルフケア不足

#15.家族の不安

 (注)12~15は「消化器系手術の術後管理の標準看護計画」を参照

#16.退院後の日常生活不安
   〔要因〕・手術侵襲による体調の変化
       ・ライフスタイルの変化
       ・社会的役割の変化
       ・体力の減退
       ・活動力の減退

肝硬変患者の標準看護計画

肝硬変患者の標準看護計画



肝硬変とは

 肝実質の破壊、炎症、線維増生による再生結節と小葉構造の改築の結果、肝臓は硬く、表面もごつごつしてくる。その結果、肝内血管を圧迫し血行動態に異常(門脈圧亢進、肝血流減少、肝内外短絡形成)を来し、さらに肝細胞の破壊が進み、肝細胞機能総量は減少する。

肝硬変とは、諸種の原因(主にウィルスとアルコール)で起こった進行性、不可逆性の慢性肝障害の終末像で食欲不振、黄疸、腹水の消長を繰り返しながら、最終的には肝不全、肝臓癌合併、消化管出血等で死亡する予後不良の疾患である。
その他の成因として自己免疫現象、薬物・肝臓毒によるもの、基礎疾患があって発症するうっ血性・胆汁性・代謝異常症によるものがある。


病期と症状

 臨床症状及び治療面より代償期と非代償期として分類する。

 1.代償期

代償期の初期は自覚症状がないのが普通である。進行すると易疲労感、腹部膨満感、皮膚の色素沈着、手掌紅斑、クモ状血管腫、腹壁静脈怒張などが出現する。

 2.非代償期

臨床上腹水の出現を認め、黄疸、浮腫、食道・胃静脈瘤、さらには肝性脳症に移行する危険をみる時期であり、入院治療を必要とする。

 3.肝不全-肝性脳症

肝機能が著明に障害されて、生体に重要な物質代謝が行われなくなった状態を肝不全と呼び、一般的には肝性昏睡や肝性脳症をきたした状態をいう。肝性脳症は、重症肝疾患に合併する一連の精神・神経の異常状態である。

(肝性脳症の病期分類)
1度 睡眠-覚醒リズムの逆転、多幸、抑うつ、だらしなさ
2度 指南力障害、異常行動、傾眠傾向、羽ばたき振戦
3度 興奮状態、せん妄状態、嗜眠、羽ばたき振戦
4度 昏睡(痛み刺激には反応する)
5度 深昏睡(痛み刺激には反応しない)

 4.肝不全の症状

1)黄疸
2)全身倦怠感
3)消化器症状
4)精神症状
5)神経症状
6)腹水
7)出血傾向
8)肝性脳症
9)発熱
10)乏尿・無尿

重症度の評価

・一般にアルコール性のものは、禁酒すれば予後は比較的よいが、ウィルス性のものは予後不良である。
・ child-Pughの重症度分類


検査・診断

・ 家族歴・肝炎歴・輸血歴・手術歴・飲酒歴の問診
・ 血液生化学検査、アルブミンの低下、ICG試験の停滞率、身体状態
・ 超音波検査、肝シンチ、腹部CT、腹腔鏡、肝生検による肉眼的形態及び組織像、選択的血管造影、胃内視鏡検査


治療

 現時点では根本的な治療はなく、残された機能をいかに維持し合併症を予防していくかが重要となる。肝血流量を減少させないよう安静、特に食後の充分な安静が必要である。また、過激な運動は避け、規則正しい生活と十分な睡眠が必要となる。

 1.代償期の場合

1)原因および増悪因子を除去(飲酒、感染、疲労、睡眠剤など)、肝庇護、再生促進を目的とした栄養補給を主体とした治療をする

 2.非代償期の場合

1)対症療法が主となる。安静臥床とする。
2)腹水に対しては、水分と塩分の制限、利尿剤の投与、アルブミン製剤の使用
3)高アンモニア血症改善に対しては、ラクツロースや特殊アミノ酸製剤の投与、抗生剤投与
4)食道静脈瘤に対しては、硬化療法や破裂時にはS-Bチューブ挿入による出血部位圧迫の方法がとられる




看護計画


Ⅰ.アセスメントの視点

 肝硬変は、肝の慢性疾患が最後にたどりつく不可逆的な進行性病変を伴うものであり、肝癌へ移行する率も高い。肝硬変は年々増加の傾向を示しており、とくに人生の成熟期、活動期といえる年齢層に多く、また男性に多い。初期には自覚症状を欠くこともあり、見過ごされがちであるが、しだいに黄疸、腹水、腹部膨満感などの症状が出現し増悪を繰り返しながら死に至ることもある。

 治療は主として食事、安静、薬物を中心とした保存的療法がとられる。そのため患者は生活上の制約と長期の療養を余儀なくされる。こうした肝硬変の疾患および治療の特性から、患者の行動レベルや自助レベルが低下し、自立心の退行、依存心の過剰な増大、心理的葛藤などをきたすことがある。

 代償期には「病気と仲良く付き合っていく」姿勢を、患者・家族ともども身につけるよう援助する。そのためには、患者の生活背景や労働条件(通勤時間・仕事の内容)などについての理解を深め、食事の摂り方や休養の方法などについて、適切なアドバイスを行い、定期受診を勧める。

 非代償期には、身体的苦痛、ボディイメ-ジの変化による苦痛の軽減をはかりつつ、悪化の防止と早期発見のための観察を行なう。特に、緊急的対応を要する肝性昏睡や食道静脈瘤破裂の徴候を速やかに察知し、医師に協力して適格な処置を行う。また、アルコール性の患者の場合によく見られるように、生活そのものが破綻している場合もある。社会的役割や家族関係に及ぼす影響も大きく現れた症状のみではなく、その患者の家族背景や生活状態に目を向け、その患者自身の闘病意欲を動機づけることが大切である。


Ⅱ.問題リスト

#1.肝機能低下に関連した全身倦怠感、食欲不振などの苦痛
#2.侵襲の大きい検査(肝生検、腹腔鏡、選択的血管造影)に対する不安
#3.血小板の減少による出血傾向
#4.黄疸に起因する掻痒感
#5.門脈圧亢進症、低アルブミン血症による腹部膨満感、腹水、浮腫
#6.食道静脈瘤があり、破裂の危険性
#7.肝性昏睡に移行する可能性
#8.寛解と増悪と入退院を繰り返し経過が長く不安がおおきい
#9.疾患の特性により長期の療養生活において食事療法が守られにくい
#10.セルフケア不足から退院後の生活指導が守れない
#11.ボディイメージの障害によって闘病意欲が脅かされやすい


Ⅲ.看護目標

1. 疾患と治療内容について理解でき、その時々の状態を受け入れて、治療の継続、内服、食生活にかかわる自己管理ができる。
2. 肝硬変に伴う黄疸、腹水、浮腫、肝性脳症、吐・下血等の症状の発現時は診察を受けることができる。
3. 2の症状を改善するための無理のないセルフコントロールが生活レベルで実行できる
4. 感染症、および合併症についての的確な予防行動がとれる。
5. 家族が患者の疾患について理解でき、日常の変化への対応、自己管理が充分できるよう心理面の援助への協力が得られる。


Ⅳ.看護計画

#1.肝機能低下に関連した全身倦怠感、食欲不振などの苦痛

  &肝機能低下による諸症状が改善する
   苦痛の強い時は報告でき、適切な日常生活の援助が受けられる
  $入院~肝機能改善まで

O-1.検査データの追視
  2.全身倦怠感、疲労感の有無
  3.言動、表情、動作、気力減退の有無
  4.食摂取量、水分の摂取量と排泄量のバランス
  5.体重の変化

T-1.安静度が制限されればその保持につとめ、身の回りの介助を行なう
  2.苦痛が強い時は、患者の好む安楽な体位をとってもらう
  3.臥床下での気分転換を図る方法を患者と共に考える
  4.日常生活のめりはりをつけ、変化のあるような配慮をする
  5.1回摂取量を少なくして回数を増やし、全体摂取量を増やすように工夫する
  6.好みと栄養上のニードを満たすために必要に応じ、塩分摂取には注意しながら補
    食の検討をする
  7.ゆっくり落ち着いて食事ができるよう環境への配慮を行なう

E-1.体力の消耗を最少にし、肝への血流量を増加させるための安静の必要性をわかり
    やすく説明する
  2.食後1~2時間の安静を励行する
  3.高蛋白、高カロリー、高ビタミン、ミネラル、を摂取する必要性を説明する(肝
    性脳症を伴う場合は高蛋白食は禁忌)

#2.侵襲の大きい検査(肝生検、腹腔鏡、選択的血管造影)に対する不安

  &検査の必要性が理解でき、不安や苦痛が最少限となる
  $検査前~終了まで

O-1.言葉による表現、表情、動作、不安の程度
  2.食欲、食摂取状況
  3.身体症状の有無と程度
  4.睡眠状況
  5.性格
  6.検査、治療に対する参加度

T-1.検査前
    1)患者が検査に対して大体のイメ-ジがつかめるよう説明する
    2)予測される苦痛と予防対策について共に考える
    3)床上排泄訓練
    4)排便がなければ浣腸施行
    5)検査前絶食
  2.検査後
    1)バイタルサイン、皮下気腫、腹部症状、出血の有無
    2)安静;体動不可による苦痛の緩和(エアマット、湿布、インテバン軟膏、バス
     タオル類)
    3)食事;食べやすい形態、嗜好を考慮
    4)疼痛;鎮痛剤の与薬
    5)排泄の介助
    6)創部の観察

#3.血小板の減少による出血傾向

  &出血が予防でき、出血時は速やかに止血できる
  $データの悪化~データの改善まで

O-1.皮下出血(点状出血、斑状出血)
  2.粘膜出血(口腔、歯肉、鼻腔、肛門)
  3.検査データのチェック
  4.尿、便の潜血反応の有無
  5.食道静脈瘤、胃潰瘍の存在、程度

T-1.つまずいたり転倒したりするのを予防するために、ベッド周囲の整理、危険物を周囲に置かない
  2.採血、注射後は圧迫を十分にし、止血を確認する
  3.駆血帯の締め過ぎを避け、うっ血を防ぐ
  4.便の性状、肛門周囲粘膜の観察

E-1.歯ブラシは柔らかいものを使用し、強くこすらないように説明する
  2.排便時力み過ぎたり、鼻は強くかまないように説明する
  3.髭剃り時は電気カミソリを使用するよう指導する
  4.爪を切る時は深爪しないよう指導する
  5.身体を洗う時は、硬いタオルでこすらないよう指導する
  6.血液の付着した物品の処理を看護婦に依頼できるよう指導する

#4.黄疸に起因する掻痒感

  &適切なケアを受けることによりかゆみが軽減することができる
  $データの悪化による症状出現~症状改善まで

O-1.皮膚の黄染、眼球強膜の黄染
  2.皮膚の状態(掻傷、発疹、発汗、汚れ方)
  3.掻痒感の発症時間、部位、程度
  4.尿の黄染、便の性状の変化の有無
  5.不眠の有無、精神状態
  6.検査データのチェック

T-1.皮膚粘膜の清潔に努め患者にあった保清を行う
   ・清拭
   ・入浴の許可があれば、かけ湯を行なう(入浴後の疲労感が残らないように、短時間で行なうよう指導する)
  2.発汗が多い時は乾布清拭を行なう
  3.掻痒部位に冷罨法を施行したり、涼しい環境を作る
  4.気分転換となる活動への参加を促す
  5.医師と相談し、掻痒感を軽減させるための内服、注射、軟膏の使用を行ない効果の有無を確認する
  6.夜間不眠時は、眠前に清拭をしたり眠剤の与薬をする
  7.不安を助長させるような言動は慎む

E-1.掻傷を作らないように爪を短く切り、掻くより叩くよう指導する。手指の清潔に努める。
    必要時、綿の手袋、軍手を使用する
  2.肌着は吸収性に富む通気性のよい柔らかい木綿等の素材で、ゆったりとしたものにする
  3.室内の温度、湿度の調整を行なう
  4.厚着して身体を温めると掻痒感が増強するので、厚着をしないように指導する
  5.掻痒感増強時および不眠時は、報告するよう説明する

#5.門脈圧亢進症、低アルブミン血症による腹部膨満感、腹
水、浮腫

  &水分と電解質のバランスが保たれ、アンバランスによっておこる苦痛が軽減でき、安楽に活動ができる
  $検査データの変動~肝硬変を有する期間

O-1.腹部膨満、腹部緊満、腹水の程度、浮腫の程度
  2.腹痛の部位、程度、性質、持続時間
  3.呼吸困難の程度、呼吸数
  4.水分、尿量、電解質のバランスのチェック、利尿剤の効果、体重・腹囲の推移
  5.皮膚の状態、口渇
  6.排便、排ガスの有無
  7.睡眠障害の有無
  8.苦痛症状に対する患者の表現方法、態度
  9.検査データのチェック
T-1.安静臥床させ、腹部膨満による呼吸運動を妨げないように、また腹圧をかけないで、腹壁の緊張を取る体位の工夫をする(下肢を曲げる、ファーラー位またはセミファーラー位、サイドテーブルの利用、
    掛け物の調整など)
  2.衣服はゆったりしたものを着用し、下着や靴下のゴムはゆるめの物を使用する。
    履物にも注意する
  3.医師の指示による利尿剤を確実に用いるとともに、その効果の判定を行なう
  4.必要時、腹水穿刺の介助を行ない、穿刺後の液漏れの有無、ショックの出現に注意する
  5.適宜清拭を行ない皮膚の乾燥、損傷の有無に留意し、皮膚の清潔に努める
  6.指示により塩分制限を行なう
  7.苦痛は我慢しないでいつでも看護婦を呼ぶように話す
  8.苦痛における緩和を図るため医師と相談する

E-1.食後の安静、運動制限、入浴制限の必要性を説明する
  2.飲水制限のある場合、その必要性を説明する。制限範囲内で守れるよう指導する
  3.蓄尿の必要性を説明し、確実に畜尿するように指導する
  4.塩分制限の必要性を説明し、守れるように指導する
  5.治療食が嗜好に合わない時は、補食の検討ができることを説明し看護婦に話すように指導する
  6.腸内ガスの発生を促す食物と飲み物、一度の大食を避けるように指導し、横隔膜での余分な圧迫と鼓腸を予防する
  7.体重・腹囲測定の必要性を説明し、確実に行なえるようにする
  8.気分転換を図ったり、落ち着いた静かな環境を整える

#6.食道静脈瘤があり、破裂の危険性

  &破裂の予防ができ、異常時は適切な処置が受けられる
  $食道静脈瘤出現~肝硬変を有する期間

O-1.食道静脈瘤、胃潰瘍の存在、程度、破裂の危険性(胃内視鏡検査の結果)
  2.吐血、下血の既往の有無
  3.尿、便の潜血反応の有無
  4.腹痛、悪心、嘔吐、胸部不快感の症状の有無
  5.バイタルサインのチェック
  6.検査データのチェック
  7.アルコール歴、喫煙歴、嗜好品

T-1.患者の理解力に応じて症状を説明し、必要以上に恐怖心や不安を抱かせない
  2.心身の安静および不安の除去
    1)患者の訴えを十分に聞き、苦痛や精神的負担を少なくして励まし、勇気づける
    2)神経を高ぶらせるような態度、行為は避け、誠意を持って接し、信頼感を深めるようコミュニケーションを図る
  3.便通を整える。必要に応じて医師の指示で下剤の与薬
  4.咀嚼を十分に行ない、固形物の嚥下を避けるようにする(食事形態の考慮)
  5.食道静脈瘤からの出血の症状や徴候が出現した場合
    1)誤嚥のリスクを減らすために患者を側臥位にする
    2)絶飲、絶食とする
    3)指示に従って、酸素療法を行なう
    4)バイタルサインのチェック
    5)S・Bチューブ挿入の介助を行なう
    6)循環血液量減少におけるショックの症状と徴候を観察し報告する
    7)患者と家族に対して情動的支援をする
    8)肝性脳症を示す症状や徴候を観察し報告する

E-1.食事は極端に熱いもの、硬いもの、角ばったものは避けるよう説明する
  2.急激な体重の増加や減少はよくないことを説明する
  3.排便のコントロールを十分に行ない、便の性状、形態の観察の必要性を説明する
  4.尿の性状、一日の大まかな尿量を知ることの必要性を説明する
  5.排便時の努責、強い咳込みなどによる腹腔内圧の上昇をきたすような行動は避けるように指導する
  6.禁煙の必要性を説明する
  7.異常だと感じた時は、些細なことでもすぐに看護婦に知らせるよう指導する

#7.肝性昏睡に移行する可能性

  &手指振戦、排便、異常等の悪化徴候のある時は報告する
  $データの悪化~改善まで

O-1.意識障害の程度(気分・行動の変化、書字の変化、記憶力・集中力・注意力の変化、見当識障害の有無、羽ばたき振戦の有無、性格の変化の有無)
  2.睡眠リズムの変化
  3.水分、電解質のバランス
  4.排便状態
  5.消化管出血の有無
  6.バイタルサインのチェック
  7.検査データのチェック

T-1.排便習慣を促し、排便のコントロールを図る
  2.高アンモニア血症またはその徴候があれば蛋白質制限、ラクツロースの内服、注腸を医師の指示により行う
  3.水分出納、電解質のバランス管理
  4.意識レベル、体重の推移、一般状態の観察を行う
  5.バイタルサインのチェック
  6.危険を防止するため、ベッド柵の使用や必要時抑制帯を使用、監視を充分行う。
    不穏時医師と相談し鎮静剤を使用する
  7.気道を確保し、窒息予防をする
  8.十分な時間をかけてコミュケーションを図る
  9.皮膚粘膜の清潔保護に留意し、口腔内の清潔にも注意する。失禁、バルーンカテーテルの留置や下痢による尿路感染防止のため尿道口の消毒、陰部洗浄を行う

E-1.気分不快がある時は直ちに看護婦に報告するよう説明する
  2.昏睡憎悪因子について説明する
  3.肝臓の代謝負担を軽減するために感染を予防し、安静を守ることの重要性を説明する
  4.患者をとりまく人々に患者の状態について説明し、支えになってくれるように依頼する
  5.知的・感情的変化は肝機能が改善すればよくなってくることを説明する

#8.寛解と増悪と入退院を繰り返し経過が長く不安が大きい

  &肝硬変症に起因する生活スタイル、社会的役割の変化によって起こる感情や、悲嘆の感情が表出でき、セルフケア活動と治療に参加することができる
  $肝障害の出現~肝硬変を有する期間

O-1.患者の言葉による表現、表情、動作、焦燥感の有無
  2.睡眠状態
  3.病識(肝硬変症についての医師からの説明と受け止め方)
  4.自己管理に必要な知識の量、理解度、意欲
  5.治療、検査に対する参加度、回復への期待度
  6.サポートシステム
  7.社会的役割の変化、患者を取り巻く人間関係
  8.以前の対処方法

T-1.頻回に訪室し、患者とのコミュニケーションを多くもち、感情表出を促し受容する   
  2.悲嘆を克服する過程に必要な時間を十分もてるように余裕をもってかかわる
  3.情報を求められた場合、的確に答えられるようにし、医師との連携を密にし患者自らが病気を受け入れられるよう援助する
  4.いつでも相談にのる姿勢を示し、キーパソン、家族、友人との連携を図りつつサポートシステムを確立する
  5.悲嘆が長引いたり、退行するようであれば医師に相談する
  6.不眠時、医師の指示により睡眠剤の与薬を行なう

E-1.不安なことは何でも看護婦に伝えるよう説明する
  2.肝硬変悪化予防のための日常生活の管理の必要性をどの程度理解しているか確認し、不足点を指導する
  3.現実の変化と変化に対する望ましい対応の在り方について理解を促し、現実の自己のありようを受容できるように援助する
  4.肝硬変の慢性疾患の特性として、この過程が繰り返されるかもしれないことが受容できるよう援助する
  5.病気の経過と治療の効果に対して現実的な望みをもつように援助する

#9.疾患の特性により、長期の療養生活において食事療法が守られにくい

  &正しい食事療法の内容とその理由について理解し実践できる
  $肝障害の出現~肝硬変を有する期間

O-1.食事への関心、理解度
  2.栄養状態、体重の変化
  3.家族のサポート体制

T-1.食生活習慣、生活行動サイクルを知る
  2.好みと栄養上のニーズを満たすための可能な範囲を検討する

E-1.治療食は肝臓の治癒を促進し、肝障害の進行のリスクを軽減することを指導する
  2.栄養指導を行なう
    1)高蛋白、高ビタミン、高カロリーをバランスよく摂る(アンモニアの推移、糖尿病、腎障害など有すれば別メニューとなる)
    2)3食を規則正しく摂取する
    3)塩分を多く含む物、加工製品は避け、うす味とする
    4)標準体重を維持し肥満にならないようにする
    5)サポート者と共に栄養士から食事指導をうける
  3.食後1時間程度の安静が保たれるよう指導する
  4.食道静脈瘤がある場合
    1)食事はよく噛み、ゆっくりと食べる
    2)素材の粗い物、固いもの、熱すぎるものは避ける
    3)香辛料の強い物、酸っぱい物、カフェインを含んだ物・飲み物を避ける
  5.禁酒の徹底を指導する
    1)飲酒によって悪化することを理解させる
    2)サポート者、家族、患者を取り巻く人々の協力を得る

#10.セルフケア不足から退院後の生活指導が守れない

  &身体的制約、治療による活動制限等の範囲内でセルフケア活動が行なえ、生活管理ができる
  $肝障害出現~肝硬変を有する期間

O-1.病気への理解度、関心
  2.セルフケアへの意欲、自立度
  3.指導内容への理解度
  4.体調の変化に応じた対処能力

T-1.患者が理解できる用語で肝硬変について説明する。病気は慢性疾患であり、合併症の発現を遅らせたり、予防するためには治療を忠実に守ることが大切であることを十分に説明する
  2.病気に対して誤って理解していることを明らかにし、指導する
  3.治療計画に参加するよう指導する
  4.ライフスタイルに治療を組み込むための方法を見い出せるように援助する。ライフスタイルを完全にかえるのでなく、ライフスタイルの修正に焦点をあてる
  5.説明や指導の場合にサポート者、家族を参加させ、支援するよう指導する
  6.患者自身が可能な限り多くのケアを継続、実施していくことの重要性を強調する

E-1.治療が中断すると必ず悪化することを理解させ、自己診断で中断しないよう指導する
  2.定期受診の必要性を指導する
  3.薬物療法の必要性を理解させ、正しい服用方法と自己管理を指導する
  4.細かな変化に対して自己判断せず、受診行動がとれるよう指導する

#11.ボディイメージの障害によって闘病意欲が脅かされやすい

  &外観の変化、ライフスタイル、役割の変化などを受容することができ、闘病意欲が維持できる可能な限りの自立を獲得できる
  $外観の変化の発現後~肝硬変を有する期間

O-1.自己について語るときの表情、動作
  2.自己についての表現(自己卑下、不満、自己嫌悪の感情、自責、過去へのこだわりの訴え、自己の評価)
  3.無力感、劣等感、敗北感、挫折感、失望感、孤独感などの存在
  4.外見上の変化、社会的役割、ライフスタイルの変化に対する受容度
  5.価値観、生活目標、生きがい
  6.疾患への理解度

T-1.障害に対し過去の有効な対処法を見い出し、役立てるよう援助する
  2.患者が体験した変化に対して、うまく適応していると思われる行動を観察し支援する
  3.他者へのセルフケア、ニードの依存を行ないながらも許可され、耐えられる範囲内で新しい生活基盤が考えられるよう支援する
  4.患者の表現に耳を傾け、必要な情報を与えることで他者との連携がうまくいくように援助する
  5.家族やサポート者とのコミュニケーションを円滑にし、必要な情報の提供と患者との関係がうまくいくように援助する
  6.社会的活動に興味をもち参加することを奨励する。また患者ができる可能な趣味、活動を共にみつけるようにする

E-1.外見上の変化は治療を続けることで、部分的に回復の可能性や軽減することがあることを説明する
  2.可能な限りの自立を維持し、実施できる方法を指導する
  3.指示された活動制限内で、できる限りのセルフケアを行なうようにすすめ、患者をとりまく人々にも患者が自尊心を取り戻し、自立していけるような働きかけを指導する

肝癌患者の標準看護計画

肝癌患者の標準看護計画


肝癌とは

 肝癌は肝臓自体から発生した原発性肝癌と、他の臓器に発生し血管やリンパ管を通じて肝臓に転移した転移性肝癌に分類される。原発性肝癌のうちでは、肝臓の最も重要な働きをする肝細胞に由来する肝細胞癌が90%以上をしめる。そして、肝臓から分泌される胆汁を輸送する胆管の上皮細胞に由来する胆管細胞癌が数%みられる。小児の肝癌として胚芽腫がある。良性の腫瘍で最も多いのが肝血管腫である。肝細胞癌は肝炎ウイルスの感染が90%以上(B型肝炎ウイルス20%弱、C型肝炎ウイルス70%強)を占め、肝細胞癌発生に重要な役割を担っている。また、アルコ-ルや喫煙も癌発生に関与していると考えられる。肝細胞癌は多中心性発生することと血管侵襲により、肝内転移しやすく、再発率が極めて高く、多発例が多い。肝細胞癌の殆どは肝硬変や慢性肝炎を合併しており、肝硬変から高率に肝細胞癌が発生することが知られている。ウイルス性肝炎では、肝硬変への進展を阻止する事が重要である。


アセスメントの視点

 肝癌患者の多くは、慢性の肝障害で長い療養生活を経て、肝硬変から肝癌の状態に移行する。その経過中に早期に肝癌が発見されることも多く、定期的な検査と治療が必要である。そのために入退院を繰り返さざるを得ず、その療養中に、生活活動範囲はしだいに制限され、仕事や病気自体にストレスを感じていることも考えられる。しかし、無症状であるがために、定期受診が疎かとなり、末期の肝癌の症状が出て、初めて分かる例もある。肝癌と診断されてからの経過が比較的長く、これまでの経過の流れから、血管腫と説明されることが多い。したがって、長期にわたる闘病生活を支援し、肝庇護を含めた生活が送れるよう援助しなければならない。

症状

 慢性肝炎や肝硬変の経過中、早い時期に比較的小さな腫瘤として発見されることが多い。従って早期には肝硬変と変わりなく、特別な症状は見られないことが多い。しかし、末期では以下のような症状がみられる。

1.悪液質による食欲不振、体重減少、全身のだるさ
2.癌が大きくなることにより肝臓の腫れ、腹部膨満、腹痛、発熱、黄疸
3.癌が進行した場合、癌の破裂により激しい腹痛、急激な血性腹水貯留
4.食道静脈瘤の破裂による吐血、下血
5.肝不全の症状

検査

一般肝機能検査
腫瘍マ-カ-
腹部超音波検査
CTスキャン
MRI
血管造影
肝生検

治療

 1.外科的治療
 治療法の第一は根治の期待できる外科的治療といえる。特に早期の癌は切除できる例が増加している。多発性病変や肝硬変の進んでいる症例は手術療法は困難である。
 2.内科的治療
 肝予備能が低下している・多発病変がある等手術適応が無い場合、直径3cm以下の腫瘍、手術前の治療として内科的治療を行う。
 ・経皮的エタノ-ル注入療法(PEIT)
 ・経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)
 ・肝動脈塞栓術(TAE)
 ・化学療法



看護計画


Ⅰ.アセスメントの視点(診断確定までから治療までの時期)

 肝癌の早期では無症状であり、殆どはエコ-、CTスキャンなど非侵襲的な検査で発見される。しかし、治療方法の選択にあたっては、血管造影、腫瘍生検などの侵襲の大きい検査が必要となる。そのため、検査の必要性を十分理解し、納得して検査が受けられるように配慮が必要であり、患者の安全、苦痛の緩和に努めなければならない。また、長期にわたる治療は、一定期間をおいて定期的に繰り返され、更に、長期にわたることが多い。そのため、身体的苦痛、精神的苦痛が大きい。治療に伴う合併症、副作用、身体機能の低下、肝機能の低下をまねく。治療の必要性を理解し、納得して治療が受けられるよう、十分な観察を行いながら、身体的苦痛を最小限にし、精神的サポ-トも行っていく必要がある。

Ⅱ.問題リスト(診断確定までから治療までの時期)

#1.検査や疾患についての不安
#2.検査の侵襲やその後の安静による身体的苦痛
#3.肝動脈塞栓術による、副作用
#4.肝内エタノ-ル注入療法またはマイクロ波凝固療法による副作用
#5.肝内に抗癌剤を注入することによる副作用

Ⅲ.看護目標(診断確定までから治療までの時期)

1. 検査、疾患に対する不安が軽減され、精神的に落ちついて検査が受けられる。
2. 検査に伴う身体的苦痛が軽減できる。
3. 正確な検査結果が得られるよう、患者の協力が得られる。
4. 疾患の治療内容について理解でき、治療が継続できる
5. 黄疸、腹水、肝性脳症、吐血、下血などの症状の発現時には、医師に報告し診察を受けることができる
6. 感染症および合併症についての的確な予防行動がとれる

Ⅳ.看護問題(診断確定までから治療までの時期)

#1.検査や疾患についての不安
  &検査の必要性が分かり、納得して検査が受けられる
  $検査直前まで


O-1.入院への適応状況
  2.病状の受け止め、病識
  3.性格
  4.理解力
  5.食欲、食事摂取状況
  6.身体症状の有無、程度
  7.睡眠状況
  8.サポ-ト状況、家族背景
  9.医療者との信頼関係


T-1.検査の必要性、方法を分かりやすく説明して協力を得る
  2.検査の結果について、医師から十分説明が受けることができるよう配慮する
  3.家族の支援が得られるよう、必要時参加を求める
  4.不安が表出できるよう以下のケアをする
    1).患者や家族の訴えをよく聴き、受容的態度で接する
    2).不安が表出できるよう患者や家族の信頼関係をつくる
    3).疾患に対する不安は、医師から十分説明が受けられるようにする
    4).静かで休息の取れる環境をつくる

E-1.医師の説明で理解不足の内容があれば追加説明し、納得し検査が受けられるようにする
  2.不安な状態を表出してもいいことを伝え、不明なところは質問できるよう促す
  3.検査中であっても、苦痛あれば表出してもいいことを伝える

#2.検査の侵襲やその後の安静による身体的苦痛
  &予測される苦痛が表現でき、予防的な対処方法が考えられる
   苦痛出現時は医療者に報告できる
  $検査終了まで

O-1.痛みの部位、性質
  2.腰痛の有無、年齢、体型、既往疾患
  3.バイタルサイン

T-1.予測される苦痛に対して、事前に予防対策を共に考える
    腰痛に対しエア-マットの使用、消炎鎮痛剤の塗布、タオルなどの対策
  2.腰痛出現時、腰部マッサ-ジ、医師指示による鎮痛剤与薬
  3.可能な範囲内での安楽な体位を工夫する
  4.言葉かけによりリラックスできるよう働きかける
  5.床上排泄が困難な場合は導尿、又はバルンカテ-テル留置する
  6.安静中に食べやすい食事形態にする

E-1.痛みや苦痛がある場合、医師、看護婦に報告する

#3.肝動脈内塞栓術による副作用
  &自覚症状出現時には、医師または看護婦に報告でき、適切な処置が受けられる
  $治療後1週間

O-1.治療後のバイタルサインのチェック、穿刺部の出血、痛み、下肢の循環(治療直後、2時間後、安静解除時、12時間後)38℃以上の発熱、繰り返す嘔吐、強い痛みがある場合は医師に報告し対処する
  2.約1週間の熱型の観察

T-1.翌日ガ-ゼ交換し、創部の観察をする(出血の有無、穿刺部の観察、血腫の有無)3日後ガ-ゼ交換(出血、浸出液、炎症などがないか創部の回復状態をみる)
  2.清潔:清拭3日目から異常がなければ入浴開始
  3.翌日、放射線科の医師と共に、圧迫帯を除去する

E-1.医師より、TAEについて十分な説明をしてもらう
  2.治療前の絶飲食、治療後の安静について説明をする
  3.安静中の安楽な床上排泄について、本人と共に話し合う

#4.肝内エタノ-ル注入療法またはマイクロ波凝固療法による副作用
  &自覚症状出現時には医師または看護婦に報告でき、適切な処置が受けられる
  $治療後1週間

O-1.治療後のバイタルサインのチェック、穿刺部の出血、痛み、胃部症状の観察(治療直後、2時間後、6時間後、12時間後)38℃以上の発熱、繰り返す嘔吐、強い痛みがある場合は医師に報告し対処する
  2.腹腔内出血、気胸の危険性も高い為、術中術後患者の訴えに注意し、頻回に観察を行う
  3.約1週間の熱型観察

T-1.翌日ガ-ゼ交換し、創の観察をする
  2.3日後ガ-ゼ交換し、異常がなければ、入浴開始
  3.6時間後、2研医師の診察を受ける(PMCTは6時間後と翌朝)

E-1.医師よりPEIT(またはPMCT)について十分な説明をしてもらう
  2.治療前の絶飲食、治療後の安静について説明をする
  3.治療前に安静中の安楽な床上排泄について患者とともに話し合う

#5.肝内に抗癌剤を注入することによる副作用
  &自覚症状出現時は、医師または看護婦に報告でき適切な処置が受けられる
  $治療終了まで

O-1.バイタルサイン
  2.in-outのチェック
  3.嘔気、嘔吐の有無と程度
  4.食摂取状況、体重の推移
  5.検査データ(血液デ-タ一般、肝データ)
  6.動注チューブ挿入部の皮膚の状況

T-1.熱発時、速やかに対処できるよう整えておく
  2.注射、点滴の管理
  3.患者の好む食事形態の工夫
  4.易感染状態になったら準滅菌扱いとし、感染に留意する
  5.体調に合わせて保清の援助を行う
  6.動注チューブ挿入部のガ-ゼ交換(1週間に1回)、フラッシュ

E-1.治療にあたり、副作用の十分な説明を受けられるよう配慮
  2.苦痛症状出現時は、医師または看護婦に報告できる
  3.感染予防行動について説明する
   1)人ごみを避ける
   2)手洗い
   3)含嗽


看護計画


Ⅰ.アセスメントの視点(タ-ミナル期)

 肝癌患者の多くは長い療養を経て肝癌と診断され、繰り返し治療を行う過程で、徐々に癌の増大と背景肝の機能低下をきたし、肝不全状態に陥る。患者は病名を血管腫と説明されていることが多く、良くならない病状に不安と焦りの気持ちを抱きやすい。また、肝癌の増大による痛みや出血、腹水貯留、黄疸、肝性脳症などの苦痛を伴う状態で終末期を迎えなければならない。死を意識しながら苦痛を抱える患者と家族に対し、よりよい人間関係を築きながら、種々の苦痛症状のコントロ-ルに努め、出来る限り安楽な日々が送れるように働きかけなければならない。

Ⅱ.問題リスト(タ-ミナル期)

#1.食欲不振、腹満感、意識レベルの低下により栄養状態の低下
#2.肝機能低下による出血傾向、食道静脈瘤による消化管出血
#3.活動力の低下、腹水貯留による便秘
#4.病名、予後に対する不安
#5.黄疸に関連する掻痒感
#6.腹水貯留による呼吸困難、全身倦怠感、腹部膨満感、癌そのものによる痛み
#7.肝性昏睡に陥る可能性

Ⅲ.看護目標(タ-ミナル期)

1. 栄養状態が保たれる
2. 出血傾向を観察しつつ、異常時に報告できる。出血を予防する行動がとれる
3. 規則正しい便通がある
4. 不安を口に出して表現でき、精神的に安定した状態で闘病生活が送れる
5. 痒みが軽減し、安楽に過ごせる
6. 苦痛が緩和され、安楽に過ごせる

Ⅳ.看護問題(タ-ミナル期)

#1.食欲不振、腹満感、意識レベルの低下により栄養状態の低下
  &栄養状態が保たれる
  $退院まで

O-1.食欲、食摂取量の観察
  2.体重の推移
  3.嗜好物の内容、食事状況
  4.検査デ-タ(T-P T-choなど)

T-1.食事の温度を適温にし、食べやすい工夫をする
  2.食事の時間や回数を患者に合わせるよう考慮する
  3.経口摂取不十分な場合、医師の指示のもと輸液を行う
  4.制限内で、患者の嗜好に応じた食品が摂取できるよう考慮する

E-1.制限の必要性を説明し、家族とともに協力を得る

#2.肝機能低下による出血傾向、食道静脈瘤による消化管出血
O-1.胃部症状、嘔気等の観察
  2.皮下出血、歯肉出血、鼻出血、貧血症状の観察
  3.尿、便の性状、便潜血
  4.内視鏡による食道静脈瘤の程度の観察
  5.検査デ-タのチェック(Hb RBC HPt Pltなど)

T-1.採血、抜針後の止血を十分に行う
  2.硬い食品、刺激性の強い食品は避ける
  3.便通の調節に努める
  4.緊急時に対応できる準備をしておく
  5.食道静脈瘤破裂時は速やかに対処する

E-1.歯ブラシは柔らかいものを使用し、強く擦らないように指導する
  2.鼻出血、歯肉出血、便の性状の変化や異常に気づいたら報告するよう説明する

#3.活動力の低下、腹水貯留による便秘
  &規則正しい便通がある
  $退院まで

O-1.便の性状(回数、色、硬さ)
  2.腹部症状、痔の有無

T-1.患者の状態を考慮しながら、坐薬、浣腸、排気を行う
  2.患者の状態に合わせてポ-タブルトイレ、便器、おむつの使用を考慮

E-1.便の性状、回数など、異常に気づいたら報告するよう説明

#4.病名、予後に対する不安
  &不安を口に出して表現でき、精神的に安定した状態で闘病生活が送れる
  $退院まで

O-1.患者の言動、表情
  2.病名に対する理解度
  3.精神状態
  4.家族の精神状態、サポ-ト状況

T-1.医師と頻回にカンファレンスを持ち、一貫した態度で接する
  2.患者、家族とコミュニケ-ションを多く持ち、どんな気持ちでいるか把握する
  3.訪室を多くし信頼関係をつくる
  4.患者、家族が自由に訴えられるよう雰囲気作り

E-1.医師より検査、治療の目的、必要性を十分説明してもらい協力を得る
  2.心配なことは何でも話すよう説明

#5.黄疸に関連する掻痒感
  &適切なケアを受けることによりかゆみが軽減する
  $かゆみが消失するまで

O-1.皮膚の状態、眼球の黄染、かゆみの程度
  2.尿の色調、白色便の有無
  3.検査デ-タのチェック(ビリルビン値)

T-1.患者に合った保清(入浴、シャワ-浴、清拭)
  2.発汗が多いときは乾布清拭を行う
  3.掻痒感がある時はよもぎ清拭(水2リットルに対しよもぎ50グラムを20分間煮だす)をしたり、効果のないときは医師の指示に基づき、内服、注射、軟膏を使用

E-1.下着は肌を刺激しない綿を含むものを使用する
  2.爪は短く切っておく
  3.掻痒感増強時、および不眠時は報告するよう説明

#6.肝細胞癌そのものによる痛み、腹水貯留による呼吸困難、全身倦怠感、腹部膨満感などの苦痛
  &苦痛が緩和され、安楽に過ごせる
  $症状消失まで

O-1.倦怠感、腹部膨満感、腹痛の程度
  2.in-outのチェック、浮腫の程度、利尿剤の効果
  3.呼吸状態、腹部症状
  4.腹囲、体重の推移
  5.検査デ-タのチェック

T-1.安楽な体位を工夫し、適宜体位変換を行う(体交枕、安楽枕の使用、ギャッチアップ)

急性呼吸不全患者の標準看護計画

急性呼吸不全患者の標準看護計画


呼吸不全とは

 原因のいかんを問わず動脈血ガスが著しい異常値を示し、そのため生体が正常な機能を維持できなくなった状態と定義されている。呼吸は延髄にある呼吸中枢からの司令が脊髄、末梢神経、神経筋接合部をへて呼吸筋に伝えられ、胸郭が肺を動かすポンプ機能を発揮し、気道の通気性が保たれ、効果器である肺が機能してはじめて成立する。このシステムのどこかに破綻がおこりガス交換ができなくなるのが呼吸不全である。呼吸不全の診断基準は、厚生省特定疾患「呼吸不全」調査研究班によると、室内気吸入時PaO2が60mmHg以下である。PaCO2が45mmHgを越えないものを 型(低酸素血症型)、45mmHgを越えるものを 型(肺胞低換気型と混合型)と分類する。急性呼吸不全は何らかの原因によって呼吸器系の機能が急速に損傷を受け、生体が防御機構を立て直すいとまもなくエネルギー代謝の危機に陥る状態であり、生命の危機を伴う場合がある。

呼吸不全の原因疾患には以下のようなものがある。

 1.呼吸中枢の障害
脳血管障害、薬物中毒、代謝障害など

 2.脊髄、末梢神経、呼吸筋の障害
高位頸髄損傷、重症筋無力症など

 3.胸郭および胸膜の障害
肋骨外傷、気胸、血胸

 4.気道、肺の障害
上気道の炎症、浮腫、異物、腫瘍など肺炎、喘息、肺挫傷、肺水腫、ARDS

 5.肺血流障害
肺塞栓症など


アセスメントの視点

 呼吸は生命を維持するための基本的な生理機能であり、呼吸不全はこの機能が急速に低下し生命危機にさらされる状態を意味する。酸素化の障害が急性かつ進行性であること、また低酸素による他臓器への影響も大きいことから、迅速な呼吸状態の把握と対処が求められる。
 一方、患者にとっては呼吸困難として認識されるため、「息ができない。」という生命の危機的状況に陥り計りしれない死の恐怖、苦痛、不安を生じていることが予測される。医療的な処置と共に精神的なサポートが必要となってくる。 また呼吸不全の進行により意識障害が出現し、呼吸苦を自覚したり、自ら訴えることができないことも予測されるため意識レベルを含め全身状態の観察が必要である。


症状

 1.自覚症状
呼吸苦、息が吸えない、胸が苦しい、だるいなど表現もさまざま。呼吸苦を訴えられないほどの状況もありうる。

 2.全身状態
 1)呼吸
努力性呼吸、異常呼吸のことがある。
 2)意識
PaO2<40mmHgの急性低酸素血症のでは患者は興奮、失見当識を認め不穏となる。PaO2<20mmHgになると、昏睡となりショック、徐脈、チェーンストークス呼吸が出現する。一方高炭酸ガス血症では、PaCO2基礎値(35~45mmHg)に10~15mmHg蓄積すると傾眠傾向としてあらわれ同時に発汗、羽ばたき振戦、高血圧がみられる。30mmHg以上の蓄積で昏睡ときに乳頭浮腫が出現する。
 3)脈拍
急性低酸素血症と高炭酸ガス血症はカテコラミンを遊離し頻脈を誘発する。またPaO2<40mmHgでは不整脈が、PaO2<20mmHgでは徐脈が出現しやすい。
 4)血圧
乏尿を伴う血圧低下はショックを意味する。PaO2<20mmHgが原因のこともありチェーンストークス呼吸、徐脈を伴う。高炭酸ガス血症では脈圧増大を伴う高血圧がみられる。
 5)低酸素血症でチアノーゼ、CO2ナルコーシスで顔面紅潮
 6)悪心、嘔吐
 7)咳嗽
肺炎、心不全などでみられる


検査

X-P
血液ガス分析
血液一般検査
心電図
肺シンチ
喀痰培養検査


治療

 1.酸素療法
吸入ガスの酸素濃度を上げることで肺胞内の酸素分圧を上げる。ただし、高濃度の酸素は生体にとって有害であること、また酸素療法は対症療法であり根本的な治療ではないことを念頭におく。気道の確保の必要があれば肩枕、エアウエイ挿入、あるいは気管内挿管を行なう。

 2.機械的人工呼吸
換気の改善、酸素化効率の改善、呼吸仕事量の軽減の目的で行なわれる。気管内挿管が基本として行なわれる。

 3.膜型人工肺(ECLA)
膜型の人工肺で血液を直接酸素化するもの。副作用として抗凝固剤使用による出血傾向、体外循環による感染、空気塞栓、血栓症などがある。

 4.薬物療法
原因疾患や、病態によって選択される。吸入療法、気管支拡張剤、ステロイド、利尿剤、交感神経刺激剤、抗生物質など

 5.肺理学療法


経過と管理

1.呼吸管理
 1)酸素療法
 換気抑制がなければ酸素吸入の適応になり、換気抑制があれば人工呼吸器による酸素投与と換気補助が必要となる。症状あるいは検査データに応じて適切な酸素投与法を選択する。酸素療法の目標は臨床症状の改善とPaO2が80~100mmHg、SpO2 が95%以上とする。
 2)機械的人工呼吸管理
 酸素吸入下の自力呼吸でも血液ガスの維持ができない場合や病態の改善が期待できない場合は人工呼吸管理を行なう。気管内挿管が基本として行なわれる。気管内挿管方法は患者の状態や予測される挿管期間などを考慮して選択される。気管内挿管時は絨毛運動による気道内分泌物の運搬は不可能となることや、挿管チューブによって声門の閉鎖が妨げられ自力での効果的な喀痰の排泄が困難になることから喀痰の吸引が必要になる。喀痰の貯留は気道閉塞や無気肺から肺炎を合併するので1~2時間毎の吸引が望ましい。また人工呼吸器の設定は、患者の血液ガスデータや、自発呼吸の有無や強さに応じて決定される。人工呼吸中はファイティングがおこると換気不全となるため、筋弛緩薬や鎮静剤の投与で自発呼吸を抑えたり、または患者の自発呼吸の能力を観察し補助呼吸の設定などに変更していくことがある。

2.循環管理
 呼吸状態の急変により突然の頻拍や徐脈を呈することがある。不整脈がみられることも多い。呼吸状態とあわせて十分にモニターをチェックする必要がある。また急性呼吸不全に引き続いて循環不全を起こし、全身状態が悪化することも少なくない。逆に心不全などの循環系疾患でも呼吸不全を起こすことがあり、循環動態のチェックが必要である。このためスワンガンツカテーテルを留置し血行動態を把握したり、水分バランス、頚静脈の怒張や浮腫の有無などの全身状態の観察が必要となることがある。ドーパミンの持続点滴などを行なうこともある。

3.精神的サポート、苦痛の緩和
 「息ができない」という危機的状況に陥り、死の恐怖や不安、苦痛を生じている。不安によりさらに呼吸困難を増強させるため、心の安静が必要である。患者に状況をわかりやすく説明したり、処置やケア前に声かけを行なっていく。症状が強いときにはできるだけ傍につきそい患者に安心感を与えるようにしていくことが求められる。また気管内挿管中は声がでないため意志の疎通が十分にできないことや、挿管による苦痛などつよいストレスとなっていることが予測される。コミュニケーションの方法を工夫するなどのサポートが必要である。低酸素血症では不穏、興奮が出現するおそれがある。病態とあわせて評価し、状況に応じて薬物による鎮静が考慮される。呼吸苦がある時には安楽な体位をとるようにする。ファーラー位や半座位、起座位は横隔膜が下がり呼吸面積が広くなり換気量が増加して呼吸がしやすくなる。また肺鬱血がある場合は下半身からの静脈還流が減少し肺血流量、心拍出量が減少して呼吸が楽になる。

4.脳神経障害
 呼吸不全に伴う脳神経障害はCO2ナルコーシスによるものと低酸素血症によるものと にわけられる。原因を把握したうえで対処していく。症状がみられるのは状態が悪化していることをあらわすので、緊急性が高く迅速な対応が求められる。

5.輸液の管理
 PaO2<40mmHgやPaC02>65mmHgも乏尿の原因となりうる。腎機能にも影響がでることもあり、血圧や使用される抗生物質の影響にも注意しなければならない。また、心不全の悪化など循環動態にも影響を及ぼすため厳重な輸液管理、水分バランスのチェックが必要である。


合併症

 1.酸素の加湿・加温の問題
 加湿されていない酸素を吸入すると気道粘膜の乾燥を招く。6~8時間の乾燥ガス吸入でPaO2低下がみられる。低温ガスでも同じ障害をおこす。一方、過剰な加湿はチューブ 内の水の貯留や分泌物の過剰喀出を招く。また過剰な加温は体温の上昇や肺熱傷を合併する危険がある。

 2.酸素中毒
 高酸素分圧には生物毒性があり、長期投与すると絨毛の運動抑制や肺水腫、肺出血を引き起こす。

 3.感染
 加湿に用いる水も細菌繁殖の温床となりやすい。また、気管内挿管中は挿管チューブにより口・鼻腔や咽・喉頭に存在する感染防御機構をバイパスする結果、肺感染症の合併を招きやすくなる。特に制酸剤やH2ブロッカーの投与で胃内pHが4~6に上昇するとグラム陰性菌が胃内で増殖する上、経鼻胃管が胃内の細菌の上行感染を助長するので注意が必要である。

 4.CO2ナルコーシス
 不用意にO2を投与すると、低酸素による刺激がなくなりCO2蓄積による意識障害を引き起こす。

 5.不整脈
 呼吸不全が悪化し低酸素症が著しくなると心室頻拍や心室細動などの致死性不整脈の出現するおそれがある。

 6.人工呼吸器使用中の合併症
 気道内圧上昇により気胸を起こすと短時間のうちに緊張性気胸となりショックから心停止に至ることもある。




看護計画


Ⅱ.問題リスト

#1.ガス交換障害による低酸素血症、高炭酸血症
   [要因]・低酸素血症:
         1)肺胞酸素分圧の低下
          (1)酸素供給不足(肺胞換気低下、吸入酸素低下)
          (2)酸素消費量(高体温、過激な運動)
         2)血液への供給能力
          (1)拡散障害
          (2)換気血流比の増加
          (3)毛細管血流量の著減
         3)静脈血の混合
          (1)無気肺、換気血流比の著減(肺内シャント)
          (2)心大血管シャント、動静脈瘻(心内シャント)
       ・高炭酸ガス血症:
         1)肺胞換気の低下
          (1)呼吸運動低下
          (2)気道の広範囲な狭窄、閉塞
         2)肺血流の減少
          (1)高度な肺梗塞 
          (2)高度な間質障害

#2.呼吸不全に関連した循環障害
   [要因]・器質的変化及び低酸素性肺血管攣縮からくる肺血管抵抗による肺高血圧症
       ・肺高血圧症に伴う右室の肥大、拡張による肺性心
       ・低酸素血症による左心不全、ARDSや敗血症に伴う肺水腫
       ・低酸素血症、低カリウム血症、酸塩基障害による不整脈

#3.人工呼吸器使用中における合併症
   [要因]・分泌物貯留による気道閉塞、肺、気道感染
       ・気道確保に起因する気道の損傷、チューブトラブル
       ・人工呼吸器の管理面での問題
       ・気道内容圧に起因する肺損傷、循環抑制

#4.精神的不安
   [要因]・呼吸苦、死への恐怖
       ・状況を理解していないことによる知識不足
       ・言語的コミュニケーション障害
       ・治療的環境に関連した不安

#5.原因疾患の存在
   [要因]・呼吸中枢の障害
       ・脊髄末梢神経呼吸筋の障害
       ・胸郭及び胸膜の障害
       ・気道、肺の障害
       ・心、血管系の障害

#6.呼吸不全に関連した脳神経障害
   [要因]・炭酸ガスに由来するCO2ナルコーシスと低酸素血症による脳障害

#7.呼吸不全に関連した消化器系障害
   [要因]・低酸素血症、高炭酸ガス血症、アシドーシス、ストレス、栄養障害による胃潰瘍や上部消化管出血

#8.臥床安静による褥創発生
   [要因]・免疫能の低下
       ・低栄養
       ・鎮静剤使用による体動制限


Ⅲ.看護目標

1. 適切な治療処置により呼吸状態が安定する
2. 呼吸不全に関連した合併症の早期発見と予防に努める
3. 不安、苦痛が緩和され危機的状況から脱し精神的安静が保たれる


Ⅳ.看護問題

#1.ガス交換障害による低酸素血症、高炭酸ガス血症
   [要因]・低酸素血症:
         1)肺胞酸素分圧の低下
          (1)酸素供給不足(肺胞換気低下、吸入酸素低下)
          (2)酸素消費量(高体温、過激な運動)
         2)血液への供給能力
          (1)拡散障害
          (2)換気血流比の増加
          (3)毛細管血流量の著減
         3)静脈血の混合
          (1)無気肺、換気血流比の著減(肺内シャント)
          (2)心大血管シャント、動静脈瘻(心内シャント)
       ・高炭酸ガス血症:
         1)肺胞換気の低下
          (1)呼吸運動低下
          (2)気道の広範囲な狭窄、閉塞 
         2)肺血流の減少
          (1)高度な肺梗塞 
          (2)高度な間質障害

  &適切な治療処置により呼吸状態が安定する
  $早急

O-1.呼吸
     1)自発呼吸の有無、呼吸苦の程度、チアノーゼの有無、顔色
     2)呼吸数、深さ、型、呼吸音
     3)呼吸様式(努力呼吸、起坐呼吸、下顎呼吸、無呼吸発作、陥没呼吸の有無)
     4)胸郭の動き
     5)喀痰、気管内分泌物の量、性状
  2.意識状態及び神経症状
     1)意識レベル
     2)瞳孔径、対光反射
  3.随伴症状
     1)バイタル変化(血圧、脈拍、不整脈、発熱)
     2)頭痛
     3)眩暈
     4)錯乱
     5)発汗
  4.検査データ
     1)血液ガス
     2)SpO2モニター
     3)胸部X-P
     4)喀痰培養
     5)気管支ファイバー
     6)一般血液(Hb、Ht)

T-1.気道確保、肩枕の使用、必要時挿管の準備及び介助
  2.効果的な酸素吸入
     1)低濃度酸素投与(経鼻カニューラ、ベンチュリーマスク)
     2)高濃度酸素投与(リザーバー付き酸素マスク、テント)
     3)加圧による酸素投与(IPPB、ベンチレーター、アンビュー)
  3.安楽な体位を工夫する(呼吸仕事量軽減のためセミファーラー位にする)
  4.薬物療法の介助
     1)気管支拡張剤
     2)利尿剤
     3)抗生物質
     4)ステロイドホルモン剤
     5)酸塩基平衡の是正
     6)輸液
  5.対症療法の実施
     1)肺理学療法(体位排痰法、リラクセーション、胸郭可動域訓練、呼吸訓練)
     2)体位変換1~2時間ごと
     3)吸痰介助
     4)酸素消費を増加させることは避ける
  6.気管支ファイバーの介助

#2.呼吸不全に関連した循環障害
   [要因]・器質的変化及び低酸素性肺血管攣縮からくる肺血管抵抗による肺高血圧症

  &異常の早期発見と適切な治療により循環動態が安定する
  $早急

O-1.循環系
     1)血圧(初期時は上昇、進行期は低下)
     2)脈拍(初期時は増加、徐々に減少し徐脈)
     3)心電図(不整脈の有無)
     4)血行動態(肺動脈圧上昇、中心静脈圧、心拍出量、肺動脈楔入圧)
     5)時間尿量と水分バランス、比重、浸透圧
     6)体温
     7)皮膚温、皮膚色、冷汗
     8)自覚症状(動悸、眩暈、嘔気)
  2.全身状態(浮腫、静脈の怒張、肝腫大)
  3.検査データ(腎機能、電解質、胸部X-P)

T-1.医師の指示による確実な薬物投与
     1)強心剤
     2)抗不整脈剤
     3)肺動脈圧上昇に対して血管拡張療法
     4)利尿剤
     5)アルブミン製剤
     6)酸塩基平衡の是正
  2.末梢の保温

#3.人工呼吸器使用中における合併症
   [要因]・分泌物貯留による気道閉塞、肺、気道感染
       ・気道確保に起因する気道の損傷、チューブトラブル
       ・人工呼吸器の管理面での問題
       ・気道内容圧に起因する肺損傷、循環抑制

  &適切な人工呼吸療法が受けられ、合併症を起こすことなく呼吸状態が安定する
  $人工呼吸器離脱まで

O-1.呼吸状態
     1)呼吸様式、呼吸パターン、呼吸数
     2)呼吸音
     3)胸郭の動き(左右対称性、呼吸筋力低下の程度)
     4)ファイティング、バッキングの有無
     5)気管内分泌物の性状
  2.バイタルサイン
     1)血圧低下、心拍数増加
     2)発熱の有無
  3.血行動態(心拍出量の低下)
  4.時間尿量と水分バランス
  5.血液データ(WBC、CRPなど)
  6.人工呼吸器
     1)設定条件(モード、FiO2、呼吸数、分時換気量、I:E比)
     2)実測値(気道内圧、呼吸数、換気量)
     3)アラーム設定値
     4)チューブ、回路のリーク、閉塞
     5)加温、加湿

T-1.気道閉塞、肺、気道感染に対して
     1)気管内吸引
     2)吸引後はアンビューで加圧
     3)肺理学療法
     4)体位変換
     5)医師の指示による薬物療法(去痰剤、抗生物質)
     6)口腔、鼻腔内保清
  2.気道損傷、チューブトラブルに対して
     1)チューブの固定の工夫(ある程度の可動性をもたせる)
     2)気管内吸引
     3)2週間毎のチューブ交換
     4)加温、加湿
     5)カフ圧チェック
     6)患者の鎮静(医師の指示のもと鎮静剤投与)
  3.肺損傷、循環抑制に対して
     1)緊急的対症療法(胸腔ドレーン)の介助
     2)気道内圧を低下させる工夫(換気条件の変更、患者の鎮静)
     3)輸液による循環血液量の維持
     4)医師の指示による強心剤、昇圧剤の投与

#4.精神的不安
   [要因]・呼吸苦、死への恐怖
       ・状況を理解していないことによる知識不足
       ・言語的コミュニケーション障害
       ・治療的環境に関連した不安

  &不安・苦痛が緩和され危機的状況から脱し精神的安静が保たれる
  $できるだけ早急

O-1.患者の言動、行動、表情を注意深く観察
  2.睡眠状態

T-1.患者が訴えやすい環境を作る
     1)声かけを頻回に行なう
     2)訴えをよく聴く
  2.不用意な言動は慎む
  3.効果的なコミュニケーションを図る(50音字表、指文字、筆談)
  4.危機的段階に応じた援助
  5.気分転換を図る(ラジオ、音楽)
  6.夜間睡眠がとれるように配慮
  7.面会の配慮
  8.医師から十分に説明が受けられるように仲介
  9.医師の指示による鎮静剤の投与
  10.必要時抑制帯の使用

E-1.集中治療室に関する説明
  2.処置、検査、ケアに関する説明
  3.抜管すれば再び会話できることを説明

#5.原因疾患の存在
   [要因]・呼吸中枢の障害
       ・脊髄末梢神経呼吸筋の障害
       ・胸郭及び胸膜の障害
       ・気道、肺の障害
       ・心、血管系の障害

  &適切な治療処置により呼吸状態が安定する
  $早急

O-1.呼吸状態
  2.バイタルサイン
  3.意識レベル

T-1.原因疾患に対する治療処置の介助

#6.呼吸不全に関連した脳神経障害
   [要因]・炭酸ガスに由来するCO2ナルコーシスと低酸素血症による脳障害
  &異常の早期発見に努め、二次的合併症が起こらない
   呼吸状態が安定し意識状態が回復する
  $早急

O-1.意識レベルと症状チェック
     1)CO2ナルコーシス(頭痛、倦怠、傾眠、記銘力・思考力減退、昏迷、昏睡)
     2)低酸素血症(企図振戦、不随意運動、意識消失)
  2.血液ガスデータ

T-1.異常時は速やかに医師に連絡
  2.環境を整え、転落や自己抜管などの危険を防止
  3.不穏時は抑制帯の使用や医師の指示による鎮静剤の投与
  4.声かけし不安の除去

#7.呼吸不全に関連した消化器障害
   [要因]・低酸素血症、高炭酸ガス血症、アシドーシス、ストレス、栄養障害による胃潰瘍や上部消化管出血

  &異常の早期発見に努め、出血などの異常時は適切な処置が受けられる
   精神的安静が保たれる
  $早急

O-1.胃部・腹部症状(心窩部痛、嘔気、嘔吐、腹部膨満、吐血、下血の有無と性状)
  2.バイタルサイン
  3.血液データ
  4.栄養状態
  5.精神状態、ストレス状況

T-1.腹圧を高めることは避け、安楽な体位を工夫
  2.出血を起こした場合は速やかに医師に連絡し指示を仰ぐ
  3.環境の整備に努め、落ち着いた雰囲気をつくる
  4.薬物療法の介助

#8.臥床安静による褥創発生
   [要因]・免疫能の低下
       ・低栄養
       ・鎮静剤使用による体動制限

  &褥創が予防できる
  $離床できるまで

O-1.皮膚の状態(褥創好発部位の皮膚色、発赤の有無)
  2.循環障害の有無
  3.疼痛の有無
  4.一箇所に長時間の圧迫はないか

T-1.体位変換
  2.良肢位の保持
  3.エアマットの使用
  4.清拭
  5.シーツ、寝衣のしわをのばす
  6.SpO2センサーは2時間ごとに位置変換し圧迫壊死を避ける
  7.発赤時はデュオアクティブ貼用