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顔面神経麻痺のある患者の標準看護計画

顔面神経麻痺のある患者の標準看護計画


顔面神経麻痺とは

 顔面神経は顔面表情筋の運動と、舌の前3分の2の味覚、および涙腺や唾液線の一部を支配している。顔面神経麻痺は、顔面神経核よりも上位の障害(大脳、中脳)によって起こる中枢性顔面神経麻痺と、 顔面神経核より末梢の障害で起こる末梢性顔面神経麻痺とに大別される。表情筋のうち前額部の筋肉は大脳から両側性に支配されるため、中枢性顔面神経麻痺では顔面下半分は麻痺するが、額にしわをよせることができる。一方、末梢性顔面神経では額を含むすべての表情筋の運動が障害される。これにより、顔面神経麻痺の原因部位の識別が可能となる。


症状

 麻痺側顔面の筋力が低下し、閉眼時にも眼瞼が十分に閉じず眼球結膜が見える(兔眼)。また麻痺側の鼻唇溝が浅く、口角がたれるため唾液や食物がこぼれやすい。口唇を閉じる力も麻痺側では弱く、閉じた唇を指で押し広げることによって確かめられる。また、額にしわを寄せるようにしても、麻痺側半面にはしわができない。
 顔面の感覚は障害されないが、麻痺側の舌の前3分の2の味覚障害がおこることがあり、また聴覚異常をきたすことがある。


検査

 1.運動機能の検査
 患者に眉を上げるように命じ、額にしわがよるかどうかをみたり、目を強くつぶるように命じて眼輪筋の収縮をみたり、上下歯を噛み合わせておいて口を開き歯を出させ(イーッと言わせる)、口角の動きの左右差を調べる。麻痺側の口角の緊張が不十分で、鼻唇溝が明らかに浅くなる。
 2.味覚検査
 少量の砂糖、塩、クエン酸などを舌の3分の2に塗って、味覚を調べる。


治療

 初期には各種ビタミンやステロイド剤を用い、数日後からマッサージや電気治療などによってリハビリテーションを行う。




看護計画


Ⅰ.アセスメントの視点

 脳外科における顔面神経麻痺の原因として、小脳橋角部腫瘍、頭蓋底骨折、脳底動脈瘤、硬膜外血腫が上げられる。また、術操作により、あるいはやむなく顔面神経を切断、損傷した場合、術後浮腫などにより一過性に出現する場合もある。切断の場合は神経吻合術が行われるが、完全に回復するのは困難であり、顔面の形成術が必要となることもある。
 患者と話す時や、患者が笑った時に、口角など顔面筋の動きを注意深く観察することで、顔面神経麻痺に気づく。
 顔面神経麻痺のある患者では、眠っている時でも十分に閉眼していないことがあり、これによって角膜が障害を受けることがある。したがって、これらの患者に対しては眼軟膏やアイパッチなどで、角膜の保護に心がけることが重要である。食事に際しても麻痺側の口角から食物がこぼれることが多い。食事介助をするときにはこの点にも注意し、健側で咀嚼させるなどの配慮をすべきである。筋萎縮を予防する意味で早期に顔面マッサージを指導し、顔面神経麻痺を受け入れるよう援助していく。


Ⅱ.問題リスト

#1.角膜損傷、角膜潰瘍の危険性
   〔要因〕・兎眼

#2.ボディイメージの障害
   〔要因〕・頬筋萎縮による顔貌の変化

#3.口腔内汚染
   〔要因〕・咀嚼困難で麻痺側に食物がたまりやすい
       ・顔面、口腔内の知覚低下

#4.精神的不安定、動揺がある
   〔要因〕・ボディイメージの障害


Ⅲ.看護目標

1. 目の保護と角膜損傷の予防
2. 早期に顔面の運動、マッサージを行い、筋萎縮を予防する
3. 口腔内の保清に努める
4. ボディイメージの変化を受容でき、社会復帰にむけて自信がもてる


Ⅳ.看護問題(術前)

#1.角膜損傷、角膜潰瘍の危険性
   〔要因〕・兎眼
  &眼球結膜の充血が見られない
   角膜潰瘍が起こらない
O-1.しっかり閉眼してもらい閉眼の程度をみる
  2.眼痛、充血の有無
T-1.ケーパインの絆創膏固定にて保護する
  2.点眼を行う:4回/日
  3.睡眠時眼軟膏、点眼を行う
  4.睡眠時も閉眼困難であれば絆創膏で閉眼固定する
E-1.適宜、他動的に閉眼するように指導する

#2.ボディイメージの障害
   〔要因〕・頬筋萎縮による顔貌の変化
  &顔面神経麻痺を受け入れ積極的に生活する
O-1.麻痺の状態
T-1.マッサージ後、毎日の変化、訴えを聞き効果を知る
E-1.1日数回静かに上方に向けて顔面筋をマッサージするように指導する
  2.鏡を見ながら顔面筋の運動訓練を指導する
   
1)前頭部にしわをよせる
   2)目を閉じる
   3)口をすぼめる
   4)口を左右に動かす
   5)頬をふくらます
   6)口笛を吹く

  3.顔面を冷やさない
  4.大部分の患者は自然に改善することをよく説明し、励ます

#3.口腔内汚染
   〔要因〕・咀嚼困難で麻痺側に食物がたまりやすい
       ・顔面、口腔内の知覚低下
  &口内炎がなく口腔内がきれいである
O-1.食後、食物が残っていないか口腔内を見る
T-1.口腔ケア施行:毎食後
  2.流動食は麻痺口角側より流出してしまったり、むせたりしやすく摂取困難なため少量ずつ飲ませ、
    落ち着いてゆっくり摂取できる雰囲気を作る

#4.精神的不安定、動揺がある
   〔要因〕・ボディイメージの障害
 &精神的苦痛が緩和される
O-1.患者の訴え、態度に注意する
  2.症状の観察
T-1.疾病について医師のムンテラを聞き、看護婦での言動の統一を図る