手術可能な扁平上皮癌・腺癌には、手術前後の放射線治療を併用する。手術不能の場合でも、遠隔転移がなければ根治照射を行う。一方、未分化癌では放射線と抗癌剤の併用療法を行うこともある。姑息的な治療として、腫瘍やリンパ節腫大による上大静脈の圧迫による上大静脈症候群など、血管・気道の狭窄や通過障害による症状の改善、気道からの出血に対する止血、疼痛の緩和に行われる。
腫瘍のサイズが小さい程効果が大で、組織型では小細胞癌、扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌の順に感受性が低くなり、癌細胞の分化度では低分化のものほど感受性は高い。
一般には固定照法を用いる。正常肺、心臓、食道、脊髄などへの悪影響を防ぐために、通常、前後対向2門照射が用いられるが、その他として、多門照射および回転照射も行われる。縦隔を含めて照射する場合は前後対向2門で行い、44~46Gyの時点で脊髄を外すため方向を変更する。この場合斜入対向2門照射をしばしば用いる。
1回の照射線量は2Gyで、週5回行い、総照射線量は60Gyが標準的治療とされているが、局所に対しては途中で照射野を縮小することもある。小細胞癌の場合は、非小細胞癌より放射線感受性が高いので線量はやや少なめである。
全身的には、全身倦怠感、食欲不振、悪心などの放射線宿酔症状が起こりやすい。放射線宿酔の発生機序は、放射線による化学反応の過程で過酸化物質が多量に発生し、肝臓で処理される。肝臓自体が疲弊に伴い、宿酔症状を呈する。さらに血流中に存在する炎症細胞(白血球)よりヒスタミン系物質の遊離によりアレルギー性症状を呈することで症状が起きる。宿酔症状には、過酸化物質の蓄積とヒスタミン系物質の両者が関与するといわれている。放射線に対する不安感が強い人も起こりやすい。また、胸部照射であるため、造血機能の盛んな胸骨に照射野が入り、放射線の感受性が高い骨髄が影響を受け、骨髄抑制が起こりやすい。一般に放射線療法独自で看護ケアを必要とする骨髄抑制は起こりにくいが、化学療法との併用時に強く出やすい。
局所的には、照射野の皮膚に、放射線により皮膚の基底細胞が障害を受け、放射線皮膚炎が20~30Gyから起こりやすい。肺の気管内の絨毛は早期に影響を受けるため、呼吸器症状が早期に出現し放射線肺炎を起こすこともある。通常は照射終了後数週ないし2カ月(早ければ治療期間中)でおこる。発熱、咳そうを伴い、X線像では照射野に一致した浸潤を認めるが無症状に時もある。照射野と線量が大きいほど発生しやすい。(化学療法との併用とは発現頻度を高め、時には照射外にも広がって、致死的となることもある。)放射線肺炎は軽快した後、肺線維症に移行しやすい。また、照射野に食道が入る場合は、食道粘膜の基底細胞が放射線により障害を受けて、20Gy前後で食道炎を起こすこともある。症状としては、つかえ感ではじまり、ついで疼痛、粘膜炎が高度となりえんげ困難などもおこり、ついには潰瘍や出血に至ることもある。また後に、食道の狭窄を起こすこもあるが、比較的まれである。放射線の晩期障害として肺線維症がある。
局所的には、照射野の皮膚に、放射線により皮膚の基底細胞が障害を受け、放射線皮膚炎が20~30Gyから起こりやすい。肺の気管内の絨毛は早期に影響を受けるため、呼吸器症状が早期に出現し放射線肺炎を起こすこともある。通常は照射終了後数週ないし2カ月(早ければ治療期間中)でおこる。発熱、咳そうを伴い、X線像では照射野に一致した浸潤を認めるが無症状に時もある。照射野と線量が大きいほど発生しやすい。(化学療法との併用とは発現頻度を高め、時には照射外にも広がって、致死的となることもある。)放射線肺炎は軽快した後、肺線維症に移行しやすい。また、照射野に食道が入る場合は、食道粘膜の基底細胞が放射線により障害を受けて、20Gy前後で食道炎を起こすこともある。症状としては、つかえ感ではじまり、ついで疼痛、粘膜炎が高度となりえんげ困難などもおこり、ついには潰瘍や出血に至ることもある。また後に、食道の狭窄を起こすこもあるが、比較的まれである。放射線の晩期障害として肺線維症がある。
Ⅰ.アセスメントの視点
原疾患による症状とは別に照射により放射線肺炎や放射線食道炎を起こしやすい。放射線の影響と原疾患により肺の機能が低下しており、放射線肺炎を起こすと死に至ることもあり、治療開始から早期に呼吸器症状やバイタル、血液データの観察を行う(照射野が胸骨を含んでいることで、骨髄抑制をおこし、易感染状態に陥りやすい)。放射線食道炎では、症状が強度になると食摂取量の低下により低栄養状態、脱水をきたすことになるので、食事量や倦怠感などの自覚症状と併せて、体重の変化や血液データにも着目する。 また、初めて放射線治療を受ける患者は、放射線に対して誤解と偏見に満ちたものであることも少なくない。そのため、治療に対して不安や恐怖をもつ。治療に対する思いや不安を早期に把握することが大切である。さらに治療が進むにつれて、副作用出現に対する不安をもちやすいので、不安の把握や不安に起因する身体症状の観察も行っていく。さらに放射線療法が終了しても、放射線の影響や再発などに対しても不安をもつことがあるので、患者や家族のこれらに対する思いの把握を行う。
[要因]・疾患への不安
・放射線治療そのものに対する不安
・放射線治療の副作用に対する不安
・入院という慣れない環境
・入院により社会的役割が果たせない
・治療や退院後の予期的不安
[要因]・放射線宿酔症状
・骨髄抑制による易感染と出血傾向
・放射線肺臓炎
・照射野に食道が入る場合は、放射線食道炎
・照射野の皮膚に放射線皮膚炎
・照射後3~6カ月後に放射線肺線維症などの晩期障害
[要因]・疾患への不安
・放射線治療そのものに対する不安
・放射線治療の副作用に対する不安
・経済面への不安
・家族内の役割の変化
・患者と家族間の人間関係
- 疾患、放射線治療に対する不安が軽減され、心身ともに安定した状態で放射線治療をうけることができる
- 放射線療法による副作用(肺臓炎や食道炎)を早期に対処し最後まで治療を受けることができる
- 家族サポートを通じて患者が支えられる
[要因]・疾患への不安
・放射線治療そのものに対する不安
・放射線治療の副作用に対する不安
・入院という慣れない環境
・入院により社会的役割が果たせない
・治療や退院後の予期的不安
&放射線治療の必要性が理解でき、言葉で表現できる
疾患や治療に対する不安を言葉で表現できる
精神的に安定した状態で積極的に治療を受けることができる
照射オリエンテーションを通じて、治療やその副作用に対するイメージが出来、対処方法を言葉で表現出来る
$入院から退院まで
O-1.入院への適応状況
2.疾病、治療に関する患者の情報量とその理解度
3.患者の訴え、表情、言動
4.睡眠状況
5.サポートシステムの状況
6.性格
7.対処行動と対処能力
8.食欲や食摂取状況
T-1.治療の必要性、方法をわかりやすく説明し、わからないことや不安に思うことは何でも質問してもらう
2.治療について医師から十分説明してもらい、理解不足があれば追加説明を行い納得した状態で治療を受けられるようにする
3.医師より患者にムンテラした内容について、看護婦間に周知し、言動の統一を図る
4.精神的に不安定になっているので、会話には細心の注意を払う
5.不安を表出できるようにするため以下のケアをする
1)患者や家族の訴えをよく聴き、受容的態度で接する
2)不安が表出できるよう患者や家族との信頼関係をつくる
3)疾患に対する不安は、医師から十分に説明が受けられるようにする
4)静かで休息のとれる環境をつくる
6.週末には外泊をすすめるなど気分転換が図れるよう配慮する
7.治療前のオリエンテーションを不安なく受けられるよう援助する
E-1.患者が治療に対しイメージでき、また副作用の出現に対処できるように、必ず照射前にオリエンテーションを行う
2.副作用については一時的反応であり、個人差があると説明する
3.わからない点があればいつでも質問するように指導する
[要因]-1放射線宿酔症状
-3放射線肺臓炎
&宿酔症状を理解でき、言葉で表現できる
症状が出現時、医師や看護婦に報告することができ、適切な処置が受けられる
$治療開始から終了まで(照射開始後10日前後で消失することが多い)
O-1.全身倦怠感
2.食欲不振
3.悪心・嘔吐
4.疲労感
5.頭重感
6.めまい
7.宿酔症状に対する思い、理解度
T-1.患者の訴えを十分に聴き、優しい言葉かけをして励ます
(一過性のものなので心配ないと励まし、放射線に対して不安があればその内容を明らかにし、不安の軽減に努める)
2.患者の嗜好を取り入れ、食欲増進を図る
3.食事時間にこだわらず、食べられる時に食べられるように配慮する
4.食事量が低下してきた時は、食事内容の変更をする
5.宿酔症状が強い時は、普段は大丈夫な匂いでも吐き気を催すことがあるので環境にも配慮する
6.経口摂取が困難な場合は、経管栄養を考慮する
7.嘔気があるときは、胃部をクーリングしてみる
8.医師の指示で制吐剤や補液を投与する
E-1.宿酔症状について説明する
(治療に対する不安が強い場合は、かえって宿酔症状を強くすることがあるので、患者の状態にあわせて説明する)
2.治療中は十分な栄養と水分が大切であるということを説明する
1)お茶、ジュース、水分を多く含むものなどを十分摂取すること
2)高カロリー、高タンパク食をすすめる;牛乳、乳製品とくにチーズ、魚肉類の摂取、エンシュアリキッドなど補助食品の摂取
3.治療中は体力の消耗を避けるよう指導する
1)軽い運動(散歩など)にとどめ安静を保つようにする
2)十分な睡眠をとるようにする
3)体調がおかしいと感じたらすぐ報告する
&感染や出血に対し理解し、言葉で表現できる
感染予防行動がとれる
症状出現時医師や看護婦に報告できる
$治療開始から治療終了まで
O-1.バイタルサインチェック
2.倦怠感
3.感染症状の有無(悪寒、体熱感、顔面紅潮)
4.易感染部位の異常の有無(口腔内、陰部、上気道)
5.出血の有無(口腔内、皮膚、排泄物)
6.検査データ
T-1.医療者が感染の媒体にならないように感染予防行動を行う
2.患者が身体的理由で感染予防行動がとれない場合は援助する
3.骨髄抑制が強い場合は、医師の指示により照射を中止する
(WBC 1,500/mm3、Plt 50,000/mm3)
4.医師の指示により、白血球増多剤や輸血を行う
5.上気道感染や転倒など起こさないように、環境の整備を行う
6.出血傾向に注意し、採血や注射後、止血の確認をする
7.WBC低下(1,000/mm3)の時、加熱食への変更
E-1.感染症状、出血、倦怠感出現時は医師、看護婦に報告するよう指導する
2.感染予防に努めるように指導する
1)皮膚をこすらない
2)爪はいつも短く切っておく
3)含嗽、手洗いの励行
4)人ごみを避ける
5)必要に応じて面会人の制限
6)WBC低下の時、含嗽やマスクの着用を指導
7)WBC低下(1,000/mm3)の時、生ものは避ける
3.出血予防に努めるように指導する
1)寝具や保清による皮膚への摩擦・圧迫を避ける
2)排便コントロールを図り怒責を避ける
3)Plt低下の時は歯ブラシは使わない
&放射性皮膚炎を理解し、言葉で表現できる
放射性皮膚炎に対する予防行動がとれる
症状出現時医師や看護婦に報告することができ適切な処置が受けられる
$治療開始から症状改善するまで
O-1.皮膚の状態(前後対向2門での照射が多いため、マーキングされている皮膚だけではなく背部の観察も行う)
1)熱感
2)軽度の発赤、皮膚の乾燥、掻痒感(20~30Gy)
3)著明な発赤、疼痛(40~50Gy)
4)水泡形成、びらん(60~70Gy)
T-1.照射部位の皮膚の清潔を保つ
2.照射後、照射部位のクーリングを行う
3.皮膚炎を起こしたときは医師に報告し指示を得る
4.皮膚炎を起こしたときは医師の指示のもと、ステロイドホルモン軟膏を塗布する(照射前にふき取る)
5.皮膚炎は治療終了すれば回復することを話し、治療が継続できるよう励ます
E-1.石鹸や薬剤による照射部位(マーキング部と背部)の刺激は避ける(入浴は可能だがぬるま湯で流す程度とする)
2.照射部位は傷つけたり、テープ、湿布などは使用しない
3.照射部位に症状出現時は、勝手にクリームなど使用せず(鉱物の入った軟膏は放射線を乱反射させる)、医師や看護婦に報告する
4.下着や寝衣は木綿で汗を吸い、肌触りのよいものを使用し、こまめに着替えるようにする
5.照射部位の日焼けは避ける
6.爪は短く切っておく
7.照射後、照射部位のクーリングを促す
&放射性食道炎を理解し、言葉で表現できる
放射性食道炎に対する予防行動がとれる
出現時医師や看護婦に報告することができ、適切な処置を受けることができる
対処行動がとれ、栄養状態が悪化しない
$治療開始から終了後症状が改善するまで
O-1.嚥下時痛、嚥下困難の有無
2.通過障害
3.食事摂取量
4.体重減少
5.食事や症状に対する思いの把握
T-1.医師の指示にて鎮痛剤や粘膜保護剤を与薬する
2.嚥下時痛がある時は、食べやすい食事(お粥など柔らかいもの)に変更する
3.摂取量が減ってきたら、高タンパク、高カロリーのものを捕食する
4.食べれない、痛みなどからくるストレスを十分表出させ、症状は処置や治療の終了で和らいでいくことを説明する
E-1.嚥下時痛のある時は刺激の強いもの(塩味を薄く酸味も避ける、熱すぎたり冷たすぎるものも避ける)や、硬い食品は避けるようにする
2.補食は高タンパク、高カロリー食品を選ぶ
3.食事時間にはこだわらず、食べやすいものを食べるよう指導する
4.できれば喫煙や飲酒はやめる
5.食事はよく噛んでゆっくり食べるようにする
&放射性肺臓炎について理解し、言葉で表現出来る
放射性肺臓炎に対する予防行動がとれる
症状出現時、医師や看護婦に報告することができ、適切な処置を受けることが出来る
$治療開始から終了後症状が改善するまで
O-1.発熱、胸部X-P所見、血液ガス、血液データ
2.痰の性状(血痰の有無)、咳の有無、呼吸音
3.呼吸困難の程度
4.症状に対する思い
T-1.肺臓炎の疑いがある時は、医師の指示により放射線治療を中止する
2.医師の指示により、ステロイドホルモン剤、抗生剤を投与する
3.息苦しさが強ければ、医師の指示により酸素吸入を行う
4.安静を促す
5.肺胞内出血時は患側を下にして窒息を防止し、胸部のクーリングを行う
6.患者の症状などの不安を十分に表出させる
7.安楽な体位の工夫
8.症状にあわせてADLの介助
9.室内の乾燥を防ぐために、必要時加湿器の使用をする
E-1.指示された安静度を守る
2.呼吸器感染を起こさないように、感染予防行動を指導する
3.十分な栄養をとり、疲労は避ける
4.できるかぎり禁煙をする
&放射線治療による副作用について理解でき、言葉で表現できる
退院後心身共に安定した状態で生活が送れる
感染の予防行動がとれる
症状出現時、対処行動がとれる
$治療開始から退院まで
O-1.患者の訴え、表情
2.副作用症状の理解度
3.症状出現時の対処能力
4.家族のサポート能力
T-1.医師により疾患・放射線治療・治療による副作用の説明を十分に行ってもらうまた、家族にも説明し、患者の回復の協力が得られるようにする
2.医師からの説明で理解不足があれば追加説明を行い、納得した状態で退院出来るようにする
3.疑問や不安を表出しやすいように環境を整える
4.照射中におきた副作用は、照射後時間が経てば徐々によくなることを話す
E-1.定期受診をうけるように指導する
2.身体の調子が何かおかしいと思った場合は、すぐ診察を受けるよう指導する
3.安静を保持し、疲労を避けるようにし、また睡眠は十分にとれるよう指導する
4.栄養の補給に努めるよう指導する
5.感染予防に努めるよう指導する(放射線肺線維症をおこしやすいため)
6.できるだけ禁煙する
7.皮膚や粘膜は照射によって萎縮し、薄くなって受傷しやすくなっているので、強い刺激を避け、寒冷にさらさないよう保温に努めるよう指導する
8.照射部位の日焼けは避ける(特に治療終了後3カ月間)
[要因]・疾患への不安
・放射線治療そのものに対する不安
・放射線治療の副作用に対する不安
・経済面への不安
・家族内の役割の変化
・患者と家族間の人間関係
&家族が不安を表出でき、家族ケア、家族サポートを通して患者が支えられる
$入院から退院まで
O-1.家族の表情、言語による表現、態度
2.家族、患者間の疾患の理解・認識の差
3.家族の放射線治療に対する認識・理解度
4.家族の放射線治療の副作用に対する認識・理解度
5.家族の状況判断能力
6.家族間のサポートシステム
7.経済的問題の存在
T-1.家族とコニュニケーションをとり、不安や心配事を表出しやすいように受容的態度でかかわる
2.患者の治療状況及び副作用について説明する
3.家族内で起きている問題の対処ができているか、必要時相談にのったり、情報の提供を行う
E-1.家族とコニュニケーションをとり、また気分転換を図るためにも週末外泊などをすすめる
2.治療の副作用のため食事摂取量が低下することがあるので、その際は患者の好みに応じたさし入れをするようにすすめる
(放射線食道炎を起こしている場合は、刺激物は避けるように指導する)
3.患者とともに家族へも退院時指導を行う
4.家族に患者のサポートの必要性を説明する