透析療法時の標準看護計画
看護計画
Ⅰ.アセスメントの視点
透析療法を受けることにも慣れ、症状も安定してくると、精神的にも余裕ができ、社会生活への参加も積極的に考えられるようになる。と同時に、合併症の出現や出現への不安感も抱くようになると予想される。患者は合併症に対する正しい知識をもち、予防的行動がとれるよう実践力を高めることで、自分の人生の中に透析生活を受け入れることができ、前向きに明るい日々を送れると考えられる。日常生活上の悩みや不安もより広く、深く、具体的なものに変わり、医療者に相談したいという要求も増えてくることも予想される。家族をも含めたコミュニケーションをより重要に捉え、患者の悩みや不 安をより詳しく知り、より具体的な指導をするとともに、導入期に指導した知識や実践度を確認しながらより快適な生活へと導く責任がある。
Ⅱ.問題リスト
#1.合併症の出現による苦痛
〔要因〕・心不全
→シャント、貧血、電解質異常、透析間体重過剰、高血圧、虚血性心疾患などを背景に透析患者は心不全に陥り易い
・腎性貧血
→長期透析患者の貧血は腎不全因子(腎が産生する造血ホルモンの欠乏)と透析因子(透析という人工的操作によるもの)がある
・高カリウム血症
→腎機能不全による代謝異常のなかでも特に高カリウム血症の高度なものは心停止をおこす
・腎性骨異栄養症
→透析治療が長期になると発生する骨、カルシウム代謝異常で、症状として骨痛、骨折、異所性石灰沈着などがある
・手根管症侯群
→アミロイド骨、関節症の一つで手首にある手根管にアミロイドという蛋白質が
沈着することにより、神経が圧迫され手指や手掌にシビレや痛みを生じる。多
くの場合、ばね指も合併する
・掻痒症
→70~80%の高い合併率を有する。発汗障害も一因とも考えられている
#2.合併症出現への不安
〔要因〕・合併症についての知識不足
・合併症の予防方法についての知識不足
#3.社会生活への不安
〔要因〕・職場復帰への不安
・外食や旅行など非日常的行動時の不安
・身体障章害者であることへの戸惑い
・シャント外傷など異常発生への不安
#4.透折生活に対する精神的なストレスの発生
〔要因〕・制限の多い生活がやっていけるかという不安
・健康な社会人の中で孤独感に陥り易い
・共感しあえる人間関係や仲間がほしい
Ⅲ.看護目標
1. 合併症による苦痛や不安が軽減され、安楽に透析治療が受けられる
2. 合併症や自己管理の知識を深め、出現や憎悪への予防的行動がとれる
3. 不安、疑問、悩みが解消され、よりよい社会生活が送れる
4. 透析治療を受け入れた今後の自分の人生に希望が見いだせる
Ⅳ.看護問題
#1.合併症の出現による苦痛
&異常が早期に発見され、苦痛が最小限にとどめられる
$透析治療は一生涯続けなければならないので、達成期限はない(以下、省略)
O-1.データをチェック
2.患者の外観変化の詳細な観察
3.日常生活の状況の把握
4.非日常的出来事の有無の確認
T-1.症状による苦痛の綬和に努める
2.症状出現の原因について調査する
3.症状出現に関連するデータ、外観の変化があれば患者に知らせる
4.症状出現の原因が医療環境にあれば除去につとめる
5.症状出現が生活状況と結び付いていないか、患者や家族と一緒に考える
6.症状の憎悪を予測し、予防的ケアを実施する
7.症状出現に関連した自己管理に必要な知識を再点検する
E-1.原因が自己管理不備によるものなら、関連項目の再指導を強化する
#2.合併症の出現への不安
&合併症の正しい知識の習得で、予防的行動が取れる。
身体の異常を患者自身や家族も発見できるようになる。どんな些細なことでも医療者に話せるようになる
O-1.合併症に関する知識の習得度の確認
2.合併症に関する知識の実践状況の確認
T-1.未習得の知識や間違った考えについて正しく教える
2.患者の生活実態に見合った実践方法について家族も交え、より具体的で実践可能な方法について検討する
3.どんな小さな体の変化や些細な心配ごとでも、医療者に話すことで異常の早期発見につながることがあることを話す
E-1.食事、飲水、内服など経口摂取行動について、特に指導を入念にする
#3.社会生活への不安
&透析治療に関する知識の習得と実践ができることや、家族・医療者・地域とよりよい関係が得られることで、
不安や悩みが解消され、快適で明るい社会生活が送れる
O-1.現在の生活全般の状況について聞く
2.患者が今後どのような形で社会参加していきたいか聞く
T-1.現状の悩みや不安について、その解消法について検討する
2.今後希望する社会生活形態への参加可能な方法について検討する
E-1.他事例を紹介し、体験談を聞かせてもらう
2.地域や職場など関連する後援組織などへ援助要請する
3.異常事態発生時の対処について再確認する(緊急時の連絡方法、透析手帳などの携帯、シャント部外傷時の止血方法など)
#4.透析生活に対する精神的なストレスの発生
&透析生活を自分の人生に受け入れ、正しい自己管理の実践で日常生活が安定する
透析生活の苦労や苦痛、不安などが共感できる人間関係をもつことで、精神的ストレスを克服、予坊できる
O-1.精神面の変化に十分留意する
2.家族などに、医療者の見えない場面(家庭や職場)の様子を聞く
T-1.患者家族とコミュニケーションを十分とる
2.透析治療開始後「1カ月」「半年」「1年」など、ある期間経過ごとに透析生活に対する感想などを改めて聞くことで、患者自身が自分の気持ちや、辛かった透析生活を冷静に振り返り、今後の生活への気持ちの整理ができる機会をつくる
3.他患者との交流で、情報交換や共感しあえる場面を設定する
E-1.一番身近な家族の支援が何よりも大きな励みになることを家族に再確認してもらう
2.趣味の再開や、新たなことにチャレンジするなど、一時的にも透析生活を忘れられる時間をもつなどストレス解消法の実行を勧める
3.関連の患者組織などを紹介する