乳癌の放射線治療は、局所療法の一つである。局所進行例に対し手術をせず、姑息的に放射線治療のみで加療する場合もあるが、手術不能例以外、手術に放射線療法を加えたほうが成績が良いので術後の補助療法の一つとして行なわれる場合がある。乳房温存手術を行なった後の残在乳腺に対しては必須の治療である。また、切除不十分(郭清不十分)と思われるような、進行乳癌に対し行なわれることもある。再発臓器として最も多いのは骨で、次いで体表リンパ節、肺、手術局所、肝臓、皮膚である。そして,局所再発症例や遠隔転移巣の治療にも対症療法として放射線療法を行なうことが多い。とくに、脳転移・肺転移・骨転移・肝転移等に対して放射線療法は患者の苦痛を軽減させる手段としてすぐれている。
乳癌の放射線感受性は、組織型が腺癌であるが、比較的高い。感受性は、腫瘍のサイズに左右される。50Gy/5週で局所制御が可能であり、腫瘍サイズが大きくなるにつれて局所制御線量が増加する。乳房全体へ60Gy/6週照射すると繊維化による乳房萎縮が、高度となるとされている。正常組織の障害が許容される範囲内で腫瘍が根治されなければならない。
乳房への照射は、通常4MVライナックX線を用いて、接線の対向2門で行なわれる。
照射中は患肢の挙上が必要なため、術後照射を早期に開始(補助照射が必要な場合、術後6週以内が望ましく少なくとも16週以内に開始すべきである。)させるためには、リハビリが重要な意味をもつことになる。
照射中は患肢の挙上が必要なため、術後照射を早期に開始(補助照射が必要な場合、術後6週以内が望ましく少なくとも16週以内に開始すべきである。)させるためには、リハビリが重要な意味をもつことになる。
術後温存乳房への1回の腫瘍線量は2Gyで週5回、総腫瘍線量は、45~50Gyが標準であり、その後断端に10Gy程度追加照射が行なわれる。腋窩リンパ節に転移を認めなかった場合、乳房への照射で十分である。
根治的手術の術後照射の場合は、鎖骨上・下窩、胸骨傍リンパ節を照射、前1門、1回の線量は2Gyで週5回、総線量は、50Gyである。腋窩リンパ節に転移を認めた場合,4個以上のリンパ節を認めた例は、予後は不良で、強力な化学療法を先行し、予定コ-ス終了後に乳房照射を行なう。転移リンパ節が3個以下の場合、経口化学療法と放射線照射を併用する。
根治的手術の術後照射の場合は、鎖骨上・下窩、胸骨傍リンパ節を照射、前1門、1回の線量は2Gyで週5回、総線量は、50Gyである。腋窩リンパ節に転移を認めた場合,4個以上のリンパ節を認めた例は、予後は不良で、強力な化学療法を先行し、予定コ-ス終了後に乳房照射を行なう。転移リンパ節が3個以下の場合、経口化学療法と放射線照射を併用する。
全身的には、全身倦怠感、食欲不振、悪心などの放射線宿酔症状が起こりうる。しかし乳房の術後照射においては接線2門照射が用いられるため、骨髄への影響は少なく、骨髄抑制が出現するのはまれである(経口化学療法が併用される場合は出現することもある)
局所的には照射野の皮膚が、放射線により基底細胞の障害を受け、20~30Gy照射された頃より放射線皮膚炎を起こしやすい。乳癌では、乳房、胸壁など比較的身体の表面に近い部分へ照射が行なわれるため、皮膚炎は強く起こりやすい。その他まれに、放射線肺臓炎や心外膜炎を起こす場合もある。
また、照射終了後にも、湿性皮膚炎の持続がみられたり、照射終了後から、多くは6か月後に、放射線による高度な皮膚の瘢痕により、末梢血管障害から局所の栄養障害を起こし、皮膚潰瘍や壊死などの晩期障害をおこすこともある。
局所的には照射野の皮膚が、放射線により基底細胞の障害を受け、20~30Gy照射された頃より放射線皮膚炎を起こしやすい。乳癌では、乳房、胸壁など比較的身体の表面に近い部分へ照射が行なわれるため、皮膚炎は強く起こりやすい。その他まれに、放射線肺臓炎や心外膜炎を起こす場合もある。
また、照射終了後にも、湿性皮膚炎の持続がみられたり、照射終了後から、多くは6か月後に、放射線による高度な皮膚の瘢痕により、末梢血管障害から局所の栄養障害を起こし、皮膚潰瘍や壊死などの晩期障害をおこすこともある。
Ⅰ.アセスメントの視点
乳癌の術後照射の場合、放射線照射による全身的影響は少ないものの、放射線皮膚炎を起こしやすいので、そのため、治療早期より照射部位の皮膚症状の把握を行なう。乳癌の放射線治療を受ける患者は、照射中乳房を露出しなければならない。このことは、強く羞恥心を伴う場合があると考えられるために、早期より患者の治療に対する思いや不安の把握、不安に起因する身体症状の観察を行い、配慮することが大切である。また、放射線治療が終了しても、放射線の影響や再発に対して不安をもつことがあるため、患者や家族のこれらに対する思いの把握を行なっていく。
#1.疾患や治療に対する不安
[要因]・疾患への不安
・放射線治療そのものに対する不安
・放射線治療の副作用に対する不安
・入院という慣れない環境
・入院により社会的役割がはたせない
・治療後や退院後予期的不安
[要因]・放射線宿酔症状
・照射野の皮膚に放射線皮膚炎
・湿性皮膚炎の持続や、照射終了後から多くは6か月後に皮膚潰瘍,壊死などの晩期障害
[要因]・疾患への不安
・放射線治療そのものに対する不安
・放射線治療の副作用に対する不安
・患者の予後への不安
・経済面への不安
・家庭内の役割の変化(サポ-トシステムの不足)
・患者と家族間の人間関係(コミュニケ-ション)
- 疾患、放射線治療に対する不安が軽減され心身ともに安定した状態で放射線治療を受けることができる
- 放射線治療による副作用を早期に対処し、最後まで治療を受けることができる
- 家族サポ-トを通じて患者が支えられる
[要因]・疾患への不安
・放射線治療そのものに対する不安
・放射線治療の副作用に対する不安
・入院により社会的役割がはたせない
・治療後や退院後予期的不安
&放射線治療の必要性が理解できる
疾患や治療に対する不安を言葉で表現し、精神的に安定した状態で積極的に治療を受けることができる
照射オリエンテ-ションを通じて、治療やその副作用に対するイメ-ジができ、対処方法を言葉で表現できる
$入院から治療終了まで
O-1.入院への適応状況
2.疾病、治療に関する患者の情報量とその理解度
3.患者の訴え、表情、言動
4.食欲、食事摂取状況
5.睡眠状況
6.サポ-トシステムの状況
7.性格
8.対処行動と対処能力
T-1.治療についてわからないことや不安に思うことは何でも質問してもらう
2.放射線治療について、医師より説明してもらい、理解不足があれば追加説明を行い納得した状態で治療が受けられるようにする
3.医師より患者にムンテラした内容について、看護婦間に周知し、言動の統一を図る
4.精神的に不安定になっているので、会話には細心の注意を払う
5.家族の支援が得られるよう、必要時参加を求める
6.不安を表出できる様にするため以下のケアをする
1)患者や家族の訴えをよく聴き、受容的態度で接する
2)不安が表出できるよう、患者や家族との信頼関係をつくる
3)癌に対する不安は、医師から十分説明が受けられるようにする
4)静かで休息のとれる環境をつくる
E-1.患者が治療に対し、イメ-ジでき、また副作用の出現に対処できるよう必ず照射前オリエンテ-ションを行なう
2.副作用については一時的反応であり、個人差があると説明する
3.わからない点があればいつでも質問するように指導する
[要因]-1放射線宿酔症状
-2照射野の皮膚に放射線皮膚炎
-3湿性皮膚炎の持続や、照射終了後から多くは6か月後に皮膚潰瘍,壊死などの晩期障害
&宿酔症状について理解し、言葉で表現できる
症状出現時、医師や看護婦に報告し、適切な処置がうけられる
$治療開始から終了まで(照射開始後10日前後で消失することが多い)
O-1.全身倦怠感
2.食欲不振
3.吐気,嘔吐
4.疲労感
5.頭重感
6.めまい
7.宿酔症状に対する思い、理解度
T-1.患者の訴えを十分聴き、優しい言葉かけをして励ます
(一過性のものなので心配いと励まし、放射線に対して不安があればその内容を明らかにし、不安の軽減につとめる)
2.患者の嗜好を取り入れ、食欲増進を図る
3.食事時間にこだわらず、食べられる時に食べられるように配慮する
4.食事量が低下してきた時、食事内容の変更をする
5.宿酔症状が強い時は、普段は大丈夫な匂いでも吐き気を催すことがあるので環境にも配慮する
6.経口摂取困難な場合は、経管栄養を考慮する
7.吐気があるとき、胃部のク-リングをしてみる
8.医師の指示で制吐剤の与薬、補液の施行
E-1.宿酔症状について説明する
(治療に対する不安が強い場合は、かえって宿酔症状を強くすることがあるので、患者の状態にあわせて説明する)
2.治療中は十分な栄養と水分が大切であるということを説明する
1)お茶、ジュ-ス、水分を多く含むものなどを十分摂取すること
2)高カロリ-、高蛋白食をすすめる
牛乳、乳製品特にチ-ズ、魚肉類の摂取エンシュアリキッドなど補助食品の摂取
3.治療中は体力の消耗を避けるように指導する
1)軽い運動(散歩など)にとどめ安静を保つようにする
2)十分な睡眠をとるようにする
3)体調がおかしいと感じたらすぐ報告する
&放射線皮膚炎を理解し、言葉で表現できる
放射線皮膚炎に対する予防行動がとれる
症状出現時、医師や看護婦に報告することができ、適切な処置が受けられる
$治療開始から退院まで
O-1.皮膚の状態
1)熱感
2)軽度の発赤、皮膚の乾燥、掻痒感(20~30Gy)
3)著明な発赤、疼痛(40~50Gy)
4)水疱形成、びらん(60~70Gy)
T-1.照射部位の清潔を保つ。特に、腋窩、乳房下部のように皮膚の重なった部位にびらんが生じやすいので注意する
2.照射野の皮膚刺激をさける
3.照射後、照射部位のク-リングを行なう
4.皮膚炎を起こしたときは、医師に報告し指示を得る
5.皮膚炎を起こしたときは、医師の指示のもと、ステロイド入りの軟膏が処方されるが照射前は軟膏を拭き取るようにする
6.皮膚炎は照射が終了すれば回復することを話し、治療が継続できるよう励ます
E-1.照射野の皮膚刺激をさけるための予防法について指導
1)石けんや薬剤による照射部位の刺激をさける。入浴は可能、入浴時、ぬるま湯で流す程度にする
2)照射部位をこすったり、掻いたりしない。爪は短く切っておく
3)照射部位を締めつけない
4)照射部位の日焼けはさける
5)照射部位に絆創膏、湿布を貼用しない
6)下着、病衣は木綿で汗を吸い、肌ざわりのよいものを使用し、こまめに着替えるようにする
2.照射後、照射部位のク-リングを促す
3.照射部位に皮膚症状が出現した時、勝手にクリ-ムなど使用せず(鉱物の入った軟膏は放射線を乱反射させる)、医師や看護婦に報告する
&放射線治療による副作用について理解でき、言葉で表現できる
退院後心身ともに安定した状態で生活が送れる
症状出現時、対処行動がとれる
$治療開始から退院まで
O-1.患者の訴え、表情
2.副作用、症状の有無
3.症状出現時の対処能力
4.家族のサポ-ト能力
T-1.医師より疾患、放射線治療、治療による副作用の説明を十分に行なってもらう
2.医師からの説明で理解不足があれば追加説明を行い、納得した状態で退院できるようにする
3.疑問や不安を表出しやすいように環境を整える
4.照射中におきた副作用は照射後時間が経てば徐々によくなることを話す
E-1.定期検診を受けるように指導する
2.身体の調子がおかしいと思った場合は、すぐ診察をうけるように指導する
3.安静を保持し、疲労を避けるようにし、また睡眠は十分にとれるように指導する
4.栄養の補給に努めるよう指導する
5.照射部位の皮膚は、放射線によって萎縮し、薄くなって受傷しやすくなっているので強い刺激を避け、寒冷にさらさないよう保温に努めるよう指導する
[要因]・疾患への不安
・放射線治療そのものに対する不安
・放射線治療の副作用に対する不安
・患者の予後への不安
・経済面への不安
・家庭内の役割の変化(サポ-トシステムの不足)
・患者と家族間の人間関係(コミュニケ-ション)
&家族が不安な気持ちを表出でき家族ケア、家族サポ-トをとおして患者が支えられる
$入院から退院まで
O-1.家族の表情、言語による表現、態度
2.家族と患者との人間関係
3.家族の放射線治療の理解度
4.家族の状況判断能力
5.家族間のサポ-トシステム
6.経済的問題の存在
T-1.家族とコミニケ-ションをとり、不安や心配事を表出しやすいように受容的態度でかかわる
2.患者の治療状況及び副作用について説明する
3.家族の考えと医療者の考えに違いがないか、また患者の考えを尊重してかかわる方法について相談し検討する
4.家庭内で起きている問題の対処ができているか、解決困難な時は相談にのったり関係機関の情報提供を行なう
E-1.家族とコミュニケ-ションをとり、また気分転換を図るためにも週末外泊などをすすめる
2.治療の副作用のため食事摂取量が低下することがあるので、その際は患者の好みに応じたさし入れをするようにすすめる
3.家族が患者の今後についてイメ-ジできるように、治療の状況、入院期間、社会復帰の時期等について知識を与える
4.家族に継続が必要なケア(家事の分業、協力、定期検診など)について指導する
5.家族に患者のサポ-トの必要性を説明する